世界の料理図鑑 セネガル
マフェ
mafé マフェ Mafé
落花生は南米原産。ポルトガル人が持ち込み、フランス植民地が大量栽培した。マフェは丸ごとグローバル史の産物だ。
無糖のピーナッツバターとトマトで肉と野菜を煮込む。日本人には「甘くないピーナッツバターのカレー」に近い印象ですが、砂糖は入りません。
ひと口目は濃厚な焙煎ピーナッツの香りと油分。トマトの酸とブイヨンの塩気が後から効いてきて、唐辛子の辛さが遅れて舌の奥に残ります。
食感はぽってりと重い、スプーンから落ちない粘度。よく煮えたものは表面に赤い油の層が浮く——これが「できた」の合図です。
- 国・地域
- マリ起源。セネガル、ガンビア、ギニアビサウ、コートジボワール等に伝播
- 分類
- 煮込み(落花生ベース)
- 相場
- 1,000〜10,000CFAフラン(約280〜2,800円)
- 主な材料
- 無糖ピーナッツバター、牛・羊・鶏、玉ねぎ、ニンニク、トマトペースト、キャベツ、ニンジン、サツマイモ、オクラ、カボチャ
- 辛さ
- 唐辛子が遅れて来る
- 食べる場所
- ダカールのタンガナ、レストラン
- ベスト時間
- 昼。ダカールでは曜日で献立が決まっている店も多い
- 一人前の目安
- 大皿を数人で。白米にかける
- 食べ方
- 右手で。米とソースを指で団子にして親指で口へ
- 近い料理
- ティガデゲナ(マリ)、ドモダ(ガンビア)、グラウンドナッツスープ(ガーナ)
01一口目に来るもの
色は薄い茶色。表面に赤い油の層が浮いています。これが浮いていれば、よく煮えている証拠です。
ひと口目は濃厚な焙煎ピーナッツの香りと油分。日本人には「甘くないピーナッツバターのカレー」に近い印象ですが、砂糖は一切入りません。
トマトの酸とブイヨンの塩気が後から効いてきて、唐辛子の辛さが遅れて舌の奥に残る。
食感はぽってりと重い。スプーンから落ちません。肉は骨から外れるほど柔らかく、キャベツやサツマイモが煮汁を吸ってほろほろに崩れています。

02ピーナッツバターは先に溶かす
作り方の要点は一つに尽きます。ピーナッツバターを鍋に直接落とすとダマになる。先に温かいブイヨンで溶き伸ばしてから加えるのが鉄則です。
ピーナッツバターは無糖・無添加の粗挽き(100パーセント落花生)。加糖タイプを使うと甘くなりすぎて別料理になります。
手順は、肉を焼き付ける→玉ねぎ・ニンニクを炒める→トマトペーストを油が分離するまでよく炒める→ピーナッツバターを加えて完全に溶かし込む→ブイヨンを加えて5〜7分煮て乳化させる→野菜を加えて30分。合計1時間15分から20分。
焦げやすいので、加えてからは鍋底をこすりながら混ぜ続ける。煮詰めすぎると油が分離しすぎてボソボソになります。
セネガルでは仏領インドシナ由来のヌクマム(魚醤)を隠し味に使う家庭もあります。


落花生は西アフリカ原産ではない
ここがこの料理のいちばん面白いところです。落花生は新大陸原産。大航海時代にポルトガル人が西アフリカに持ち込んだものです。
つまりマフェは数百年以内の料理。「太古からの伝統料理」ではありません。
1840年代、ボルドーのフランス商人がセネガル河谷とティエス地域で落花生の商品作物栽培を始め、ティエス/シン・サルーム/カオラック/カザマンスが「落花生ベルト」になりました。1924年にダカールが主要輸出港に整備され、サンルイ・ゴレ・リュフィスクの旧港は後退します。
この植民地プランテーション経済が、落花生を「輸出品」から「日常の食材」に変えた。
第 二 章
落 花 生 ベ ル ト
南米原産の作物が、植民地経済を経て「西アフリカらしさ」になった
03名前はティガデゲナ
ブリタニカは「マリで生まれ、植民地期に落花生の増産努力とともにセネガル・ガンビアへ広がった」と記述しています。
マンディンカ/バンバラ系の料理としてはティガデゲナ(tigadegena)が本来の名。語構成は tige(落花生)+ dege(ペースト)+ na(ソース)=「ピーナッツバターのソース」。名前がそのまま作り方です。
英語版ウィキペディアは、マリのティガデゲナがマンディンカ人・バンバラ人の間で発達し、セネガル版のマフェはそれより後の植民地期のものとします。
ブリタニカは民族名まで踏み込んでいないので、「マンデ系(バンバラ・マンディンカ)の料理として発達した」と書くのが安全なところです。


tige(落花生)+ dege(ペースト)+ na(ソース)。マリでの本来の名前、ティガデゲナ。名前がそのまま作り方になっている
04種類を並べてみる
国境をまたいで、名前と作り方が少しずつ変わります。



05いくらで食べられるか
マフェ単品の2026年の公表価格は確認できませんでした。以下は食事水準としての目安です。
ダカールのタンガナでは曜日で献立が決まっており、マフェは月曜または木曜に出る店が多いと言われます(現地の慣習で、公式な出典はありません)。
06どこで食べるか
ダカール:シェ・ルチャ(101 Rue Moussa Diop, Plateau)はマフェが看板料理として明記されています。ル・レストラン・デュ・サントル(79 Rue El Hadji Mbaye Gueye)、ル・ビドゥ(89 Rue Joseph Gomis)も。
サンルイ:ラ・ランゲール。
食べ方は大皿を囲んで右手で手食。米とソースを右手の指で軽く握って団子にし、親指で口へ押し込みます。自分の正面だけ。中央の肉には勝手に手を出さず、年長者が分けるのを待つ。
落花生アレルギーの人には絶対に出せない一皿です。西アフリカでは落花生アレルギーの有病率が欧米より著しく低いとされ、料理文化の前提が違います。


07豆知識
落花生は西アフリカ原産ではない。南米原産の作物がポルトガル人経由で入り、フランス植民地経済で大量栽培され、そして「西アフリカらしさの象徴」になった。マフェは丸ごとグローバル史の産物です。
西アフリカで最も国境を越えた料理。セネガル、ガンビア、マリ、ギニアビサウ、コートジボワール、ガーナで名前と作り方を変えて存在します。アメリカの「アフリカン・ピーナッツシチュー」の元ネタもこれ。
ウガンダにも同系のピーナッツシチューがある。エキニェーブワと呼ばれ、木の器で供されます。落花生を煮る発想はアフリカ大陸に広く分布しています。
近くの棚から 同じセネガルのもう一品
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- 01/Mafé senegal.jpg / JN PICTURE / CC BY-SA 4.0
- 02/GroundNut 2.jpg / Dev ammar / CC BY-SA 4.0
- 03/Sauce d’Arachide 03.jpg / Akouete / CC BY-SA 4.0
- 04/Domoda Senegal.jpg / Marshiayers / CC BY-SA 4.0
- 05/Mafé de poisson.jpg / Arnaud 25 / CC0
- 06/Mafé au poulet pané.jpg / FloGalsen / CC BY 4.0
- 07/Mafé domoda Resto-UCAD 05.jpg / Adamplume / CC BY-SA 4.0
- 08/Mafé domoda Resto-UCAD 07.jpg / Adamplume / CC BY-SA 4.0
- 09/Mafé domoda Resto-UCAD 10.jpg / Adamplume / CC BY-SA 4.0
- 10/Mafé domoda Resto-UCAD 16.jpg / Adamplume / CC BY-SA 4.0
- 11/Mafé domoda Resto-UCAD 23.jpg / Adamplume / CC BY-SA 4.0

