見上げたヴァコア(タコノキ)の樹冠と支柱根
レユニオン / フランス海外県

シュー・ド・ヴァコア

Chou de vacoa

海岸のとげだらけの木の、いちばん柔らかいところ

RÉUNION22
根が、地面の上に立っている。

島の南東、サン・フィリップからサント・ローズにかけての海岸を走ると、奇妙な木が並んでいる。幹の途中から太い根が何本も出て、それが地面に刺さって木を支えている。葉は細長く、縁にびっしりとげがある。ヴァコア(vacoa)だ。日本ではタコノキの仲間にあたる。

この木の芽の部分、つまり成長点のいちばん柔らかいところを食べる。シュー・ド・ヴァコア(chou de vacoa)。フランス語の chou は「キャベツ」だが、ここでは椰子の芯(ハート・オブ・パーム)と同じ意味で使われている。

食べ方はドーブ(daube/煮込み)かサラダが多い。そして島の観光情報がはっきり書いているのが、「とりわけブカネ(燻製豚)と一緒に」ということだ。淡くて繊維のある芯に、燻した肉の塩気と香りを合わせる。

ヴァコアは食材だけの木ではない。葉は乾かして裂き、編んでかご、帽子、袋になる。この「ヴァコアの籠編み(vannerie du vacoa)」はフランスの無形文化遺産の目録に登録されている技術で、土産物店に並ぶ「サック・ペイ」と呼ばれる袋がそれだ。

島にはヴァコアがいくつかの種類ある。海岸の「ヴァコア・パンパン」、高地の「ヴァコア・デ・オー」。カップ・メシャンやマリーヌ・ヴァンサンドといった海岸の景勝地では、溶岩の上に生えたヴァコア林が続いている。

タコノキの芽の芯一皿 12〜20€(約2,100〜3,500円)葉の籠編みは無形文化遺産の目録に登録
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木を見る

ヴァコアの木に実った、うろこ状の大きな実
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溶岩の上に群生するヴァコアの林溶岩の上に群生するヴァコアの林

ヴァコアの木に実った、うろこ状の大きな実(2005年撮影)

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うろこ状の実le fruitパイナップルに似た形だが別の植物。食用にするのは実ではなく芽の芯のほう
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とげのある葉les feuilles épineuses縁にびっしりとげがある。乾かして裂き、編んでかごや袋にする
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支柱根racines échasses幹の途中から出て地面に刺さり、木を支える。ヴァコア林の独特の姿はこれ
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海岸に生えるle littoralサン・フィリップからサント・ローズにかけての海岸に多い。溶岩の上にも生える
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一口目

味

ほとんど主張しない

椰子の芯に近い、淡くてわずかに甘い味。えぐみはなく、青くささもない。だから味の強いものと合わせるのが基本になる。ブカネと合わせるのは、この性質のためだ。

食感

繊維がしゃきしゃき残る

縦の繊維がはっきりしていて、煮込んでも完全には崩れない。噛むと繊維に沿って裂ける。サラダにすると、この歯ざわりがそのまま生きる。

出し方

ドーブか、サラダ

島の観光情報では daube(煮込み)や salade として、とりわけブカネ(燻製豚)と一緒に食べると説明されている。白飯と豆を添えるのは他の料理と同じ。

支柱根が林立する海岸のヴァコア林
支柱根が林立する海岸のヴァコア林(2005年撮影)
海辺の木組みのビーチレストラン
海辺の木組みのビーチレストラン。南東の海岸沿いの店で出会いやすい(2019年撮影)
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作り方

1芯を取り出す

木の芽の部分、成長点のいちばん柔らかいところを取り出す。外側の硬い葉鞘を落としていくと、白い芯が出てくる。

取れる量は木の大きさに対してごくわずか
2切って、下ゆでする

適当な長さに切って下ゆでする。アクは強くないが、切り口が変色しやすいので水にさらす。

繊維に沿って切ると歯ざわりが残る
赤く染まった塩漬け豚バラ(ブカネ)が山盛りになった売り場3
ブカネと合わせる

島の定番はブカネ(燻製豚)と一緒に煮込むこと。淡い芯に、燻した肉の塩気と香りが入る。

「とりわけブカネと一緒に」と観光情報にも書かれている
4ドーブにする

玉ねぎ、にんにく、生姜、トマトを合わせて煮込む。カリのようにターメリックを効かせず、色の薄い煮込みに仕上げることが多い。

サラダにするなら下ゆでして冷ます
黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン5
海沿いの店で食べる

南東の海岸沿い、サン・フィリップからサント・ローズにかけての店で出会いやすい。常にメニューにあるとは限らない。

ヴァコア林の景色とセットで訪ねるのがいい
ヴァコアの芯(シュー)ブカネ(燻製豚)玉ねぎにんにく生姜トマトタイム塩・こしょう油
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この一皿の来歴

もとから

島の海岸の木

ヴァコアはタコノキの仲間で、島の海岸や溶岩地帯に群生する。島にはヴァコア・パンパン(海岸)、ヴァコア・デ・オー(高地)など複数の種類がある。

古くから

葉を編む

葉を乾かして裂き、編んでかご・帽子・袋にする技術が受け継がれてきた。

食材として

芯を食べる

芽の柔らかい部分を「シュー」として食べる。ドーブやサラダにし、とりわけブカネと合わせる。

現在

無形文化遺産の目録に

「ヴァコアの籠編み」がフランスの無形文化遺産の目録に登録されている。土産物店の「サック・ペイ」がその産物。

見に行くなら

南東の海岸

サン・フィリップからサント・ローズにかけての海岸、カップ・メシャン、マリーヌ・ヴァンサンドなどでヴァコア林が見られる。

ヴァコアの林は、島の風景のなかでもとくに異様だ。幹の途中から太い根が何本も飛び出して、それが地面に突き刺さって木を支えている。支柱根と呼ばれる構造で、溶岩や砂の上のように地面が不安定な場所でも立っていられる。海岸沿いを走っていると、この林が延々と続く区間がある。

食材としてのヴァコアは、実ではなく芽の芯だ。うろこ状の大きな実がパイナップルのように目立つので誤解しやすいが、皿に乗るのは白い芯のほう。椰子の芯(ハート・オブ・パーム)と同じ位置づけで、フランス語で chou(キャベツ)と呼ぶのもそのためだ。

味はほとんど主張しない。それは欠点ではなく、シュシュと同じ性質だ。だから島では味の強いものと合わせる。観光情報がはっきり「とりわけブカネと」と書いているのは、燻製豚の塩気と煙が、この淡い芯といちばん合うからだろう。淡いものと濃いものを組み合わせるのは、この島の料理によく出てくる型でもある。

食べもの以上に有名なのが、葉の使い道だ。乾かして裂いて編むと、かご、帽子、袋になる。この技術は「ヴァコアの籠編み」としてフランスの無形文化遺産の目録に登録されている。土産物店で「サック・ペイ」と呼ばれている袋は、この木の葉でできている。シュシュの蔓を編む工芸と並んで、島の手仕事の代表だ。

旅行者が皿としてのヴァコアに出会う機会は多くない。常設メニューではないし、取れる量も少ない。ただし林のほうは南東の海岸でいくらでも見られる。カップ・メシャンあたりで溶岩と黒い海を背にしたヴァコアを見てから食べると、この木の食べにくさが分かる。

「とりわけブカネと一緒に」「ドーブやサラダにする」は島のガイド情報による。ヴァコアの籠編みがフランスの無形文化遺産の目録に登録されていることは文化省の資料による。常設メニューではないため、食べられるかどうかは店による。

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この一皿の余話

木の話

根が、地面の上に立っている

ヴァコアの林を初めて見ると、木の形に驚く。幹の途中から太い根が何本も飛び出し、それが地面に突き刺さって木を支えている。支柱根(racines échasses=竹馬の根)と呼ばれる構造で、溶岩の上や砂地のように地面が不安定な場所でも立っていられる。サン・フィリップからサント・ローズにかけての海岸には、この林が延々と続く区間がある。カップ・メシャンでは、黒い溶岩と黒い海を背にしたヴァコアが見られる。

手仕事の話

葉を編む技術が、無形文化遺産の目録に載っている

ヴァコアの葉は縁にびっしりとげがあるが、これを乾かして裂き、編むと、かご・帽子・袋になる。この「ヴァコアの籠編み(la vannerie du vacoa)」は、フランスの無形文化遺産の目録に登録されている技術だ。土産物店で「サック・ペイ(sac péi=島の袋)」と呼ばれて売られている袋は、この木の葉でできている。シュシュの蔓を編む工芸と並んで、島の手仕事を代表するものになっている。

名前の話

「シュー」はキャベツではない

chou de vacoa の chou はフランス語でキャベツを意味する。だが料理として出てくるのはキャベツではなく、木の芽のいちばん柔らかい芯だ。フランス語では椰子の芯(ハート・オブ・パーム)も chou palmiste と呼ぶので、この chou は「木の柔らかい芯」という意味で使われている。うろこ状の大きな実がパイナップルのように目立つので、そちらを食べると思われがちだが、皿に乗るのは白い芯のほうだ。

短い話

  • 1
    食べるのは実ではなく芯うろこ状の実は目立つが、料理になるのは芽の柔らかい部分。
  • 2
    味は淡い椰子の芯に近い。だから味の強いものと合わせる。
  • 3
    ブカネと合わせるのが定番燻製豚の塩気と煙が、淡い芯とよく合う。
  • 4
    常設メニューではない取れる量が少ない。あれば頼む、という料理。
  • 5
    「サック・ペイ」は同じ木の葉土産物店の袋やかご。軽くて土産にしやすい。
  • 6
    林は南東の海岸でサン・フィリップ〜サント・ローズ、カップ・メシャン、マリーヌ・ヴァンサンド。
市場の台に山と積まれたシュシュ(ハヤトウリ)と切ったパパイヤ
市場の台に山と積まれた野菜。島の緑の食材は種類が多い(2016年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Vous avez du chou de vacoa ?ヴ・ザヴェ・デュ・シュー・ドゥ・ヴァコア?/シュー・ド・ヴァコアはありますか?
C'est avec du boucané ?セ・タヴェック・デュ・ブカネ?/ブカネと一緒ですか?
C'est en daube ou en salade ?セ・タン・ドーブ・ウ・アン・サラード?/煮込みですか、サラダですか?
Ce sac, c'est en vacoa ?ス・サック、セ・タン・ヴァコア?/この袋はヴァコアで編んだものですか?
Où voir des vacoas ?ウ・ヴォワール・デ・ヴァコア?/ヴァコアはどこで見られますか?

南東の海岸沿い(サン・フィリップ〜サント・ローズ)の店で出会いやすい。常設メニューではないので、あれば頼む。ヴァコア林はカップ・メシャンやマリーヌ・ヴァンサンドで見られる。編んだかごや袋は土産物店・市場で。

値段と覚え書き

一皿(ドーブ/サラダ)12〜20€約2,100〜3,500円
ブカネと合わせた一皿16〜24€約2,800〜4,200円
ヴァコアのかご・袋(サック・ペイ)20〜60€約3,500〜10,500円
  • 食べるのは実ではなく、芽の芯
  • 味は淡い。ブカネなど味の強いものと合わせる
  • 常設メニューではない。南東の海岸沿いの店で探す
  • 葉の籠編みは無形文化遺産の目録に登録された技術
  • 「サック・ペイ」の袋は軽くて土産に向く
  • 林はカップ・メシャンなどで見られる。溶岩の上にも生える

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

  • Guide Réunion「Vacoa」 島に複数の種類(vacoa pimpin/vacoa de hauts)、サン・フィリップとサント・ローズの海岸・カップ・メシャン・マリーヌ・ヴァンサンド、chou de vacoa をドーブやサラダで、とりわけブカネと合わせること、葉を使った袋・帽子・かご
  • 文化省「La vannerie du vacoa à La Réunion」 ヴァコアの籠編みが無形文化遺産の目録に登録されていること

写真の出典(11枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 見上げたヴァコア(タコノキ)の樹冠と支柱根|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ヴァコアの木に実った、うろこ状の大きな実|B.navez/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 溶岩の上に群生するヴァコアの林|EmilieM1FLERéunion/CC BY-SA 3.0/2013年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 支柱根が林立する海岸のヴァコア林|Geolina/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 海辺の木組みのビーチレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 赤く染まった塩漬け豚バラ(ブカネ)が山盛りになった売り場|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ピエールの屋根付き市場の外観|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 市場の台に山と積まれたシュシュ(ハヤトウリ)と切ったパパイヤ|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)