鶏肉、トマト、ねぎ、にんにく、しょうが、唐辛子を鍋で調理するジャシャ・マル
ブータン鶏肉、しょうが、唐辛子。汁ごと米に合わせる煮込みスープ・煮込み・鍋

ジャシャ・マル

Jasha Maru / Jasha Maroo / བྱ་ཤ་མ་རུ་Spicy Bhutanese chicken stew

鶏肉を唐辛子、トマト、玉ねぎやねぎ、しょうが、にんにくなどと煮るブータンの肉料理。汁気を残す型が多く、赤米や白米と合わせる。材料の切り方や辛さ、水分量には家庭や店ごとの幅がある。

概要
01

「チキンカレー」より、汁気のある鶏の煮込み

鶏肉の周囲へ、唐辛子と香味野菜を含む煮汁を残す。

ジャシャ・マルは、ブータンの鶏肉料理である。Bhutan Travelはspicy Bhutanese chicken stewと紹介し、唐辛子、玉ねぎ、トマト、コリアンダー、角切りの鶏肉を組み合わせると説明する。日本語では「鶏肉の辛い煮込み」「汁気のある鶏料理」とすると構造を伝えやすい。

英語圏ではcurryと紹介される場合もあるが、濃いペーストを絡め切る料理とは限らない。2012年の調理記録写真でも、鶏肉、トマト、春ねぎ、にんにく、しょうが、唐辛子が鍋の中で水分とともに加熱されている。

Jasha Maru、Jasha Maroo、Jasha Maroなど表記に揺れがある。綴りの違いだけで別料理とせず、鶏肉、唐辛子、トマト、香味野菜、煮汁という共通する骨格を合わせて見る。

汁気を残す肉と野菜の煮込み構造を示す補助写真(ジャシャ・マルそのものではない)

汁気を残す肉と野菜の煮込み構造を示す補助写真。完成したジャシャ・マルそのものではない。

味と特徴
02

鶏肉のまわりを、しょうがと野菜が組み立てる

唐辛子だけでなく、トマト、ねぎ類、しょうが、にんにくが香りを重ねる。

公的観光資料で確認できる中心材料は、鶏肉、唐辛子、玉ねぎ、トマト、コリアンダーである。Wikimedia Commonsの調理記録は、鶏肉、トマト、春ねぎ、にんにく、しょうが、唐辛子を挙げる。二つを重ねると、肉を香味野菜と煮る料理像が見えてくる。

鶏肉は角切りだけでなく、細かく切る型やひき肉状のものも紹介される。調理記録はminced chickenとする一方、Bhutan Travelはfreshly diced chickenと書くため、「必ずひき肉」と固定することはできない。

コリアンダー、リーキ、シャロット、青ねぎなど、緑の香味を仕上げに加えるレシピもある。掲載しているしょうが・にんにく・玉ねぎの写真は材料説明用で、ブータンの台所やジャシャ・マルの仕込みそのものではない。

しょうが、にんにく、玉ねぎの補助写真(ジャシャ・マルの香味材料を説明)ティンプー市場に並ぶブータンの唐辛子

唐辛子とチーズだけが、ブータン料理ではない。鶏肉、トマト、しょうが、にんにくを煮汁へまとめ、米と食べる肉料理がある。

材料と産地
03

炒め切らず、米へ移せる煮汁を残す

鍋の水分を飛ばし切らず、鶏のうま味と野菜の味を一つにする。

家庭ごとに順序は変わるが、基本は鶏肉を切り、玉ねぎやねぎ、にんにく、しょうがなどと合わせ、トマトと唐辛子を加えて煮る。水または軽いだしを加える型もあり、鶏肉に安全に火が通るまで加熱する。

最後にコリアンダーや青ねぎを加えると、煮込んだ香りへ青い香味が重なる。煮汁は完全に飛ばさず、米へ含ませられる程度に残す説明が多い。ただし水分量は家庭や店で変わり、スープのような型から濃い煮込みまで幅がある。

味の骨格は、鶏肉のうま味、トマトの酸味、しょうが・にんにく・ねぎ類の香り、唐辛子の辛味で説明できる。補助写真の煮込みは水分の残し方を示すためのもので、完成したジャシャ・マルではない。

ブータンの市場で売られるエマ(唐辛子)
歴史と由来
04

唐辛子は辛味料ではなく、料理を形づくる材料

赤、緑、生、乾燥を使い分け、鶏肉と煮汁の輪郭を決める。

Bhutan Travelは、ブータン料理で唐辛子が重要な食材であり、単なる少量の香辛料ではなく材料として扱われることを紹介している。市場には生の唐辛子が並び、乾燥した赤唐辛子も季節を越えて使われる。

ジャシャ・マルでは、エマダツィのように唐辛子とチーズだけが皿の中心になるわけではない。鶏肉、トマト、玉ねぎ、しょうがなどとともに鍋へ入り、煮汁へ色、辛味、香りを移す。

実際の辛さは唐辛子の種類、量、種や胎座の扱い、食べ手に合わせた調整で変わる。ブータン料理だから必ず同じ強さになるのではなく、唐辛子が重要な構成要素であることと、辛さに幅があることを分けて理解する。

ブータンで乾燥させた赤唐辛子
5+主要材料料理の骨格

鶏肉・唐辛子・トマト・玉ねぎ・香味野菜

3主表記ローマ字の揺れ

Maru / Maroo / Maro

2米の例食卓の主食

赤米と白米

1鍋煮汁をまとめる

鶏と野菜の味を米へつなぐ

広がり
05

赤米や白米と合わせ、汁まで食事にする

煮込みだけを切り離さず、米と複数の皿が並ぶ食卓の中で見る。

ブータンの食事では米が重要な主食であり、赤米と白米の両方が食べられる。ジャシャ・マルは米と組み合わせて紹介されることが多く、煮汁を米へ含ませることで鶏肉、唐辛子、香味野菜の味が一口にまとまる。

赤米はブータン料理を象徴する存在の一つだが、ジャシャ・マルには必ず赤米でなければならないという決まりは確認できない。白米との組み合わせもあり、米の種類を料理の必須条件にしない方がよい。

掲載する赤米と鶏肉の写真はブータンの食卓構成を示す例で、写っている鶏料理自体をジャシャ・マルとは断定していない。料理名が確認できない食卓写真を、完成料理の証拠として扱わない。

ブータンで収穫・利用される米ブータン赤米と鶏料理の食卓例(鶏料理自体はジャシャ・マルと断定しない)
仲間と変わり種
06

チーズ料理の陰にある、肉の煮込み文化を見る

エマダツィやパクシャ・パと比べると、鶏肉と香味煮汁の個性が際立つ。

ジャシャ・マルは現在、ブータンを代表する料理の一つとして政府観光情報に掲載されている。一方、発明者や成立年を特定できる一次資料は確認できず、「何世紀前に農民が発明した」などの物語を事実として固定することはできない。

エマダツィは唐辛子とチーズが中心で、ジャシャ・マルでは鶏肉と煮汁が中心になる。パクシャ・パは豚肉、乾燥唐辛子、大根や青菜を軸にする型があり、ジャシャ・マルは鶏肉、トマト、しょうが、にんにくなどの香味野菜が目立つ。

同じ唐辛子文化の中でも、肉、乳製品、野菜、汁気の組み合わせによって別の料理が成立する。「ブータン料理はすべてチーズ入り」という誤解をほどき、家庭の肉料理まで視野を広げる入口になる。

基本情報

国・地域
ブータン
分類
鶏肉と唐辛子、香味野菜の煮込み
主な材料
鶏肉、唐辛子、玉ねぎ、トマト、しょうが、にんにく
香味
コリアンダー、春ねぎ、リーキなどに幅
仕上がり
米と合わせやすい汁気を残す型が多い
食べ合わせ
赤米または白米、ほかの副菜
近縁比較
エマダツィはチーズ、パクシャ・パは豚肉が中心
表記
Jasha Maru / Jasha Maroo / Jasha Maro

出典

写真(8枚)

  • 1. 鶏肉、トマト、ねぎ、にんにく、しょうが、唐辛子を鍋で調理するジャシャ・マル / Matyáš Havel / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 2. 汁気を残す肉と野菜の煮込み構造を示す補助写真(ジャシャ・マルそのものではない) / Photo by Kadir Celep on Unsplash / Unsplash License / 原典
  • 3. しょうが、にんにく、玉ねぎの補助写真(ジャシャ・マルの香味材料を説明) / Photo by Anya Bell on Unsplash / Unsplash License / 原典
  • 4. ティンプー市場に並ぶブータンの唐辛子 / thisisbossi / CC BY 2.0 / 原典
  • 5. ブータンの市場で売られるエマ(唐辛子) / Nagarjun / CC BY 2.0 / 原典
  • 6. ブータンで乾燥させた赤唐辛子 / Richard Mortel / CC BY 2.0 / 原典
  • 7. ブータンで収穫・利用される米 / Antonio Morales García / CC BY-SA 2.0 / 原典
  • 8. ブータン赤米と鶏料理の食卓例(鶏料理自体はジャシャ・マルと断定しない) / Steve / CC BY-SA 2.0 / 原典

既存の6写真は差し替えず、権利表示を維持しています。追加した2写真は、しょうが・にんにく・玉ねぎと、汁気を残す煮込み構造を説明する補助写真です。ジャシャ・マルそのものではない写真は本文と代替テキストで区別し、全写真へ自然な明るさ・コントラスト・彩度補正を適用します。