
ソイ
Xôi
炊かずに蒸す。だから、粒が立ったまま
ソイはもち米を蒸したものだ。水に浸したもち米を、底に穴のあいた甑に入れて、湯気だけで火を通す。炊かないので水っぽくならず、粒が一つずつ立ったまま、もちっとくっつく。この作り方が、ベトナムの朝ごはんの一角を占めている。
売り方はいたって簡素だ。歩道に大きな籠を置き、布をかぶせて保温しておく。客が来たら、必要なぶんをすくって、バナナの葉か紙に広げ、上に具をのせて包む。20,000ドンほど渡して受け取り、そのままバイクにまたがっていく。
南部でよく見かけるのはソイマン(xôi mặn)——塩気のあるほうだ。中華ソーセージのラップスオン、練りもの、豚のでんぶ、うずらの卵、揚げエシャロット、青ねぎ油。ご飯というより、小さな弁当に近い。
北部にはソイセオ(xôi xéo)がある。蒸した緑豆をかたまりにして、包丁で薄く削ってもち米の上に散らし、揚げエシャロットをかける。具はそれだけで、豆と米の味だけで成り立っている。
祝いの席では色をつける。ガックという赤い果実で染めたソイガック、紫の葉で染めたソイラーカム、北西部の少数民族の五色のソイ。同じ蒸したもち米が、日常の朝ごはんにも、祭壇の供えものにもなる。
皿の解剖

北部のソイセオ写真は塩気のあるソイマン。南部の屋台でいちばん多い形で、中華ソーセージと練りもの、豚のでんぶがのる。
一口目
味
米は淡く、具が全部を決める
蒸しただけのもち米には、ほとんど味がない。ほんのり甘い程度だ。だから味は上にのるものが決めていて、中華ソーセージの甘い脂、練りものの塩気、揚げエシャロットの香ばしさが、そのまま一口の印象になる。
食感
粒が立って、もちっと
炊いた米と違って、水を吸いすぎていない。粒が一つずつ立っているのに、噛むともちっとくっつく。冷めても固くなりにくいので、包んで持ち歩いても大丈夫なのはこのおかげだ。
一口目
混ぜずに、上の層から
包みを開けたら、混ぜずに上の層からすくうといい。具と米の比率が変わっていくのが分かる。途中で油と青ねぎを全体に混ぜると、そこから先は別の味になる。


一包みができるまで
前の晩からもち米を水に浸けておく。芯まで水を含ませておかないと、蒸したときに固いところが残る。
浸す時間が足りないと、粒の中心が白く残る
2水を切って、底に穴のあいた甑に入れる。土製のものと金属製のものがあり、下の鍋の湯気だけで火を通す。
炊くのではなく、蒸す。ここが普通の米と違う
330分ほど。途中で一度ほぐして、湯気の通りをよくする。色をつけるときは、染めた水に浸してから蒸す。
金属の甑は軽くて熱が回りやすい籠に移して布をかけ、保温しておく。注文が入るたびにすくって、バナナの葉か紙に広げ、具をのせて包む。
包む形も店ごとに少しずつ違う炊く米と、蒸す米
nếpとtẻ
ベトナム語では、もち米をnếp、うるち米をtẻと呼び分ける。ソイに使うのはnếpのほうで、これを蒸したものがソイ。
底に穴のあいた甑
chõと呼ばれる甑を使う。土製のものが古くからあり、いまは金属製が多い。下の鍋の湯気だけで火を通す。
ソイセオ
蒸した緑豆をかたまりにして薄く削り、もち米にかける。「xéo」は削ぐという意味の言葉から来ていると説明される。
ソイマン
中華ソーセージ、練りもの、豚のでんぶ、うずらの卵。具が多く、小さな弁当のようになる。屋台の主力。
色をつける
ガックの実で赤く染めたソイガックは結婚式や旧正月に。北西部の少数民族には五色に染めたソイがある。
ベトナム語では、もち米をnếp、うるち米をtẻと呼び分ける。フォーもブンもバインベオも、材料はすべてtẻのほうだ。ソイだけがnếpを使う。しかも炊くのではなく蒸す。この二点で、ソイはベトナムの米料理のなかでちょっと違う位置に立っている。
道具はchõという甑だ。底に穴が開いていて、下の鍋で沸かした湯の蒸気だけで火を通す。写真の土製のものは古くからある形で、いまは軽くて熱の回りやすい金属製が主流になった。水に浸したもち米を入れて30分ほど。炊かないので水を吸いすぎず、粒が一つずつ立ったまま仕上がる。
北のソイセオは、具の少なさが特徴だ。蒸した緑豆をぎゅっと固めてかたまりにし、包丁で紙のように薄く削って、もち米の上に散らす。そこへ揚げエシャロットと油。それだけ。豆と米だけで成立している食べもので、ハノイの朝の露店ではこれが定番になっている。
南へ来ると、包みの中がにぎやかになる。中華ソーセージのラップスオン、練りもの、豚のでんぶ、うずらの卵、鶏肉。ホーチミンの歩道で「XÔI」と書かれた籠を見かけたら、たいていこの塩気のあるほうだ。ご飯というより、紙に包んだ小さな弁当を買っている感覚に近い。
そしてソイには、もう一つの顔がある。赤いガックの実で染めたソイガックは結婚式と旧正月の食べもので、祭壇にも供えられる。北西部の山あいでは、植物で五色に染め分けたソイが祝いの席に出る。日常の朝ごはんと、儀式の供えもの。同じ蒸したもち米が、その両方をやっている。


ソイは種類が非常に多く、地域と場面で中身も呼び方も変わる。ここに書いたのは、ホーチミンの歩道で朝によく見る形を中心にしている。
食べに行く前に
注文のことば
朝の食べもの。昼前には売り切れる屋台が多いので、早い時間に。籠に布がかかっているのが、まだ温かい印。
値段と覚え書き
| 歩道の一包み | 15,000〜25,000 VND約90〜150円 |
| 具だくさんのソイマン | 25,000〜45,000 VND約150〜270円 |
| 具の追加 | 5,000〜15,000 VND約30〜90円 |
- mặn=塩気のある、ngọt=甘い。南部の屋台はたいてい前者
- xôi xéo=緑豆と揚げエシャロット、xôi gà=鶏、xôi gấc=赤いもの
- 朝が本番。昼前に売り切れる屋台が多い
- バナナの葉で包んでもらうと、紙より匂いがいい。ただし店による
- 冷めても固くなりにくいので、持ち歩いて食べるのに向いている
- 「gói(ゴイ)」は包みを数える言葉。二包みなら「hai gói」
値段は2026年9月時点の目安。1,000ドン=約6円で換算。営業時間・価格・閉店は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- Wikipedia tiếng Việt「Xôi」 作り方・種類・地域による違い
- Wikimedia Commons「Category:Xôi」 各種のソイと蒸し器の写真
写真の出典(7枚)
写真は個別ページのライセンスに従います。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。
- バナナの葉の上に円くまとめたもち米。上にほぐした鶏肉と揚げエシャロットがのっている|Yuichi Kosio/CC BY 2.0/2007年撮影・明るさ調整あり(原典)
- 白いもち米に、赤い中華ソーセージの薄切り、練りもの、きゅうり|Viethavvh/CC BY-SA 4.0/2015年撮影・明るさ調整あり(原典)
- バナナの葉に包まれたもち米の上に、削った緑豆と揚げエシャロット。ハノイのソイセオ|Viethavvh/CC BY-SA 4.0/2015年撮影・明るさ調整あり(原典)
- 紫・赤・黄・白・橙に染め分けたもち米を、市松に並べたもの|Khương Việt Hà/パブリックドメイン/撮影年不明・明るさ調整あり(原典)
- 底に穴のあいた土製の甑を上から見たところ|Hungda/CC BY-SA 4.0/2013年撮影・明るさ調整あり(原典)
- くびれた形の金属製の甑。ふたが乗っている|Hungda/CC BY-SA 4.0/2013年撮影・明るさ調整あり(原典)
- もち米に緑豆を混ぜて蒸したもの|Hoangkid/CC BY-SA 4.0/2016年撮影・明るさ調整あり(原典)
装飾
紙・テープ・手描きの下線・提灯ガーランドなどの装飾は、ユーザー提供の素材パック htnv-decor-user-pack-01〜04 から切り出して使用。
写真はCCライセンス6枚、パブリックドメイン1枚。7枚すべて明るさ・彩度・コントラストを調整している。トリミング・合成はしていない。撮影地はベトナム各地で、ホーチミンとは限らない。


