世界の料理図鑑 スイス
ホットチョコレート
Heisse Schokolade ハイセ・ショコラーデ Hot Chocolate
ゴルナーグラートの展望台で飲む一杯。値段の半分は「窓の外」の代金です。
標高3,089m。ゴルナーグラートの山頂駅レストラン。窓の外にマッターホルンとモンテ・ローザとゴルナー氷河。
ここで飲むホットチョコレートがCHF 7〜9(約1,400〜1,800円)。
高い。ただし、値段の半分は「窓の外」の代金だと思えば納得できます。
- 国・地域
- スイス全土。とくに山のレストラン
- 分類
- 飲みもの(温)
- 相場
- CHF 7〜9(約1,400〜1,800円)。山頂駅ではこの上限
- 主な材料
- 板チョコまたはチョコレートフレーク、牛乳、生クリーム
- 甘さ
- しっかり甘い。砂糖を足す必要はない
- 飲む場所
- カフェ・山のレストラン・展望台
- ベスト時間
- 山の上で。寒い日に
- 一人前
- カップ1杯。かなり濃厚
- 特徴
- 粉ではなく板チョコを溶かす店が多い
- 注意
- 山頂は気温が低い。夏でも上着が要る
01一口目に来るもの
カップを持つと、思ったより重い。液体の密度が高い。
ひと口飲むと、とろりとして、口の中に膜が張る。粉を溶かしたココアの水っぽさがまったくない。
甘さははっきりしていますが、カカオの苦みが後ろにいるので、くどくならない。板チョコをそのまま飲んでいるような濃度です。
上に載った生クリームが少しずつ溶けて、下の熱いチョコレートと混ざる。この温度差が飲み進むうちに変わっていくのも、この一杯の楽しみです。
そして顔を上げると、窓の外に氷河がある。

02粉ではなく板チョコを溶かす
スイスのカフェの多くは、ココアパウダーではなく板チョコやチョコレートフレークを温めた牛乳に溶かします。
この違いは決定的です。ココアパウダーは脂肪分(カカオバター)が抜かれているので、水っぽくなる。板チョコにはカカオバターが残っているので、とろみとコクが出る。
だから濃度が違う。日本のココアより明らかに重い。
牛乳は全脂肪。ここでも薄めません。
仕上げにシュラークラーム(Schlagrahm、ホイップクリーム)を載せるのが標準。「ohne Rahm(オーネ ラーム)」と言えば抜いてもらえます。


標高3,089mで飲むということ
ゴルナーグラート鉄道はツェルマットから33分で標高3,089mまで登ります。夏季往復 CHF 132前後。
山頂駅には1898年築の石造りの駅舎と、ヨーロッパ最高所級のホテル「クルムホテル」があります。展望台からはモンテ・ローザ(4,634m)とゴルナー氷河が正面に見える。
ここのレストランで飲む一杯がCHF 7〜9。町なかと比べて2〜3割高いだけで、この立地を考えれば良心的とも言えます。
重要なのは気温です。夏でも山頂は10度を下回ることがあり、風があるとさらに体感が下がる。温かい飲みものが単なる嗜好品ではなく必需品になる——それがこの高さです。
一緒に頼むならスープ(CHF 12〜16)かセルヴラとゆで卵のセット(CHF 10〜15)。



第 二 章
値段の半分は、窓の外の代金
山のレストランのテラス。この景色のために人は登る
03注文のしかた
「Heisse Schokolade(ハイセ・ショコラーデ)」。フランス語圏では「Chocolat chaud」。
イタリア語圏やカフェによっては「Ovomaltine(オボマルティーネ)」という麦芽飲料もあります。これはスイス生まれの別物で、これはこれで名物。
生クリームを抜きたければ「ohne Rahm(オーネ ラーム)」。
子ども用に薄めたものはありません。スイスのホットチョコレートは大人も子どもも同じ濃さ。
山頂駅ではセルフサービスの店が多い。カウンターで注文して、トレイで席へ運びます。


標高3,089m。温かい飲みものが、嗜好品ではなく必需品になる高さ。ゴルナーグラート
04どこで飲む
山のレストランが最も価値があります。ゴルナーグラート、スネガ、ロートホルン——ツェルマット周辺の展望台にはどこにもカフェがある。
町なかのカフェならCHF 6前後から。バーンホフ通り沿いに何軒もあります。
ホテルの朝食にも出ますが、ビュッフェのマシンから出るものは薄い。ちゃんとしたものはカフェで頼むこと。
スーパーにはチョコレートフレークが売っています。CHF 4前後。宿で牛乳に溶かせば同じものが作れる。
冬のクリスマスマーケットでは屋台でも売っています。CHF 5前後で、ラム酒入りもあります。



05歴史と背景
チョコレートを飲みものとして摂るのは、実は食べるより古い形式です。メソアメリカでは数千年前からカカオを飲料にしていた。
ヨーロッパに入ったのは16世紀。長いあいだチョコレートは「飲むもの」で、板チョコが登場するのは19世紀に入ってからです。
スイスがミルクチョコレートとコンチングを発明したことで、固形のチョコレートが主流になりました。
皮肉なことに、その発明国のカフェではいまも板チョコを溶かして飲む——固形にしたものを、また液体に戻している。
山岳観光と結びついたのは19世紀後半です。登山鉄道が展望台まで通り、そこにレストランができた。冷えた体を温める飲みものとして、これ以上のものがなかった。
ゴルナーグラート鉄道の開業は1898年。山頂で温かいチョコレートを飲むという体験は、120年以上続いています。


06似ている飲みもの
スペインのチョコラーテ・ア・ラ・タサはさらに濃く、churrosを浸して食べる。スプーンが立つほどのものもあります。
イタリアのチョコラータ・カルダもとろみが強い。片栗粉でとろみをつけることがある。
フランスのショコラ・ショーはダークチョコレート志向で、苦みが前に出る。
日本のココアは最も薄い。パウダーから作るので構造が違います。
スイスのオボマルティーネは麦芽飲料で、チョコレートとは別系統。ただし山のカフェでは並んで置かれています。
07豆知識
・スイスのカフェで「Schoggi(ショギ)」と言うと、スイスドイツ語でチョコレートのこと。地元の人はこう呼びます。
・ゴルナーグラートの山頂駅は1898年築。ヨーロッパ最高所級のホテルが併設されており、天文台もあります。
・山頂は気圧が低いので沸点も低い。理論上は熱々にしにくいのですが、実際には気にならない程度です。
・スーパーのチョコレートフレークは土産に向きます。軽くて、日本でも同じものが作れる。
・寒い日に山へ行くなら、魔法瓶に入れて持っていくのもあり。展望台で座って飲むぶんには十分です。





