クリームソースをかけた二つのツェペリナイ。ひとつが切られ、挽き肉の詰め物が見えている

リトアニア本名はディジュククリャイ秋から冬の料理

ツェペリナイ

ディジュククリャイ(didžkukuliai)=本来の名Cepelinai (Lithuanian potato dumplings)

生のじゃがいもをすりおろして固く絞り、絞り汁を十数分置いて底に沈んだでんぷんを生地へ戻す。茹でたじゃがいもと合わせ、挽き肉を包み、紡錘形にして30分以上茹でる。かけるのはベーコンの脂とサワークリーム。名前は飛行船ツェッペリンに由来する。

まず、これが何なのか

01

概要 ― 飛行船の名がついた、リトアニアの国民食

すりおろした生のじゃがいもと茹でたじゃがいもを合わせた生地で挽き肉を包み、紡錘形に成形して茹でる。長さは10〜30センチ、1人前は1〜2個。

皿の上に、灰色がかった紡錘形の塊が二つ載っている。長さは手のひらほど。表面はつるりとして半透明に光り、その上に白いソースとベーコンの粒がかかっている。ナイフを入れると、生地はゴムのような抵抗をわずかに返してから切れ、中から挽き肉の詰め物が現れる。ツェペリナイ(cepelinai)である。

名前の由来は、そのままだ。フェルディナント・フォン・ツェッペリン伯爵の硬式飛行船。1900年に初飛行したあの細長い紡錘形に、この団子の形が似ている。だから20世紀のどこかで、人びとはこの料理を飛行船と呼びはじめた。

ただし、これは本名ではない。リトアニア語の本来の名はディジュククリャイ(didžkukuliai)。ディディス(didis=大きい)とククリス(kukulis=団子)で、「大きな団子」という、まったく素っ気ない名前である。単数形はディジュククリスとツェペリナス。

大きさは長さ10〜30センチと幅があり、西部のジェマイティヤ地方のほうが東部より大きい。1人前は1〜2個。2個食べるとまず動けなくなる。英語圏の記事はこの料理を「ニョッキとクヌーデルの中間、ただしどちらよりも重い」と書き、食べたあとに落ちる幸福な昏睡について言及する。収穫期の労働者を養い、リトアニアの冬を越すための食べ物なのだ。

白い皿にクリームソースとパセリをかけた紡錘形のツェペリナイ二つ

ツェペリナイ二つ。クリームソースとパセリ。ヴィリニュスのレストランにて。

木のテーブルに置かれたツェペリナイの皿と、奥のビールジョッキ縁の茶色い皿に、縦に切って挽き肉の詰め物を見せたツェペリナイとサワークリーム

ビールと一緒に(左)/縦に切って挽き肉の詰め物を見せたところ。ヴィリニュスのエトノ・ドヴァラス(右)。

どう作るのか

02

作り方 ― 絞り汁を捨てない

生のじゃがいも20個と茹でたじゃがいも10個。絞り汁を静置して底のでんぷんを回収し、生地へ戻す。この一手間がなければ、茹でたときに崩れる。

リトアニア公共放送LRTが出している標準的なレシピはこうだ。皮をむいた生のじゃがいも20個をすりおろす。茹でたじゃがいも10個を潰す。つまり生と茹での比率は2対1。そこへ卵1個、塩小さじ1、黒胡椒小さじ1。これで25〜30個できる。

問題は、すりおろした生のじゃがいもから出る大量の水分だ。布で強く絞る。ここで多くの人がやってしまうのが、絞り汁を流しに捨てることである。リトアニアではそれをしない。

絞り汁をボウルに取り、そのまま十数分置く。すると底に白いでんぷんが沈殿する。上澄みの水だけを静かに捨て、底に残ったでんぷんをすりおろしたじゃがいもへ戻す。これが天然の糊になり、茹でても形が崩れなくなる。LRTのリトアニア語版レシピにこの工程が明記されている。「でんぷんが落ち着くまで待たなければならない」。

品種も選ぶ。「でんぷん質の多い晩生種だけがツェペリナイに向く」。新じゃがでは作れない。だからこれは本来、秋から冬の料理である。

成形はテニスボール大の生地にゴルフボール大の詰め物を包み、両手で転がして紡錘形にする。茹でるときは必ず沸騰した湯に入れ、湯にも絞り汁のでんぷん水をコップ1杯加えると崩れにくい。茹で時間は大きさによるが、LRTのレシピでは30〜40分。英語圏のレシピには20分とするものもある。

白い鉢に山盛りになった、ソースをかける前の紡錘形のツェペリナイ

茹で上がったばかりのツェペリナイ。ソースをかける前は、この灰色がかった半透明の肌をしている。

2:1生のじゃがいもと茹でたじゃがいもの比率

LRTの標準レシピ(生20個:茹で10個)

30〜40分茹で時間

大きさによる。英語圏では20分とする例も

10〜30cm長さの幅

西部のジェマイティヤのほうが大きい

1〜2個1人前

2個でほぼ確実に満腹になる

白い皿に並んだ二つのツェペリナイと、添えられたサワークリーム白い皿に二つ並んだツェペリナイ。白いソースとディルがかかっている

サワークリームを添えて(左)/クリームソースとディルをかけて(右)。

中に何が入るのか

03

詰め物 ― 肉、カード、きのこ

挽き肉がいちばん一般的。ヴァルシケ(乾いたカッテージチーズ)は断食期の詰め物でもある。南部のジュキヤ地方では、秋はきのこが主役になる。

詰め物は大きく三つに分かれる。第一が挽き肉。豚か牛の挽き肉に玉ねぎのみじん切り、塩、胡椒。リトアニアのメディア15min.ltが載せている伝統レシピでは、牛挽き肉300グラムにカッテージチーズまたは茹でじゃがいも100グラムとサワークリームを混ぜる配合、豚挽き肉300グラムにサワークリームとマジョラムを合わせる配合が並んでいる。

第二がヴァルシケ(varškė)。乾いたカッテージチーズ、カードである。これに卵、サワークリーム、炒めたベーコン、バター、ミントかパセリを混ぜる。肉を食べない時期の詰め物としても重要だった。

第三がきのこ。塩漬けきのこ500グラムに燻製ベーコン、乾燥きのこの粉末、玉ねぎ、卵。南部のジュキヤ(Dzūkija)地方は森ときのこ狩りの土地で、秋は肉ではなくきのこ詰めが主流になる。英語版ウィキペディアはこれにレバー詰めを加えている。

そして重要なのは、詰め物が何であれ、上からかけるものはたいてい同じだということだ。次の章で書く。

青い縁取りの皿に盛られた、粒の立った白いカッテージチーズレースの上に置かれた、太い燻製肉の塊と二本の燻製ソーセージ

ヴァルシケ(農家のカッテージチーズ)。詰め物にもなる(左)/キンジュカス。豚の胃に肉を詰めて燻製・熟成させたもので、EUの伝統的特産品保証に登録されている(右)。

木の器に盛られたツェペリナイ。サワークリーム、ディル、ベーコンが添えられている

カウナスのレストランの一皿。木の器にサワークリーム、ディル、ベーコンが添えられている。

絞り汁は捨てない。十数分置いて、底に沈んだでんぷんを生地へ戻す。LRT(リトアニア公共放送)のレシピより

何をかけるのか

04

スパルガイ ― ベーコンの脂を、そのままかける

角切りのベーコンを弱火で炒め、溶け出した脂ごとかける。これがスパルガイ(spirgai / spirgučiai)。そこへ乳脂肪30〜40%のサワークリームをたっぷり。

スパルガイ(spirgai)、または指小形のスパルグチャイ(spirgučiai)。角切りにした脂身つきベーコン(lašiniai)を弱火でじっくり炒め、脂を出し、カリカリになった肉片と玉ねぎを、溶け出した脂ごとかける。ソースというより、脂そのものである。

そこへサワークリーム(grietinė)を添える。リトアニアのサワークリームは乳脂肪30〜40パーセントと非常に濃厚で、日本で売られているものよりずっと重い。現地の言い方はこうだ。サワークリームなしでは食べない、じゃないとベタつくから。

ヴィリニュス旧市街のレストラン「エトノ・ドヴァラス」のメニューを見ると、ソースは地方の名前を冠して並んでいる。ジュキヤ風はきのこソース。ジェマイティヤ風はカスティニス(kastinys=サワークリームを練って作るバター状の乳製品)。クピシュキス風はカードのソース。地主風はバターと玉ねぎ。

一口目に来るのは、まずじゃがいもそのものの土っぽい甘みだ。次に外側にまとったベーコンの塩気と燻香、溶けた脂。最後に中心の肉汁が来る。サワークリームの酸が全体の脂を切る。そして中心部は驚くほど熱いので、割ってから少し待つ必要がある。

白いクリームソースと炒めたベーコンの粒がたっぷりかかったツェペリナイのクローズアップ

スパルグチャイをたっぷりかけたツェペリナイ。白いクリームに炒めたベーコンの粒が散る。

黒い皿に載ったプレーンなツェペリナイ二つと、ベーコンの脂とサワークリームの入った小さな金属の器白い皿の二つのツェペリナイと、きのこソースとサワークリームの小鉢

プレーンなツェペリナイと、別添えのベーコンの脂とサワークリーム(左)/きのこソースとサワークリーム、二種の薬味を添えて(右)。

茶色いきのこソースと角切りベーコンをかけたツェペリナイ三つ、添えのサラダ

茶色いきのこソースをかけた型。角切りベーコンが散り、サラダが添えられている。

いつからあるのか

05

歴史 ― 名前は1935年、料理はもっと古い

「cepelinai」という名が初めて料理書に現れるのは1935年。ただし料理そのものはそれ以前から作られていた。じゃがいもがリトアニアで主食になったのは19世紀半ばである。

リトアニア料理史のブログ「Lietuvos kulinarinis paveldas」が、料理書の初出を整理している。1934年、E・ダルギーテ『Daržovių valgiai(野菜料理)』に、すりおろしじゃがいもの団子の詰め物入りレシピが2種。1935年、エレナ・レプチーテ=スタルキエネ『Ką valgome?(何を食べるか)』で、初めて「cepelinai」という名で記される。アヒルの卵大に細長く成形して茹でる、と書かれている。1936年、ヴァンダ・ヴァルニエネ『Didžioji virėja』には「Bulviniai kaldūnai (cepelinai)」として載る。

つまり名前が定着したのは1930年代半ば、戦間期のリトアニアである。同じころ、臨時首都だったカウナスではモダニズム建築が次々に建っていた。飛行船の名を借りた農民料理と、「楽観の建築」と呼ばれる街並みは、同じ時代の産物なのだ。

料理そのものはもっと古い。作家タデウシュ・コンヴィツキ(1926年生)はこう回想している。名前は新しかったが、料理は古かった、と。伝播については、北ドイツの生じゃがいも生地の団子(Kartoffelklöße)が起源で、小リトアニア(プロイセン領)との接触、リトアニア系ユダヤ人の北ドイツとの繋がり、第一次大戦のドイツ占領期という三つの経路が指摘されている。

そもそもじゃがいも自体が新参者だった。ヴィリニュスのキシュカ家の庭園の記録に「bulbos americanos(アメリカの球根)」として現れるのが1640年。しかし18世紀末になっても耕作地の0.4パーセント以下という珍しさで、新聞の農産物価格表に一度も載らなかった。普及したのは19世紀半ばである。穀物の不作と飢饉を背景に主食になり、「リトアニアの第二のパン」と呼ばれるようになった。農民は「麻より土地を痩せさせない」と気づいて受け入れた、という。

1936年、長机いっぱいに料理とシャコティスを並べ、その後ろに立つ調理服の生徒たちのモノクロ写真

【古写真】1936年、パネヴェジース女子家政学校の生徒たちが用意したイースター料理。奥に並ぶ円錐形は木の年輪を模した菓子シャコティス。ちょうど「cepelinai」という名が料理書に載りはじめた時期にあたる。

1930年代、白いクロスを掛けたテーブルと折りたたみ椅子が並ぶ屋外テラスと、給仕たちのモノクロ写真

【古写真】1930年代、ビルシュトナスの保養館(クアハウス)のテラス。戦間期リトアニアの外食の風景。

どんな場で食べるのか

06

食卓 ― 日曜と祝日、そして2月の第1日曜

家族で一度に大量に作るのが伝統。2014年からは「世界ツェペリナイの日」があり、毎年2月の第1日曜に祝われる。言い出したのはアメリカ在住のリトアニア人だった。

ツェペリナイは日曜の家族の食卓の料理であり、祝い事の料理である。何十個も一度に包むので、一人で作るものではない。でんぷん質の晩生種しか使えないから、本来は秋から冬にかけてのものだ。

そして2014年から、この料理には記念日がある。「世界ツェペリナイの日(Pasaulio cepelinų diena)」。毎年2月の第1日曜。提唱したのはアメリカ在住のリトアニア系のヨナス・ヴァイチューナス氏で、きっかけは、ツェペリナイの形がアメリカンフットボールのボールに似ていると気づいたことだった。2月第1日曜はスーパーボウルの日である。

一緒に並ぶものも決まっている。黒パン(juoda duona)、ビール、そして夏ならシャルティバルシチェイ。ケフィアとビーツで作る鮮やかなピンク色の冷製スープで、ゆで卵を浮かべ、熱いゆでじゃがいもを別皿で添える。色の派手さと味の素朴さの落差が、この国の食卓をよく表している。

揚げ焼きにする型もある。じゃがいも生地で挽き肉を包み、油で焼くもので、こんがりした皮とサワークリームの組み合わせになる。茹でるのとは別の料理と言っていい。

白い器に入った鮮やかなピンク色の冷製スープと、半分に切ったゆで卵木のテーブルに置かれた、半分に切った丸い黒いライ麦パン黄色い絵付けの皿に盛られた、こんがり焼けた挽き肉入りのじゃがいも料理とサワークリーム

シャルティバルシチェイ。冷たいビーツのスープ(左)/黒パン。ユオダ・ドゥオナ(中)/挽き肉入りのじゃがいも生地を揚げ焼きにした型。ドゥルスキニンカイのレストランにて(右)。

淡い色の皿に一つだけ盛られたツェペリナイと、奥のビールのグラス

現代的に一つだけ盛りつけたツェペリナイと、ビール。

名前は新しかったが、料理は古かった。タデウシュ・コンヴィツキ(1926年生)の回想

似た料理はあるか

07

名前 ― 国境をまたいで続く、じゃがいも団子の帯

ポーランド北東部ではカルタチェ、別名ツェペリヌィ。スウェーデンには「生いも派」と「茹でいも派」が並んでいる。

ポーランド北東部、リトアニア国境に接するポドラシェとスヴァウキ地方には、まったく同じ料理がカルタチェ(kartacze)という名で存在する。ポーランド語のレシピサイトは、このレシピがリトアニア料理からの借用であることを認めており、別名はそのままツェペリヌィ(cepeliny)だ。同じポーランドでも、丸い形のプィズィ(pyzy)は詰め物の肉を先に加熱する点が違う。

スウェーデンには、この料理の最も分かりやすい対比がある。エーランド島のクロップカーコル(kroppkakor)は茹でたじゃがいもと小麦粉で作る。北部ピーテオのピーテパルト(pitepalt)は生のじゃがいもと大麦粉で作る。生いもを使うピーテパルトは色が濃く、食感も明確に違う。ツェペリナイの生地論とまったく同じ構図が、バルト海の反対側でも起きていた。

リトアニア国内でも呼び名は一つではなかった。ピラギュカイ、クレツカイ、ヴィルティニェイ、ククリャイ、コルドゥーナイ。ジェマイティヤではクレツカイ、ベラルーシではクリョツキ、ポーランドではクルスキと、同語源の呼び名が国境を越えて連続している。

ジェマイティヤ方言では、ツェペリナイのことを「ツェペリナー(cepelinā)」と語末を変えて呼ぶ。そして南西部のスヴァルキヤでは、より小ぶりに締まったものを作り、料理人によっては古い名のディジュククリャイのほうを使ってツェペリナイと区別する。

リトアニア

ツェペリナイcepelinai

cepelinai

20世紀の新名。飛行船ツェッペリンに由来

リトアニア

ディジュククリャイdidžkukuliai

didžkukuliai

本来の名。「大きな団子」

リトアニア・ジェマイティヤ

ツェペリナーcepelinā

cepelinā

西部方言の語形。東部より大きく作る

ポーランド北東部

カルタチェkartacze

kartacze

別名ツェペリヌィ。リトアニアからの借用と認められている

ポーランド

プィズィpyzy

pyzy

丸い形。詰め物の肉を先に加熱する

スウェーデン・エーランド島

クロップカーコルkroppkakor

kroppkakor

茹でたじゃがいも+小麦粉で作る

スウェーデン・ピーテオ

ピーテパルトpitepalt

pitepalt

生のじゃがいも+大麦粉。色が濃い

ドイツ北部

カルトッフェルクレーセKartoffelklöße

Kartoffelklöße

ツェペリナイの直接の祖先と目される

白い皿に二つ並んだツェペリナイ。ベーコン入りのクリームソースとハーブ白い皿に盛られたソーセージ、ゆでじゃがいも、炒めたベーコンの粒

クリームソースのツェペリナイ(左)/リトアニアのソーセージとゆでじゃがいも、炒めたベーコンの粒(右)。

いま、どうなっているのか

08

現在 ― 「ツェペリナイ文化」は、実は縮んでいる

EUの地理的表示には登録されておらず、国の無形文化遺産目録にも入っていない。じゃがいもの消費量はバルト三国で最も少ない。それでも店の看板には、この名前が掲げられている。

驚かれるかもしれないが、ツェペリナイはEUの地理的表示(PDO/PGI/TSG)に登録されていない。リトアニアの国家無形文化遺産目録にも、確認できる範囲では入っていない。

一方で、リトアニアには登録済みの食品がいくつもある。リエトゥヴィシュカス・スキランディス(豚の胃に詰めて燻製熟成させたソーセージ)は伝統的特産品保証(TSG)。テルシェイ産のハードチーズ、ジュガス(Džiugas)は保護地理的表示(PGI)。ほかにスタクリシュケスの蜂蜜酒、リリプタス・チーズ、セイナイ・ラズディヤイ地方の蜂蜜、ダウイェナイの自家製パンがある。

理由は考えてみれば単純だ。地理的表示の制度は「特定の土地と結びついた産品」を守る仕組みである。リトアニア全土の家庭で作られ、しかも隣のポーランドとベラルーシにも同じ料理がある cepelinai は、そもそもこの制度の枠に収まらない。

もうひとつ、食文化史家のリムヴィダス・ラウジカス氏が指摘している不都合な事実がある。ソ連時代、多くのリトアニア料理が意図的に食卓から排除され、じゃがいも料理のごく一部だけが選ばれて「唯一正しいリトアニア料理」として宣伝された。つまりツェペリナイの国民食としての地位は、かなりの部分が20世紀後半に作られたものだ、と。

そして同氏はこうも言う。1990年と現在の一人当たりじゃがいも消費量を比べると、減少は倍数で測るレベルである、と。現在のリトアニアのじゃがいも消費はバルト三国で最も低く、地中海地域に近い水準にある。ラトビアやエストニアのほうが多い。「我々は19世紀に戻りつつある」。

それでもこの料理は、店の名前になって幹線道路沿いに立ち、アメリカのフードトラックの側面に描かれ、ポーランドの催しの大鍋で茹でられている。ヴィリニュス旧市街のエトノ・ドヴァラスでは、12種類のツェペリナイがすべて同じ9.55ユーロ。1ユーロ=180.70円(欧州中央銀行、2026年9月21日)で約1,726円になる。一般的な相場は1皿8〜15ユーロ、およそ1,450〜2,710円といったところだ。

大きな平鍋に並んだザワークラウトと具材、手に持った容器に盛られたツェペリナイ穴あきお玉でツェペリナイを容器によそうところ

ポーランド・シロンスクで開かれたリトアニア料理の催し。大鍋のザワークラウトとともに(左)/穴あきお玉で取り分けられるツェペリナイ(右)。

道路沿いの建物に「HYPER CEPELINAI」と書かれた大きな看板が立っている夜、電飾をつけたフードトラック。リトアニア国旗と料理の写真が貼られている

幹線道路沿いに立つ「HYPER CEPELINAI」の看板。カルメラヴァ(左)/リトアニア料理のフードトラック「バルティック・バイツ」(右)。

基本情報

料理名
ツェペリナイ(cepelinai)。単数形はツェペリナス。本来の名はディジュククリャイ(didžkukuliai)=「大きな団子」
国・地域
リトアニア共和国(人口約289万人/2024〜2026年の統計上の常住人口)
分類
すりおろした生のじゃがいもと茹でたじゃがいもの生地で詰め物を包み、茹でた団子
生地
生のじゃがいも:茹でたじゃがいも=2:1(LRTの標準レシピ)。卵、塩、胡椒。でんぷん質の晩生種のみ使用可
決定的な一手間
絞り汁を十数分静置し、底に沈んだでんぷんを生地へ戻す。これが天然の糊になる
詰め物
挽き肉(豚・牛)/ヴァルシケ(乾いたカッテージチーズ)/きのこ/レバー
ソース
スパルガイ(spirgai・spirgučiai)=ベーコンの脂と肉片、玉ねぎ。乳脂肪30〜40%のサワークリームを添える
大きさ
長さ10〜30cm。西部ジェマイティヤのほうが東部より大きい。1人前1〜2個
茹で時間
沸騰した湯で30〜40分(LRT)。湯にでんぷん水を加えると崩れにくい
文献初出
1934年 E・ダルギーテ『Daržovių valgiai』/1935年 E・レプチーテ=スタルキエネ『Ką valgome?』で初めて「cepelinai」の名
じゃがいもの伝来
1640年、ヴィリニュスのキシュカ家の庭園に「bulbos americanos」として記録。普及は19世紀半ば
記念日
世界ツェペリナイの日=毎年2月第1日曜。2014年から。米国在住のヨナス・ヴァイチューナス氏の提唱
値段の目安
ヴィリニュス旧市街のエトノ・ドヴァラスで1皿9.55ユーロ(約1,726円)。一般に8〜15ユーロ(約1,450〜2,710円)。1ユーロ=180.70円(ECB、2026年9月21日)
保護制度
EUの地理的表示には未登録。リトアニアのEU登録品はスキランディス(TSG)、ジュガス(PGI)など

出典

写真(26枚)

  • 1. Cepelinai 2, Vilnius, Lithuania – Diliff.jpg / Diliff / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 2. Cepelinai 1, Vilnius, Lithuania – Diliff.jpg / Diliff / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 3. Cepelinai ir alus.jpg / Tobin / CC BY-SA 2.0 / 原典
  • 4. Cepelinai Sauce.JPG / Jpatokal / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 5. Litavsko jelo cepelinai.jpg / August Dominus / CC0 / 原典
  • 6. Lithuanian sausages.jpg / Continentaleurope / CC BY 4.0 / 原典
  • 7. Kindziukas (1).JPG / Alina Zienowicz (Ala z) / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 8. Kaimiška varškė.JPG / Bearas / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 9. Vilnius Restoranas Etno Dvaras Kartoffelklöße mit Gehacktem & Sauerrahm.jpg / Zairon / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 10. Cepelinai 2019.jpg / Bdx / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 11. Zeppelines (18922030160).jpg / Antonio Campoy / CC BY 2.0 / 原典
  • 12. Lithuanian cepelinai 12 April 2018.png / Ke an / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 13. Cepelinai su spirgučiais-Lithuania.JPG / Bearas / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 14. Cepelinai Kaunas 2023.jpg / Bdx / CC0 / 原典
  • 15. Lithuanias national dish (Potato dumpling Kartoffelklöße) (54173543106).jpg / Harald Groven / CC BY-SA 2.0 / 原典
  • 16. Cepelinai and beer.jpg / Ypsilon from Finland / CC0 / 原典
  • 17. Zeppelin Delikatesse in Lithuania.jpg / Dr. Artur Braun (Arturbraun) / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 18. 02017 0076 Cepelinai mit Sauerkraut aus Litauen in Schlesien.jpg / Silar / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 19. 02017 0075 Cepelinai mit Sauerkraut aus Litauen in Schlesien.jpg / Silar / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 20. Karmelava0.jpg / Bearas / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 21. Baltic Bites, First and Only Lithuanian Food Truck.jpg / Ginter96 / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 22. Lithuanian Cuisine. Traditional Easter Foods — Including Šakotis — Prepared by Students of the Panevėžys Girls' Home Economics School in 1936, Panevėžys, Lithuania.jpg / 作者不明 / Public domain / 原典
  • 23. Svetainė (Kurhaus) of Birštonas, 1930s, Lithuania.jpg / 作者不明 / Public domain / 原典
  • 24. Šaltibarščiai (cold beet soup).jpg / Continentaleurope / CC BY 4.0 / 原典
  • 25. Druskininkai Forto Dvaras Abendessen Knödel mit Hackfleisch & Sour Cream 1.jpg / Zairon / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 26. Juoda duona.JPG / Šarūnas Šimkus / Public domain / 原典

写真はすべて原典でCC0・パブリックドメイン・CC BY・CC BY-SAのいずれかと商用利用可を確認し、被写体を1枚ずつ目視で照合したうえでサイト内へ取り込んでいます。表示時は形を変えない範囲で明るさ・コントラスト・彩度をわずかに上げ、料理が実際の見え方に近く、明るく見えるよう調整しています。

ホーム › リトアニア料理 › ツェペリナイ