台湾・新北市 ―― 山の斜面の提灯街
九份の赤提灯に、
灯がともるまで。
台北から1時間15分。金鉱で栄えた山の町は、日が落ちると別の顔になる。芋圓、豆花、魯肉飯——屋台と茶楼で二十四品を食べながら、階段を上ります。
い ま こ こ
九份は、山の斜面にへばりついた町です。道はほぼ階段。すれ違うのがやっとの路地に、茶楼と土産物屋と食べ物屋がびっしり詰まっている。昼間はただの古い町ですが、日没から30分——赤提灯に灯が入る瞬間に、世界が変わります。
この記事は、羽田を出るところから、提灯が灯る階段でお茶を飲むところまで、食べたものの値段を全部書きながら連れて行きます。
- 場所
- 台湾・新北市瑞芳区。台北から東へ約35km、海を見下ろす山の斜面
- ビザ
- 日本人は90日以内の観光は査証不要(2026年8月時点)。パスポート残存は滞在日数以上
- 飛行時間
- 東京から直行 約4時間。時差はマイナス1時間
- 通貨
- ニュー台湾ドル(NT$)。1元=約4.7円(2026年8月時点)。本記事の円換算はこのレート
- 総予算
- 1人 6〜12万円/3泊4日。航空券4〜8万円、現地物価は日本の6〜7割
- ベスト時間
- 日没の1時間前に到着。明るい町→夕景→提灯の3つを一度に見られる
- 混雑
- 土日祝と17〜19時が激混み。平日の朝いちばんは驚くほど静か
第 一 章
桃園着。
まずは悠遊カードを買う
東京→台北 直行約4時間・往復4〜8万円/空港MRT 台北駅まで35分・NT$150(約705円)
い ま こ こ
台湾は近い。羽田を朝に出れば、昼過ぎには台北で麺をすすっています。桃園国際空港に着いたら、入国審査を抜けて最初にやることは悠遊カード(EasyCard)の購入。カード代NT$100(約470円)+チャージで、MRT・バス・コンビニがぜんぶこれ一枚で済みます。



市内へは空港MRTが確実。直達車(急行)なら台北駅まで35分・NT$150(約705円)。渋滞の影響を受けません。


空港を出る前に、まず一杯。桃園空港のフードコートでも、台湾の味はもう始まっています。タピオカミルクティー(NT$50〜70/約235〜330円)——発祥地なので日本の半額以下です。
注文時に甘さと氷を指定できるのが台湾式。「微糖(ウェイタン)」「少冰(シャオビン)」と言えば、甘さ3割・氷少なめになります。太いストローで吸い上げると、タピオカがもちっと歯を押し返し、黒糖の香ばしさが後から来る。日本のものより弾力が強く、噛むほど甘みが出ます。



第 二 章
台北で腹ごしらえ。
まず麺と小籠包から
牛肉麺 NT$150〜250(約705〜1,175円)/小籠包10個 NT$220前後(約1,035円)
い ま こ こ
九份へ向かう前に、台北で腹を作っておきます。空腹のまま九份に着くと、階段を上る前に力尽きます(そして九份の店は夕方から混みます)。
❶ 牛肉麺(ニウロウミェン)——台湾の国民食。八角と醤油で煮込んだ牛バラ肉と麺。NT$150〜250(約705〜1,175円)。赤い「紅焼」と澄んだ「清燉」があり、初めてなら紅焼を。



❹ 小籠包は外せません。蒸籠10個でNT$220前後(約1,035円)。レンゲに載せ、皮を破ってスープを飲んでから、生姜と黒酢をつけて食べる——この順番が正解です。



そして❼ タピオカミルクティー。発祥地の台湾では日本の半額以下、NT$50〜70(約235〜330円)。氷と甘さを「微糖・少冰」のように指定できます。



九份へ向かう前に、台北で腹を作ります。空腹のまま行くと階段を上る前に力尽きるうえ、九份の店は夕方から混みます。
牛肉麺(NT$150〜250/約705〜1,175円)——八角と醤油で煮込んだ牛バラ肉と小麦麺。赤い紅焼は、スープを一口すすると八角の甘い香りが鼻に抜け、そのあとに醤油と牛脂のコクが来る。肉は箸で切れるほど柔らかく、スジは口の中で溶けます。澄んだ清燉は塩ベースであっさり、二日目向き。
小籠包(10個 NT$220前後/約1,035円)は食べる順番が決まっています。レンゲに載せ、皮の横を少し破ってスープを飲んでから、生姜の千切りと黒酢をつけて口へ。いきなり噛むと熱いスープで火傷します。名店はひだが18本、皮は透けるほど薄い。






第 三 章
九份への行き方。
バスか、電車か
直行バス1062番 NT$105(約495円)・約1時間15分/電車+バスなら瑞芳経由 計NT$91(約430円)
い ま こ こ
九份への行き方は大きく二つ。直行バスか電車+バスです。
[A]直行バス 1062番——MRT忠孝復興駅から乗り換えなしで九份まで。NT$105(約495円)・所要1時間15分〜1時間45分。悠遊カードで乗れます。座れれば楽ですが、週末は渋滞と行列を覚悟。
[B]電車+バス——台北駅から台湾鉄道で瑞芳(ルイファン)駅へ(自強号でNT$76=約355円・約50分)。駅前から788番か825番のバスでNT$15(約70円)・約15分。渋滞に強く、確実です。


バスは山道をぐんぐん上ります。カーブが続くので酔いやすい人は前方の席へ。窓の外に海が見えたら、もうすぐ九份です。
第 四 章
九份到着。
まだ明るいうちに歩く
基山街(メインの路地)は全長約400m・入場無料・店は10時〜20時ごろ
い ま こ こ
バス停で降りると、いきなり細い路地の入口に立たされます。基山街(ジーシャンジエ)——屋根に覆われた商店街で、幅は2mほど。人の流れに乗って進むしかありません。
九份は1890年代の金鉱発見で急成長した町。最盛期は「小上海」と呼ばれ、日本統治時代には映画館まであった。金が枯れて寂れたあと、1989年の映画『悲情城市』のロケ地になって復活しました。



もう一本の主役が豎崎路(シューチールー)——階段だけの道です。両脇に茶楼が建ち並び、赤提灯が連なる。九份の写真の9割はこの階段で撮られています。





第 五 章
路地で食べる。
芋圓のもちっと、豆花のつるん
芋圓 NT$55(約260円)/豆花 NT$50〜60(約235〜280円)/屋台の一品 NT$30〜100(約140〜470円)
い ま こ こ
ここからが本番です。基山街は屋根つきの細い路地に食べ物屋がびっしり並び、歩きながら少しずつ食べるのが正しい歩き方。両手が塞がるので、荷物は宿かコインロッカーに。
まず芋圓(ユーユエン/NT$55・約260円)。九份最大の名物で、タロイモとサツマイモを練った団子です。食感が独特で、白玉より重く、グミより柔らかい——噛むともちっと押し返し、次にほろりと崩れる。芋の素朴な甘みだけで、砂糖の甘さではありません。
温かい汁と冷たいかき氷が選べます。冬は温かい汁、夏はかき氷。汁は生姜入りの甘いスープで、体が温まる。練乳追加はNT$10(約47円)で、かけると一気に濃厚になります。



豆花(ドウホァ/NT$50〜60・約235〜280円)は柔らかい豆腐プリン。スプーンですくうと崩れるほど柔らかく、大豆の香りがふわっと立つ。甘い汁に落花生や緑豆を浮かべて食べます。落花生は柔らかく煮てあり、歯を当てるとほろりと潰れる。歩き疲れた体に、この温度と甘さが効きます。



甘いものの合間に塩気を。蚵仔煎(オアジェン/牡蠣オムレツ・NT$80・約375円)は、片栗粉の生地で牡蠣と青菜を包み焼いたもの。とろとろの生地の中から小粒の牡蠣がぷりっと出てくる。上からかかる甘辛い赤いタレが台湾の味で、甘さが強め。牡蠣が苦手ならエビ版(NT$90・約425円)があります。
肉圓(バーワン/NT$60・約280円)は台湾人のソウルフード。サツマイモ澱粉の半透明の皮に豚肉と筍のあんを包み、低温の油で温めたもの。皮はぷるぷるしていて、箸で切ると弾力で押し返す。中の肉あんは甘辛く、皮の無味とのコントラストが癖になります。









※ 2026年8月時点の目安(1元=約4.7円換算)。店により差があります。九份の店は現金のみが多いので小額紙幣を多めに。夕方以降は行列ができるので、食べ歩きは明るいうちに済ませて、日没後は茶楼に座るのが賢い回り方です。
世 界 の 料 理 図 鑑
この旅で食べた料理は、1品ずつ図鑑ページにしています。味・食感・食べ方の作法・注文のしかた・歴史まで、写真9枚で。
牛肉麵(ニウロウミェン) NT$150〜250(約705〜1,175円)→小籠包(シャオロンパオ) 10個 NT$220前後(約1,035円)→蝦仁燒賣(シャーレンシャオマイ) 10個 NT$200前後(約940円)→珍珠奶茶(ヂェンヂューナイチャー) NT$50〜70(約235〜330円)→四季春茶(スージーチュンチャー) NT$35前後(約165円)→滷肉飯(ルーローハン) 小碗 NT$30〜50(約140〜235円)→蚵仔煎(オアジェン) NT$80前後(約375円)→肉圓(バーワン) NT$60前後(約280円)→台灣香腸(シャンチャン) 1本 NT$40前後(約190円)→雞排(ジーパイ) NT$80前後(約375円)→滷味(ルーウェイ) 2〜3人 NT$100〜150(約470〜705円)→芋圓(ユーユエン) NT$55前後(約260円)→豆花(ドウホァ) NT$50〜60(約235〜280円)→芋頭西米露(ユートウシーミールー) NT$60前後(約280円)→花生捲冰淇淋(ホアシェンジュエンビンチーリン) NT$50前後(約235円)→草仔粿(ツァオアークエ) NT$30前後(約140円)→世界の料理図鑑トップ(十六品を一覧で見る)→
第 六 章
茶楼に座る。
そして、灯がともる
茶楼のお茶席 1人 NT$300〜500(約1,410〜2,350円/茶葉代+席料)・2時間ほど滞在できる
い ま こ こ
日没の30分前になったら、茶楼のテラス席を確保します。九份の茶楼は1人あたり茶葉代+席料でNT$300〜500(約1,410〜2,350円)。安くはありませんが、2時間ほどゆっくりでき、湯とお茶請けがつきます。
店員が炭火の湯沸かしと茶器一式を持ってきて、最初の一杯だけ淹れ方を教えてくれます。あとは自分で。急須に茶葉、湯を注いで20秒、小さな杯へ。二煎目、三煎目と香りが変わっていくのを、暮れていく海を見ながら追いかけます。


そして日没。街灯より先に、軒下の赤提灯に灯が入ります。上から下へ、階段沿いに順番に。数分で、昼間の古い町が「あの写真の九份」に変わります。




誰も写真を撮らずに、ただ見ている。


第 七 章
ついでに十分へ。
線路の上で願いを飛ばす
天灯(ランタン)1個 NT$200〜250(約940〜1,175円)・平渓線 瑞芳から約40分 NT$41(約190円)
い ま こ こ
九份から足を伸ばすなら十分(シーフェン)。瑞芳から平渓線というローカル列車で約40分、NT$41(約190円)。ここの名物は「天灯(ティエンダン)」——紙のランタンに願いを書いて空へ飛ばす行事です。
驚くのは、それを線路の上でやること。十分老街は線路の両脇に店が並び、列車が来ないあいだは線路が広場になります。列車が近づくと店の人が「来るよ!」と声をかけ、みんな一斉に脇へ避ける。






第 八 章
帰り道。
最終バスに気をつけて
九份の帰りは要注意です。台北行きの直行バス1062番の最終は23時前後、瑞芳行きバスは21時台で終わることがあります。20時を過ぎたら帰りの算段を。
もし逃しても、タクシーで瑞芳駅までNT$250前後(約1,175円)。台北まで直行なら NT$1,200前後(約5,640円)。複数人ならタクシーのほうが結果的に楽です。
あるいは——九份に泊まってしまう手もあります。日帰り客が去った後の、22時以降の静かな階段は、この町のもう一つの顔です。

※ 2026年8月時点の目安(1元=約4.7円換算)。運賃・入場料は変更されることがあります。九份は坂と階段の町なので歩きやすい靴で。雨が非常に多い地域(年間200日以上)なので折りたたみ傘は必携。店の多くが現金のみです。
答「日没の1時間前に着いてください。両方見られます」
※ 2026年8月時点の目安(1元=約4.7円換算)。運賃・入場料は変更されることがあります。九份は坂と階段の町なので歩きやすい靴で。雨が非常に多い地域(年間200日以上)なので折りたたみ傘は必携。店の多くが現金のみです。


写真:Wikimedia Commons(ライセンスは出典台帳に全件記載)/料金は台湾鉄道・基隆客運・各店公表値をもとにした2026年8月時点の目安


