芋頭西米露

世界の料理図鑑 台湾

芋頭西米露

芋頭西米露 ユートウシーミールー Taro Sago Soup

ぬるいココナッツミルクに、崩れたタロイモと、小さな透明の粒。甘くて、やさしくて、眠くなる。

夜市の甘味屋台で、白い鍋のなかに白い液体が入っている。よく見ると、紫の塊と透明の粒が浮いている。

NT$60(約280円)。九份でも台北でも見かける、地味だけれど確実に旨い一杯です。

そしてこの一杯には、東南アジアと台湾が混ざっています。

国・地域
台湾全土。香港・東南アジアにも同系のものがある
分類
甘味(温かい/冷たい甘い汁もの)
相場
NT$50〜70(約235〜330円)
主な材料
タロイモ(芋頭)、西米(サゴ/タピオカの小粒)、ココナッツミルクまたは牛乳、砂糖
甘さ
しっかり甘い。豆花より甘い
温度
温と冷の両方がある。冬は温、夏は冷
食べる場所
甘味専門店・夜市の屋台
ベスト時間
夜。歩き疲れた締めに
一人前
1杯。甘いので他の甘味と重ねると重い
持ち歩き
カップに入れてもらえば階段でも飲める。芋圓より運びやすい

01一口目に来るもの

最初に来るのはココナッツの香りです。甘く、ねっとりした匂いが、匙を近づけた時点で立ち上がる。

口に入れると、汁がとろりとしている。牛乳よりも重く、しかしクリームほどではない。

そこにタロイモの塊が崩れる。煮えすぎるくらい煮えていて、匙で押すと粉状にほどける。栗と里芋の中間のような、粉っぽくて甘い香り。

そして最後に、西米(サゴ)の小さな粒がぷちぷちと当たる。タピオカより小さく、直径2〜3mm。噛むというより、舌の上で転がる。

甘い、ぬるい、やわらかい。三拍子そろって、食べ終わるころには眠くなります。

02味と食感

タロイモ(芋頭=ユートウ)は台湾の甘味に欠かせない食材です。大甲(台中)産のものが最高級とされ、粘りと香りが強い。

煮えたタロイモは崩れて汁に溶け出します。だから食べ進むほど汁が濃く、紫がかっていく。最初と最後で味が変わるのがこの甘味の面白さです。

西米(シーミー)はサゴヤシの澱粉から作る小粒の球。タピオカと同じような見た目ですが、こちらはずっと小さく、色も透明。芯まで火が通ると完全に透き通ります。

汁のベースはココナッツミルクか牛乳、あるいは両方。ココナッツのほうが香りが強く、牛乳のほうが軽い。台湾では両方使う店が多い。

甘さは豆花よりはっきりしています。これは「飲みもの寄りのデザート」だと思ったほうがいい。

西米(サゴ)とタピオカの違い

西米とタピオカは混同されがちですが、本来は別のものです。

西米はサゴヤシの幹から取った澱粉。東南アジア原産で、粒が小さく(2〜3mm)、透明。

タピオカ(珍珠)はキャッサバの根から取った澱粉。粒が大きく(7〜10mm)、黒糖で色をつけるので黒い。

ただし現代では、西米の名で売られているものもキャッサバ澱粉製であることが多い。実質的にはサイズの違いと思っておけば足ります。

西米(サゴ)珍珠(タピオカ)
原料本来はサゴヤシ。現在はキャッサバもキャッサバ
大きさ2〜3mm7〜10mm
色透明黒(黒糖で着色)
食感舌で転がる。ぷちぷち噛み応えがある。もちもち
使われ方甘い汁ものミルクティー
芋頭西米露
西米(サゴ)の乾燥した粒。茹でると透き通る
芋頭西米露
手のひらの上の西米。タピオカより明らかに小さい
芋頭西米露
乾燥したサゴ(インドのサブダナ)。茹でる前は白く不透明な粒
ココナッツミルクに浮かぶ小粒のタピオカ

第 二 章

東南アジアの技法と、台湾の芋

かき氷仕立ての一杯。夏はこの形で出す店が多い

03食べ方の作法

匙で食べます。ストローで飲む形式の店もある。

混ぜてから食べる——これが豆花との違いです。タロイモが底に沈んでいるので、混ぜないと最初は汁だけになる。

温冷は注文時に選べます。「熱的(ラーダ)」「冰的(ビンダ)」。

持ち帰りカップに入れてもらえるので、歩きながら飲める数少ない甘味です。九份の階段でも、これなら崩れる心配がない。

甘いので、これを食べるなら他の甘味は一つ減らすくらいでちょうどいい。

芋頭西米露
黒いタピオカを使った一杯。西米より食感が重くなる

食べ進むほど汁が濃くなる。芋が溶けているからだ。芋頭西米露

04注文のしかた

「芋頭西米露(ユートウ シーミールー)」。長いので、メニューを指させば確実です。

甘味店には似た名前の品が並びます。紫米粥(黒米のお粥)、綠豆湯(緑豆の甘い汁)、紅豆湯(小豆汁)、薏仁湯(ハトムギ)。どれもNT$50〜70。

タロイモが好きなら芋圓や芋泥(タロイモペースト)も同じ店にあります。

サイズは1種類の店が多い。持ち帰りは「外帶(ワイダイ)」。

芋頭西米露
匙ですくった黒いパール。シロップをまとって艶が出ている
芋頭西米露
牛乳をかけた豆花に芋圓・タピオカ・芋泥をのせた一杯
甘い汁ものの相場(2026年8月時点の目安)価格
芋頭西米露NT$50〜70/約235〜330円
綠豆湯(緑豆汁)NT$40前後/約190円
紅豆湯(小豆汁)NT$45前後/約210円
薏仁湯(ハトムギ)NT$50前後/約235円
芋圓(比較用)NT$55前後/約260円

05どこで食べる

甘味専門店(甜品店)と夜市の屋台。豆花を出している店にはたいてい置いてあります。

九份では基山街の甘味屋台で買えます。持ち帰りカップにしてもらえば階段でも飲めるので、芋圓や豆花より機動力がある。

台北なら永康街、寧夏夜市、師大夜市。デパートのフードコートにもあります。

タロイモの旬は秋から冬。この時期は香りが明らかに違います。夏場は冷たいものが主流になります。

値段はどこもほぼ同じ。差が出るのはタロイモの量と煮え具合です。塊が大きく、しかも崩れかけている店が当たり。

芋頭西米露
平鍋で煮られる粉圓(タピオカ)。苗栗・南庄の店先で撮影

06歴史と背景

西米露は華南から東南アジアにかけて広く見られる甘味で、台湾独自のものではありません。

サゴヤシは東南アジア原産で、その澱粉から作る西米は、マレー半島や広東を経由して華南に広まりました。ココナッツミルクと合わせるのは東南アジア由来の食べ方です。

台湾でタロイモと組み合わせるようになったのは、台湾がタロイモの一大産地だから。とくに台中・大甲のタロイモは品質が高く、甘味の材料として重宝されてきました。

つまり芋頭西米露は、東南アジアの技法と台湾の作物が出会った一杯です。台湾の甘味には、こういう外来と土着の混ざり方をしたものが多くあります。

07似ている料理

香港の楊枝甘露(マンゴー西米露)は、同じ西米をマンゴーとポメロで仕上げたもの。世界的にはこちらのほうが有名かもしれません。

マレーシアのブブル・チャチャは、タロイモとサツマイモをココナッツミルクで煮た甘味。芋頭西米露にきわめて近い。

タイのサークーも同じサゴの甘味。

日本のタピオカココナッツは、粒が大きくなった同系のもの。

「澱粉の粒+ココナッツ+芋」という組み合わせは、アジアの熱帯・亜熱帯に共通する甘味の型です。

08豆知識

・「西米」は本来サゴヤシ澱粉のことですが、現在はキャッサバ澱粉で作られたものも同じ名で売られています。

・西米は茹でたあと冷水で締めると粒が立ちます。ぼやけた食感の店は締めが甘い。

・タロイモは生では強いえぐみがあり、素手で扱うと手がかゆくなります。必ず加熱してから使う——だから甘味では常に煮崩れる直前まで火が入っています。

・タロイモは台湾では「芋頭」、日本のサトイモとは品種が違います。日本のものより大きく、粘りが強い。

為替レート:1台湾ドル(NT$)=約4.7円で換算しています(2026年8月時点)。価格・営業時間は変動します。現地で必ずご確認ください。

写真はすべて Wikimedia Commons より。各画像の作者とライセンスは以下のとおりです。

価格は2026年8月時点の現地相場の目安です。

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