プフプフ

世界の料理図鑑 ナイジェリア

プフプフ

puff-puff プフプフ Puff-puff

名前が国境ごとに変わるだけで、レシピはほとんど同じ。十数か国で同じものが揚がっている。

小麦粉とイーストと砂糖を混ぜたどろりとした生地を、手で握って押し出し、油に落として揚げる。それだけの揚げ団子です。

ひと口目は熱と、控えめだがはっきりした甘み。ドーナツほど甘くありません。そこにナツメグの香りが鼻に抜けます。

外側だけがわずかにパリッとして、内側は空気を含んでふわふわ、糸を引くように裂ける。イーストのおかげでケーキ状ではなくパン状の弾力があります。

国・地域
ナイジェリア発祥。アフリカ全域、特に西部に同系
分類
揚げ菓子
相場
1個50〜100ナイラ(約6〜12円)。袋で100〜500ナイラ
主な材料
小麦粉、イースト、砂糖、水、塩、ナツメグ、揚げ油
辛さ
辛くない。甘い
食べる場所
路上の行商(ハウカー)、ベーカリー、イベント
ベスト時間
揚げたて。時間帯は問わない
一人前の目安
数個。袋に入れて渡される
食べ方
完全に手食。歩きながら食べる
近い料理
ボフロット(ガーナ)、ミカテ(コンゴ)、ベニエ(仏語圏)、マンダジ(東・南部アフリカ)

01一口目に来るもの

油から上がったばかりのプフプフは、表面が油でつるりと光っています。手に取ると熱い。

ひと口目は熱と、控えめな甘み。ドーナツを想像していると「そんなに甘くない」と感じます。砂糖は控えめです。

続いてナツメグの香りが鼻に抜ける。ナイジェリア式の定番のスパイスで、これがあると一気に「アフリカの揚げ菓子」の味になります。

食感は外側だけがわずかにパリッ、内側は空気を含んでふわふわ。裂くと糸を引くように繊維が見える。イーストで発酵させているので、ケーキではなくパンの構造です。

噛むとイーストの発酵香が残ります。揚げたてでないと、この香りは飛んでしまう。

プフプフ
油の中で膨らむプフプフ。すくい上げるタイミングが色を決める

02こねるのではなく、混ぜる

プフプフの生地は「こねる」のではなく「バッター(どろりとした液状)」です。ここが最大の勘所。

参考の配合は、ぬるま湯2カップ、ドライイースト2と1/4小さじ、砂糖2/3カップ+1小さじ、薄力粉3カップ、塩1と1/2小さじ、ナツメグ1/2小さじ、揚げ油3カップ。

粉のダマがなくなるまで2〜3分混ぜたら、布をかけて室温で1〜2時間。表面全体に泡が出て倍に膨らむまで待ちます。「泡が立ち、イーストの匂いがする」のが完了の合図。

成形は独特です。手で生地をすくい、握った拳から親指の付け根を通して押し出し、丸く落とす。難しければクッキースクープや油を塗ったスプーンでも代用できます。

揚げは約175度で4〜10分。片面がきつね色になったら返す。

プフプフ
生地をこねているところ。実際にはこねるというより混ぜる作業
プフプフ
生地を丸めて並べる。手のひらから押し出す方式もある
プフプフ
成形の続き。この作業がそのまま屋台の風景になる

膨らまないときは発酵不足

失敗の原因はほぼ一つ、発酵不足です。倍に膨らむまで待つ。急ぐと重い団子になります。

次に多いのが油の温度が高すぎること。中が生のまま外だけ焦げます。色付きが早いなら中火に落とす。

イーストが古いと膨らみません。ベーキングパウダーでも代用できますが、イーストの方が明らかに良い仕上がりになります。

プフプフ

第 二 章

市 場 の 油 鍋

学校帰り、通勤の朝、パーティーの前。時間帯を選ばない

03国境ごとに名前が変わる

プフプフのおもしろさは、大陸を横断してほぼ同じレシピが十数か国に存在することです。名前だけが国境ごとに変わる。

ガーナではボフロット。コンゴではミカテ。セネガル・カメルーン・ギニア・マリではベニエやガト。リベリアでカラ、トーゴでボトコイン、コートジボワールでボフロト、ブルキナファソでブルマサ。

南アフリカ・ボツワナ・ジンバブエではベトクックやアマグウィニャ。東・南部アフリカではマンダジ。スーダンでレゲマット、チャドでフンガサ。

セネガルでは小麦粉の代わりにミレット粉を使うことがあり、カメルーンでは豆と一緒に食べます。中身は同じでも、食卓での位置は国ごとに違う。

プフプフ
皿に盛ったプフプフ。表面の色は油の温度で決まる
プフプフ
揚げ色の濃いタイプ。店によって好みが分かれる

名前だけが国境ごとに変わる。アフリカで最も広く共有された揚げ菓子について

04種類を並べてみる

同じ生地が、国を越えて別の名前で呼ばれています。

名前特徴食べ方
プフプフ(ナイジェリア)標準形。ナツメグ入り、砂糖控えめ揚げたてを手で。砂糖やシナモンをまぶすことも
ボフロット(ガーナ)ほぼ同一。より甘めの傾向おやつ・朝食
ミカテ(コンゴ)中部アフリカ版同上
ベニエ/ガト(仏語圏)セネガルではミレット粉を使うこともカメルーンでは豆と一緒に
カラ/ボトコイン/ブルマサリベリア/トーゴ/ブルキナファソの呼称違い路上のおやつ
マンダジ/アマグウィニャ/レゲマット東・南部アフリカ、スーダンの同系菓子各国流の食べ方で
プフプフ
揚げ上がりを並べる
プフプフ
アップ。表面のつやが揚げたての証拠
プフプフ
モダンなプフプフ。カフェではこの形で出る

05いくらで食べられるか

ナイジェリアでいちばん安い食べ物のひとつです。1個数円から。

プフプフの相場(2026年8月時点の目安)価格
屋台(1個)50〜100ナイラ/約6〜12円
屋台(1袋・ひとつかみ)100〜500ナイラ/約12〜60円
ベーカリー路上より高いが、具体的な価格は情報源で確認できず
グルメ店(Puff Puff Gourmet 等)路上より明確に高い(具体額は不明)
参考:スヤ1串300〜1,000ナイラ/約36〜120円

06どこで食べるか

最も一般的な入手経路は路上の行商(ハウカー)です。全国どこにでもいます。

ラゴス:パフ・パフ・グルメ(エティ=オサ、Rumens Road/24時間営業)はチョコレート入り、塩キャラメル、スヤ味など変わり種を出します。テジュオショ・フードコート(ヤバ、テジュオショ市場脇)は安価で量が多い。

アベケ・ルーフトップ(レキ・フェーズ1)はカクテルと夜景付き。ザ・ハウス・ラゴス(ヴィクトリア島)は「プフプフ・タワー」が名物です。

アブジャ:専門店として確認できる店名はありません。街頭の売り子とベーカリー、イベントのケータリングが主な入手先です。

買い方は個数か金額を指定。「500ナイラ分」で通じます。

プフプフ
生地を扱う手元。この動作が速い
プフプフ
市場の作業台で生地を練る男性。揚げる前の仕込み

07豆知識

南太平洋のトンガにも酷似した菓子がある。「keke’isite」。系統関係があるのかは分かりませんが、揚げた発酵生地という発想は世界中で独立に生まれているようです。

ラゴスにはスヤ味のプフプフがある。甘い揚げ生地に辛いヤジをまぶす。ナイジェリア料理の「甘×辛」の発想が、お菓子にまで及んでいる好例です。

発祥の年代も人物も記録がない。イースト発酵の小麦生地を油で揚げるという手法は、サヘル交易を通じた北アフリカ・中東の揚げ菓子文化との接点が指摘されますが、明確な系統関係を示す学術的裏付けは確認できていません。

為替レート:1ナイジェリア・ナイラ=約0.12円で換算しています(2026年8月時点)。ナイラは変動が激しいため、現地で必ずご確認ください。

写真はすべて Wikimedia Commons より。各画像の作者とライセンスは以下のとおりです。