アルミホイルの上に並んだ揚げたてのボンボン・ピマン
レユニオン / フランス海外県

ボンボン・ピマン

Bonbon piment

「唐辛子の飴」という名前の、豆の揚げ団子

RÉUNION06
夕方になると、油の音がしはじめる。

レユニオンで最初に覚える言葉のひとつが、ボンボン・ピマン(bonbon piment)だと思う。直訳すると「唐辛子の飴」。だが飴ではないし、菓子でもない。豆をすりつぶして香辛料を混ぜ、丸めて平たくして、油で揚げた団子だ。

ボンボン(bonbon)はこの島では甘い菓子だけを指す言葉ではなく、小さくて丸い揚げものにも使われる。ボンボン・ミエル(蜂蜜のボンボン)は甘い菓子だが、ボンボン・ピマンはしょっぱくて辛い。名前だけを見て買うと、たいてい驚くことになる。

使う豆はポワ・デュ・カップ(pois du Cap)という白い大きな豆で、一晩水に浸してから皮をむき、細かくすりつぶす。そこに青ねぎ、ターメリック、クミン、生姜、青唐辛子を混ぜて、手のひらで平たい円盤にする。直径4センチ、厚さ1センチほど。真ん中に指で穴をあけてから揚げる。

元はインドから来た食べものだと説明される。南インドにあるヴァデ(vadai/vade)という豆の揚げ団子と作り方がよく似ていて、契約労働者としてこの島に渡ってきた人たちが持ち込んだものが、島の材料と名前をまとって定着したという整理がされている。

食べる場面はアペリティフだ。夕方、ブションやサモサと一緒に小皿で出てくる。市場でも路上の屋台でも売っていて、袋に入れて渡してくれる。安くて、熱くて、いくらでも食べられてしまうのが困ったところだ。

ポワ・デュ・カップ+青唐辛子1個 0.3〜0.6€(約50〜110円)南インドのヴァデが元
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アルミホイルの上に並んだ揚げたてのボンボン・ピマン
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さやのままのグラン(豆)が山盛りになった売り台元になる豆

アルミホイルの上に並んだ揚げたてのボンボン・ピマン(2011年撮影)

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真ん中の穴le trou揚げる前に指であける。厚みのある中心まで火が通るようにするため
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きつね色の衣la croûte衣をつけるわけではない。豆のペーストそのものが揚がって、この色と歯ざわりになる
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ふぞろいな形façonné à la main手のひらで平たくするので、1個ずつ形が違う。型は使わない
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アルミホイルla feuille揚げたてを油をきって並べる。持ち帰りは紙袋か発泡トレーに入れてくれる
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一口目

味

辛味は後から、ゆっくり来る

最初に来るのはクミンとターメリック、そして青ねぎの香り。豆のほくほくした甘みがそのうしろにあって、青唐辛子の辛味はいちばん最後にじわじわ上がってくる。だから2個目に手が伸びたころに、辛さに気づく。

食感

外はかりっと、中はほろほろ

表面は薄くかたく揚がっていて、割ると中は粉をふいたようにほろりと崩れる。豆をすりつぶしただけなので、しっとりというより粉っぽい方向の食感。冷めるとかたくなる。

大きさ

直径4センチ、ひと口半

厚さは1センチほど。1人前という決まりはなく、袋にいくつか入れてもらって歩きながら食べる。アペリティフの皿では2〜3個。

「SNACK SUR LE COCOTIER」と書かれた屋台と、グリル・ブション・ブロシェットを並べた手書きの品書き
「SNACK SUR LE COCOTIER」の屋台。揚げものと串焼きが並ぶ(2009年撮影)
黄色いシトロエンHYを改造した移動販売のカミオン・バー
黄色いシトロエンHYを改造した移動販売のカミオン・バー。揚げものはこういう店の定番(2009年撮影)
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作り方

さやのままのグラン(豆)が山盛りになった売り台1
豆を一晩水に浸す

ポワ・デュ・カップという白い大粒の豆を使う。市場では乾いた豆が量り売りされている。一晩水に浸してふくらませ、指で皮をむく。

皮をむかないと口ざわりがざらつく
2すりつぶす

水気をきった豆を細かくすりつぶし、なめらかなペーストにする。粗いと揚げたときに崩れる。

石臼を使う家もあれば、ミキサーを使う家もある
真っ赤な小粒のピマン(唐辛子)が山盛りになった売り台3
香辛料と青唐辛子を混ぜる

青ねぎ、ターメリック、クミン、生姜、そして青唐辛子。市場の唐辛子売り場にはこの島の小粒の唐辛子が山になっている。辛さの量はここで決まる。

赤い完熟の唐辛子より、青いもののほうがよく使われる
4手のひらで平たくする

ペーストを丸めて、手のひらで押して直径4センチ・厚さ1センチほどの円盤にする。真ん中に指で穴をあける。

型は使わない。だから1個ずつ形が違う
厨房のコンロで揚げ物を返す女性と、手前に並ぶ揚がったばかりの具5
150〜160℃で揚げる

低めの温度でじっくり揚げる。高すぎると外だけ色がついて中が粉のまま残る。厨房では大鍋で一度に何十個も揚げている。

揚げたてがいちばんおいしい。時間が経つとかたくなる
ポワ・デュ・カップ(白い大粒の豆)青ねぎ青唐辛子ターメリッククミン生姜にんにく塩揚げ油
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この一皿の来歴

1848年以降

インドから人と料理が来る

奴隷制廃止のあと、南インドから契約労働者が渡ってくる。豆をすりつぶして揚げるヴァデの作り方も一緒に来た。

19世紀後半

島の材料に置きかわる

島で手に入る豆と青唐辛子、ターメリック、青ねぎを使う形になり、揚げものとして定着する。

20世紀

アペリティフの皿に入る

夕方の一杯につまむものとして、サモサ、ブションと並ぶ位置を占めるようになる。

現在

どこでも売っている

市場、路上の屋台、カミオン・バー、パン屋、スーパーの惣菜売り場。島でいちばん見かける揚げものと言っていい。

近年

名前だけが独り歩き

「ボンボン」という響きから甘い菓子だと思われることが多く、島の外では説明が必要な食べものになっている。

この島の食べものは、名前と中身がずれていることがある。ボンボン・ピマンはその代表だ。ボンボンは甘い菓子、ピマンは唐辛子。並べれば「唐辛子味の飴」に読めるが、実際は豆の揚げ団子で、しょっぱくて、あとからじわじわ辛い。

ずれの理由は、この島のフランス語(と、そのうしろにあるクレオール語)で「ボンボン」が甘い菓子に限らないところにある。小さくて丸い揚げものは、甘くても塩気があってもボンボンと呼ばれる。ボンボン・ミエル(蜂蜜)は甘く、ボンボン・ラ・ルルートは焼き菓子で、ボンボン・ピマンは辛い。全部ボンボンだ。

作り方はとても単純で、材料も安い。豆と、庭にある青ねぎと唐辛子と、台所にある香辛料。この「安くて、手が多くかからなくて、大量に作れる」という性質が、屋台や移動販売の商売とよく合った。だから島じゅうで見かける。

南インドのヴァデとの関係は、作り方を見比べればすぐわかる。豆を浸して、皮をむいて、すりつぶして、平たくして、真ん中に穴をあけて揚げる。この一連の手順はほとんど同じだ。違うのは、使う豆と、混ぜる香辛料と、辛さの入れ方。移民が持ってきた手順が残って、材料だけが島のものに置きかわった形になっている。

食べるときは、油をきったばかりの熱いものを選ぶのがいい。冷めるとかたくなって、粉っぽさが目立ってくる。回転の速い屋台なら、たいてい揚げたてが出てくる。

クレオール料理店の手書きメニュー表
クレオール料理店の手書きメニュー。揚げものは前菜の欄に並ぶ(2009年撮影)

南インドのヴァデとの関係は、島でよく語られている整理をもとに書いている。使う豆(ポワ・デュ・カップ/レンズ豆など)や香辛料の配合は、家庭・店によって幅がある。

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この一皿の余話

名前の話

「ボンボン」は甘いものだけを指さない

島のフランス語では、小さくて丸い揚げものや焼き菓子をまとめて bonbon と呼ぶ。だからボンボン・ピマン(辛い豆の揚げ団子)、ボンボン・ミエル(蜂蜜のドーナツ)、ボンボン・ラ・ルルート(白っぽい丸い焼き菓子)が、同じ「ボンボン」という言葉で並んでいる。旅行者がいちばん引っかかるのがこの言葉で、甘いものを期待して買ったら口の中が辛くなる、という話は定番になっている。

移民の話

インドのヴァデが、そのまま手順として残った

豆を一晩浸す。皮をむく。すりつぶす。平たくする。真ん中に穴をあける。揚げる。この手順は南インドのヴァデ(vadai)とほとんど同じだ。1848年の奴隷制廃止のあと、南インドから契約労働者として渡ってきた人たちが持ち込んだものが元だと説明されている。材料と名前は島のものになったが、手の動きだけがそのまま残った。

穴の話

真ん中の穴には、ちゃんと理由がある

飾りではない。厚さ1センチの豆のかたまりは、そのまま揚げると外側だけ色がついて中心が生っぽく残る。真ん中に穴をあけると、そこからも熱が入って全体が均一に揚がる。ドーナツの穴と同じ理屈だ。手で作るからこそできる工夫で、機械で作られたものには穴がないこともある。

短い話

  • 1
    辛さは後から来る最初の一口では辛くない。2個目に手を伸ばしたころに上がってくる。飲みものを先に頼んでおくといい。
  • 2
    揚げたてかどうかが全部冷めるとかたく、粉っぽくなる。回転の速い店を選ぶ。
  • 3
    アペリティフの三点セットボンボン・ピマン、サモサ、ブション。夕方の小皿にはたいていこの3つが乗っている。
  • 4
    「ボンボン・ミエル」は甘い蜂蜜のドーナツ。名前が似ているので、辛いのが苦手ならこちらを頼む。
  • 5
    ルガイユと合わせるトマトやなすのルガイユと一緒に出されることが多い。辛いものに辛いものを合わせる。
  • 6
    豆は市場で量り売りポワ・デュ・カップは乾いた状態で売られている。土産にするなら軽くてかさばらない。
海沿いの路上に並ぶテントの屋台と、煙を上げるグリル
海沿いの路上に並ぶテントの屋台。煙とともに揚げものの匂いが流れてくる(2011年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Cinq bonbons piments, s'il vous plaît.サンク・ボンボン・ピマン、シル・ヴ・プレ/ボンボン・ピマンを5個ください
C'est très piquant ?セ・トレ・ピカン?/とても辛いですか?
Ils sortent de la friture ?イル・ソルト・ドゥ・ラ・フリチュール?/揚げたてですか?
Pas trop piquant, s'il vous plaît.パ・トロ・ピカン、シル・ヴ・プレ/あまり辛くないものをお願いします
C'est fait avec quoi ?セ・フェ・アヴェック・コワ?/何で作っていますか?

市場、路上の屋台、移動販売のカミオン・バー、パン屋、スーパーの惣菜売り場。夕方がいちばん揚げたてに当たりやすい。個数で買えるので1人でも頼みやすい。

値段と覚え書き

1個(屋台・パン屋)0.3〜0.6€約50〜110円
袋入り(10個前後)3〜6€約500〜1,100円
アペリティフの盛り合わせ6〜12€約1,000〜2,100円
  • 名前は「唐辛子の飴」だが甘くない。豆の揚げ団子
  • 辛味は遅れて来る。飲みものを先に用意しておく
  • 揚げたてとそうでないもので、味も食感もまったく違う
  • サモサ・ブションと一緒にアペリティフの小皿で出てくる
  • 甘いほうがよければ「ボンボン・ミエル」を頼む
  • 豆(ポワ・デュ・カップ)は市場で乾物として買える

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(9枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 厨房のコンロで揚げ物を返す女性と、手前に並ぶ揚がったばかりの具|Tchaosy/CC BY-SA 4.0/2023年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • アルミホイルの上に並んだ揚げたてのボンボン・ピマン|Anoha/CC BY-SA 3.0/2010年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • さやのままのグラン(豆)が山盛りになった売り台|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「SNACK SUR LE COCOTIER」と書かれた屋台と、グリル・ブション・ブロシェットを並べた手書きの品書き|mwanasimba/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 黄色いシトロエンHYを改造した移動販売のカミオン・バー|Audreyrich04/CC BY-SA 3.0/2012年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 真っ赤な小粒のピマン(唐辛子)が山盛りになった売り台|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • クレオール料理店の手書きメニュー表|Nop112233/CC BY-SA 4.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 海沿いの路上に並ぶテントの屋台と、煙を上げるグリル|mwanasimba/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)