ブカティーニ・アッラマトリチャーナの一皿
イタリア(アマトリーチェ、ローマ)赤いトマトに豚頬肉の脂、羊乳チーズの塩味麺・パスタ

アマトリチャーナ

Amatriciana/Amatriciana Tradizionale STGPasta with guanciale and tomato sauce

熟成させた豚頬肉グアンチャーレとトマトのソースをパスタにからめ、ペコリーノで仕上げる一皿。山あいの町アマトリーチェの名を持ち、ローマでも親しまれる。伝統的なソースは2020年にSTGへ登録された。

概要
01

アマトリーチェの名を持つ、グアンチャーレとトマトのソース

赤いトマトに豚頬肉の脂とペコリーノの塩味が重なる。ローマでも親しまれる、アマトリーチェの名を持つパスタ。

アマトリチャーナは、熟成させた豚頬肉グアンチャーレとトマトのソースを、パスタにからめる料理だ。赤いソースの中に香ばしい肉が混ざり、仕上げのペコリーノが塩味を重ねる。名前はラツィオ州の町アマトリーチェに由来し、ローマの定番の一皿としても親しまれている。

2020年、「Amatriciana Tradizionale」の名前がEUの伝統的特産品保証(TSG、イタリア語ではSTG)に登録された。地理的表示のIGPやDOPと違い、TSGは作る場所を限定しない。規格書自身も、生産地域は品質や特徴に影響しないと明記しており、守られているのは伝統的な材料、配合、製法のほうである。

長い麺なら、穴のあいた太いブカティーニやスパゲッティ。短い麺を合わせた盛り付けもある。ローマ観光局はブカティーニの料理として紹介し、ソースの規格書は長い麺だけでなくショートパスタにも触れる。肉、ソース、麺の形が一口のまとまりを変える。

アマトリチャーナの接写。トマトソースをからめたロングパスタにペコリーノを振った一皿

トマトソースをからめたロングパスタに、ペコリーノを振った盛り付け例。

味と特徴
02

トマトの酸味、肉の脂、羊乳チーズの塩味が重なる

材料を絞ったソースでも味は厚い。STGの配合ではグアンチャーレ18〜30%、トマト69〜81%。

トマトの甘酸っぱさだけで終わらないのが、このソースの面白さだ。焼いたグアンチャーレの脂が野菜の汁と混ざり、肉の塩気と香りがパスタを包む。ペコリーノを振ると、羊乳チーズの塩味と風味が加わる。肉の表面の香ばしさと麺の弾力も、一口の中で重なる。

必須の材料と完成品に占める割合は、アマトリーチェ風グアンチャーレ18〜30%、エクストラバージン・オリーブオイル0.5〜1%、トマトのパッサータ(裏ごし)または刻んだ皮むきトマト69〜81%。ほかに塩、白ワイン、乾燥または生の唐辛子と胡椒を適量使う。

グアンチャーレは重い豚の新鮮な頬肉を、喉元から三角形に切り出して作る。規格上は、底辺の丸い三角形で、中は白地に赤身がまだらに入り、脂肪が赤身より多く、塩漬けから30日以上熟成させたものとされる。トマトにも糖度や色の基準があり、酸味料の添加は認められていない。

「Amatriciana Tradizionale」の規格書には、ニンニク、玉ねぎ、パンチェッタを使わないことが明記されている。仕上げにはアマトリーチェ風ペコリーノ、またはラツィオ州のペコリーノ・ロマーノDOPが推奨される。これは地域名と伝統的製法を冠するソースの規格で、写真の一皿が認証品であることを示すものではない。

リエーティ県グレッチョで出されたショートパスタのアマトリチャーナ

赤いソースに、香ばしい肉を。グアンチャーレの脂とトマトが麺を包み、最後にペコリーノの風味が重なる。

材料と産地
03

脂を出し、ワインを入れ、肉を一度取り出す

即時提供用では、カリッとさせたグアンチャーレを最後に戻す手順が規格に書かれている。

即時提供用の作り方では、グアンチャーレの皮を除いて細切りにし、フライパンにオリーブオイルを入れて弱火で炒める。肉から出る泡のような水分が消えるまで炒めたら白ワインを加え、グアンチャーレがこんがりしたら一度取り出す。

同じフライパンにトマトを入れ、塩と唐辛子または胡椒を加えて沸騰させ、強火で10〜20分、とろりとするまで煮る。そこへ取り出しておいたグアンチャーレを戻し、さらに5〜10分煮る。脂の旨みはソースに移しつつ、肉の歯ごたえは残す手順になっている。

後日提供用では、グアンチャーレを取り出さずにそのままトマトを加えて煮詰め、食品用容器に詰めて密封し、加熱処理する。冷凍も認められ、容器は5kgまで、脂肪は100gあたり15g以上とされる。どちらの場合も、パスタと合わせた後にペコリーノをすりおろしてかけることが勧められている。

グアンチャーレの断面。豚頬肉の脂と赤身の層ペコリーノ・ロマーノとおろし金。仕上げに推奨される羊乳チーズ
歴史と由来
04

羊飼いの携行食に、19世紀初めトマトが加わった

移牧する羊飼いの保存食から、町の名を持つ赤いソースへ。由来は規格書が伝える歴史として読む。

TSGの規格書は、アマトリーチェ周辺のラーガ山地の羊飼いが、移牧のため年に4〜5か月(おおむね5月から9月)家を離れて暮らし、長く保存できる塩漬けのグアンチャーレや小麦粉を持っていったと説明する。柄の長い鍋で作る質素なパスタが原型だったという。トマトを使わないこの形は、今日のグリーチャに近いものと考えられている。

規格書によれば、アマトリーチェは13世紀からナポリ王国に属しており、18世紀後半にトマトの価値をいち早く認めたナポリの影響を受けて、19世紀初めにトマトが加えられた。19世紀には多くのアマトリーチェ出身者がローマへ移り、飲食業や食品販売で働いたため、ソースもローマに広まったとされる。

ただし、トマトが加わった時期や経路は規格書が地元の伝統として述べているもので、特定の年や人物を示す一次史料が示されているわけではない。規格書が挙げる文献は、1980年の論文「サビーナの豚の循環」や、1983年の『Strenna dei Romanisti』などの20世紀の記述である。

18〜30%規格のグアンチャーレの割合

完成したソースに占める割合

69〜81%規格のトマトの割合

裏ごし、または刻んだ皮むきトマト

2020年伝統的ソースのSTG登録

EU規則2020/395

アマトリーチェ側から見たラーガ山地の稜線
広がり
05

町の名と一皿をつなぐ、パスタの祭り

アマトリーチェでは、スパゲッティ・アッラマトリチャーナの祭りが開かれてきた。料理は町の記憶とも結びつく。

アマトリーチェは、ラツィオ州の北東端、アブルッツォ州やマルケ州との境に近い山あいの町である。2016年8月24日未明、イタリア中部を襲った地震で町の中心部は大きく崩れ、多くの死者を出した。

VisitLazioは、2023年9月2日・3日の「スパゲッティ・アッラマトリチャーナ祭り」を紹介している。地元の材料を使う料理を味わい、リエーティ地方の自然や文化も知る催しとして案内された。これは2023年の開催記録で、今後の開催日程や営業時間を示すものではない。

TSGの登録は、地震から約3年半後の2020年3月だった。規格書はこのソースがラツィオ州の伝統農産食品リストにも載っていることに触れており、登録は町の名前と結びついた料理を、作り方の面から守る意味を持っている。

2008年のアマトリーチェ中心街(地震の前)2016年8月の地震で崩れたアマトリーチェの建物
仲間と変わり種
06

白いグリーチャ、赤いアマトリチャーナ。ソースを比べる

共通するのはグアンチャーレとペコリーノ。トマトの有無で、同じ材料が違う表情になる。

ローマ観光局が紹介するグリーチャは、グアンチャーレ、胡椒、ペコリーノ・ロマーノを使い、トマトを加えないパスタだ。茹で汁と肉の脂を麺にまとわせ、火を止めてチーズを合わせる。赤いアマトリチャーナの隣に置くと、肉とチーズを土台にする点と、トマトの有無が見えてくる。

観光局はグリーチャの由来についても、羊飼い、ローマのパン職人、グリシャーノという地名など、複数の説明を挙げている。材料の近さは確かでも、一つの発明物語にまとめるのは難しい。アマトリチャーナの原型に近い料理として親しまれている、という紹介と、具体的な起源の証明は分けて読みたい。

料理を選ぶときは、ソースの色だけでなく、麺の形と肉にも注目する。ブカティーニは太い長麺、写真のショートパスタは筒の内側にもソースが入る。グアンチャーレは豚の頬肉、パンチェッタは腹部の肉。似た塩漬け肉でも部位が違い、伝統的ソースの規格はグアンチャーレを指定している。

パスタ・アッラ・グリーチャ。トマトを使わない近縁料理

基本情報

国・地域
イタリア・ラツィオ州リエーティ県アマトリーチェ(ラーガ山地)
現地名
Amatriciana Tradizionale(all'amatriciana、ローマ方言でalla matriciana)
保護制度
EUの伝統的特産品保証 TSG/STG(2020年)。生産地域の限定はない
分類
パスタソース(即時提供用と後日提供用)
必須材料
グアンチャーレ、エクストラバージン・オリーブオイル、トマト、塩、白ワイン、唐辛子または胡椒
推奨の仕上げ
アマトリーチェ産ペコリーノ、またはラツィオ州産ペコリーノ・ロマーノDOP
使わない材料
ニンニク、玉ねぎ、パンチェッタ
合わせるパスタ
伝統的にはスパゲッティかブカティーニ。ショートパスタも
近縁料理
パスタ・アッラ・グリーチャ(トマトを使わない)

出典

写真(9枚)

  • 1. ブカティーニ・アッラマトリチャーナの一皿 / Popo le Chien / CC0 1.0 / 原典
  • 2. アマトリチャーナの接写。トマトソースをからめたロングパスタにペコリーノを振った一皿 / Rob Larsen / CC BY 2.0 / 原典
  • 3. リエーティ県グレッチョで出されたショートパスタのアマトリチャーナ / Randy OHC from West Park, New York, USA / CC BY 2.0 / 原典
  • 4. グアンチャーレの断面。豚頬肉の脂と赤身の層 / Popo le Chien / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 5. ペコリーノ・ロマーノとおろし金。仕上げに推奨される羊乳チーズ / Pohled 111 / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 6. アマトリーチェ側から見たラーガ山地の稜線 / Alexxant / CC BY-SA 4.0 / 原典
  • 7. 2008年のアマトリーチェ中心街(地震の前) / Mario1952 / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 8. 2016年8月の地震で崩れたアマトリーチェの建物 / terremocentroitalia terremocentroitalia from Italia / CC BY 2.0 / 原典
  • 9. パスタ・アッラ・グリーチャ。トマトを使わない近縁料理 / Luca Nebuloni from Milan, Italy / CC BY 2.0 / 原典

写真ごとの原典・作者・利用条件を確認しています。料理写真は盛り付け例で、STG規格に沿った認証品とは確認していません。町の写真は撮影年を明記。掲載用に縮小・WebP圧縮し、表示時に自然な明るさ・コントラスト・彩度補正を用いています。

ホーム › イタリア料理 › アマトリチャーナ(Amatriciana Tradizionale STG)

同じカテゴリの、ほかの記事