手でちぎった生地を汁に入れるスジェビ。
韓国家庭の小麦料理薄い生地を汁で煮る

スジェビ

수제비Hand-torn wheat dough boiled in anchovy or kelp broth

薄く伸ばした生地を手でちぎり、だしへ落とすスジェビ。切りそろえた麺とは違い、厚みや縁の形が一片ずつ変わる。珍しかった小麦が身近になる歴史と、エゴマや貝を合わせる今の一杯をたどる。

手でちぎる麺
01

細長く切らずに、
生地を汁へ落とす。

一片ずつ形が違う生地は、切りそろえた麺とは別の主食になる。生地の縁と中心、汁の種類、店の大きな器から、手で作る粉の料理を知る。

スジェビは、粉を練った生地を手で小さくちぎり、汁へ入れて煮る料理。細く切ったカルグクスと同じ粉を使う型でも、主食の形は違う。薄い縁と、少し厚い中心が一片の中に残り、食べる場所によって歯触りが変わる。

生地の形を一定の長さに切りそろえないことが、料理の特徴になる。すいとんとの似た点はあるが、韓国のスジェビには、薄くちぎった生地が広がる一杯もある。薄い生地と汁の組み合わせとして見たい。

小皿と合わせたスジェビの食卓。

小皿と合わせたスジェビの食卓。 写真の出典

小麦の歴史
02

珍しい粉の料理から、
身近な汁物へ。

韓国学中央研究院の解説は、スジェビの正確な伝来時期は分からないとする。小麦が貴重だった時代には、粉の料理は誰もが日常に食べるものではなかった。現在の気軽な食事の姿を、そのまま昔の全ての家庭へ当てはめることはできない。

朝鮮戦争後に援助物資の小麦が広がると、小麦を使う食事が身近になった。ミルミョンと同じく、粉の供給の変化が料理の食べられ方に関わる。珍しい材料が普及することで、家庭や町の食堂の汁物としての位置も変わっていく。

エゴマときのこを合わせたスジェビ。

エゴマときのこを合わせたスジェビ。 写真の出典

古い料理の型
03

雲の名の生地には、
肉やねぎを混ぜる記録。

百科事典は、朝鮮時代の雲頭餠や、1943年の料理書に記された型にも触れる。肉やねぎなどを合わせた生地を汁へ入れる料理の記録は、現在の薄い小麦生地だけのイメージとは異なる。古い粉の汁物にも、材料の組み合わせに幅がある。

小麦以外に、そば、じゃがいも、葛などを使う型も記録される。スジェビを「小麦粉をちぎるだけ」と限定するより、使える粉を生地にして汁へ入れる料理の広がりとして見ると、土地の材料が入り込む余地が分かる。

キムチ入りの赤いスジェビ。

キムチ入りの赤いスジェビ。 写真の出典

手でちぎった形が、
そのまま汁の具になる。

だしと野菜
04

煮干しと昆布の汁に、
じゃがいもや青菜。

文化体育観光部の料理紹介には、生地を練って休ませ、煮干しと昆布のだしに、じゃがいもやズッキーニなどを合わせる型が載る。生地をちぎる作業が目を引くが、汁と野菜も別に準備される。粉だけで一杯が成立するわけではない。

薄い生地を汁へ広げると、形の違う片が重なる。野菜は切った形を残し、生地は不揃いな形で煮上がる。その違いが匙の上で見える。材料を一緒に煮る料理でも、主食と野菜では切り方の発想が異なる。

貝を合わせたスジェビ。

貝を合わせたスジェビ。 写真の出典

今の地域の型
05

エゴマ、貝、キムチ。
汁が変われば別の一杯。

掲載写真には、エゴマを使うきのこ入りの一杯、貝を使う一杯、キムチ入りの赤い一杯がある。同じちぎった生地でも、汁の色、香り、具の量は違う。白いだしの器だけをスジェビの唯一の姿としないことが、店の違いを知る入口になる。

カルグクスの細い麺とスジェビを一緒にしたカルジェビもある。細い麺と平たい片が同じ汁に入るため、食べる主食の形が二種類になる。粉は同じ仲間でも、切る形とちぎる形を合わせる発想が面白い。

飯や小皿を添えるスジェビ。

飯や小皿を添えるスジェビ。 写真の出典

三清洞の食堂
06

大きな器で出す、
街の粉の料理。

三清洞スジェビは、ソウル市観光が1982年からの店として紹介する。大きな土の器に入る姿は、一人ずつの小さな麺の器とは違う食卓を作る。店の創業年と、スジェビ全体の起源を同じものにせず、町で料理が続いてきた時間として知りたい。

文化体育観光部の食文化記事は、食事を共にする人を表す言葉「食口」にも触れる。取り分ける器の汁は、料理の材料だけでなく、食べる人の集まり方とも関わる。生地の一片をちぎる手と、食卓で匙を動かす手がつながる料理である。

細い麺とちぎった生地が入るカルジェビ。

細い麺とちぎった生地が入るカルジェビ。 写真の出典

生地の厚み
07

一片の縁と中心に、
違う歯触りがある。

箸や匙で生地を持ち上げる写真では、器全体では見えない薄さが分かる。汁の中に折れている片を広げると、細長い麺とは違う面積がある。平たくした生地のどこをちぎるかで形が変わり、形の違いが食感の違いにもなる。

辛い汁、エゴマの汁、貝の汁。何を合わせても、このちぎった生地という中心は残る。歴史を持つ粉の汁物が、今の食堂で違う具へ開かれている。揃わない形を欠点とせず、手の仕事がそのまま残る主食として知ると、スジェビの魅力が伝わる。

チャンポンの汁を使うスジェビの型。

チャンポンの汁を使うスジェビの型。 写真の出典

切る形とちぎる形
08

細い麺と、
平たい片が一杯に。

カルジェビは、カルグクスの麺とスジェビの生地を同じ汁へ入れる型。細い麺は線の形になり、ちぎった生地は面の形になる。同じ粉を使っても、箸で取る量と、匙に載る形が変わる。料理の主食を二種類の形で食べられる一杯になる。

メミルジョンビョンは平らな生地を焼いて巻く。スジェビはちぎった生地を汁で煮る。平たい粉の材料でも、焼いて包みにするか、煮て主食の具にするかで、料理は別の役割へ分かれる。

生地を手で薄く引き伸ばすと、切りそろえた厚い団子とは形が違う。汁の中で折れた片と、持ち上げて広がった片を見比べると、スジェビが一口でどのように変わるかを知れる。手の力で形を作る仕事が、縁に残っている。

汁を変える工夫
09

貝のだしと、
エゴマの厚い汁。

貝を合わせるスジェビでは、海の材料と粉の生地が一杯に入る。エゴマを使う型では、粉の粒や香りが汁へ加わる。生地の材料が共通していても、汁をどこから作るかによって、器の姿は変わる。

キムチ入りやチャンポンの汁の型では、赤い味が生地へ絡む。食べる前から生地に赤い具を練り込むのではなく、白い生地が汁の味を受け止める。粉を同じ形へ加工してから、別の汁と合わせる工夫が料理の幅を作る。

1943年料理書に記された型

百科事典が触れる、肉やねぎを合わせた生地の汁物の記録。

1982年三清洞スジェビの創業

ソウル市観光が紹介する、大きな土の器で出す街の店。

家庭料理

Sujebiスジェビ

수제비

練った生地を手でちぎり、煮干しと昆布のだしで野菜と煮る。

麺

Kalguksuカルグクス

칼국수

同じ粉を細く切りそろえた麺にする型。ちぎる形とは主食が違う。

派生形

Kaljebiカルジェビ

칼제비

カルグクスの麺とスジェビの生地を同じ汁に入れる一杯。

江原道

Memil Jeonbyeongメミルジョンビョン

메밀전병

平らな生地を焼いて巻く。煮て汁の具にするスジェビとは役割が別。

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基本情報

国・地域
韓国。家庭や町の食堂の汁物で、ソウルの三清洞の店も紹介される
分類
練った生地を手でちぎり、だしへ落として野菜と煮る粉の汁物
主な材料
手でちぎった小麦の生地、煮干しと昆布のだし、じゃがいも、ズッキーニ
味の軸
煮干しと昆布のだし。エゴマ、貝、キムチ、チャンポンの汁で変わる
調理
生地を練って休ませ、薄くちぎって汁へ入れ、野菜と一緒に煮る
食べる場面
家庭の小麦料理。大きな器を取り分ける食卓や、飯と小皿を添える食事
型・地域差
白いだし、エゴマ入り、貝入り、キムチ入り、カルグクスと合わせたカルジェビ
現地名
수제비(Sujebi)
記録・注記
伝来時期は不明とされる。朝鮮時代の雲頭餠や1943年の料理書の型に記録

出典

写真(8枚)

  • 1. 手でちぎった生地を汁に入れるスジェビ。 / 방신애 / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 2. 小皿と合わせたスジェビの食卓。 / Steve Longus / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 3. エゴマときのこを合わせたスジェビ。 / Dr 방원장 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 4. キムチ入りの赤いスジェビ。 / Dr 방원장 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 5. 貝を合わせたスジェビ。 / 굿바이 조미료 / CC BY 2.0 kr / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 6. 飯や小皿を添えるスジェビ。 / Michael Sean Gallagher / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 7. 細い麺とちぎった生地が入るカルジェビ。 / Kinkreet / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 8. チャンポンの汁を使うスジェビの型。 / 대경라이프 / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。

写真は各原典で作者とライセンスを確認したものです。すべてサイト内に取り込み、本文では明るさ・彩度を控えめに補正して表示します。