世界の料理図鑑 チャド
ダラバ
daraba ダラバ Daraba
ぬめりがなければ、主食にソースが乗りません。
オクラ、落花生のペースト、サツマイモ、乾燥トマトを煮込む。
チャドでブールに添えられる、いちばん一般的なソースの一つです。
ただしこれは「オクラのスープ」ではありません。オクラは汁ではなく、増粘剤として入っています。
- 現地名
- daraba
- 読み
- ダラバ
- 分類
- ソース/煮込み(ブールに添える)
- 地域
- チャド全土。特に南部
- 主材料
- オクラ(乾燥または生)、落花生ペースト、サツマイモ、乾燥トマト
- オクラの役割
- ソースではなく増粘剤。主食に絡ませるため
- 語源
- 特定できませんでした
- 乾燥オクラ相場
- 1,578.9 XAF/kg(WFP調査値)
- 単体で食べるか
- いいえ。ブールに添える
- 相場
- 一皿の価格は資料が見つかりませんでした
01一口目に来るもの
最初に来るのは落花生の脂の甘さです。
そのすぐ後に、オクラのぬめりが舌にまとわりつく。
乾燥オクラを使ったものは、生より青臭さが少なく、代わりに乾物の出汁のような旨味が出ます。
サツマイモが煮崩れて全体にほのかな甘みを与え、乾燥トマトが酸味と塩気を担う。
最後にトウガラシの熱が来ます。
ブールが無味なので、この一皿にすべての味が集まっている構造です。

02ぬめりは、食器の代わりです
フランス語版Wikipediaは、ダラバについてはっきりこう書いています。「これはオクラのソースではない。ここでオクラはソースとしてではなく、はるかに調味料(増粘剤)として使われている」。
理由は食べ方にあります。
手でちぎった主食に、親指でくぼみを作って、ソースをすくう。
さらさらの汁では、主食から落ちてしまう。
ぬめりがあるからこそ、ソースが主食に絡んで口まで届く。
つまりこの粘りは、スプーンやフォークの代わりに働いています。


語源はわかりませんでした
「daraba」がチャド・アラビア語なのか、サラ語系なのか、それ以外なのか、本調査では特定できませんでした。
チャド・アラビア語の darab(打つ・叩く)との関連を推測したくなりますが、根拠がないので書きません。
「〜語で〜という意味」と書けるだけの資料がない、というのが現状です。



第 二 章
落 花 生
なぜ粘りと油が同時に要るのか
03落花生ペーストが担っているもの
ダラバのもう一つの柱が、落花生のペーストです。
オクラが粘りを与え、落花生が脂とコクを与える。
この二つが揃うと、無味の主食に対して十分な情報量を持つソースになります。
落花生を炒って挽いたペーストは、西・中部アフリカのソースに広く使われる基礎材料です。
サツマイモは煮崩れて自然なとろみと甘みを足す役割で、これも粘度に効いています。
乾燥トマトは酸と塩気を担当します。


オクラはソースではない。ここでオクラは、ソースとしてよりはるかに、調味料として使われている。フランス語版Wikipedia「Daraba (ragoût)」(要旨)
04種類を並べてみる
ブールに添えられるソースは、ダラバのほかにも複数記録されています。



05失敗する六つの場所
一、生オクラを刻んで長く煮る。ぬめりが壊れて水っぽくなります。
二、乾燥オクラの粉を一度に入れる。ダマになって溶けません。
三、落花生ペーストを煮立てすぎる。油が分離します。
四、サツマイモを入れる時期が早すぎる。完全に溶けて姿が消えます。
五、塩をソース側で決めきらない。主食が無味なので、ここで決めないと料理全体が味を失います。
六、粘度を最後まで見ない。冷めると粘りが強く出るので、鍋の中でちょうどよいと固すぎになります。


06いくらで食べられるか
ダラバの一皿の価格は見つかりませんでした。
以下は原料の価格で、WFP(国連世界食糧計画)が公表している調査値です。
07どこで食べるか
チャドは全土が日本国外務省の危険情報レベル3以上です。
首都ンジャメナを含む地域がレベル3(渡航中止勧告)、国境地帯・ラク州・チャド湖周辺がレベル4(退避勧告)。
全土に多数の地雷・不発弾が残存しているとも記されています。
したがって現地で食べることを前提にした案内は書けません。
材料はすべて日本で手に入ります。乾燥オクラはアフリカ・インド食材店、落花生ペーストは無糖のピーナッツバターで代用できます。
ブールと合わせれば、行けない国の食卓が台所で再現できます。

08豆知識
オクラの粘りの正体は、ペクチンなどの多糖類が水と結びついたものです。
この粘りは加熱と酸で壊れるため、酢やレモンを早い段階で入れると消えます。
西アフリカのオクラソースが酸を後入れするか、そもそも入れないのは、粘りを守るためでもある。
「ぬめりが食器」であるなら、それを壊す調味料は入れられません。
写真はすべて Wikimedia Commons より。各画像の作者とライセンスは以下のとおりです。
- 01/Boule avec sauce de gombo sec en plus "cawal" (Tchad)3.jpg / Abdeldjelil Souleyman / CC BY-SA 4.0
- 02/Boule avec sauce de gombo sec en plus "cawal" (Tchad)2.jpg / Abdeldjelil Souleyman / CC BY-SA 4.0
- 03/Sauce tagalié.jpg / Abdallahbigboy / CC BY-SA 4.0
- 04/Gombos sec ou Djoungblé.JPG / COHNANT / CC BY-SA 4.0
- 05/Djoumgblé ou poudre de gombo sec.jpg / BorisAhonon / CC BY-SA 4.0
- 06/Gombo sec 1.jpg / Cca Raheem / CC BY-SA 4.0
- 07/Cacahouète à base d’arachide.jpg / YACOUB DOUNGOUS / CC BY-SA 4.0
- 08/Les étapes de la préparation de la sauce djougblé 01.jpg / Kalissa Mamayimbé kir / CC BY 4.0
- 09/Les étapes de la préparation de la sauce djougblé 05.jpg / Kalissa Mamayimbé kir / CC BY 4.0
- 10/Les étapes de la préparation de la sauce djougblé 09.jpg / Kalissa Mamayimbé kir / CC BY 4.0
- 11/Les étapes de la préparation de la sauce djougblé 12.jpg / Kalissa Mamayimbé kir / CC BY 4.0
- 12/Les étapes de la préparation de la sauce djougblé 15.jpg / Kalissa Mamayimbé kir / CC BY 4.0
- 13/Sauce d’oseille ou karkandji spécialité de la cuisine traditionnelle tchadienne.jpg / Remadjiepiphanie / CC BY-SA 4.0
- 14/Coupe d’oinons.jpg / Abdeldjelil Souleyman / CC BY-SA 4.0
- 15/Exposition de la province du Tandjilé.jpg / Yacoub D. / CC BY-SA 4.0

