
キュネフェ
Künefe/Antakya KünefesiHot cheese dessert with shredded pastry
糸状の小麦生地テル・カダユフにバターを含ませ、塩抜きしたチーズを挟んで両面を焼き、熱いシロップをかけるトルコ南部ハタイ県の菓子。焼きたてを出し、チーズが糸を引く状態で食べる。「アンタキヤ・キュネフェシ」の名で2008年に地理的表示が登録されている。
糸のような生地でチーズを挟み、焼いてシロップを吸わせる
外は香ばしく、中は溶けて糸を引くチーズ。焼きたてを食べる菓子である。
キュネフェ(Künefe)は、テル・カダユフ(tel kadayıf)と呼ばれる細い糸状の小麦生地を使う菓子である。バターをなじませた生地を平たい金属の皿に敷き、チーズをのせ、さらに生地をかぶせて火にかける。底が色づいたら返して反対側も焼き、熱いシロップを注いで仕上げる。
アンタキヤ・キュネフェシの登録仕様では、完成品は厚さ約1〜2cm。熱いうちに食べ、チーズが繊維状に伸びることまで特徴に挙げられている。丸い皿に広がる焼き面の下に、柔らかなチーズが隠れている。
ハタイ県のアンタキヤと結びつく菓子であり、イスタンブールなど他都市でも食べられる。地域名の付いた登録品には、材料や作り方の条件がある。写真は各地の盛り付け例で、その一皿が登録条件に適合する認証品だと確認したものではない。

熱いシロップ、溶けたチーズ、焼けた生地の三層
甘いシロップの中に、チーズの乳の香りが重なる。生地とチーズの食感も対照的だ。
表面と底は、バターで焼かれた糸状の生地がかりっとした層になり、その内側にシロップがしみた柔らかい層、さらに中心に溶けたチーズの層が続く。フォークを入れると、中のチーズが糸を引いて伸びる。
シロップは砂糖と水を煮たもの。チーズは新鮮なキュネフェ用のもの、または保存のために塩漬けしたものを水で塩抜きして使う。登録仕様は塩を除く手順を記しており、強い塩味を加える料理として説明するのは適切ではない。
ピスタチオを散らした盛り付け、カイマクやアイスクリームを添えた例も写真で見られる。熱い菓子に冷たいアイスクリームを合わせると、温度も対照的になる。トッピングの量や形は写真の一例で、すべての店に共通する決まりではない。

熱いうちに、チーズが伸びるうちに。香ばしい糸状生地を割ると、溶けたチーズ。甘いシロップと乳の香りが重なる。
1kgの生地に750gのチーズ、300gのバター
地理的表示の仕様は、材料の配合からシロップの比率まで定めている。
ハタイ商工会議所が掲載するアンタキヤ・キュネフェシの仕様では、材料はテル・カダユフ1kg、キュネフェ用チーズ750g、バター300g、シロップ1リットルとされる。シロップは白砂糖60%と水40%を煮立て、結晶化を防ぐためにレモン汁を加えて作る。
テル・カダユフは、小麦粉を水でゆるく溶いた生地を専用の器具から細い筋にして、回転する熱い円盤の上に落として作る。仕様によれば、生地は15〜25秒ほどで乾いて糸状になる。キュネフェの食感はこの生地の細さと乾き具合に左右されるため、専門の生地職人から仕入れる店が多い。
チーズは、作りたての生のものと、塩水に漬けて保存したものがあり、後者は飲料水で塩抜きしてから使う。このキュネフェ用チーズ自体も「アンタキヤ・キュネフェリク・ペイニリ(Antakya Künefelik Peyniri)」として2021年12月22日に地理的表示登録(登録番号979)されている。バターは乳脂肪80〜90%のものと定められている。


2008年の国内登録、2023年のEU登録
一般名キュネフェと、地域の登録名Antakya Künefesiを分けて読む。
トルコ特許商標庁の登録簿では、Antakya Künefesiは2008年9月5日登録、番号101。制度上の種類はMahreç İşaretiで、地域との結びつきを保護する地理的表示である。キュネフェという一般名と、条件が定められた地域の登録名は同じではない。
同庁は、2023年3月13日にEUでも地理的表示として登録されたと報告している。これは菓子を作り始めた年ではなく、地域名を保護する制度上の記録だ。古いクナーファの起源物語と、現在確認できる登録の年月日は分けて考えたい。

Antakya Künefesi、2008年登録
トルコ特許商標庁の報告は3月13日
ハタイの加盟年

ハタイの食文化を伝える甘味
ハタイは2017年にユネスコ食文化創造都市へ。キュネフェも地域の文化を伝える。
ユネスコの都市紹介は、ハタイを中東、アナトリア、地中海の食文化が交わる地域として説明する。料理を紹介する催しの中にはキュネフェの祭りも挙げられ、甘味が地域の食文化を伝える役割を担っている。
トルコ大統領府通信局は2026年6月、ハタイで報道関係者が文化芸術市場でEU登録のキュネフェの製作を見学したと報告した。登録名は一覧表の中だけにあるものではなく、現地の食と技術を紹介する場でも使われている。


チーズのキュネフェ、クリームのクナーファ
糸状の生地が似ていても、間に挟む乳製品は同じとは限らない。
アンタキヤの登録仕様が指定するのはキュネフェ用のチーズだ。一方、レバントのクナーファにはクリームを挟む型もある。写真のクナーファ・ヒシュネは、原典でアシュタ(キシュタ)入りと説明されている。白い層だからといって、すべてをチーズと呼ぶことはできない。
キュネフェにカイマクを上から添える盛り付けと、クリームを生地の間に挟む菓子も違う。上にのせるものと中に挟むものを見比べると、同じ糸状生地を使う甘味の違いがよく分かる。


基本情報
- 国・地域
- トルコ南部ハタイ県(アンタキヤ)。南東部各地と全国の菓子店に広がる
- 現地名
- Künefe。地理的表示名はAntakya Künefesi
- 分類
- 糸状生地とチーズの焼き菓子(シロップ漬け)
- 主な材料
- テル・カダユフ、塩抜きしたキュネフェ用チーズ、バター、砂糖シロップ
- 仕上げ
- 刻みピスタチオ。カイマクやアイスクリームを添える店もある
- 地理的表示
- アンタキヤ・キュネフェシ(登録番号101、2008年)、アンタキヤ・キュネフェリク・ペイニリ(979、2021年)
- 食べ方
- 焼きたてを熱いうちに。チャイやトルココーヒーと
- 近縁の型
- チーズを使うクナーファ、クリームを挟むクナーファ
出典
- トルコ特許商標庁「Antakya Künefesi」(国内登録番号101、2008年、Mahreç İşareti)
- 同庁「Antakya Künefesi」登録仕様PDF(材料、厚さ、作り方、チーズとシロップの条件)
- 同庁「Antakya Künefelik Peyniri」(キュネフェ用チーズの2021年登録、番号979)
- 同庁「Antakya KünefesiのEU登録」(2023年3月13日の登録報告)
- UNESCO「Hatay」(2017年加盟、食文化とキュネフェの催し)
- トルコ大統領府通信局「ハタイのEU登録キュネフェを報道関係者に紹介」(2026年6月の製作見学の報告)
- Wikipedia(英語)「Knafeh」(クリームを挟む近縁の型。材料の比較に使用し、起源の年代の根拠にはしない)
写真(11枚)
- 1. 刻んだピスタチオをたっぷりのせたキュネフェ。糸状の生地が焼けて黄金色になっている / Sudharsan.Narayanan / CC BY 2.0 / 原典
- 2. 円形の皿で焼き上げたキュネフェ。中央にピスタチオを盛る / Basak / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 3. 切り分けたキュネフェの断面。焼いた生地の間に白いチーズが挟まる / elif ayse / CC BY 2.0 / 原典
- 4. アンカラの店でキュネフェを仕込むところ / E4024 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 5. シャンルウルファでキュネフェ用の糸状生地(テル・カダユフ)を扱う職人 / Dosseman / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 6. タルススで出されたキュネフェ / Basak / CC0 / 原典
- 7. アイスクリームをのせたキュネフェ(ヴィースバーデン) / Gerda Arendt / CC0 / 原典
- 8. イスティクラル通りのキュネフェ店 / R Flores / CC BY 2.0 / 原典
- 9. チャイと並べたキュネフェ / Sandstein / CC BY 3.0 / 原典
- 10. カイマク(乳脂のクリーム)を添えたキュネフェ / E4024 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 11. クナーファ・ヒシュネの断面。糸状生地の間にアシュタ(キシュタ)のクリームを挟む / 白と赤茶 / CC BY-SA 4.0 / 原典
写真ごとの原典・作者・CC利用条件を確認。各地の盛り付けと製作の例で、登録規格に適合する認証品とは確認していません。掲載用に縮小・WebP圧縮し、表示時に自然な明るさを整えています。

