チーズが焼けたグラタン・シュシュをスプーンですくったレユニオン料理
レユニオン / フランス海外県

シュシュ

Chouchou

実も、葉も、根も、蔓まで使う「野菜の豚」

RÉUNION12
サラジーの谷は、緑の屋根でできている。

島の北東、サラジー圏谷に入ると、道路の上まで棚が張り出していて、そこから薄緑色の実がぶら下がっている。シュシュ(chouchou)。日本ではハヤトウリ、フランス本土ではクリストフィーヌと呼ばれる、ウリ科のつる植物の実だ。

この島のシュシュは、ほぼサラジー産と言っていい。地元の観光局によれば、島の生産の90%以上がこの圏谷から出ている。標高と湿度と雨が、この植物にちょうど合っている。

シュシュのすごさは、捨てるところがないことだ。実は煮ても炒めてもグラタンにもなる。若い芽と葉は「ブレッド・シュシュ」として炒め物になる。根は「パタト・シュシュ」と呼ばれて菓子の材料になる。そして乾かした蔓は裂いて洗って干すと、銀白色の絹のような繊維になり、帽子やかごに編まれる。

そのため地元では「コション・ヴェジェタル(cochon végétal/野菜の豚)」と呼ばれている。豚も鳴き声以外は全部使う、という言い方があるが、それと同じ扱いをされているわけだ。

料理としていちばん多いのはグラタン・ド・シュシュ。薄く切って茹で、ベシャメルとチーズをかけて焼く。ほかにサラダ、ドーブ(煮込み)、菓子、ジャム、酢漬けのアシャール。味そのものは淡いので、何にでも化ける。

ウリ科のつる植物の実1kg 1.5〜3€(約260〜530円)島の生産の90%以上がサラジー産
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実を見る

市場の台に山と積まれたシュシュ(ハヤトウリ)と切ったパパイヤ
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斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑斜面いっぱいの蔓の畑

市場の台に山と積まれたシュシュ(2016年撮影)

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薄緑の実le fruit洋なしのような形で、表面に浅い溝がある。大きさは手のひらほど
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割れ目のような口la fente下側に縦の割れ目がある。中には大きな種が1つだけ入っている
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とげのある品種もvariété épineuse表面が滑らかなものと、細かいとげのあるものがある。どちらも同じように食べる
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山積みla récolte安く、たくさん採れる。だから島のどの市場にも必ずある
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一口目

味

ほとんど味がない

これは欠点ではない。淡くて青くさくなく、噛むとほのかに甘い。だから何にでも合う。グラタンにすればチーズの味に、カリに入れれば煮汁の味に、ジャムにすれば砂糖とバニラの味になる。素材が主張しないことが役に立っている。

食感

しゃきしゃきと、とろりの中間

生に近い状態ではしゃきしゃき、火を通すと透き通ってとろりとする。煮くずれしにくく、水っぽくもならない。冬瓜と大根の中間くらいの感覚。

部位ごと

実・葉・根で別の食べもの

実は野菜として、若い芽と葉は炒め物のブレッドとして、根は「パタト・シュシュ」として菓子に。同じ植物なのに、皿の上ではまったく別のものとして扱われる。

市場に並んだ青梗菜のようなブレッド(葉野菜)の束
市場に並ぶブレッド(葉野菜)の束。シュシュの若い芽も同じようにブレッドになる(2005年撮影)
サラジー/エルブールの「シュシュ祭り」第15回のポスター
サラジー/エルブールの「シュシュ祭り」第15回のポスター。これは料理の写真ではなく祭りの告知(2011年撮影)
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使い方

斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑1
高地で育てる

サラジーをはじめとする高地の斜面に棚を組み、蔓を這わせる。雨が多く、湿度が高く、涼しい場所を好む。島の生産の90%以上がサラジー産とされる。

20世紀のはじめ、島の経済危機のなかで新しい資源として栽培が始まった
2実を切る

皮をむいて薄切りにする。アクは強くないが、切ると手にぬめりがつくことがある。気になるなら水にさらす。

種は1つだけ。柔らかいので一緒に食べられる
チーズが焼けたグラタン・シュシュをスプーンですくったレユニオン料理3
グラタンにする

茹でて水気をきり、ベシャメルとチーズをかけて焼く。グラタン・ド・シュシュ。高地の食堂の定番で、肉料理の付け合わせにもなる。

島でいちばんよく見るシュシュ料理
4ほかにもいろいろ

サラダ、ドーブ(煮込み)、鶏やモリュのカリの具、菓子、ジャム、酢漬けのアシャール。若い芽はブレッドに、根は菓子に。

「捨てるところがない」と言われるゆえん
斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑5
蔓は編む

乾かした蔓を縦に裂き、洗って干すと銀白色の絹のような繊維になる。これを編んで帽子やかごを作る。帽子1つに約10メートル分、20時間ほどの手間がかかるとされる。

サラジーの手工芸として続いている
シュシュの実シュシュの若い芽(ブレッド)シュシュの根(パタト・シュシュ)牛乳・バター・小麦粉(ベシャメル)チーズ塩・こしょうにんにく唐辛子
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この野菜の来歴

原産

中央アメリカから

ウリ科のつる植物で、原産は中央アメリカ。大航海時代以降に世界の熱帯・亜熱帯へ広がった。

20世紀はじめ

サラジーで栽培が始まる

島の経済危機のなか、新しい資源を求めた農家が栽培を始める。気候が合い、急速に広がった。

20世紀

高地の主産業に

サラジー圏谷が島の生産の90%以上を占めるようになる。実だけでなく、蔓を編む手工芸も産業として育つ。

現在

「野菜の豚」

実・若芽・根・蔓のすべてを使うことから、コション・ヴェジェタル(野菜の豚)と呼ばれる。

毎年

シュシュ祭り

サラジーのエルブール村で、農家と職人が集まる祭りが開かれている。

味のない野菜が、どうして島の代表格になったのか。答えは「味がないから」だと思う。シュシュ自体はほとんど主張しない。だからチーズをかければグラタンになり、煮汁に入れればカリになり、砂糖で煮ればジャムになる。何にでも化けられることが、この野菜の能力だ。

「コション・ヴェジェタル(野菜の豚)」という呼び名がよくできている。実は野菜として、若い芽はブレッドとして、根は菓子の材料として、乾いた蔓は編んで帽子やかごになる。一株から出てくるものが、台所と手工芸の両方に届く。使い切るという発想が、そのまま名前になっている。

蔓を編む工程の話が面白い。乾かした蔓を縦に裂き、洗って干すと、銀白色の絹のような繊維になる。帽子ひとつを編むのに、その繊維が約10メートル分、時間にして20時間ほどかかるとされる。市場や土産物店に並んでいる帽子は、野菜の蔓からできている。

サラジーは島の北東にある圏谷で、雨が多く、緑が濃い。エルブールという村があって、ここで毎年シュシュ祭りが開かれる。農産物と手工芸が同時に並ぶ祭りで、山あいの集落が一年でいちばんにぎわう日になる。開催時期は年によって変わるので、行くなら事前に確認したほうがいい。

旅行者にとっては、グラタン・ド・シュシュを一度食べておけば十分だ。付け合わせとして肉料理の横に添えられていることも多いので、意識していなくても口に入っている可能性が高い。「これは何ですか」と聞いたら、たぶんシュシュだ。

高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場
高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場。山の農産物が集まる(2016年撮影)
シラオへ登る国道5号沿いの段々畑
シラオへ登る国道5号沿いの段々畑。高地の農業は斜面の上にある(2019年撮影)

生産比率(90%以上がサラジー産)、蔓の加工に要する時間(帽子1つに約10m・20時間)は、島の観光局が示している数字。シュシュ祭りの開催時期・内容は年ごとに変わる。

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この野菜の余話

呼び名の話

「コション・ヴェジェタル」=野菜の豚

豚は鳴き声以外すべて使える、という言い方がある。シュシュはそれと同じ扱いを受けていて、地元では cochon végétal(野菜の豚)と呼ばれている。実は野菜として、若い芽と葉はブレッド(炒め物)として、根はパタト・シュシュとして菓子に、乾いた蔓は裂いて編んで帽子やかごに。ひとつの植物から、台所にも手仕事にも届くものが出てくる。捨てるところがないという評価が、そのままあだ名になった珍しい例だ。

手仕事の話

帽子1つに、蔓10メートルと20時間

サラジーには、シュシュの蔓を編む手工芸が残っている。乾かした蔓を縦に裂き、洗って干すと、銀白色をした絹のような繊維になる。これを組んで帽子やかごにする。帽子ひとつを作るのに、編んだ繊維が約10メートル分、時間にして20時間ほどかかるとされる。市場や土産物店に並んでいる白い帽子は、野菜の蔓からできている。値段を見て高いと思ったら、この数字を思い出すといい。

名前の話

日本ではハヤトウリ、フランス本土ではクリストフィーヌ

同じ植物なのに、行く先ごとに名前が変わる。レユニオンでは chouchou(シュシュ)、フランス本土やアンティル諸島では christophine(クリストフィーヌ)、中南米では chayote(チャヨテ)、日本では隼人瓜(ハヤトウリ)。日本に入ったのは大正時代で、鹿児島に最初に伝わったから「隼人」の名がついたと言われている。中央アメリカ原産の同じ実が、地球のあちこちで別々の名前をもらっている。

短い話

  • 1
    味は淡いそれが長所。何にでも化ける。グラタン、カリ、サラダ、ジャム、アシャール。
  • 2
    種は1つだけ中央に大きな種が1つ。柔らかいので一緒に食べられる。
  • 3
    90%以上がサラジー産島のシュシュはほぼこの圏谷から出ている。道の上まで棚が張り出している。
  • 4
    ブレッド・シュシュ若い芽と葉を炒めたもの。皿の上では別の料理として扱われる。
  • 5
    パタト・シュシュ根のこと。菓子の材料になる。市場で見かけたらこれ。
  • 6
    帽子は土産になる蔓を編んだ帽子やかご。軽くてかさばらないので持ち帰りやすい。
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食べに行く前に

注文のことば

Un gratin de chouchou, s'il vous plaît.アン・グラタン・ドゥ・シュシュ、シル・ヴ・プレ/シュシュのグラタンを1つください
C'est du chouchou de Salazie ?セ・デュ・シュシュ・ドゥ・サラジー?/サラジーのシュシュですか?
Vous avez des brèdes chouchou ?ヴ・ザヴェ・デ・ブレッド・シュシュ?/シュシュの葉の炒め物はありますか?
C'est fait avec la liane ?セ・フェ・アヴェック・ラ・リアーヌ?/これは蔓で編んだものですか?
C'est la fête du chouchou quand ?セ・ラ・フェット・デュ・シュシュ・カン?/シュシュ祭りはいつですか?

サラジー圏谷(エルブール村など)へ行けば、棚から実が下がる風景がそのまま見られる。グラタン・ド・シュシュは高地の食堂の定番で、肉料理の付け合わせとしても出てくる。蔓を編んだ帽子やかごは土産物店や市場で。

値段と覚え書き

実(市場・1kg)1.5〜3€約260〜530円
グラタン・ド・シュシュ(一皿)6〜11€約1,000〜1,900円
蔓で編んだ帽子25〜60€約4,400〜10,500円
  • 日本のハヤトウリと同じもの。フランス本土ではクリストフィーヌ
  • 味は淡い。何にでも合う代わりに、これ自体が主役にはならない
  • 実・若芽・根・蔓、すべて使う。だから「野菜の豚」
  • サラジー圏谷が主産地。道の上まで棚が張り出している
  • 蔓を編んだ帽子は軽くて土産に向く
  • シュシュ祭りの時期は年によって変わる。行くなら事前確認を

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(7点・10配置)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • チーズが焼けたグラタン・シュシュをスプーンですくった完成料理|Cirage/Public Domain/2010年撮影/料理と構図を保ったまま明るさ・色・解像感を調整(原典)
  • 市場の台に山と積まれたシュシュ(ハヤトウリ)と切ったパパイヤ|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 市場に並んだ青梗菜のようなブレッド(葉野菜)の束|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サラジー/エルブールの「シュシュ祭り」第15回のポスター|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオへ登る国道5号沿いの段々畑|MOSSOT/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)

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