
バインチャンヌン
Bánh tráng nướng
ライスペーパーを炭にのせて、卵を割って広げる
丸いライスペーパーを、炭火の網の上にぽんと置く。すぐにうずらの卵を割り落とし、スプーンの背で全体に広げる。そこへ干し海老、刻んだ青ねぎ、練りもの、豚のでんぶ、辛いソース。焼けるまで一分ちょっと。それだけの食べものだ。
「ベトナムのピザ」と紹介されることが多い。丸くて、具がのっていて、切って食べるからだろう。ただ、生地はチーズも小麦もない一枚の乾いたライスペーパーで、噛むとパリッと割れる。ピザというよりは、大きなクラッカーに近い。
焼けたら、はさみで扇形に切るか、半分に折って渡される。折ったほうは手で持って歩きながら食べられるので、屋台ではこちらが多い。紙に包んで、そのまま。
値段は15,000ドンから。学校の前や公園のわきに焼き台が出ていて、夕方になると生徒や学生が並ぶ。ホーチミンでは、いちばん安い部類の外食だ。
生まれたのは南部の高原の街ダラットだと言われている。標高1,500メートルの涼しい街で、温かいものを立ち食いする習慣から広がったという説明をよく見かける。
皿の解剖

半分に折ったところ具は好きに足せる。卵の数を増やしたり、チーズや練りもの、豚のでんぶを追加したり。そのぶん値段が上がっていく。
一口目
味
塩気と焦げ。甘いソースが少し
干し海老の塩気と、青ねぎ油の香ばしさ。そこへ卵のこくと、辛いソースかマヨネーズの甘さが混ざる。派手な味ではないが、炭で焼いた焦げの匂いが全部をまとめている。
食感
パリッと割れて、すぐ消える
ライスペーパーは乾いたまま焼くので、噛むと軽く割れる。せんべいより薄く、クラッカーより軽い。上にのった具ごと崩れて、あっという間に口の中からなくなる。
一口目
折ったところから、まず端を
半分に折って渡されたら、まず端のほうから。中央は具が多くて重いので、端の焦げたところを先に食べると、生地そのものの軽さが分かる。冷めると急にしんなりするので、急いだほうがいい。


一枚ができるまで
乾いたままの丸いライスペーパーを、炭火の網にぽんとのせる。水には戻さない。すぐに縁が反りはじめる。
火が強すぎると、具をのせる前に焦げる
2うずらか鶏の卵を割り落とし、スプーンの背で全体に薄く広げる。この卵が、上にのせる具を留める糊になる。
卵の数を増やすと、そのぶん値段が上がる
3干し海老、刻んだ青ねぎ、練りもの、豚のでんぶ、ソーセージ。客が言ったものを、順に散らしていく。
チーズを足す店も増えている
4一分ほどで縁がパリッとしてくる。はさみで扇形に切るか、半分に折って紙に包んで渡す。
歩きながら食べるなら、折ったほう高原の街から、全国の学校の前へ
高原の街で生まれた
標高1,500メートルの涼しい街ダラットで生まれたと言われている。屋台に集まって、温かいものを立ち食いする習慣と結びついた。
全国へ広がる
2000年代に入ってから他の都市へ広がり、いまでは全国の学校や公園のわきで焼かれている。看板に「Đà Lạt」と入れる店が多い。
nướng=焼く
bánh tráng(ライスペーパー)+nướng(焼く)。名前が作り方をそのまま言っている。混ぜたものはbánh tráng trộn。
のせるものは自由
干し海老、豚のでんぶ、練りもの、ソーセージ、チーズ、牛肉のそぼろ。決まりはなく、店ごとに品書きが増えていく。
いちばん安い外食
15,000ドンから。学生の小遣いで買える値段であることが、この食べものの広がり方をそのまま説明している。
「ベトナムのピザ」という呼び名は、たぶん見た目から来ている。丸くて、上に具がのっていて、焼いて、切って食べる。けれど実際に手に取ると、ピザとの共通点はそこまでで終わる。生地は生春巻きに使うのと同じ乾いたライスペーパー一枚で、厚みはコピー用紙くらい。噛むとパリッと割れて、口の中からすぐ消える。
作り方も驚くほど短い。炭火の網に乾いたままのライスペーパーをのせ、うずらの卵を割って落とし、スプーンの背で全体に広げる。この卵が糊の役をして、上にのせる具を留める。干し海老、青ねぎ油、豚のでんぶ、練りもの。一分ちょっとで縁が反り返り、焼き上がる。
生まれたのは南部の高原の街ダラットだと言われている。標高1,500メートル、ベトナムでは珍しく夜が肌寒い街だ。屋台の炭火のまわりに集まって、熱いうちに立ち食いする——そういう場所の食べものとして始まった、という説明をよく見かける。いつ誰が始めたのかを示す資料はないので、そういう話として読んでおくのがいいと思う。
2000年代に入ってから、この焼き台は全国に広がった。ホーチミンでも、学校の前や公園のわき、夕方の路地に出ている。看板には「Bánh tráng nướng Đà Lạt」と書いてあることが多い。生まれた土地の名前が、そのまま料理名の一部として運ばれていく——ベトナムの食べものにはよくあることだ。
そして値段だ。15,000ドン、日本円で百円足らず。ホーチミンの外食のなかでも、いちばん安い部類に入る。制服のまま焼き台の前に立って、焼けるのを待っている中学生の列を見ていると、この食べものが広がった理由は味の説明よりもずっと分かりやすい気がしてくる。


「ダラット発祥」という説明は広く語られているが、いつ誰が始めたかを示す資料があるわけではない。ここでは、いちばんよく紹介されている説として書いている。
食べに行く前に
注文のことば
夕方から夜にかけて、学校の前や公園のわきに焼き台が出る。焼きたてでないとパリッとしないので、その場で食べるのがいちばんいい。
値段と覚え書き
| 基本の一枚 | 15,000〜25,000 VND約90〜150円 |
| 具を足したもの | 25,000〜40,000 VND約150〜240円 |
| 卵の追加 | 3,000〜5,000 VND約18〜30円 |
- 焼きたてが命。冷めると生地がしんなりして、別の食べものになる
- nướng=焼く、trộn=混ぜる。バインチャンチョン(bánh tráng trộn)は焼かずに和えたもの
- 「Đà Lạt」の文字はダラット風という意味。発祥の地の名前
- 具は指さして追加できる。卵の数を増やすのがいちばん手軽
- 半分に折ってもらうと歩きながら食べられる。切ってもらうと座って食べる形
- 夕方から夜の店が多い。昼は焼き台が出ていないことがある
値段は2026年9月時点の目安。1,000ドン=約6円で換算。営業時間・価格・閉店は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- Wikipedia tiếng Việt「Bánh tráng nướng」 作り方・具・ダラットとの結びつき
- Wikipedia tiếng Việt「Bánh tráng」 ライスペーパーそのものの種類と作り方
写真の出典(6枚)
写真は個別ページのライセンスに従います。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。
- 金網の上の黄色いライスペーパーに、卵とねぎ、干し海老、練りものがのって焼けている|Quyn Phạm/Pexels License(商用可・加工可)/2022年公開・明るさ調整あり(原典)
- 小さな炭の焼き台の上で、丸いライスペーパーに卵と赤や緑の具が広げられている|Theodore Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2024年公開・明るさ調整あり(原典)
- 焼き上がった一枚を半分に折って、網の上で持ち上げているところ|Theodore Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2024年公開・明るさ調整あり(原典)
- 売り手がライスペーパーの上に具を広げているところ。手前に殻つきの卵が並ぶ|Theodore Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2024年公開・明るさ調整あり(原典)
- 炭の焼き台のふちに、殻つきの小さな卵がいくつも並べてある|Theodore Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2024年公開・明るさ調整あり(原典)
- 夜の屋台で、売り手が焼き台に向かい、子どもが待っている。看板にGrilled RiceとBÁNH TRÁNG、ĐÀ LẠTの文字|Hugo Guillemard/Pexels License(商用可・加工可)/2026年公開・明るさ調整あり(原典)
装飾
紙・テープ・手描きの下線・提灯ガーランドなどの装飾は、ユーザー提供の素材パック htnv-decor-user-pack-01〜04 から切り出して使用。
写真は6枚すべてPexelsライセンス(商用利用可・改変可)。明るさ・彩度・コントラストを調整している。トリミング・合成はしていない。撮影地はベトナム国内だが、ホーチミンとは限らない。


