エグシスープ

世界の料理図鑑 ナイジェリア

エグシスープ

egusi soup エグシ・スープ Egusi soup

「エグシ」は料理名ではなく素材名。ウリ科の種を挽いて、それだけで一皿になる。

エグシはウリ科の植物の種です。それを挽いて煮ると、ピーナッツバターのようなコクのあるスープになる。

ひと口目は種を炒った香ばしいナッツ感。遅れてパーム油の甘い脂の香りと、唐辛子の辛さが来ます。

食感が流派で大きく違います。塊状(オシキ)ならそぼろ肉のようなポロポロした粒が舌に当たる。エグシ・イジェブなら塊がなく、ほとんど水のように流動的です。

国・地域
ナイジェリア。ガーナ、カメルーン、コートジボワール等にも同系
分類
スープ(種を挽いた濃厚系)
相場
2,500〜7,000ナイラ(約300〜840円)
主な材料
挽いたエグシ、パーム油、青菜(scent leaf/苦葉/ほうれん草)、トマト、唐辛子、オクラ、肉・干し魚、ロクストビーンズ
辛さ
辛い
食べる場所
ブカ、ママプット、家庭。都市部のレストランも
ベスト時間
昼と夜
一人前の目安
スープ一皿+スワロー(つき芋やエバ)一玉
食べ方
右手で。スワローをちぎってくぼみを作り、スープをすくって噛まずに飲み込む
近い料理
オグボノスープ、エフォ・リロ

01一口目に来るもの

まず色に驚きます。黄土色。パーム油の橙色と、種の黄色が混ざった濁った色です。

ひと口目はナッツの香ばしさ。ピーナッツバターに似た厚みのあるコクが真っ先に来ます。豆でも肉でもない、種の味です。

遅れてパーム油の甘い脂の香りと唐辛子の辛さ。塩気は干し魚とスモークフィッシュ、ストックキューブ由来の強い旨味で、日本人には「濃い出汁」に近く感じられます。

苦葉(ビターリーフ)が入っていると、後味にはっきりした苦味が加わる。この苦味も含めて完成形です。

エグシスープ
白い器に盛ったエグシスープ。種の粒が残るタイプ

02エグシとは何か

エグシは料理名ではなく素材名です。ウリ科植物の種を指します。

植物学的には主にMelothria sphaerocarpa(旧名 Cucumeropsis mannii)とCitrullus lanatus(スイカ類)の2種。「コロシントの種を指すのが本義」「大粒スイカの種を指す」「ウリ科の種全般」と学説が分かれています。

語源はヨルバ語で「挽いて開く」とされ、調理法そのものが名前になっている。

分布は中央〜西アフリカ全域。主要生産国はナイジェリア、ブルキナファソ、ガーナ、コートジボワール、ベナン、マリ、カメルーン、トーゴ。

1980年代後半以降、ナイジェリアとカメルーンで脱穀・殻剥きの機械が開発されました。それまでは手作業です。

エグシスープ
畑のエグシ瓜。この実の中の種を使う
エグシスープ
市場でエグシの種を売る。種類ごとに山になっている
エグシスープ
エグシの種を挽く手回しの小型ミル。挽いた粉が下の皿に落ちる

塩を入れるタイミング

エグシスープの最大の失敗は調理中に塩を入れることです。塩を早く入れるとダマになり、滑らかな仕上がりが崩れる。味付けは火を止めてから。

イジェブ式なら、種を中火で7〜10分ローストして油分を引き出し、玉ねぎとストックと一緒に滑らかなペーストになるまで撹拌します。塊式なら水で練って団子状にし、煮汁に落として固める。

ペッパーベースは8〜10分、量が半分になるまで炒めてからストックを加える。エグシは弱火で少しずつ加え、絶えず混ぜる。

エグシスープ

第 二 章

ス ワ ロ ー と 組 む

スープは単体では食べない。飲み込むための相棒がいる

03スワローという主食

ナイジェリアのスープは単体では食べません。必ずスワローと組みます。

スワロー(ヨルバ語でオケレ=「飲み込むもの」)は、ヤム、キャッサバ、プランテン、小麦、穀物から作る練り物の総称です。イヤン(つき芋)、エバ(ガリ)、アマラ、フフ、ラフン、セモなど。

食べ方は独特です。右手でスワローをちぎり、指でくぼみを作り、スープをすくって、噛まずに飲み込む。噛みません。だからスワロー(swallow=飲み込む)という名前です。

近年は都市部でカトラリーを使う人も増え、ナイジェリア国内でも「エバを食器で食べるか」は議論になっています。

手で行くなら、店で出てくる手洗い用の水を必ず使ってください。

エグシスープ
つき芋(イヤン)とエグシスープ。この組み合わせが王道
エグシスープ
エバ(ガリ)とエグシ。エバは酸味がある

エグシと言うと、どの流派か聞き返されることがある。ラゴスの飲食店で。イジェブ式か塊式かは、ナイジェリア人同士でも譲らない

04種類を並べてみる

同じ「エグシスープ」でも、地域と流派で別の料理になります。

名前特徴食べ方
エグシ・イジェブオグン州イジェブ地方式。青菜を入れず、塊もない。流動的で滑らかイヤンやエバと
オシキ(塊式)種を固めて塊にする。ポロポロした食感が主役エバ、セモ、フフと
エフォ・エレグシ青菜をたっぷり入れるヨルバ式アマラ、イヤンと
オフェ・エグシ(イボ式)東部式。オグボノやビターリーフを併用することもアクプ/フフと
エグシ・ソース(西・中央アフリカ広域)各国に同系統。名称多数各地のスワローと
苦葉入りビターリーフの苦味が後味に残る好みが分かれる
エグシスープ
練ったエグシ。塊式ではこれを煮汁に落として固める
エグシスープ
殻をむいたエグシの種
エグシスープ
エグシの種の山。市場ではこの状態で売られる

05いくらで食べられるか

ジョロフより少し安い帯です。ただしスワローの料金が別になる店もあります。

エグシスープの相場(2026年8月時点の目安)価格
屋台・ブカ(日替わり定食帯)2,500〜5,000ナイラ/約300〜600円
つき芋+エグシ(都市部のレストラン)3,500〜7,000ナイラ/約420〜840円
テラ・カルチャー(一人)5,000〜15,000ナイラ/約600〜1,790円
イエロー・チリ(一人)6,000〜18,000ナイラ/約720〜2,150円
参考:2025年1月の価格6,000ナイラ〜/約720円〜

06どこで食べるか

ラゴス:イエロー・チリ(イケジャGRA/ヴィクトリア島)はつき芋+エグシが看板です。テラ・カルチャー・フード・ラウンジ(ヴィクトリア島)はエグシスープ+つき芋のほか、ナマズのペッパースープ、オファダライス、エフォリロも。

アブジャ:チェックポイント・レストラン(Wuse 2)、アンクル・T’s(Jabi)。

日常的にはブカ/ママプットが本場です。看板もない路傍の食堂ですが、そこがいちばんうまい、というのは世界共通の話です。

エグシスープ
エバとエグシスープ。器の縁でスワローをちぎる
エグシスープ
市場でエグシを売る人。種の質で味が変わる

07豆知識

エグシ油は植物油としてかなり優秀。脂肪酸組成はリノール酸53パーセント、オレイン酸19パーセント。種を挽いてスープにするという食べ方は、油の摂り方としても理にかなっています。

「エグシ」は素材名なので、各国に同じ系統のスープがある。ガーナ、カメルーン、コートジボワールにも別名で存在します。国境をまたいで同じ種が使われている。

イジェブ式か塊式かで、ナイジェリア人同士が譲らない。好みの分かれ目です。ラゴスの店で「エグシ」とだけ言うと、どちらか聞き返されることがあります。

為替レート:1ナイジェリア・ナイラ=約0.12円で換算しています(2026年8月時点)。ナイラは変動が激しいため、現地で必ずご確認ください。

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