
サムゲタン
삼계탕Whole young chicken stuffed with rice, ginseng and jujube, simmered
丸ごとの若鶏を煮た白いスープ。中にはもち米、周囲には高麗人参やナツメ。暑い季節に熱い料理を食べる文化と、近代に整った料理の姿が重なっている。
丸ごとの鶏は、
中まで料理になっている。
鶏をほぐす前は、澄んだ、あるいは白く濁ったスープに一羽が収まっている。中のもち米を出して汁に合わせると、一つの鍋が鶏料理からやわらかなご飯の食事へと変わる。
古い滋養の料理という印象はあるが、現在のサムゲタンの形は比較的新しい。鶏の煮物の歴史と、高麗人参を入れた現在の一人前の鍋を分けて見ると、その成り立ちが見えてくる。
代表的なサムゲタンは、若鶏にもち米などを詰め、高麗人参、にんにく、ナツメとともに煮る料理。唐辛子の赤い味が主役ではなく、鶏のだしと具の香りで食べる。
鶏を切り分けてから煮る鍋とは違い、食卓で身をほぐし、中のもち米を出す楽しみがある。スープの色や濃さ、添える具は店ごとに変わる。

黒い器に丸ごとの鶏を入れたサムゲタン。 写真の出典
- 若鶏
- 一羽が一つの鍋に収まる、代表的な型。
- もち米
- 鶏の中に詰め、煮汁を吸わせる。
- 高麗人参とナツメ
- 具として入れ、スープに香りを加える。
昔の鶏の煮物と、
いまのサムゲタン。
韓食振興院は、鶏を煮るペクスクの歴史をたどりながら、古い料理書の材料と現代のサムゲタンを区別している。高麗人参が入っていない古い鶏料理を、同じ名前で呼ぶわけにはいかない。
1934年の料理書では、人参の粉を使う鶏料理が紹介される。現在に近い形は1960年代に整い、1970年代に広く親しまれるようになったという説明がある。古い素材を使う料理でも、外食の定番としての姿は近代に育つ。
「鶏参湯」と呼ばれたものが、人参を先に置く「参鶏湯」へ変わったとも説明される。名前の順序にも、この料理で何が特別な材料と見なされたかが表れている。

副菜とともに出される、鶏のスープ。 写真の出典
一羽の鶏の中にも、
おいしい仕掛けがある。
白いスープの中に、
海の具が入ることも。
高麗人参と鶏の基本に、アワビ、きのこ、種実類などを加える店もある。海鮮入りは、標準の一羽の鶏に別の具を重ねた型として見たい。
済州島で提供された写真では、鶏にアワビなどが添えられている。地域で撮影されたからといって、島のサムゲタンがすべてこの型というわけではない。
半羽の料理や、緑豆、松の実などを使う店も紹介される。具の豪華さだけでなく、鶏、米、汁の割合がどう変わるかを見ると、食べ比べのポイントが分かる。

薬草などを合わせたサムゲタンの一例。 写真の出典
ペクスクとタッカンマリ。
鶏を煮る料理の違い。
鶏のペクスクは、鶏を煮て味わう料理。韓食振興院は、身を食べた後に汁で粥を作る食べ方にも触れている。サムゲタンの中へ米を詰める型とは、米を料理へ入れる形が違う。
タッカンマリは、1960年代の東大門で育った料理として紹介される。鶏にじゃがいもや餅などを合わせ、最後にカルグクスの麺を入れて食べる型がある。
一人前の若鶏に高麗人参ともち米を合わせるサムゲタン、大きな鶏を煮るペクスク、鶏と野菜の鍋へ麺を加えるタッカンマリ。どれも鶏の汁だが、具と食べ方は一つではない。
暑い季節の鶏料理という共通の文化を知りながら、米を詰めるか、粥にするか、麺を加えるかを見ると、サムゲタンの独自の仕組みが分かりやすい。

鶏をほぐしながら、スープとご飯を匙で食べる。 写真の出典
桔梗を使った鶏と、
粉の人参の記録。
古い『増補山林経済』に載る七香鶏は、サムゲタンに似た調理として紹介されるが、人参ではなく桔梗などを使う。形が似た料理があるからといって、現在のサムゲタンと同じ材料だったとするわけにはいかない。鶏を煮る料理の古さと、人参を主役にした現在の料理の成立は別である。
1934年の料理書に載る人参の粉の使い方と、現在の根の人参を鶏へ合わせる姿にも違いがある。高価な材料がどのように使われ、後に外食の定番へ広がるかという話は、料理の名前の順序の変化ともつながる。
現在の店には、半羽の鶏を使うパンゲタンや、魚介を加える型もある。一羽の若鶏を中心にした基本を知り、その後の型の幅を知ると、長い歴史を持つ鶏料理と近代の食堂の工夫の両方が見える。
景福宮近くの韓屋で、
一羽の鶏の料理を。
土俗村は、ソウル市の観光案内が1983年からの店として紹介するサムゲタンの食堂。景福宮近くの店先を写した写真では、韓屋の建物と店の看板を見ることができる。料理の器と食堂の外観を並べると、鶏の汁が実際に出される場所へつながる。
2016年の末伏に撮られた写真には、店先で待つ人々が写る。初伏、中伏、末伏という夏の節目と鶏料理の結びつきを伝える一場面であり、現在も毎日同じ列があると断定する写真ではない。季節の行事の料理が、都市の食堂の風景になる。
観光公社は、土俗村で人参、栗、なつめ、にんにくなどの材料を使う型を紹介する。一方で、全てのサムゲタンの汁が同じ配合ではない。鶏の中のもち米、汁の具、店の小皿を分けて見ると、名前が共通する一杯にも店の違いがある。
丸ごとの若鶏を、澄んだか白く濁ったスープで煮る。
高麗人参を入れた現在の一人前の鍋は比較的新しい。
基本情報
- 国・地域
- 韓国。暑い季節に熱い料理を食べる文化と結びつく
- 分類
- 丸ごとの若鶏を煮る薬膳のスープ
- 主な材料
- 若鶏、もち米、高麗人参、にんにく、ナツメ
- 味の軸
- 鶏のだしと具の香り。唐辛子の赤い味は主役ではない
- 調理
- 若鶏にもち米などを詰め、高麗人参、にんにく、ナツメとともに煮る
- 食べる場面
- 食卓で身をほぐし、中のもち米を出して汁と合わせる一人前の鍋
- 型・地域差
- スープの色や濃さ、添える具は店ごとに変わる
- 現地名
- 삼계탕(Samgyetang)
- 記録・注記
- 鶏の煮物の歴史は古いが、高麗人参を入れた現在の形は比較的新しい
出典
写真(12枚)
- 1. 若鶏を一羽使い、ナツメや高麗人参を合わせたサムゲタン。 / wizdata / CC0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 2. 黒い器に丸ごとの鶏を入れたサムゲタン。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service (Jeon Han) / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 3. 副菜とともに出される、鶏のスープ。 / Teemeah / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 4. いくつもの鍋でサムゲタンを熱く仕上げるところ。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 5. 鶏を煮込み、熱いまま器ごと出す。 / Charles Haynes / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 6. 薬草などを合わせたサムゲタンの一例。 / Andy Li / CC0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 7. 魚介やきのこを加えた、具だくさんのサムゲタン。 / 아사달 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 8. 済州島で提供された、アワビを加えた鶏のスープ。 / 채지형 (Chae Ji-hyung) / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 9. 鶏をほぐしながら、スープとご飯を匙で食べる。 / 채지형 (Chae Ji-hyung) / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 10. ソウル、景福宮近くの土俗村の外観。 / Korea.net / Korean Culture and Information Service (Jeon Han) / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 11. 土俗村で出されたサムゲタンの食卓。 / Republic of Korea from Seoul, Republic of Korea / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
- 12. 2016年の末伏の日、土俗村の店先に並ぶ人々。 / Republic of Korea from Seoul, Republic of Korea / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
写真は各原典で作者とライセンスを確認したものです。すべてサイト内に取り込み、本文では明るさ・彩度を控えめに補正して表示します。









