ドジョウを使うチュオタン。褐色の汁に青い具を合わせる。
韓国南原、ソウルなど魚をすりつぶす型、丸ごとの型

チュオタン

추어탕Loach soup thickened with ground fish and greens, from Namwon

ドジョウを煮たチュオタンには、身をすりつぶす型と、魚の形を残す型がある。南原の郷土料理として知られるが、ソウルにも古い食堂がある。褐色の汁、青い香草、粉の薬味を知ると、一杯の違いがはっきりする。

魚の汁の形
01

すりつぶす型と、
丸ごとの型。

すりつぶした魚の汁は、魚を目に見える切り身へ残すスープとは違う。南原の通りとソウルの湧金屋を知ると、ドジョウの料理の中にも別の系統がある。

チュオタンの主な材料はドジョウ。すりつぶす型では、煮た魚を細かくし、青菜などと一緒に汁へまとめる。切り身の魚が浮かぶスープとは違い、汁の中に魚の材料が行き渡る。器を見て魚が見当たらなくても、魚を使わない料理とは限らない。

丸ごとの魚を使う型もある。韓国観光公社は、ソウルの湧金屋を、丸ごとのドジョウを使うソウル式の店として紹介する。南原のすりつぶした汁だけを唯一の標準にしないことが、地域差を知る大切な入口になる。

鍋に盛ったドジョウの汁。

鍋に盛ったドジョウの汁。 写真の出典

匙を添えたチュオタンの一杯。

匙を添えたチュオタンの一杯。 写真の出典

南原の食文化
02

庭園の近くに、
ドジョウの食堂が集まる。

全羅北道の南原では、チュオタンが土地を代表する料理として紹介される。広寒楼苑の周辺には、チュオタンの店が集まる通りがある。観光の庭園と毎日の汁の食堂が、同じ街の中で隣り合っている。

南原市の案内には、セジプや釜山家などの食堂が載る。店名に別の都市名が入る場合も、所在地は南原である。名物の名や店名だけで地理を決めるより、実際の通りを見ることが、土地の料理を知る確かな手がかりになる。

飯と合わせるチュオタン。

飯と合わせるチュオタン。 写真の出典

ソウルの湧金屋の外観。

ソウルの湧金屋の外観。 写真の出典

秋の魚の記憶
03

小さな魚を、
汁として食べる知恵。

チュオタンは秋の食文化と結びつけて紹介される。昔の季節の食事を語るとき、栄養を求めて食べたという背景と、現在の病気を治すという主張は分けて考えたい。ここで面白いのは、小さな魚を取り、煮て、汁として食べやすい形にする仕事である。

ドジョウの汁には、乾燥させた大根の葉や茎、エゴマの粉などを合わせる型がある。小さな魚だけを主役にするのではなく、畑の材料と香りの粉が一杯を組み立てる。褐色の見た目の中に、魚、野菜、調味料という別々の材料が重なっている。

青菜を合わせたチュオタン。

青菜を合わせたチュオタン。 写真の出典

湧金屋で出された料理と小皿。

湧金屋で出された料理と小皿。 写真の出典

魚の姿が見えない汁に、
ドジョウの仕事がある。

粉と香り
04

エゴマの粉と、
山椒の仲間。

汁に添える粉の薬味は、一括して唐辛子ではない。エゴマの粉は粒の質感と香りを足し、チョピなど山椒の仲間の薬味は、独特の香りを利かせる。どの粉をどう出すかは店の型によって変わる。

刻んだ青唐辛子やにんにくを添える店もある。薬味が多く見える食卓でも、全てを一度に入れるための義務ではない。汁をそのまま見てから少しずつ加えれば、魚と葉の味に、どの香りが重なるかを確かめられる。

黒い鍋の褐色の汁。

黒い鍋の褐色の汁。 写真の出典

湧金屋の店内の食卓。

湧金屋の店内の食卓。 写真の出典

ソウルの老舗
05

湧金屋の入口と、
店内の食卓。

湧金屋は1932年創業の食堂として観光公社が紹介する。掲載写真では、ダドンギルにある店の外観と、店内の食卓を見ることができる。南原の地名が強い料理にも、ソウルで続く別の系統の店があることを、実際の場所の写真が伝える。

創業年は、この店が料理を受け継いできた時間を示す。チュオタンそのものが1932年に誕生した、という意味ではない。店の歴史と料理全体の歴史を分けると、古い看板や建物の話も、誇張せずに読み応えのある話になる。

清道で出されたチュオタンの食卓。

清道で出されたチュオタンの食卓。 写真の出典

仕込みの違い
06

魚を崩す工程が、
汁の見え方を変える。

すりつぶした型では、魚の形を小さくし、汁や野菜とまとめる工程が食感の中心になる。丸ごとの型は、魚そのものを食べる形が器に残る。同じドジョウを使っていても、魚をどこまで崩すかによって、食べるときの動作も変わる。

葉や茎を使う型では、煮た野菜の質感も重要になる。魚の汁だからといって、魚だけで味が決まるわけではない。煮た青菜、発酵した調味料、粉の薬味を含めて見ると、見た目の地味な汁が何でできているかを具体的に追える。

粉の薬味を添えたチュオタン。

粉の薬味を添えたチュオタン。 写真の出典

一杯の周り
07

飯とキムチを添えて、
食事として完成する。

チュオタンの食卓には、白い飯とキムチの小皿が並ぶ。すりつぶした魚の汁と飯ではやわらかな食感が続くため、大根などのキムチの歯触りが別の役割を持つ。黒い鍋の接写だけでなく、食卓全体を見ると、汁が一食になる組み合わせが分かる。

南原へ行けば郷土料理の通りを知れ、ソウルの湧金屋を見れば別の型の食堂を知れる。魚の姿があるか、粉の薬味が何か、どこで食べ継がれてきたか。チュオタンはその三つを見比べると、一つの地名では語り切れない汁になる。

ドジョウの汁と野菜。

ドジョウの汁と野菜。 写真の出典

薬味を分けて知る
08

辛い粉と香りの粉は、
同じものではない。

赤い唐辛子、青い刻み唐辛子、エゴマの粉、山椒の仲間の薬味は、それぞれ料理へ加える役割が違う。粉の小皿があるから、全てをこしょうのように同じ味と考えるわけにはいかない。エゴマの粉は汁の中へ粒の質感も加える。

掲載写真には、汁とは別の小皿に粉を置く食卓がある。匙ですくった褐色の汁へどの薬味を加えるかで、一口の香りが変わる。最初から鍋に味を付けた部分と、食べる人が加える部分は別の段階である。

青菜の茎や葉が魚の汁の中へ残ると、すりつぶした材料の中に、目に見える野菜の形が入る。魚が見えないからといって料理が単純なのではない。材料を細かくする工程と、形を残す工程が一杯の中で使い分けられている。

魚の汁の違い
09

切り身、半乾燥、すり身。
魚は別の形で食べられる。

アンコウのアグィチムは、身を切って野菜と赤い味へまとめる。クァメギは冬に半乾燥させ、切って葉などへ包む。チュオタンのすりつぶした型は、魚の材料を汁へ行き渡らせる。どれも魚料理だが、食べる材料の形は違う。

地域の魚を何で調理するかだけでなく、どこまで崩すか、乾かすか、切るかが食べ方を変える。チュオタンは、小さな魚を一杯の汁へ変える仕事を知ると、褐色の鍋の中身を具体的に理解できる。

南原

Chueotangチュオタン

추어탕

ドジョウを煮てすりつぶし、青菜と汁にまとめる南原の郷土料理。

ソウル

Seoul-style Chueotangソウル式チュオタン

湧金屋に代表される、丸ごとのドジョウを使う型。魚の形が器に残る。

馬山

Agwi Jjimアグィチム

아귀찜

アンコウの身を切って野菜と赤い味へまとめる。魚を切り身で食べる料理。

記事を見る →

浦項

Gwamegiクァメギ

과메기

冬に半乾燥させた魚を切って葉などへ包む。汁にしない魚の食べ方。

記事を見る →

基本情報

国・地域
韓国。全羅北道の南原、ソウルのダドンギル、清道など
分類
ドジョウを煮て、すりつぶすか丸ごとで食べる褐色の汁料理
主な材料
ドジョウ、乾燥させた大根の葉や茎、エゴマの粉、山椒の仲間の薬味、青唐辛子、にんにく
味の軸
発酵した調味料の汁に、エゴマの粉と山椒の仲間の香り、唐辛子の辛さを食べる人が足す
調理
煮た魚を細かくし、青菜と汁にまとめる。丸ごとの型は魚の形を残す。粉の薬味は別の小皿
食べる場面
南原の郷土料理。秋の食文化と結びつき、白い飯とキムチの小皿を添えて一食にする
型・地域差
南原のすりつぶす型と、ソウルの湧金屋の丸ごとの型。粉の薬味の出し方は店で変わる
現地名
추어탕(Chueotang)
記録・注記
広寒楼苑の周辺に食堂の通り。湧金屋は1932年創業だが、料理の誕生年ではない

出典

写真(12枚)

  • 1. ドジョウを使うチュオタン。褐色の汁に青い具を合わせる。 / 국립국어원 / CC BY-SA 2.0 kr / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 2. 鍋に盛ったドジョウの汁。 / Dalgial / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 3. 匙を添えたチュオタンの一杯。 / chomjong / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 4. 飯と合わせるチュオタン。 / Dalgial / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 5. ソウルの湧金屋の外観。 / Seefooddiet / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 6. 青菜を合わせたチュオタン。 / Asfreeas / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 7. 湧金屋で出された料理と小皿。 / Seefooddiet / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 8. 黒い鍋の褐色の汁。 / Mar del Este / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 9. 湧金屋の店内の食卓。 / Seefooddiet / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 10. 清道で出されたチュオタンの食卓。 / hyolee2 / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 11. 粉の薬味を添えたチュオタン。 / 도매지기 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 12. ドジョウの汁と野菜。 / chomjong / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。

写真は各原典で作者とライセンスを確認したものです。すべてサイト内に取り込み、本文では明るさ・彩度を控えめに補正して表示します。