世界の料理図鑑 スイス
メレンゲと二重クリーム
Meringue mit Doppelrahm メレンゲ・ミット・ドッペルラーム Meringue with Double Cream
メレンゲは口の中で崩れて消え、クリームはスプーンが立つ。この極端な対比だけでできた菓子。
皿の上に、白い塊が二つ三つ。その横に、山盛りの白いクリーム。それだけ。
メレンゲはさくっと崩れて口の中で消える。クリームはスプーンが立つほど固い。
材料は卵白と砂糖とクリームだけ。スイスの菓子のなかで、これほど単純で、これほど極端なものはありません。
- 国・地域
- スイス全土。メレンゲはベルン州のマイリンゲン発祥説が有力
- 分類
- 菓子・デザート
- 相場
- CHF 11〜15(約2,200〜3,000円)
- 主な材料
- 卵白、砂糖、ドッペルラーム(乳脂肪45%以上の濃厚クリーム)、季節のベリー
- 甘さ
- メレンゲはかなり甘い。クリームは無糖
- 食べる場所
- レストランのデザート・カフェ
- ベスト時間
- 食後。または午後のお茶に
- 一人前
- メレンゲ2〜3個とクリーム。かなり甘い
- 季節
- 通年。夏はベリーを添える
- 注意
- 見た目より甘い。食後には重い
01一口目に来るもの
スプーンでメレンゲを割ると、さくっという乾いた音がします。外側は薄い殻のようで、中は空洞に近い。
口に入れると、噛む前に溶けはじめる。舌の温度で砂糖が溶け、泡が消えて、甘さだけが残る。かなり甘い。
そこにクリームをつける。ドッペルラームは乳脂肪45%以上で、日本の生クリームより格段に濃い。ホイップしていないのにスプーンが立つ。
この二つが口の中で出会うと、甘さが脂で薄まって、ちょうどよくなる。メレンゲ単体では甘すぎ、クリーム単体では味がない。二つで一つの菓子です。
02味と食感
メレンゲは卵白と砂糖を泡立てて、低温で長時間乾かすように焼いたもの。焼くというより乾燥させる。100度以下のオーブンで2〜3時間かけます。
だから色がつかない。真っ白なのが良いメレンゲで、茶色く焼き色がついたものは温度が高すぎた証拠。
ドッペルラーム(Doppelrahm)は「二重クリーム」という意味。乳脂肪45〜55%の濃厚な生クリームで、スイスのグリュイエール地方のものが有名です。
泡立てずにそのまま出すのが正式。泡立てると空気が入って軽くなり、メレンゲとの対比が弱まるからです。
夏はベリーを添えます。酸味が入ると全体が締まるので、これがあるとかなり食べやすい。


ドッペルラームとは何か
この菓子の主役は、実はメレンゲではなくクリームかもしれません。
ドッペルラーム(Doppelrahm)は乳脂肪45%以上のクリーム。日本の生クリーム(35〜47%)の上限に近く、イギリスのクロテッドクリームに匹敵する濃度です。
とくに有名なのがグリュイエール地方のドッペルラーム。同じ地方のチーズと同じ牛乳から作られ、AOP認証を持つものもあります。
泡立てなくてもスプーンが立つ。これが「二重」の意味するところで、日本の感覚では生クリームというよりバターに近い。
グリュイエール地方では、これをベリーだけにかけて食べるデザート(Crème double avec meringue et fraises)も定番です。

第 二 章
ベルン州の村で、パン職人が焼いた
ベリーを添えた形。夏はこの組み合わせが定番
03食べ方の作法
メレンゲを割って、クリームをつけて食べる。それだけです。
クリームは多めにつけるのが正解。メレンゲだけだと甘すぎるので、脂で薄める必要がある。
ベリーが添えられていたら、一緒に。酸味が入ると最後まで食べきれます。
量は多い。食後のデザートとしてはかなり重いので、フォンデュやラクレットの後だと苦しい。午後のお茶にするほうが向いています。
コーヒーか紅茶と一緒に。甘いものには苦い飲みものが要ります。

片方は消え、片方は立つ。この二つでしか成立しない菓子。メレンゲと二重クリーム
04注文のしかた
「Meringue mit Doppelrahm(メレンゲ・ミット・ドッペルラーム)」。フランス語圏では「Meringue à la crème double」。
デザートメニューにあります。CHF 11〜15。
ベリー入りかどうかは季節次第。「mit Beeren?(ミット ベーレン)」と聞けば教えてくれます。
量が多いので、2人で分けるのも普通です。店員に言えば取り皿をくれます。
メレンゲだけをパン屋で買うこともできます。1個CHF 2〜3。持ち帰って宿でクリームをつける手も。
05どこで食べる
レストランのデザートメニューにあります。ツェルマットの店でも、フォンデュやラクレットの後のデザートとして置いている。
カフェの午後のメニューにも。こちらのほうが向いています——食事の後だと重すぎるので。
本場はベルン州のマイリンゲンとその周辺。メレンゲ発祥の地とされる村です。
グリュイエール地方へ行く機会があれば、ドッペルラームの本場です。同じ地方のチーズと合わせて味わう価値がある。
スーパーにもメレンゲとドッペルラームが別々に売っています。合計CHF 8前後で作れるので、宿で食べるほうが安い。

06歴史と背景
メレンゲの発祥については諸説ありますが、スイス・ベルン州のマイリンゲンという村で18世紀に生まれたという説が有力です。
この村の名前が「Meringue」の語源だとされる。イタリア人のパン職人ガスパリーニがこの地で考案した、という話が伝わっています。
ただしフランスやポーランドにも発祥説があり、決着はついていません。マイリンゲン説を最も熱心に主張しているのはもちろんスイスです。
ドッペルラームと組み合わせる食べ方は、グリュイエール地方で定着したもの。この地方は乳製品の名産地で、チーズもクリームも質が高い。
つまりこの菓子は、スイスが「うちのもの」と主張する二つの産物を一皿に載せたものです。メレンゲの発祥地と、クリームの名産地。
ちなみにマイリンゲンは、シャーロック・ホームズが落ちたライヘンバッハの滝がある村としても知られています。


07似ている料理
オーストラリア・ニュージーランドのパブロバは、大きなメレンゲにクリームと果物を載せたもの。構造はほぼ同じで、こちらは一つの大きな菓子にまとめる。
イギリスのイートン・メスは、メレンゲとクリームといちごを崩して混ぜたもの。混ぜてしまうのが違い。
フランスのイル・フロッタントはメレンゲを煮てカスタードに浮かべる。柔らかい。
イギリスのクロテッドクリームはドッペルラームに最も近い乳製品。スコーンと合わせるのがイギリス式、メレンゲと合わせるのがスイス式です。
08豆知識
・メレンゲは湿気に極端に弱い。雨の日に作ると失敗する。だからパン屋は乾燥した日にまとめて焼きます。
・密閉すれば数週間もつので、土産に向きます。ただし割れやすいので緩衝材が要る。
・スイスには色とりどりのメレンゲもありますが、伝統的には真っ白。着色は現代の商業的なアレンジです。
・「Doppelrahm」の規格は法律で決まっており、乳脂肪45%以上でなければこの名を使えません。
写真はすべて Wikimedia Commons より。各画像の作者とライセンスは以下のとおりです。
- 01/6051 – Meiringen – Rest. Da Ernesto – MostroLuzern – Meringue.JPG / Thisisbossi / CC BY-SA 2.5
- 02/" 12 – ITALY – cake with cat – fruit Meringue Whipped cream.JPG / Francesca Cesa Bianchi, Milano / CC BY-SA 3.0 it
- 03/Catrin helped make the meringues (17147224155).jpg / Ruth Hartnup from Vancouver, Canada / CC BY 2.0
- 04/Sun on lemon curd and meringues (26946410756).jpg / terri_bateman / CC0
- 05/Cake and Meringue, Europa Cakes, Acland St, St Kilda, Melbourne, Australia.jpg / David Jackmanson / CC BY 2.0
- 06/20210206 123515 (3) Baiser.jpg / Silar / CC BY-SA 4.0
- 07/Animal Meringues – Planet Chocolate, Doncaster.jpg / Alpha / CC BY-SA 2.0
- 08/Baked meringues for Eton mess (21557577465).jpg / terri_bateman / CC0
価格は2026年8月時点のツェルマット周辺の相場の目安です。





