若鶏を一羽使い、ナツメや高麗人参を合わせたサムゲタン。
韓国丸鶏の薬膳スープ

サムゲタン

삼계탕Whole young chicken stuffed with rice, ginseng and jujube, simmered

丸ごとの若鶏を煮た白いスープ。中にはもち米、周囲には高麗人参やナツメ。暑い季節に熱い料理を食べる文化と、近代に整った料理の姿が重なっている。

どんな料理?
01

丸ごとの鶏は、
中まで料理になっている。

鶏をほぐす前は、澄んだ、あるいは白く濁ったスープに一羽が収まっている。中のもち米を出して汁に合わせると、一つの鍋が鶏料理からやわらかなご飯の食事へと変わる。

古い滋養の料理という印象はあるが、現在のサムゲタンの形は比較的新しい。鶏の煮物の歴史と、高麗人参を入れた現在の一人前の鍋を分けて見ると、その成り立ちが見えてくる。

代表的なサムゲタンは、若鶏にもち米などを詰め、高麗人参、にんにく、ナツメとともに煮る料理。唐辛子の赤い味が主役ではなく、鶏のだしと具の香りで食べる。

鶏を切り分けてから煮る鍋とは違い、食卓で身をほぐし、中のもち米を出す楽しみがある。スープの色や濃さ、添える具は店ごとに変わる。

黒い器に丸ごとの鶏を入れたサムゲタン。

黒い器に丸ごとの鶏を入れたサムゲタン。 写真の出典

若鶏
一羽が一つの鍋に収まる、代表的な型。
もち米
鶏の中に詰め、煮汁を吸わせる。
高麗人参とナツメ
具として入れ、スープに香りを加える。
歴史
02

昔の鶏の煮物と、
いまのサムゲタン。

韓食振興院は、鶏を煮るペクスクの歴史をたどりながら、古い料理書の材料と現代のサムゲタンを区別している。高麗人参が入っていない古い鶏料理を、同じ名前で呼ぶわけにはいかない。

1934年の料理書では、人参の粉を使う鶏料理が紹介される。現在に近い形は1960年代に整い、1970年代に広く親しまれるようになったという説明がある。古い素材を使う料理でも、外食の定番としての姿は近代に育つ。

「鶏参湯」と呼ばれたものが、人参を先に置く「参鶏湯」へ変わったとも説明される。名前の順序にも、この料理で何が特別な材料と見なされたかが表れている。

副菜とともに出される、鶏のスープ。

副菜とともに出される、鶏のスープ。 写真の出典

鍋の仕組み
03

鶏を煮て、
中のもち米を育てる。

鶏に詰めたもち米は、煮ている間に水分と鶏の味を吸う。炊いた白ご飯を外から添えるだけの食事とは違い、鶏とご飯が同じ鍋で仕上がる。

高麗人参やナツメは、肉の周囲で煮て香りを加える。写真で木の根のような具が見えても、すべて同じ薬草だとは限らない。店によって使う材料を確認したい。

いくつもの鍋でサムゲタンを熱く仕上げるところ。

いくつもの鍋でサムゲタンを熱く仕上げるところ。 写真の出典

鶏を煮込み、熱いまま器ごと出す。

鶏を煮込み、熱いまま器ごと出す。 写真の出典

一羽の鶏の中にも、
おいしい仕掛けがある。

具の違い
04

白いスープの中に、
海の具が入ることも。

高麗人参と鶏の基本に、アワビ、きのこ、種実類などを加える店もある。海鮮入りは、標準の一羽の鶏に別の具を重ねた型として見たい。

済州島で提供された写真では、鶏にアワビなどが添えられている。地域で撮影されたからといって、島のサムゲタンがすべてこの型というわけではない。

半羽の料理や、緑豆、松の実などを使う店も紹介される。具の豪華さだけでなく、鶏、米、汁の割合がどう変わるかを見ると、食べ比べのポイントが分かる。

薬草などを合わせたサムゲタンの一例。

薬草などを合わせたサムゲタンの一例。 写真の出典

夏の食卓
05

暑い日に熱い鍋。
習慣を知って味わう。

韓国には、夏の初伏・中伏・末伏という伏日に、鶏の料理などを食べる習慣がある。熱いものを食べて夏を乗り切ろうとする文化の中で、サムゲタンはよく知られる料理になった。

食べるときは身を少しずつほぐし、中のもち米を汁と合わせる。匙で食べると、肉のやわらかさと、ご飯を含んだスープの変化が分かりやすい。

現在は夏だけの料理ではなく、年間を通じて出す専門店もある。季節の習慣を知りつつ、ひと鍋の中で鶏料理と米の食事がつながる構造を楽しみたい。

魚介やきのこを加えた、具だくさんのサムゲタン。

魚介やきのこを加えた、具だくさんのサムゲタン。 写真の出典

済州島で提供された、アワビを加えた鶏のスープ。

済州島で提供された、アワビを加えた鶏のスープ。 写真の出典

似た鶏料理
06

ペクスクとタッカンマリ。
鶏を煮る料理の違い。

鶏のペクスクは、鶏を煮て味わう料理。韓食振興院は、身を食べた後に汁で粥を作る食べ方にも触れている。サムゲタンの中へ米を詰める型とは、米を料理へ入れる形が違う。

タッカンマリは、1960年代の東大門で育った料理として紹介される。鶏にじゃがいもや餅などを合わせ、最後にカルグクスの麺を入れて食べる型がある。

一人前の若鶏に高麗人参ともち米を合わせるサムゲタン、大きな鶏を煮るペクスク、鶏と野菜の鍋へ麺を加えるタッカンマリ。どれも鶏の汁だが、具と食べ方は一つではない。

暑い季節の鶏料理という共通の文化を知りながら、米を詰めるか、粥にするか、麺を加えるかを見ると、サムゲタンの独自の仕組みが分かりやすい。

鶏をほぐしながら、スープとご飯を匙で食べる。

鶏をほぐしながら、スープとご飯を匙で食べる。 写真の出典

店と売り場
07

料理を出す場所と、
作る人の仕事。

ソウル、景福宮近くの土俗村の外観。

ソウル、景福宮近くの土俗村の外観。 写真の出典

土俗村で出されたサムゲタンの食卓。

土俗村で出されたサムゲタンの食卓。 写真の出典

2016年の末伏の日、土俗村の店先に並ぶ人々。

2016年の末伏の日、土俗村の店先に並ぶ人々。 写真の出典

人参より前の鶏料理
08

桔梗を使った鶏と、
粉の人参の記録。

古い『増補山林経済』に載る七香鶏は、サムゲタンに似た調理として紹介されるが、人参ではなく桔梗などを使う。形が似た料理があるからといって、現在のサムゲタンと同じ材料だったとするわけにはいかない。鶏を煮る料理の古さと、人参を主役にした現在の料理の成立は別である。

1934年の料理書に載る人参の粉の使い方と、現在の根の人参を鶏へ合わせる姿にも違いがある。高価な材料がどのように使われ、後に外食の定番へ広がるかという話は、料理の名前の順序の変化ともつながる。

現在の店には、半羽の鶏を使うパンゲタンや、魚介を加える型もある。一羽の若鶏を中心にした基本を知り、その後の型の幅を知ると、長い歴史を持つ鶏料理と近代の食堂の工夫の両方が見える。

土俗村の店先
09

景福宮近くの韓屋で、
一羽の鶏の料理を。

土俗村は、ソウル市の観光案内が1983年からの店として紹介するサムゲタンの食堂。景福宮近くの店先を写した写真では、韓屋の建物と店の看板を見ることができる。料理の器と食堂の外観を並べると、鶏の汁が実際に出される場所へつながる。

2016年の末伏に撮られた写真には、店先で待つ人々が写る。初伏、中伏、末伏という夏の節目と鶏料理の結びつきを伝える一場面であり、現在も毎日同じ列があると断定する写真ではない。季節の行事の料理が、都市の食堂の風景になる。

観光公社は、土俗村で人参、栗、なつめ、にんにくなどの材料を使う型を紹介する。一方で、全てのサムゲタンの汁が同じ配合ではない。鶏の中のもち米、汁の具、店の小皿を分けて見ると、名前が共通する一杯にも店の違いがある。

1羽若鶏一羽が鍋に収まる

丸ごとの若鶏を、澄んだか白く濁ったスープで煮る。

1人前一人前の鍋の形

高麗人参を入れた現在の一人前の鍋は比較的新しい。

丸鶏

Samgyetangサムゲタン

삼계탕

もち米を詰めた若鶏を高麗人参、にんにく、ナツメと煮る白いスープ。

牛骨

Seolleongtangソルロンタン

설렁탕

牛の骨を長く煮た白い汁。鶏ではなく牛で作る滋養の一杯。

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焼く鶏

Dakgalbiタッカルビ

닭갈비

切り分けた鶏を鉄板で野菜と炒める。煮る丸鶏とは加熱が違う。

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辛い汁

Yukgaejangユッケジャン

육개장

牛肉を裂いて赤い汁にする。唐辛子が主役でない白い鶏の汁と対照。

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基本情報

国・地域
韓国。暑い季節に熱い料理を食べる文化と結びつく
分類
丸ごとの若鶏を煮る薬膳のスープ
主な材料
若鶏、もち米、高麗人参、にんにく、ナツメ
味の軸
鶏のだしと具の香り。唐辛子の赤い味は主役ではない
調理
若鶏にもち米などを詰め、高麗人参、にんにく、ナツメとともに煮る
食べる場面
食卓で身をほぐし、中のもち米を出して汁と合わせる一人前の鍋
型・地域差
スープの色や濃さ、添える具は店ごとに変わる
現地名
삼계탕(Samgyetang)
記録・注記
鶏の煮物の歴史は古いが、高麗人参を入れた現在の形は比較的新しい

出典

写真(12枚)

  • 1. 若鶏を一羽使い、ナツメや高麗人参を合わせたサムゲタン。 / wizdata / CC0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 2. 黒い器に丸ごとの鶏を入れたサムゲタン。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service (Jeon Han) / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 3. 副菜とともに出される、鶏のスープ。 / Teemeah / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 4. いくつもの鍋でサムゲタンを熱く仕上げるところ。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 5. 鶏を煮込み、熱いまま器ごと出す。 / Charles Haynes / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 6. 薬草などを合わせたサムゲタンの一例。 / Andy Li / CC0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 7. 魚介やきのこを加えた、具だくさんのサムゲタン。 / 아사달 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 8. 済州島で提供された、アワビを加えた鶏のスープ。 / 채지형 (Chae Ji-hyung) / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 9. 鶏をほぐしながら、スープとご飯を匙で食べる。 / 채지형 (Chae Ji-hyung) / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 10. ソウル、景福宮近くの土俗村の外観。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service (Jeon Han) / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 11. 土俗村で出されたサムゲタンの食卓。 / Republic of Korea from Seoul, Republic of Korea / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 12. 2016年の末伏の日、土俗村の店先に並ぶ人々。 / Republic of Korea from Seoul, Republic of Korea / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。

写真は各原典で作者とライセンスを確認したものです。すべてサイト内に取り込み、本文では明るさ・彩度を控えめに補正して表示します。