カルヤランピーラッカ
カレリアのピーラッカKarelian pasty
ライ麦の生地を向こうが透けるほど薄く延ばし、粥をのせ、縁をつまみ寄せて舟にする。250〜300℃で15〜20分。皮はぱりっと、中はしっとり。1686年に記録された東の国境の家庭料理が、いまはEUの名称保護つきでフィンランド中のパン屋に並ぶ。
概要 ― 皮が三分の一、粥が三分の二
上面の開いた、やや平たい塩味のパイ。大きさはふつう7〜20cm。皮は薄く、ぱりっとしていて、重さの比率は皮が約三分の一、詰め物が約三分の二。
カルヤランピーラッカを初めて見た人はたいてい、これを「パイ」と呼んでよいのかどうかで少し迷う。蓋がない。パイ皮特有の層もない。あるのは、向こう側が透けそうなほど薄く延ばしたライ麦の生地と、その上に無造作に広げられた白い粥、そして粥の側へ折り込まれて細かくひだを寄せられた縁だけである。舟のかたちをしていて、真ん中が開いている。焼き上がりは楕円が普通だが、丸いものもある。
EUに登録された公式の製品仕様書は、この姿をきわめて素っ気なく定義している。「開いた、やや平たい塩味のパイで、薄い皮と、詰め物を入れた中心部からなる。大きさは通常7〜20cm。形は楕円が普通だが丸いこともある。皮は上面が開いている。皮の縁は詰め物の側へ折り込まれ、ひだが寄せられる。皮はぱりっとしている」。
そして最後に、この料理の構造を一行で言い切る規定が続く。「皮は製品全体のおよそ三分の一、詰め物がおよそ三分の二を占める」。つまりカルヤランピーラッカは、器としてのライ麦がぎりぎりまで削られ、中身が主役になるように設計された食べ物だということになる。成形前の皮は直径または長さ10〜24cmに延ばす。そこから縁を折り込むので、焼き上がりはひと回り小さくなる。
面白いことに、仕様書には重さの規定が一切ない。何グラムでなければならない、という縛りがないのである。決められているのは寸法と比率と焼成条件、そして「ほとんど透けるほど薄く延ばす」という、数値化を放棄した一文だけだ。この料理を守っているのは重量計ではなく、手つきなのだということが、公式文書そのものから伝わってくる。

皮は薄く、粥は縁からぎりぎりまで。焼き目のついた粥と、つまみ寄せられた縁のひだ。


焼きたてを器に重ねたところ(左)/フィンランドのスーパーマーケットでは、こうして山積みで売られている(右)。
味と特徴 ― ぱりっとした皮と、みずみずしい中身
公式に保証されている官能特性はふたつだけ。薄い皮が生む「ぱりっと(rapeus)」と、高温短時間の焼成が守る「みずみずしさ(mehevyys)」。その対比がこの料理のすべてである。
一口目は、たいてい端からくる。縁のひだはいちばん薄く、いちばん強く火が当たる場所なので、噛むと乾いたライ麦がぱきりと割れる。香ばしいというより、乾いている。ライ麦の粉っぽい匂いが鼻に抜ける。ところがそのまま奥へ噛み進めると、二口目で急にやわらかくなる。牛乳で炊いた粥が、まだ湯気を抱えたまま舌に広がる。この落差がカルヤランピーラッカの正体である。
EUの仕様書は、この対比を珍しく熱心に説明している。「皮の薄さがカルヤランピーラッカのぱりっとした食感を生む」。そして「速い焼成と高温が、製品のみずみずしさを保つために不可欠である」。さらに踏み込んで「高温と短時間焼成がぱりっとした皮を作り、それによってカルヤランピーラッカの味に影響する」とまで書く。焼成条件そのものが味の定義に組み込まれている食品は、そう多くない。
伝統的な食べ方は、熱いうちにムナヴォイ(munavoi=卵バター)を塗ることだ。固ゆで卵を細かく刻み、バターと塩を混ぜた、粗い粒の残るペーストである。軽くするためにカテージチーズを加えることもある。冷たい塩気のあるバターが熱い皮の上で溶け、卵の粒が粥のなめらかさに引っかかりを作る。ムナヴォイは戦中戦後の物不足の時代に、貴重なバターをかさ増しする必要から生まれたとされている。
塩については、意外にも長いあいだ曖昧だった。生地には塩を入れると明記されていたが、詰め物の粥に塩をしてよいかどうかは書かれていなかったのである。これが正式に認められたのは2019年の仕様変更のときだ。そしてサヴォンリンナの市場(Kauppatori)では、上に小さな塩漬けのムイック(muikku)を一尾のせて売っている。パイに魚がのる。カレリアではそれが不自然ではない。


ムナヴォイ(卵バター)はガラス鉢ごと食卓に置かれ、各自が熱いパイに塗る(左)/たっぷりのせた状態(右)。

皿に並べたカルヤランピーラッカと、奥に控えるムナヴォイ。これがフィンランドの朝食の基本形。
皮の薄さがぱりっとした食感を生み、速い焼成と高温がみずみずしさを保つ。EU製品仕様書 TSG-FI-0015(2019年改正版)より
材料と産地 ― 水と塩とライ麦粉、それだけ
皮の材料は水・塩・ライ麦粉(または小麦粉)の三つだけ。粉275〜350gに水200g。詰め物は大麦か米の粥、あるいはマッシュポテト。
皮に入るものは、水と塩と粉だけである。油脂は入らない。卵も入らない。仕様書は分量まで示していて、生地には粉およそ275〜350gと水200gを使う。粉はライ麦粉または小麦粉。なお「ライ麦50%以上」という規定が世間には広く流布しているが、これはEUの登録仕様書には存在しない。公式文書が定めているのは「水、塩、ライ麦粉または小麦粉」という三語だけだ。
詰め物は「大麦挽き割りまたは米の粥、あるいはマッシュポテト」が基本で、代替としてカブカンラン(lanttu)、にんじん、カブ、キャベツ、きのこのマッシュも認められている。粥の配合も具体的だ。水、牛乳、または乳糖不使用ミルク飲料を1リットル(1kg)沸騰させ、米または大麦の挽き割り2dl(180g)を混ぜる。米の粥は0.5〜1時間、大麦の粥はそれより長く炊く。
詰め物の歴史的な順序ははっきりしている。最も古いのは大麦とタルックナ(talkkuna=挽き割り穀物の粉)である。カルヤラン・リート(カレリア連盟)の資料も「ピーラッカの詰め物には主に大麦が使われた」と述べている。19世紀にじゃがいもが入り、次いでそばの実、さらに後に米とキビが加わった。いま日本人が「カレリアパイ」と聞いて思い浮かべる白い米の粥は、この系列のいちばん新しい層にあたる。
フィンランドにおける大麦栽培の最古の痕跡は紀元前4200年までさかのぼる(ヘルシンキ大学)。じゃがいも栽培の開始は1720年代末。米は1600年代にはすでに輸入されていたが、当時は富裕な身分層しか買えず、地方の商店に並んで庶民の手に届くようになったのは1800年代である。つまり「米のカルヤランピーラッカ」は、フィンランドの田舎が世界市場につながった証拠でもある。
ライ麦は現在もフィンランドの食糧供給で4番目に重要な穀物で、2024年の人間用消費は1人1日あたり約40g。パンとして、クリスプブレッドとして、そしてこのパイの皮として、ライ麦はこの国の食卓から消えたことがない。



フィンランドのライ麦パン各種(左)/市場に積まれた新じゃがいもとにんじん。詰め物の代替材料として仕様書に明記されている(中)/ライ麦のサワードウの種。パンには使うが、ピーラッカの皮は無発酵(右)。

詰め物の粥を炊くところ。液体1リットルに挽き割り2dl(180g)、米なら30分から1時間。
作り方 ― 250〜300℃で15〜20分
生地を「ほとんど透けるほど」薄く延ばし、縁から1〜2cm内側まで粥を広げ、縁を折り込んでひだを寄せ、250〜300℃で15〜20分。この三つは検査対象である。
公式の手順はこうだ。まず詰め物の粥を炊く。水と塩と粉で皮生地を作る。生地を「できるだけ薄く、ほとんど透けるほど(nearly translucent)」の丸または楕円に延ばす。皮の上に詰め物を、縁から1〜2cm内側まで広げる。縁を詰め物の側へ折り込み、ひだを寄せ(rypytys)、中央は開いたままにする。約250〜300℃のオーブンで15〜20分焼く。焼き上がり直後、または温め直したあとに、バター、油、水と牛乳の混合、ときに卵を塗る。
このうち三つ――「縁を折り込んでひだを寄せ、中央を開けたままにすること」「10〜24cmに薄く延ばすこと」「250〜300℃で15〜20分焼くこと」――は、仕様書が伝統的製法の決定的要因(determining factors)として名指しした項目であり、製造施設は製造工程でこれを確認する義務を負う。つまりこの三つを外した瞬間、それはもうカルヤランピーラッカと名乗れない。
逆に、日本語のレシピ本でよく強調される事柄の多くは、EUの法的要件ではない。生地を休ませる工程、めん棒(kaulin)やピーラッカ板(piiraslauta)の使用、皮の厚さのミリ単位の指定、ひだの本数。これらは家庭やコンテストの流儀であって、仕様書には一行も書かれていない。ムナヴォイの卵とバターの比率も同様で、公的な規定はない。
家庭で焼こうとすると、いちばんの難所は温度である。250〜300℃は家庭用オーブンの上限に近い。そして15〜20分という短さは、火力が足りないと皮が乾いて硬くなるだけで、ぱりっとはならないことを意味する。この料理は、パンを焼いたあとの窯がまだ猛烈に熱い、その短い時間に滑り込ませるために設計されている。


米の粥は牛乳で炊き、冷ましてから皮にのせる(左)/焼き上がったものに卵バターをのせた状態。丸型のものも仕様上は正規(右)。

ラドガ・カレリアのソルタヴァラ(現ロシア領)のカフェで焼かれたカルヤランピーラッカ。国境の向こう側でも同じものが焼かれている。
歴史と由来 ― 1686年の記録と、42万人の避難民
最初の文献記録は1686年。17〜18世紀に東フィンランドへ伝わり、第二次世界大戦でカレリアを追われた約42万人の避難民とともに、フィンランド全土とスウェーデンへ広がった。
EUの仕様書は、珍しく歴史記述を自分の中に抱え込んでいる。「皮と詰め物からなる伝統的なピーラッカ型の焼き物は、カレリアからシベリア、中国に至る地域に記録がある。カレリアはその地域の北西の縁にあたる」。つまりこれは北欧の料理というより、ユーラシア北部に広く分布する「薄い皮に粥を抱かせる」技法の、いちばん西の端なのだという位置づけである。
そのうえで仕様書はこう続ける。「カレリアで作られた各種のピーラッカのうち、楕円形で上面が開いたものが、カレリア外に広まるにつれて『カルヤランピーラッカ(カレリアのピーラッカ)』と呼ばれるようになった」。名前そのものが、故郷を離れたときに付いた名前なのだ。カルヤランピーラッカに関する最初の文献記録は1686年である。
決定的だったのは第二次世界大戦だった。フィンランドは講和でカレリア地峡とラドガ・カレリアを失い、そこに住んでいた人々が国内へ移された。この避難民をフィンランド語でシーリュトヴァキ(siirtoväki)またはエヴァッコと呼ぶ。総数は約42万人、当時のフィンランド人口のおよそ12%にあたる。彼らは全国に分散して定住させられ、それとともにカルヤランピーラッカ、カルヤランパイスティ(カレリア風シチュー)、きのこを食べる習慣、川魚の料理が西フィンランドにも根づいた。
ロシア側では同じものがカリートキ(калитки)と呼ばれている。カレリア語・リュディ方言で kalitt / kalitta、ヴェプス語で kalitk、オロネツ・カレリア語で šipainiekku。語源は古ロシア語の kalita(財布・巾着)で、中身の入った巾着に似た外見からとされる。カレリア共和国のほか、アルハンゲリスク州、ヴォログダ州、レニングラード州、ノヴゴロド州、ムルマンスク州の北ロシア料理、そしてヴェプス料理の伝統料理として生きている。
カレリアは長いあいだ、ルター派とロシア正教という二つの宗教が出会う場所だった。カルヤラン・リートは「カレリアが二つの文化、二つの宗教の出会う場所に位置したことが、豊かな料理体系を生んだ」と述べている。国境が何度も引き直された土地の食べ物が、いまフィンランドで最も国民的なパイになっているというのは、考えてみればかなり劇的な話である。
【古写真】ロシア・カレリア共和国メドヴェジエゴルスク地区クルゲニツィ村の伝統的カレリア家屋。撮影年は不詳、ラルス・ペッテションによる記録写真。


ラドガ・カレリアの木造建築を模して1986年に建てられたパリッカラのレストラン。失われた土地の建築は、こうして国境のこちら側で再現された(左)/【写真は冬】凍った湖に落ちる夕日。カレリアの冬(右)。
保護制度 ― 2003年、EUの伝統的特産品保証(TSG)
1998年に申請、2002年に官報公告、2003年2月19日の委員会規則(EC)No 317/2003で登録。名称そのものが排他的に保護され、仕様に外れるものは riisipiirakka と名乗るしかない。
手続きの経緯は一次資料ですべて追える。申請番号は S/FI/00015/98.09.21。完全な申請書の受理日は2001年2月9日。申請者は北カレリア農村センター(ヨエンスー)で、所管官庁は農林省だった。申請は理事会規則(EEC)No 2082/92 第8条(1)に基づき、官報 OJ C 102(2002年4月27日、14〜15ページ)に公告された。
そして2003年2月19日、委員会規則(EC)No 317/2003 によって正式に登録される。官報 OJ L 46(2003年2月20日、19ページ)。署名は当時のフランツ・フィシュラー委員。現行のEU番号は TSG-FI-0015、分類はクラス2.24。軽微変更 TSG-FI-0015-AM01 が2019年5月8日に承認され、改正後の仕様書が OJ C 434(2019年12月27日、25ページ)に公告されている。
重要なのは、この登録が「名称の留保」を伴っていることだ。申請書の第5項に「第13条(2)に基づく留保の申請=Yes」とある。つまり karjalanpiirakka という語そのものが排他的に保護されている。仕様に適合しない製品は、リーシピーラッカ(riisipiirakka=米パイ)、ペルナピーラッカ(perunapiirakka=じゃがいもパイ)などと名乗らなければならない。フィンランドでは2009年5月1日以降、包装に「aito perinteinen tuote(真正伝統製品)」の表記またはEUロゴが必要になった。
そして執行は、決して形式的なものではない。フィンランド食品庁(ルオカヴィラスト)が2011年末に実施した全国調査では、115か所を調べ、うち70か所がカルヤランピーラッカを製造または冷凍生地から焼成していたが、仕様に適合していたのはわずか21.4%だった。多くは名称をリーシピーラッカに変更するよう命令・勧告されている。名前を守るとはこういうことだ、という手触りのある数字である。
2019年の改正は、現代の事情に合わせたものだった。乳糖不使用ミルク飲料、粉乳、乾燥ポテトフレークが正式に材料として認められ、詰め物への塩の使用も明記された。背景には、小規模ベーカリーが乳糖不使用ミルクを使うと「カルヤランピーラッカ」と名乗れなくなるという問題があり、公共放送Yleはこれを「長年のカルヤランピーラッカ戦争」と報じていた。
カルヤランピーラッカに言及した最古の記録。
当時のフィンランド人口の約12%。全国に分散定住した。
食品庁が115か所を調査。製造70か所中、規定に適合したのはこれだけ。

工場生産のカルヤランピーラッカ。ひだの間隔が機械的に整っているのが手仕事との違い。
【図版】1940年刊行のフィンランド経済地図 10万分の1、ヨエンスー103号図。申請者である北カレリア農村センターが置かれた町の、戦時下の地図。
115か所を調べ、製造していた70か所のうち、仕様に適合していたのは21.4%だった。フィンランド食品庁「2011年のカルヤランピーラッカ名称保護監視のまとめ」
食べる場面 ― 10月20日は「ピーラッカの日」
かつては祝いの席のための焼き物だったが、2010年代初頭に小売店内の焼成コーナーが普及してから、焼きたてが日常の買い物になった。
フィンランドでは10月20日が「ピーラッカの日(Piirakkapäivä)」とされ、パン情報協会(Leipätiedotus)が広報している。同協会の整理はこうだ。「以前はピーラッカは主に祝いの席のために焼かれたが、今では日常でも祝いでも食べられる」「カルヤランピーラッカとカクテルピーラッカは祝いの食卓の塩味の主役であり、甘いピーラッカはコーヒーの席に合う」「日常では具をのせて一食にも、さっとつかんで軽食にもなる」。
この「日常化」を決定づけたのは、意外にも小売の設備投資だった。同協会は、2010年代初頭にスーパーの店内焼成コーナー(paistopiste)が普及したことが、カルヤランピーラッカとリーシピーラッカの成功にとって決定的だったとしている。冷凍生地を店で焼く。だから焼きたてが、毎日、どこでも買える。あのぱりっとした皮は、鮮度の勝負なのである。
カレリアの伝統では、ピーラッカは宴(pidot)の食べ物だった。婚礼、洗礼、葬儀、誕生日。出産祝いのロティナット(rotinat)には、ピーラッカやリンゲリ、バター、卵を持参する習慣があった。ヨエンスーの市場では、マルタ会が夏季の平日に毎日実演で焼いていて、子ども向けの「ピーラッカ学校」も週に一度開かれている。
なお、フィンランド人1人あたりの年間消費個数、スーパーでの販売数量、代表的な製造業者のシェアと価格帯については、今回の調査では信頼できる一次・二次資料を確認できなかった。数字が出回ってはいるものの、出典をたどれるものが見つからないため、ここには書かない。


市の売り台に籠ごと並ぶピーラッカ(左)/ヘルシンキ、ハカニエミ広場の夏の市。2023年7月(右)。

ヨエンスーの夏至祭の焚き火(2024年)。カレリアの祝祭にはピーラッカがつきものだった。
広がり ― カリートキ、シパイニエック、そして「8つを求める」
ロシア北部ではカリートキ、エストニアでは Karjala pirukas、スウェーデンでは finska piroger。ロシア側のカリートキは丸・楕円・四角・五角・六角、ときに七角形まで作る。
ロシア・カレリア共和国のカリートキは、フィンランドの楕円形一辺倒と違って、形が驚くほど多様である。丸、楕円、四角、五角、六角、さらには七角形まである。ヴェプス人のカリートキは丸形で、マッシュポテト、キビの粥、あるいはスメタナと tolokno(焙煎オーツ粉)を詰める。アルハンゲリスク州のものは丸形のみで、じゃがいも詰め、ライ麦粉または2等小麦粉の薄い sochen(生地)を使う。
作り方の違いも面白い。ロシア側では生地をスメタナやプロストクワーシャ(発酵乳)で練り、直径20〜30cmに延ばす。フィンランドの「水と塩だけ」とは対照的だ。一方で、炉やオーブンで10〜20分焼き、焼き上がりに熱いうちバターを塗るところは同じである。近縁の料理としてヴァトルーシュカ(ватрушка)、シャニガ(шаньга)、ウドムルトのペレペチ(перепеч)が挙げられる。
エストニアでは Karjala pirukas として知られる。スウェーデンには避難カレリア人とともに伝わり、日常語では「finska piroger(フィンランドのピロシキ)」と呼ばれている。国境線が動くたびに、この小さなパイも一緒に引っ越してきたわけである。
カレリアにはこんなことわざがある。「Kalittoa kyzyy kaheksoa(カリートカは8つを求める)」。カリートカを焼くには8つの要素、すなわちライ麦粉、水、発酵乳、塩、牛乳、バター、スメタナ、そして詰め物が要る、という意味だ。エストニア語でも同じことわざが引かれる。たった3つの材料で皮を作る料理が、完成までには8つを求める。
競技会も実在する。カルヤラン・リート伝統委員会が全国ピーラッカ選手権(valtakunnalliset piirakkamestaruuskilpailut)を開催していて、直近は2026年6月13日にオウルで行われた。部門は vunukat(8〜11歳)、16〜25歳、女子、男子、そしてVIP戦に分かれる。2026年のVIP戦には主教セルゲイ、ファッションデザイナーのアントレア・カンタコスキ、俳優のアンニナ・ロッカらが出場し、連盟評議会議長のサーラ・ポウリが優勝している。
Karjalanpiirakkaカルヤランピーラッカ
楕円・上面開放
水と塩とライ麦粉の皮。米または大麦の粥。2003年TSG登録。
Калиткиカリートキ
丸〜七角形
生地を発酵乳で練る。じゃがいも、キビ、スメタナ+焙煎オーツ粉。
Karjala pirukasカルヤラ・ピルカス
楕円
同系の薄皮パイ。同じことわざが伝わる。
finska pirogerフィンスカ・ピロゲル
楕円
戦後の避難カレリア人とともに伝わった呼び名。


オフラリエスカ(大麦の平焼きパン)に卵バターをのせたもの。大麦はピーラッカの最も古い詰め物でもある(左)/南カレリア、パリッカラの夏。ヴァーランマキの塔から(右)。

北カレリアの中心都市ヨエンスー。ルター派教会と正教会が同じ町に建つ。1998年の登録申請は、この町から出された。
基本情報
- 料理名
- カルヤランピーラッカ(karjalanpiirakka)/英 Karelian pasty
- 地域
- フィンランド(起源はカレリア地方)。ロシア・カレリア共和国では калитки
- 分類
- 上面の開いた塩味の薄皮パイ。主食・軽食・祝いの食べ物
- 大きさ
- 焼き上がり 通常7〜20cm/成形前の皮 10〜24cm
- 皮の材料
- 水・塩・ライ麦粉(または小麦粉)のみ。粉275〜350gに水200g
- 詰め物
- 大麦または米の粥、マッシュポテト。液体1L(1kg)に挽き割り2dl(180g)
- 焼成
- 250〜300℃で15〜20分(EU仕様書の検査対象)
- 保護制度
- EU 伝統的特産品保証(TSG)。登録=委員会規則(EC) No 317/2003、2003年2月19日。EU番号 TSG-FI-0015、クラス2.24
- 名称の留保
- あり。仕様外の製品は riisipiirakka/perunapiirakka と名乗る必要がある
- 最古の記録
- 1686年
- 添えるもの
- ムナヴォイ(munavoi=固ゆで卵+バター+塩)
- 記念日
- 10月20日「ピーラッカの日(Piirakkapäivä)」
この料理と一緒に読む
出典
- Commission Regulation (EC) No 317/2003 of 19 February 2003(カルヤランピーラッカをTSGに登録した委員会規則。官報 OJ L 46, 20.2.2003, p.19)
- Amended product specification TSG-FI-0015-AM01(OJ C 434, 27.12.2019, p.25)(現行の製品仕様書全文。寸法・温度・時間・分量の最新版)
- 申請公告 OJ C 102, 27.4.2002, pp.14–15(申請番号 S/FI/00015/98.09.21、申請者、製法、分量を記した原典)
- Ruokavirasto「2011年のカルヤランピーラッカ名称保護監視のまとめ」(115か所調査・適合率21.4%・EUロゴ義務化日(2009年5月1日)の公式報告)
- Ruokavirasto「Karjalanpiirakoita nyt myös laktoosittomina」(2020年1月24日)(2019年軽微変更の申請者・経緯・追加材料を当局が説明したニュース)
- Leipätiedotus「Piirakkapäivä」(10月20日のピーラッカの日、店内焼成コーナーの影響、名称保護の解説)
- Karjalan Liitto「Piirakkamestaruus」(全国ピーラッカ選手権)(2026年オウル大会の部門と結果)
- Karjalan Liitto「Karjalainen keittiö」(カレリア料理における穀物利用と、二宗教の交点という位置づけ)
- Wikipedia(フィンランド語)「Siirtoväki」(カレリアからの避難民 約42万人・人口の12%という数字)
- Wikipedia(ロシア語)「Калитки」(kalita語源、ヴェプス・北ロシアでの分布、「8つを求める」ことわざ)
写真(25枚)
- 1. Karjalanpiirakka-20060227.jpg / Jarno Elonen / Public domain / 原典
- 2. Karjalanpiirakka.png / Tiia Monto / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 3. Karjalanpiirakka 2011.jpg / Dmitry Rozhkov / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 4. Karjalanpiirakka in a supermarket.jpg / Apinanaivot / CC0 / 原典
- 5. Karjalanpiirakka with egg butter.jpg / Olivia Fries / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 6. Munavoi (egg butter) and Karelian pasties.jpg / kahvikisu(Kangasala, Finland) / CC BY 2.0 / 原典
- 7. Two Karelian pastries with egg butter at home.jpg / JIP / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 8. Karelian pasties and egg butter.jpg / kahvikisu(Kangasala, Finland) / CC BY 2.0 / 原典
- 9. Sortavala CafeRiviera KarelianPasty 007 4762.jpg / Ludvig14 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 10. Brunssimeiningit (9182756145).jpg / Dodo from Finland / CC BY 2.0 / 原典
- 11. Karjalanpiirakka tehdas.jpg / Paul Lenz / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 12. Ohrarieska.JPG / Tommi Nummelin / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 13. Finnish sour dough starter mix – 1.jpg / Hellahulla / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 14. Cooking rice porridge.jpg / Tiia Monto / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 15. Rice porridge – mixed fruit soup.jpg / Tiia Monto / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 16. Market Square in Helsinki – DSC03921.JPG / Daderot / CC0 / 原典
- 17. Ruisleipä-limppu reikäleipä reissumies hapankorppu-1.JPG / Hellahulla / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 18. Vaaranmäki view.JPG / SeppVei / Public domain / 原典
- 19. Karelia Landscape.jpg / Tybo2 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 20. Parikkala Kagöne.jpg / BishkekRocks / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 21. Pettersson-0293.jpg / Lars Pettersson / Public domain / 原典
- 22. 35927220 Taloudellinen kartta, 1940, karttalehti 103 Joensuu (4).jpg / Maanmittauslaitos(フィンランド国土測量局) / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 23. Midsummer in Finland, Joensuu 2024.jpg / AAT / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 24. Joensuu montage.jpg / Niera / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 25. Sales tents at Hakaniemi Market Square on a sunny afternoon in July 2023.jpg / JIP / CC BY-SA 4.0 / 原典
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