
ババフィグ
Baba figue
バナナの花を、野菜として煮込む
バナナ畑を歩くと、実の房の先に、濃い赤紫色をした大きな涙のかたちのものがぶら下がっている。バナナの花だ。レユニオン島ではこれをババフィグ(baba figue)と呼び、野菜として食べる。
市場では赤紫の塊のまま売られていて、初めて見た人にはどこを食べるのかまず分からない。家庭ではたいていカリ(黄色い煮込み)にする。
旅行者が食堂で出会う確率は、カリ・プレやルガイユ・ソシスほど高くない。見かけたら頼んでみたい、この島らしい一皿だ。
30秒でわかる、この料理
- なにか
- バナナの花の、苞をはがした中心を煮込む家庭料理
- 味と食感
- 淡く、かすかに渋い。繊維が残って、煮ても崩れない
- 名前
- クレオール語で figue(フィグ)はバナナ。フランス語のイチジク(figue)とは別もの
- 定番
- 燻製豚ブカネと炊いた「カリ・ババフィグ・ブカネ」
- どこで・いくら
- 家庭料理を出す食堂やバナナ産地の店。一皿10〜16€(約1,800〜2,800円)
花を見る

同じ株にできる実開きかけたバナナの花のアップ(2005年撮影)
一口目
味
淡く、わずかに渋みが残る
ほとんど主張しない野菜で、かすかな渋みが後ろにある。そのぶん、ターメリックとクミンの香り、トマトの酸、燻製肉の塩気がそのまま前に出る。
食感
繊維が残って、崩れない
煮ても完全には崩れず、フォークで持ち上げられる程度に形が残る。噛むと繊維に沿って裂ける。竹の子とアーティチョークの中間のような歯ざわり。
合わせるもの
ブカネと一緒が定番
燻製豚と炊き合わせる「カリ・ババフィグ・ブカネ」が島の定番。肉なしでも、白飯と豆を添えれば一皿として成立する。


作り方
1バナナ畑のある地域の市場に、赤紫の花のまま並んでいる。1個が手のひらより大きい。
畑を持っている家では自分で切ってくる外側の硬い赤紫の苞を一枚ずつはがし、内側に並ぶ細い花をかき出して落とす。中心の淡い色の柔らかい部分だけを残す。
手が黒くなるので、気になるなら手袋を2〜3センチに切る。切ると変色しやすいので、レモン水や塩水にさらしておく家が多い。
渋みも少し抜ける
4玉ねぎ、にんにく、生姜を炒め、ターメリックとクミンを加える。トマトを入れて煮汁を作る。
カリの基本と同じ手順
5切ったババフィグを入れて煮る。ブカネを一緒に炊くのが島の定番。柔らかくなっても形が残る程度で止める。
白飯と豆を添えて出すなぜ、この島で食べられているか
バナナは島じゅうにある
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷など、島の斜面にバナナ畑が広がる。実だけでなく花も食材として使われてきた。
カリとアシャール
黄色い煮込みのカリにするのが基本。酢漬けのアシャールにする作り方もある。
市場に並ぶ
バナナ畑のある地域の市場に、花のまま並ぶ。家庭料理としてよく作られる。
花の芯は、取れる量が見た目よりずっと少ない。手のひらより大きな塊から、使えるのは中心の一部だけだ。だから畑を持っている家か、市場で安く手に入る土地でないと、日常の料理にはなりにくい。バナナ畑が身近なこの島は、その条件がそろっている。
もうひとつの理由は、島の料理の型にぴったり収まることだ。この島には味の淡い食材が多い。シュシュも、シュー・ド・ヴァコアも、そしてババフィグも。そういう素材に対して、島の料理は決まった答えを持っている。ターメリックとクミンで香りをつけ、トマトで酸を足し、ブカネ(燻製豚)を一緒に炊く。淡いものと濃いものを組み合わせる型が、何度も繰り返し出てくる。


下処理(苞をはがす・花をかき出す・水にさらす)と調理の手順は、島で一般的に語られている作り方をもとにしている。配合や煮込み時間は家庭・店によって幅がある。
世界のバナナの花料理と比べる
バナナの花を野菜として食べるのは、この島だけではない。南アジアと東南アジアでも広く食べられていて、味はアーティチョークに似ると言われる。ここでは、写真の島の食べ方と、ほかの土地の食べ方を並べてみる。
カリ・ババフィグ
cari baba figue
ターメリックとクミン、トマトで煮込むカリにする。燻製した豚肉と炊き合わせて、淡い花に塩気と香りを移す。
カレカレ
kare-kare
落花生のとろりとしたソースで、牛テールなどを煮込む料理。具の野菜のひとつが、若いバナナの花(puso ng saging)だ。
ギナターン・プソ・ン・サギン
ginataang puso ng saging
ギナターンは「ココナッツミルクで煮たもの」を指す呼び名。バナナの花をココナッツミルクで煮る。
キラウィン・ナ・プソ・ン・サギン
kilawin na puso ng saging
キラウィンは酢で和える料理の呼び名。バナナの花を酢で和えて、さっぱりと食べる。
ラウ・ソン
rau sống
料理に添える生野菜の盛り合わせ。レタスや香草と一緒に、細く削いだバナナの花が入る。
煮込む(レユニオン、カレカレ)、ココナッツミルクで煮る、酢で和える、生のまま添える。同じ花でも、土地によって火の入れ方がこれだけ違う。燻製肉と組み合わせるのは、ここに挙げた中ではレユニオンだけだ。
食べに行く前に
注文のことば
バナナ畑のある地域の市場に、花のまま並んでいる。食堂では、家庭料理を出す店やバナナ産地の店でメニューに載っていることがある。常設ではないので、あれば頼む。
値段と覚え書き
| カリ・ババフィグ(一皿) | 10〜16€約1,800〜2,800円 |
| ブカネと合わせた一皿 | 14〜20€約2,500〜3,500円 |
| ババフィグ(市場・1個) | 2〜4€約350〜700円 |
- ブカネ入りか肉なしかは、左の注文のことばで店に聞ける
- 市場で買うなら、苞がしおれていない、固く締まったものを
値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- LesBonnesRecettes「Cari de baba figues à La Réunion」 2〜3cmに切ること、玉ねぎ・にんにく・生姜とターメリック・クミン、トマトの煮汁、フォークで持ち上げられる程度に形を残すこと、白飯や豆を添えること
- Recettes de Papounet「Cari baba figue boucané」 ブカネと合わせる定番の作り方
- Wikipedia「Banana」Flowers の節 バナナの花が南アジア・東南アジアで野菜として使われること、味がアーティチョークに似ること、フィリピンの kilawin na puso ng saging
- Wikipedia「Kare-kare」 具の野菜に若いバナナの花(puso ng saging)が入ること
- Wikipedia「Ginataan」 ココナッツミルクで煮る料理の総称。Ginataang Puso ng Saging
- Wikipedia「Vietnamese cuisine」 生野菜の盛り合わせ rau sống に、細く削いだバナナの花が入ること
写真の出典(10枚)
写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。
- 畑で下がっているババフィグ(バナナの花)|Ex Machina 007/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 開きかけたバナナの花のアップ|Thierry Caro(author assumed from copyright claim; source Bouba)/CC BY-SA 2.5/2004年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 緑と黄色の小ぶりなバナナの房|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 市場の台に山と積まれたシュシュ(ハヤトウリ)と切ったパパイヤ|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 露天市の葉物野菜と唐辛子、レモンの売り台|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 赤いテントの下に花や野菜が並ぶサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- サン・ピエールの屋根付き市場の外観|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)


