白い丼に平たい麺、豚肉、うずらの卵、砕いたピーナッツ、青ねぎ。奥に丸い焼き煎餅。ダナンで撮影
ベトナム / ホーチミン

ミークアン

Mì Quảng

汁は、麺がひたるほども入っていない

DISH18
スープじゃない。汁は少しだけ!

運ばれてきた丼をのぞくと、汁がほとんど入っていないことに気づく。麺の下に、二すくいか三すくいぶん。フォーやブンボーフエのように麺が泳いでいない。ミークアンは、汁を飲む料理ではなく、汁を麺にからめる料理だ。

そのぶん、汁は濃い。豚の骨と海老の頭でとった出汁を煮つめ、ターメリックとアナトーで色をつけ、魚醤で締める。少量しか入っていないので、一口ごとに全部の味が来る。

麺は平たくて幅が広い。ターメリックで黄色く染めたものが多いが、白いままの店もある。生地を蒸してから折りたたみ、包丁で切る——バインフォーと同じ作り方だが、ミークアンのほうがずっと厚くて、噛みごたえがある。

上には豚肉、海老、鶏、あるいは雷魚。うずらの卵、砕いたピーナッツ、青ねぎ。そして必ず、ごまをふって焼いた丸い米の煎餅がついてくる。これを手で割って丼に入れ、麺と一緒にかき混ぜる。この工程まで含めて、ミークアンだ。

生まれは中部のクアンナム省。ダナンやホイアンのあたりの料理だが、ホーチミンにはクアンナム出身の人が多く、市内のどこでも「Mì Quảng」の看板が見つかる。

幅の広い平たい米麺45,000 VND〜(約270円)汁は二すくいだけ
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皿の解剖

黄色く染めた平たい麺、海老、練りもの、豚肉、生野菜がたっぷりのった一杯
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白い丼に平たい麺とほぐした魚の身、レモングラスの茎、黒こしょう雷魚を入れたもの

具は店ごと。豚と海老、鶏、雷魚、精進のものまである。共通しているのは、幅の広い麺と、少ない汁と、焼き煎餅。

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平たい米麺mì Quảng幅が広くて厚い。ターメリックで黄色く染めたものが多いが、白いままの店もある
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海老tôm頭ごと汁を取るのに使い、身は具にする。海に近い土地の料理らしい使い方
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練りものchả魚や豚のすり身を蒸したもの。黒ごまを混ぜて焼いたものもある
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豚肉thịt heo薄切りにして煮たもの。鶏や雷魚に替える店もある
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生野菜rau sốngレタス、しそ、バナナの花、もやし。丼に沈めて麺と一緒にかき混ぜる
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一口目

味

汁が少ないぶん、濃い

二すくいしか入っていない汁は、そのぶん煮つめてある。ターメリックの土っぽい香り、海老の頭からとった甘み、魚醤の塩気。すべてが麺にからんだ状態で口に入るので、薄まる瞬間がない。

食感

麺が厚い。生野菜が多い

フォーの麺よりずっと厚く、噛むとむちっと弾む。そこへ生野菜のしゃきしゃきと、焼き煎餅のばりばりが混ざる。汁ものというより、汁の少ない和えものに近い食べ心地。

一口目

まず煎餅を割って入れる

添えられた丸い米の煎餅は、飾りではない。手で割って丼に落とし、麺と生野菜ごとかき混ぜる。割った破片が汁を吸って、しんなりしたところとばりばりのところができる。これがこの一杯の面白さだ。

平たい麺に揚げ湯葉、きくらげ、香草。肉を使わない精進の一杯
精進のもの。肉を使わず、揚げ湯葉ときくらげで作る
白い丼に平たい麺、ほぐした魚、レモングラスの茎、香草
雷魚入り。レモングラスの茎が一緒に煮こまれている
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一杯ができるまで

1麺を切る

米の生地を薄く蒸して大きな一枚にし、油を塗って折りたたみ、包丁で幅広に切る。ターメリックを混ぜると黄色い麺になる。

厚めに切るのがミークアンの流儀
2汁を煮つめる

豚の骨と海老の頭で出汁をとり、ターメリックとアナトーで色をつけ、魚醤で締める。少量しか使わないので、味は濃くしておく。

この汁を「ニョン」と呼ぶ店もある
平たい麺に揚げ湯葉、きくらげ、香草。肉を使わない精進の一杯3
具を煮る

豚肉、海老、鶏、あるいは雷魚を、その汁で煮る。うずらの卵も一緒に。精進の店では揚げ湯葉ときくらげを使う。

具の顔ぶれが店の名前になっていることが多い
白い丼に平たい麺、豚肉、うずらの卵、砕いたピーナッツ、青ねぎ。奥に丸い焼き煎餅。ダナンで撮影4
丼に盛る

麺を丼にとり、生野菜をのせ、具を並べ、汁を二すくいか三すくいだけ回しかける。ピーナッツと青ねぎを散らし、焼き煎餅を添える。

汁を入れすぎない、というのがいちばんの決まり
米粉(平麺)ターメリックアナトー豚骨海老豚肉・鶏・雷魚うずらの卵ピーナッツごまの焼き煎餅
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クアンナムから来た、汁の少ない麺

クアンナム

中部の省の名前

「Quảng」はクアンナム省のこと。ダナンとホイアンを含む中部の土地で、そこの麺、という意味の名前になっている。

汁

少ないのが定義

汁が少ないことは手抜きではなく、この料理の定義そのもの。麺がひたるほど汁を入れると、それはもうミークアンではないと言われる。

煎餅

必ずついてくる

ごまをふって焼いた丸い米の煎餅(bánh tráng mè)が必ず添えられる。割って丼に入れるところまでが食べ方。

具

何を入れてもいい

豚と海老、鶏、雷魚、うなぎ、精進。土地で手に入るものを入れるという性格が強く、決まった具がない。

ホーチミン

出身者が持ちこんだ

クアンナム出身の人が多い市内には、専門店がいくつもある。中部の味そのままの店もあれば、南部風に甘くした店もある。

ミークアンを初めて頼んだ人は、たいてい同じところでつまずく。丼に汁が入っていないのだ。麺の下に二すくいか三すくいぶん、底に溜まっているだけ。フォーやブンボーフエを想像していると、店の人が入れ忘れたのではないかと思ってしまう。けれど、これで正しい。

汁が少ないことは、この料理の定義そのものだ。ベトナムの料理書でも「麺がひたるほど汁を入れたら、それはもうミークアンではない」という言い方をする。だから汁のほうは、少量でも十分に効くように煮つめてある。豚の骨と海老の頭からとった出汁に、ターメリックとアナトーで色をつけ、魚醤で締める。一口ごとに濃い味が来て、薄まる瞬間がない。

麺も特徴がある。米の生地を薄く蒸して一枚にし、油を塗って折りたたみ、包丁で幅広に切る。作り方はフォーの麺と同じだが、ミークアンのほうがずっと厚い。噛むとむちっと弾んで、汁を吸っても腰が抜けない。汁が少ない料理だからこそ、麺のほうに歯ごたえが必要なのだと思う。

そして煎餅だ。ごまをふって焼いた丸い米の煎餅が、必ず一枚添えられてくる。これは飾りではなくて、割って丼に入れるためのものだ。破片のうち、汁に沈んだところはしんなりし、上に残ったところはばりばりのまま。ひとつの丼の中に二つの食感を作るための道具になっている。

具については、決まりがないに等しい。豚と海老、鶏、雷魚、うなぎ、寺の近くなら精進のもの。クアンナムという土地で手に入るものを入れる、という発想がそのまま残っている。ホーチミンで「Mì Quảng」の看板を見かけたら、後ろに書いてある言葉を見るといい。それがその店の主役だ。

平たい麺に揚げ湯葉、きくらげ、香草。肉を使わない精進の一杯
精進のミークアン。揚げ湯葉ときくらげで作る
白い丼に平たい麺とほぐした魚の身、レモングラスの茎、黒こしょう
雷魚入りの寄り。汁は麺の底にだけある

具の内容も汁の量も、店と地域による幅が大きい。ここに書いたのは中部で標準的とされる形で、ホーチミンの店ではもっと汁が多いこともある。

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食べに行く前に

注文のことば

Cho tôi một tô mì Quảng.チョー・トイ・モッ・トー・ミー・クアン/ミークアンを1杯ください
Mì Quảng gà.ミー・クアン・ガー/鶏のミークアンを
Thêm bánh tráng.テム・バイン・チャン/焼き煎餅をもう一枚
Tính tiền.ティン・ティエン/お会計を

汁が少ないのは正常。運ばれてきたら、まず煎餅を割って入れ、生野菜ごとよくかき混ぜてから食べはじめる。

値段と覚え書き

屋台の一杯35,000〜50,000 VND約210〜300円
専門店(具だくさん)50,000〜80,000 VND約300〜480円
焼き煎餅の追加5,000〜10,000 VND約30〜60円
  • 汁が少ないのが正解。足りないと思っても、それがこの料理
  • gà=鶏、tôm thịt=海老と豚、cá lóc=雷魚、chay=精進。看板の後ろの言葉が主役
  • 添えられた丸い煎餅は割って丼に入れる。飾りではない
  • 生野菜は多めに入れて、麺と一緒にかき混ぜる
  • 汁が少ないぶん冷めやすい。運ばれたら早めに混ぜる
  • 卓の唐辛子は生のものが多い。かじると相当辛い

値段は2026年9月時点の目安。1,000ドン=約6円で換算。営業時間・価格・閉店は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(5枚)

写真は個別ページのライセンスに従います。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。

  • 白い丼に平たい麺、豚肉、うずらの卵、砕いたピーナッツ、青ねぎ。奥に丸い焼き煎餅。ダナンで撮影|Christopher Crouzet/CC BY-SA 4.0/2015年撮影・明るさ調整あり(原典)
  • 黄色く染めた平たい麺、海老、練りもの、豚肉、生野菜がたっぷりのった一杯|Gary Stevens/CC BY 2.0/2013年撮影・明るさ調整あり(原典)
  • 白い丼に平たい麺とほぐした魚の身、レモングラスの茎、黒こしょう|Phương Huy/CC BY-SA 4.0/2019年撮影・明るさ調整あり(原典)
  • 平たい麺に揚げ湯葉、きくらげ、香草。肉を使わない精進の一杯|Phương Huy/パブリックドメイン/2018年公開・明るさ調整あり(原典)
  • 白い丼に平たい麺、ほぐした魚、レモングラスの茎、香草|Phương Huy/CC BY-SA 4.0/2019年撮影・明るさ調整あり(原典)

装飾

紙・テープ・手描きの下線・提灯ガーランドなどの装飾は、ユーザー提供の素材パック htnv-decor-user-pack-01〜04 から切り出して使用。

写真はCCライセンス4枚、パブリックドメイン1枚。5枚すべて明るさ・彩度・コントラストを調整している。トリミング・合成はしていない。撮影地はダナンなど中部が中心で、ホーチミンで撮られたものではない。

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