
メネメン
MenemenTurkish eggs with tomato and pepper
オリーブ油で青唐辛子とトマトを煮て、卵を加えてやわらかく火を通すトルコの卵料理。両手付きの小鍋サハンのまま食卓に出し、パンですくって食べるのが一般的で、名前はイズミル県の町メネメンに由来するとされる。
トマトと青唐辛子の中で、卵をやわらかく固める
トルコの朝食に欠かせない、鍋ごと出す卵料理。
メネメンは、トマトとピーマン類に卵を合わせ、鍋の中でやわらかく仕上げるトルコの料理だ。赤い野菜の汁と黄色い卵が混ざり、パンですくえるほどの濃さになる。Go Türkiyeは、朝食で囲む卵料理として紹介し、銅の鍋で出す例や、白チーズ、カシャルチーズを加える例も挙げている。
卵の仕上げ方は一つではない。文化観光省のレシピは野菜の中にくぼみを作って卵を落とし、白身が固まるまで弱火で加熱する。最後に卵を野菜へ混ぜる作り方もあると説明している。スクランブルエッグに近い皿と、黄身の輪郭が残る皿が、同じ料理名で並ぶ。
小鍋のまま出すと、底に残ったトマトの汁までパンで受け止められる。朝食の主役になるが、朝だけの料理ではない。文化観光省は、西部で親しまれる夏の料理として、昼食や夕食にピラフやジャジュクと出す例も紹介している。

黒いフライパンで仕上げたメネメン。赤いトマトの中に卵の黄色が残る。
トマトの汁気と半熟の卵を、パンで受け止める
味の中心はトマトの酸味と甘み。卵はそれをまとめる役である。
メネメンの味は、よく熟したトマトの酸味と甘みが土台になる。トマトを煮詰めすぎず汁気を残すため、仕上がりはふんわりした卵がトマトのソースに浸かった状態になり、鍋の底にたまった汁をパンにしみ込ませて食べる。
青唐辛子は辛みよりも青い香りとほろ苦さを加える材料として使われることが多く、辛さは品種と量で変わる。仕上げに赤唐辛子のフレーク(プル・ビベル)を振ると、香ばしさと穏やかな辛みが加わる。
イスタンブールの朝食では、チーズ、オリーブ、トマトやきゅうり、小皿に分けたジャムなどが食卓を埋める。Go Türkiyeの朝食案内も、こうした皿とメネメン、チャイの組み合わせを紹介する。一品を大きく食べるだけでなく、パンをちぎり、小さな皿を順番に味わう楽しさがある。

パンで、鍋の底まで。赤いトマトの汁とやわらかな卵。パンをちぎり、少しずつすくって味わう。
材料は少ないが、トマトと唐辛子の扱いで表情が変わる
地理的表示の登録では、オリーブ油・トマト・玉ねぎ・唐辛子・卵・塩・黒こしょうが挙げられる。
主役は卵、トマト、ピーマン類、油。玉ねぎを加える作り方もある。文化観光省のレシピは玉ねぎと青いピーマン類を油で炒め、刻んだトマトを加えてから卵を落とす。塩と黒こしょうが、野菜と卵の輪郭を整える。
一方、地理的表示の登録原本に載る「Menemen Menemeni」は、オリーブ油、トマト、玉ねぎ、ピーマン類、卵、塩、黒こしょうの七つで作る。トマトの半分をすりおろし、残りを細かく切り、汁気を残す点が特徴。白身はソースの中で火を通し、黄身はやわらかく残す。町の名を冠したこの型は、全国のすべてのメネメンを示す一つのレシピではない。
材料写真には、卵、トマト、赤いピーマン類、玉ねぎ、葉物のハーブ、腸詰め、チーズなどが並ぶ。登録原本の七材料だけを写した写真ではなく、具を足す家庭の作り方の例として見たい。Go Türkiyeも、チーズや加工肉を足して食べ応えを増すものを紹介している。

イズミル県の町の名前が、そのまま料理名になった
料理名はエーゲ海側の町メネメンに由来するとされ、2024年に同名の地理的表示が登録された。
メネメンは、トルコ西部イズミル県の地区の名前でもある。メネメン市は、町の料理文化と結びつく一皿として紹介し、地元のオリーブ油、トマト、ピーマン類などを使うことを説明している。料理を知ると、地名としてのメネメンにも目が向く。
登録原本には、肉とトマトを使う煮込みで肉を卵に替えたことから生まれた、という由来が記されている。これは登録資料が伝える説明で、具体的な発明年や一人の発明者を確定する記録ではない。少ない材料の卵料理にも、土地の煮込み料理の記憶が重なる。
文書で確認できる節目は、2023年1月25日の申請と、2024年2月26日の地理的表示登録である。申請者はメネメン市、登録番号は1546。種類は原本で「Mahreç İşareti」とされている。町と料理の結びつきを示す登録として、材料と仕上げ方を具体的に知ることができる。


2月26日。申請者はメネメン市
Menemen Menemeni。種類はMahreç İşareti

玉ねぎを入れるか、入れないか。それだけで話が弾む
2018年の投票は約43万7千人が参加したと報じられた。身近な卵料理が、大きな話題になった。
メネメンの話になると、玉ねぎを入れるかどうかで意見が分かれる。野菜を炒める順番も、卵をどこまで混ぜるかも、家庭ごとの好みがある。シンプルな料理だからこそ、小さな違いがよく見える。
料理評論家ヴェダット・ミロルは2018年8月、Twitterで玉ねぎ入りか、玉ねぎなしかを尋ねる投票を行った。8月25日のCumhuriyetの記事は、約43万7千人が参加したと報じている。これは全国民を対象にした調査ではないが、朝の一皿について大勢が語るきっかけになった。
メネメン市の地理的表示の材料には玉ねぎが入る。一方、一般名のメネメンは、朝食店や家庭でそれぞれの形を持つ。地域名付きの登録と、日々の食卓の好みを分けて読むと、どちらが正しいかだけで終わらない。チーズをのせる、パンを添える、飲み物を変えるなど、皿の楽しみ方も広がる。


スジュクの卵料理、チュルブル。朝の卵を食べ比べる
卵を使っても、トマト、腸詰め、ヨーグルトで別の料理になる。朝食の卓に並べると違いがよく分かる。
トルコの朝食には、メネメン以外にも卵を主役にした料理がある。スジュクル・ユムルタは、香辛料を利かせた牛肉の腸詰めスジュクと卵を焼くもの。Go Türkiyeは、スジュクをバターと合わせ、弱火で卵に火を通す料理として紹介している。
チュルブルは、ポーチドエッグをニンニク入りヨーグルトに合わせ、唐辛子入りのバターをかける料理。同じ卵でも、メネメンのトマトの汁とは違い、ヨーグルトの酸味となめらかさが中心になる。名前だけを見て同じ料理と思わず、卵を受け止める土台を見て選びたい。
メネメンには白チーズやカシャルチーズを足す例もある。パンやスィミットにのせると、トマトと卵のまとまりを、皮の香ばしさやゴマの風味と一緒に味わえる。小鍋の卵料理を、パン、チーズ、オリーブ、紅茶の食卓へつなぐことが、トルコの朝食を知る入り口になる。

基本情報
- 国・地域
- トルコ。地域名付きの登録はイズミル県メネメン
- 現地名
- Menemen
- 分類
- トマトとピーマン類、卵を合わせる鍋料理
- 食べるとき
- パンやスィミットで野菜の汁と卵をすくう
- 卵の形
- 混ぜてまとめるもの、黄身の形を残すものがある
- 追加する具
- 白チーズ、カシャルチーズ、加工肉など
- 地理的表示
- Menemen Menemeni、1546号、2024年登録
- ほかの卵料理
- スジュクル・ユムルタ、ヨーグルトと合わせるチュルブル
出典
- TÜRKPATENT「Menemen Menemeni」(登録番号と申請者)
- TÜRKPATENT 登録原本(1546号)(材料、製法、由来の記載、登録日、Mahreç İşareti)
- メネメン市「Menemen yemeği artık resmen Menemen’e ait!」(町の料理文化と地理的表示)
- Go Türkiye「5 Turkish Breakfast Dishes to Try」(朝食のメネメン、具の追加、スジュクル・ユムルタとチュルブル)
- Go Türkiye「Turkish Breakfast Culture in Istanbul」(朝食の小皿、卵料理、パン、紅茶)
- トルコ文化観光省「Egg With Vegetables(Menemen)」(材料、卵を落とす製法、昼食や夕食の例)
- Cumhuriyet(2018年8月25日)玉ねぎ入り・なしの投票記事(約43万7千人が参加したという当時の報道)
写真(10枚)
- 1. 白い皿に盛ったメネメン。卵、トマト、ピーマン類を合わせ、パセリをのせた例。 / Paul Keller / CC BY 2.0 / 原典
- 2. 黒いフライパンで仕上げたメネメン。トマトの汁気の中に卵が半熟で残る / Joe Lanman / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 3. メネメンの材料写真。卵、トマト、赤いピーマン類、玉ねぎ、ハーブ、腸詰め、チーズなど。登録レシピとは別の作り方の例。 / Joe Lanman / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 4. 両手鍋サハンに入ったメネメン / E4024 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 5. 料理名の由来とされるイズミル県メネメンの町並み / Ahmet Gürsakal / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 6. アンタルヤ旧市街のカフェで出されたメネメン / Sharon Hahn Darlin / CC BY 2.0 / 原典
- 7. パンを添えたメネメン。トマトと卵を大きめにまとめた盛り付け / やましこ / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 8. チーズをのせたメネメン(ペイニルリ・メネメン) / E4024 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 9. アイランを添えたメネメン / E4024 / CC BY-SA 4.0 / 原典
- 10. スィミットや野菜と並ぶ朝食のメネメン / Kars Alfrink / CC BY 2.0 / 原典
写真ごとの原典・作者・利用条件を確認して掲載。登録レシピと、撮影された店や家庭の作り方は区別しています。掲載用に縮小・WebP圧縮し、表示時に自然な明るさ・コントラスト・彩度補正を用いています。

