
トルティージャ
Tortilla española/Tortilla de patatasSpanish potato omelette
じゃがいもを油でやわらかくしてから卵に混ぜ、丸く焼くスペインのオムレツ。玉ねぎを入れるか、中の卵をどこまで固めるかで好みが分かれる。切り分けた軽食や、具を加えた卵料理にも広がる。
じゃがいもと卵を、丸く厚く焼く
スペインのじゃがいも入りオムレツ。切り口に、卵とじゃがいもが重なる。
トルティージャ・エスパニョーラ、またはトルティージャ・デ・パタタスは、じゃがいもを卵でまとめたスペインの料理だ。薄く切ったじゃがいもを油でやわらかくしてから卵に混ぜ、フライパンで丸く焼く。
スペインの公式観光サイトが紹介するレシピは、4人分に中くらいのじゃがいも4個、卵4〜5個、玉ねぎ1個、オリーブオイル、塩を使う。玉ねぎ入りの一例であり、すべてのトルティージャに玉ねぎが入るという意味ではない。

切れる厚焼き、とろりとした半熟
表面の焼き色と、中の卵の固まり方。仕上がりの好みも分かれる。
切り分けた写真では、じゃがいもの薄い層を卵がつないでいる。卵をしっかり固めれば、形を保った一切れになる。少ない時間で焼けば、中心がやわらかく残る型にもなる。
スペイン社会学研究センターCISの2023年7〜8月の調査は、4,538人に卵の焼き具合も質問した。「あまり固めない」側の回答は53.9%、「よく焼く」側は26.9%だった。これはその調査での回答の分布で、料理の正しい焼き加減を決める数値ではない。

玉ねぎを入れるか、入れないか。卵とじゃがいもの一皿に、家庭や地域の違いが詰まっている。
玉ねぎを入れるか、入れないか
基本の材料は少なくても、玉ねぎの有無は好みが分かれる。
玉ねぎをゆっくり火にかけると、じゃがいもと卵に甘みのある具が加わる。Joseba Arguiñanoの掲載レシピも、甘い玉ねぎをやわらかくして使い、溶いた卵と混ぜて少し休ませてから焼く。
CISの同じ調査では、玉ねぎを入れるべきだという回答が70.4%、入れないという回答が20.9%、どちらでもよいという回答が8.0%だった。調査時点の好みとして読むと、玉ねぎをめぐる話題が実際に公的な質問にもなっていることが分かる。
じゃがいもを切る幅や卵との比率にも違いがある。写真の青ねぎを含む材料は、その家庭の準備の例で、公式観光サイトのレシピを再現した写真ではない。


1798年を発祥の手がかりにする町
ビジャヌエバ・デ・ラ・セレナは、研究に基づく発祥説を紹介している。
エストレマドゥーラのビジャヌエバ・デ・ラ・セレナ市は、2018年に『Villanueva de la Serena, cuna de la tortilla de patatas (1798)』という本の刊行を紹介した。市の説明は、研究者ハビエル・ロペス・リナヘが示した1798年の「概念上の起源」と、ホセ・デ・テナ・ゴドイ・イ・マルフェイトを結びつけている。
市の紹介では、不作や食糧不足の時代に、栄養を補う食べ物を考える事情も語られる。これは同市が紹介する発祥説だ。現在の丸い厚焼きと昔の記録がどの程度同じだったか、誰が最初に作ったかまで、ここで確定した事実としては扱わない。

CISの2023年調査、質問13、4,538回答
2024年規定:じゃがいも、油、塩、卵
小さく切り分け、パンと一緒に
丸ごと焼いた一皿を切り分けて軽食に。具を加えたピンチョもある。
トルティージャは、大きく焼いてから小さな一切れに分けられる。写真のピンチョには、切った卵焼きの上に赤と緑のピーマンがのり、ようじで留められている。朝食の写真では、切り分けたトルティージャにパンと飲み物が添えられている。
卵焼きにはじゃがいも以外の具を使うものもある。写真の干しだら入りのピンチョは、その仲間を示す例だ。スペインの公式観光サイトは、温かくても冷たくても出せる料理と紹介し、持ち運びや小さな角切りには、じゃがいもを多めにして密に仕上げる提案を載せている。


ベタンソス風と、肉やピーマン入り
地域の材料の決まりと、家庭の自由な具。基本から広がる卵料理。
ガリシア観光局の冊子は、ベタンソスのトルティージャを、卵をあまり混ぜず、中をほとんど固めない料理として紹介する。ベタンソス市の2024年「トルティージャ週間」の規定は、材料をじゃがいも、油、塩、卵だけに限定していた。玉ねぎ入りとは異なる地域の型が、催しでも示されている。
一方、Eva Arguiñanoのレシピには、じゃがいも、玉ねぎ、緑のピーマンが入る。写真のチョリソとベーコン入り、ピーマン入り、ベシャメルソースをかけたものも、具や仕上げの違いを見る例だ。写真の厚焼きを、卵が流れるベタンソス風と取り違えないようにしたい。



基本情報
- 国・地域
- スペイン。ベタンソスなど地域の型もある
- 現地名
- Tortilla española、Tortilla de patatas
- 基本の材料
- じゃがいも、卵、油、塩。玉ねぎを入れる作り方もある
- 工程
- じゃがいもに油で火を通し、卵に混ぜて両面を焼く
- 仕上がり
- 厚く固める型、卵をやわらかく残す型
- 食べ方
- 切り分けた一切れ、パンと一緒に
- 起源
- ビジャヌエバ市の発祥説などがあり、発明者はここでは確定しない
出典
- スペイン公式観光サイト「Tortilla de patata」(基本材料、玉ねぎ入りの一例、油で火を通す工程と皿で返す方法、温冷の提供)
- CIS 調査3419「Turismo y gastronomía」(2023年7〜8月、質問13と13a(PDFの11ページ/印刷ページ8)、4,538回答、玉ねぎと焼き具合)
- Joseba Arguiñano/Hogarmania「Tortilla de patatas」(玉ねぎを使い、具を卵と混ぜて休ませてから焼く一例)
- ビジャヌエバ・デ・ラ・セレナ市「発祥をめぐる本の刊行紹介」(市が紹介する1798年の概念上の起源という説。世界最初の発明と確定する根拠にはしない)
- Turismo de Galicia「Betanzos Station」(PDFの8ページ。卵をあまり混ぜず中を固めないベタンソス風)
- ベタンソス市「XIV Semana da tortilla de Betanzos」規定(2024年の催し、PDF2ページ第8項の材料限定。現在の全店舗の規則とはしない)
- Eva Arguiñano/Hogarmania「Tortilla de patata, cebolla y pimiento」(じゃがいも、玉ねぎ、ピーマンを使う別の作り方)
写真(11枚)
- 1. じゃがいもと玉ねぎで作ったトルティージャ・エスパニョーラ / Juan Emilio Prades Bel / CC BY 4.0 / 原典
- 2. 切り分けたトルティージャの断面。薄切りのじゃがいもが層になる / Tamorlan / CC BY-SA 3.0 / 原典
- 3. フライパンで焼いている玉ねぎ入りのトルティージャ / Arturo Espinosa / CC BY 2.0 / 原典
- 4. トルティージャ用に薄く切ったじゃがいも / Tamorlan / CC BY 3.0 / 原典
- 5. トルティージャ作りの準備。切ったじゃがいもと玉ねぎ、青ねぎが並ぶ / Rudi Riet / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 6. 朝食に出されたトルティージャとパン / Boca Dorada / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 7. ピーマンをのせたピンチョ・デ・トルティージャ / juantiagues / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 8. バスク地方のバルの、干しだら入りトルティージャのピンチョ。じゃがいも入りと同一の配合とは限らない / Fernando Medina / CC BY 2.0 / 原典
- 9. チョリソとベーコンを加えて厚く焼いたトルティージャ。基本のじゃがいもと卵に肉を加えた例 / Javi Carretero / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 10. ピーマンを加えたトルティージャ / Jorge Díaz / CC BY-SA 2.0 / 原典
- 11. ベシャメルソースをかけたトルティージャ / Jorge Díaz / CC BY-SA 2.0 / 原典
実写11枚の原典・作者・CC利用条件を確認。基本のじゃがいも入りと、肉やピーマン入り、干しだら入りの仲間の例を区別しています。ロンドンの紹介店での撮影写真ではありません。掲載用に縮小・WebP圧縮し、表示時に自然な明るさを整えています。