皿いっぱいの蚵仔煎に、赤いタレをたっぷりかけた一皿
台湾閩南・潮汕系焼く・揚げる・燻す

蚵仔煎

ô-á-chianOyster Omelette

台湾の夜市で広く売られている鉄板料理。小粒の牡蠣と卵を、サツマイモ澱粉の生地で焼き固め、甘辛い赤いたれをかけて仕上げる。

だいたい 330〜425円NT$70〜90/2026年8月時点の目安

概要
01

牡蠣と卵を、サツマイモ澱粉の生地で焼き固める

たれをかけて仕上げる、台湾の夜市を代表する鉄板料理のひとつ。

熱した鉄板に小粒の牡蠣を広げ、サツマイモ澱粉を水で溶いた生地を回しかける。そこへ卵を割り入れ、小白菜や春菊などの青菜を重ね、固まってきたところで返す。皿に移し、赤いたれをかけて仕上げるのが一般的な作り方とされる。

屋台では一枚ずつ注文を受けて焼かれ、価格は台北の夜市でおおむねNT$70〜90(約330〜425円)とされる。2017年に台北市内の夜市で行われた人気投票では、臭豆腐、鶏排とともに上位三品に挙げられている。

士林夜市の屋台で、鉄板の上の蚵仔煎を返す焼き手

鉄板で焼いているところ。生地を流し、卵と青菜を重ねてから返す。

味と特徴
02

生地の正体は、小麦粉ではなくサツマイモ澱粉

小麦粉のようには膨らまない。半透明のまま固まり、独特の粘りが残る。

生地に使われるのはサツマイモの澱粉で、小麦粉のようには膨らまない。加熱すると半透明のまま固まり、もちもちとは異なる粘りのある食感になる。台湾ではこの状態を外酥內Q(外はサクサク、中はQ)と表現し、Qは弾力を指す言葉としてタピオカなどにも使われる。

たれは醬油膏(とろみのある甘い醤油)と甜辣醬(甘辛い味噌だれ)を合わせたものが基本で、配合は店ごとに異なる。見た目の赤さに反して辛みは強くなく、甘みが前に出る味付けとされる。

蚵仔煎のクローズアップ。青菜の緑と赤いタレ

甘い、ぬめる、磯、苦い。ひと口のなかで、味が四回変わる。赤いたれの甘さ、サツマイモ澱粉の粘り、小粒の牡蠣、青菜のほろ苦さの順に来るとされる。

材料と産地
03

使われるのは、小粒のむき身の牡蠣

この料理に使われる牡蠣は蚵仔(オアー)と呼ばれ、小粒のむき身が使われることが多い。台湾で養殖されているカキは、DNAを使った調査で葡萄牙牡蠣(Crassostrea angulata)であることが報告されている。磯の香りは強くなく、卵の甘みと合わせやすいと説明される。

産地は西側の浅い海に集中している。彰化の王功や鹿港は三百年以上前から牡蠣を養殖してきた地域で、かつては海に竹を立てて牡蠣を付着させる插篊法が用いられ、現在は平掛け式が主流とされる。ほかに嘉義の東石・布袋、台南、澎湖などが知られる。

タレをかける前の蚵仔煎。小粒の牡蠣と卵、青菜が見える
歴史と由来
04

サツマイモが伝わったことで生まれた、と伝えられる

芋が福建に伝わったのは記録に残る話、料理の始まりは言い伝えとして語られる。

陳振龍は、十六世紀の終わり(1593年ごろ)にルソンのマニラから福建へサツマイモを持ち帰った人物として知られる。蚵仔煎については、その後に福建が干ばつに見舞われた際、育ちやすいこの芋の澱粉と地元で獲れる牡蠣を合わせて焼いたのが始まりだという伝承がある。芋の伝来と、料理の起源は分けて考える必要がある。

台湾には別の伝承もある。1661年、オランダ軍と対峙した鄭成功の軍が食糧に窮し、その場にあった芋の粉と海産物を混ぜて焼いたという話で、台南を中心に語られる。どちらも言い伝えであり、史料で確認された起源ではない。

確かなのは、福建南部(閩南)や潮汕の人々の料理が台湾に渡り、独自に発展したという点である。浅い海で育つ牡蠣と、痩せた土地でも育つ芋という二つの条件が、この料理の形を決めている。

皿に盛った蚵仔煎。青菜が透けて見える2皿並んだ蚵仔煎
1908年旗津で夜市の記録

天后宮の前の空き地。18時〜24時の営業だった

TOP32017年「台北夜市打牙祭」票選

臭豆腐・蚵仔煎・雞排が上位3品

300年以上王功・鹿港の牡蠣養殖

彰化の海辺。竹を刺す「插篊」から、いまは平掛け式へ

屏東の湖の中にある蚵仔煎の屋台で働く人たち
広がり
05

同じ料理が、地域ごとに名前と作り方を変える

牡蠣と澱粉と卵を組み合わせた料理は、閩南・潮汕から東南アジアにかけて広く分布している。潮汕では蠔烙(オールア)と呼ばれ、鴨の卵とサツマイモ澱粉を使い、魚醤や唐辛子だれを別に添える。香港やマカオでは煎蠔餅といい、小麦粉を混ぜて揚げ焼きにし、卜卜脆と呼ばれる軽い歯ざわりに仕上げる店もある。

シンガポールやマレーシアでは蠔煎と呼ばれ、卵の比率が高いのが特徴とされる。マレーシアでは唐辛子だれを生地に炒め込むことが多い。タイではホイトート(หอยทอด)、「貝を揚げたもの」という意味の名前で知られ、2017年のWorld Street Food Congressではタイを代表する屋台料理のひとつに挙げられている。

台湾のものは閩南式にあたり、鶏卵とサツマイモ澱粉を使う。焼く際に豚の脂を用いるのも閩南式の特徴とされる。

台湾

蚵仔煎オアジェン

ô-á-chian

牡蠣を先に焼き、あとから粉の液・卵・青菜を重ねる。甘辛い赤いタレを上からかける。

福建・厦門

蚵仔煎オアジェン

海蠣煎とも

最初から牡蠣と粉を混ぜて鉄板へ。サツマイモ粉をまぶし、油を回してほぐす。

潮汕

蠔烙オールア

o luah

鴨の卵とサツマイモ粉。魚露(ナンプラー系)と唐辛子だれを別添えで。

香港・マカオ

煎蠔餅ジンホウベン

jīn hòuh béng

鴨の卵と粉、小麦粉を使う店も。揚げ焼きでカリッと(卜卜脆)。

シンガポール・マレーシア

蠔煎オールア

orh luak

潮州系。卵の比率が高く、マレーシアでは唐辛子だれを生地に炒め込む。

タイ

หอยทอดホイトート

hoi thot

「貝の揚げ物」の意。揚げ寄りで香ばしい。2017年の World Street Food Congress でタイの屋台料理の三傑に。

フィリピン

Oyster cakeオイスターケーキ

英語名で呼ばれる。

中国北方

牡蛎煎ムーリージェン

牡蠣烙とも

北方の呼び方。潮汕・閩南から広まった。

ビニールを敷いた皿で出てきた蚵仔煎ビニールを敷いた皿の蚵仔煎。タレが厚くかかる箸を添えた蚵仔煎
仲間と変わり種
06

牡蠣を使わない蝦仁煎や蛋煎も並ぶ

同じ屋台では、牡蠣の代わりにエビを使う蝦仁煎、卵だけで焼く蛋煎が売られていることが多い。イカを使う花枝煎を出す店もある。価格は牡蠣を使うものとほとんど変わらない。

士林夜市の蚵仔煎。卓上の品書きの上に置かれた皿

基本情報

国・地域
台湾。台南・鹿港など海に近い地域が知られる
分類
鉄板焼き・粉もの
主な材料
小粒の牡蠣、卵、サツマイモ澱粉、小白菜または春菊、醬油膏、甜辣醬
食べられる場所
夜市の屋台、専門の食堂
価格の目安
NT$70〜90(約330〜425円)/2026年8月時点
現地名
蚵仔煎(台湾語 ô-á-chian)
よく似た料理
蚵仔麵線(台湾)、蠔烙(潮汕)、煎蠔餅(香港)、蠔煎(シンガポール・マレーシア)、ホイトート(タイ)

出典

写真(11枚)

  • 1. 皿いっぱいの蚵仔煎に、赤いタレをたっぷりかけた一皿 / Adonis Chen from Tainan, Taiwan / CC BY 2.0 / 原典
  • 2. 士林夜市の屋台で、鉄板の上の蚵仔煎を返す焼き手 / Prince Roy from Shilin Night Market in Taipei / CC BY 2.0 / 原典
  • 3. 蚵仔煎のクローズアップ。青菜の緑と赤いタレ / Chi-Hung Lin / CC BY-SA 2.0 / 原典
  • 4. タレをかける前の蚵仔煎。小粒の牡蠣と卵、青菜が見える / YUCHIA CHUNG from Irvine, USA / CC BY 2.0 / 原典
  • 5. 皿に盛った蚵仔煎。青菜が透けて見える / Flickr user 黃 zero. / CC BY-SA 2.0 / 原典
  • 6. 2皿並んだ蚵仔煎 / Night Tracks at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 / 原典
  • 7. 屏東の湖の中にある蚵仔煎の屋台で働く人たち / Lordcolus from Taoyuan country, Taiwan / CC BY 2.0 / 原典
  • 8. ビニールを敷いた皿で出てきた蚵仔煎 / Morgan Calliope / CC BY 2.0 / 原典
  • 9. ビニールを敷いた皿の蚵仔煎。タレが厚くかかる / LWYang from USA / CC BY 2.0 / 原典
  • 10. 箸を添えた蚵仔煎 / istolethetv from NYC, USA / CC BY 2.0 / 原典
  • 11. 士林夜市の蚵仔煎。卓上の品書きの上に置かれた皿 / Ishwar from Bangalore, India / CC BY 2.0 / 原典

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA)に従って掲載しています。本文中の装飾は本サイト用に用意した素材で、料理写真の代わりには使用していません。

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