枝についた赤く熟したゴヤヴィエ(ストロベリーグァバ)の実
レユニオン / フランス海外県

ゴヤヴィエ

Goyavier

島を侵略した木の実が、みんなの季節行事になった

RÉUNION10
4月になると、山へ行く。

レユニオンの4月から7月ごろ、週末になると人が山へ向かう。目当てはゴヤヴィエ(goyavier)。中国原産のイチゴグアバ(Psidium cattleyanum)の実で、直径2〜3センチほど、真っ赤に熟すと甘酸っぱい。木は高地の森にいくらでも生えていて、誰でも摘める。

「摘みに行く」という行為そのものが、島の季節行事になっている。家族で車を出して、森に入って、かごいっぱいに摘んで、そのまま近くで薪火のカリを炊いて食べる。ラ・プレーヌ・デ・パルミストという高地では6月にゴヤヴィエ祭り(Fête des goyaviers)が3日間開かれる。

食べ方はまず、摘んだその場で生のまま。皮ごと口に入れて、小さな種ごと噛む。そして持ち帰った実は、ほとんどがジャム(confiture de goyaviers)になる。瓶に詰めて棚に並べ、一年かけて食べる。ロム・アランジェに漬け込む家もある。

ところがこの木は、島にとっては歓迎されない植物でもある。外来の侵略的植物として扱われていて、在来種を押しのけて広がることが問題になっている。つまり島の人は、駆除すべき植物の実を、季節を待って摘みに行っていることになる。

この矛盾を島の人はよく知っていて、笑いながら話す。「摘めば摘むほど島のためになる」と言う人もいる。実際に摘む量が生育に追いつくわけではないのだが、少なくとも、この果物ほど気兼ねなく採っていいものはない。

イチゴグアバの赤い実ジャム1瓶 5〜9€(約900〜1,600円)4〜7月、山へ摘みに行く
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実を見る

金色の器に盛られたゴヤヴィエの実
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枝についた赤く熟したゴヤヴィエ(ストロベリーグァバ)の実枝についているところ

金色の器に盛られたゴヤヴィエの実(2011年撮影)

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赤く熟した実fruit mûr直径2〜3cm。深い赤になったものが甘い。皮ごと食べる
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まだ青い実fruit vert同じ枝に熟したものと青いものが混じる。青いうちは酸が強い
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小さな種les graines中に小さくかたい種がたくさん入っている。生で食べるときは種ごと噛む
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器いっぱいla récolte摘みに行くとかごいっぱいになる。持ち帰った分はほとんどジャムになる
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一口目

味

甘さと酸が同時に来る

熟したものは口に入れた瞬間に甘い。だがすぐ後ろから酸が上がってくる。グアバらしい濃い香りがあって、いちごに似ていると言う人もいる。青いものは酸だけが立っていて、渋みも残る。

食感

皮はぷつっと、中はざらっと

皮は薄く、噛むとぷつっと破れる。中の果肉は柔らかいが、小さな種がたくさん入っているのでざらつく。慣れないうちは種が気になるが、島の人は気にせず噛む。

ジャムにすると

種を漉して、なめらかに

ジャムにするときは煮てから種を漉すことが多い。そうすると濃い赤の、なめらかで香りの強いジャムになる。パンにも、ヨーグルトにも、菓子にも使われる。

棚に並んだレユニオン産のコンフィチュール(ジャム)の瓶
棚に並んだレユニオン産のコンフィチュール(ジャム)の瓶(2011年撮影)
シラオへ登る国道5号沿いの段々畑
シラオへ登る国道5号沿いの段々畑。摘みに行くのはこういう高地(2019年撮影)
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摘んでから瓶まで

シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)1
高地へ行く

ゴヤヴィエの木は高地の森に多い。ラ・プレーヌ・デ・パルミスト周辺がとくに知られている。週末に車を出して、家族で向かう。

4月ごろから7月ごろまで。年によって前後する
2手で摘む

低い枝にもたくさん実るので、脚立も道具もいらない。深い赤に色づいたものを選んで、手でひとつずつ摘む。かごや袋がいっぱいになるまで。

青い実は酸が強いので残しておく
マファット圏谷の集落マルラの農地と家3
その場で食べる

摘みながら口に入れる。皮ごと、種ごと。近くで薪火のカリを炊いて、昼にする家族も多い。摘みに行くこと自体が行事になっている。

「ピクニックのついでに摘む」ではなく「摘むついでにピクニック」
棚に並んだレユニオン産のコンフィチュール(ジャム)の瓶4
ジャムにする

持ち帰った実を煮て、種を漉し、砂糖を加えて煮詰める。瓶に詰めれば一年もつ。土産物店や市場に並ぶジャムの多くはこれ。

ロム・アランジェに漬け込む家もある
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑5
それでも木は増える

摘んでも摘んでも、木は減らない。外来の侵略的植物として在来種を押しのけて広がることが問題になっていて、駆除の対象にもなっている。

「摘むほど島のためになる」と言われるゆえん
ゴヤヴィエの実砂糖レモン汁(好みで)バニラ(好みで)ラム酒(漬け込む場合)
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この実の来歴

19世紀

中国原産の木が持ち込まれる

イチゴグアバ(Psidium cattleyanum)が果樹として島に入る。育ちやすく、実がよくなる。

20世紀

森に広がる

人の手を離れて高地の森に広がり、密生した林を作るようになる。誰でも摘める果物として島の暮らしに入る。

20世紀後半

季節行事になる

4〜7月に家族で山へ摘みに行く習慣が定着し、ジャムが家庭の常備品になる。

現在

侵略的外来種として

在来種を押しのけて広がることが問題視され、外来侵略種として扱われるようになる。

6月

ゴヤヴィエ祭り

ラ・プレーヌ・デ・パルミストで、収穫にちなむ祭りが3日間開かれる。地元の産品と催しが並ぶ。

この果物の面白さは、生態系の問題と季節の楽しみが同じ木の上に乗っているところにある。ゴヤヴィエは外来の侵略的植物で、島固有の植物を押しのけて森を占領していく。環境の観点からは減らしたい木だ。ところが実はおいしく、誰でも摘めて、ジャムにすれば一年もつ。だから島の人はこの木を待っている。

「摘めば摘むほど島のためになる」という言い方を島でよく聞く。実際には、人が摘む量が木の広がりを止めるほどではない。それでも、罪悪感なしにいくらでも採っていい果物というのは、なかなかない。この気楽さが、摘みに行く行事を支えている面はあると思う。

季節はおおむね4月から7月。南西部の高地では3月に始まることもあり、8月まで残る年もある。年によって前後するので、行くなら現地の情報を見てからにしたほうがいい。ラ・プレーヌ・デ・パルミストが最もよく知られた場所で、6月には3日間の祭りがある。

摘みに行く日の過ごし方には型がある。朝から車で高地に上がり、森に入って摘む。昼になったら近くで薪火をおこしてカリを炊く。午後もまた摘んで、夕方に帰る。ゴヤヴィエそのものより、この一日のほうが目的になっている家族も多い。

旅行者が同じことをするのは難しいが、ジャムなら市場でも土産物店でも買える。瓶を開けたとき、この濃い赤が「駆除対象の木の実」だと思い出すと、味の感じ方が少しだけ変わる。

斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑
斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑。島には人の手で持ち込まれて広がった植物がいくつもある(2016年撮影)
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面。ゴヤヴィエの木はこうした高地の森に多い(2019年撮影)

収穫の時期は年によって前後する。ゴヤヴィエ祭りの開催時期・内容も年ごとに変わるので、行く前に現地の情報を確認すること。写真のシュシュ畑はゴヤヴィエではなく、島に持ち込まれて広がった植物の例として掲載している。

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この実の余話

矛盾の話

駆除したい木の実を、季節を待って摘みに行く

ゴヤヴィエ(Psidium cattleyanum)は、島では外来の侵略的植物として扱われている。在来の植物を押しのけて密生した林を作るからだ。ところがその実はおいしく、誰でもどれだけ摘んでもいい。環境としては減らしたい木、暮らしとしては待ち遠しい木。同じ木がその両方になっている。「摘めば摘むほど島のためになる」という言い方が笑い話として通用するのは、この事情があるからだ。

祭りの話

6月に、3日間の祭りがある

高地のラ・プレーヌ・デ・パルミストでは、6月にゴヤヴィエ祭り(Fête des goyaviers)が開かれる。3日間にわたって、収穫にちなむ催しと地元の産品が並ぶ。この島には収穫にまつわる祭りがいくつもあって、サラジー/エルブールのシュシュ祭りもそのひとつ。山あいの集落が一年でいちばんにぎわう日になる。

一日の話

摘みに行く日には、決まった型がある

朝、車で高地に上がる。森に入って手で摘む。昼になったら近くで薪火をおこしてカリを炊く。午後もまた摘んで、夕方に帰る。ゴヤヴィエ摘みは果物を採る作業というより、一日の過ごし方の名前になっている。「今週末はゴヤヴィエ」と言えば、それだけで何をするかが通じる。カブリ・マサレの日曜と同じで、この島の行事はたいてい薪火とセットになっている。

短い話

  • 1
    正体はイチゴグアバ中国原産の Psidium cattleyanum。島でよく見る大きなグアバ(goyave)とは別の、小さいほうの果実。
  • 2
    季節は4〜7月ごろ南西部の高地では3月に始まることも、8月まで残る年もある。年によって前後する。
  • 3
    皮ごと、種ごと生で食べるときは皮も種もそのまま。慣れないうちは種が気になる。
  • 4
    ジャムは種を漉す煮てから種を漉すと、濃い赤のなめらかなジャムになる。土産にしやすい。
  • 5
    ラム酒に漬けるロム・アランジェの材料としても使われる。赤い色がそのまま瓶に出る。
  • 6
    高地の道は狭い摘みに行く時期の週末は、山道が混む。レンタカーで向かうなら早い時間に。
シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)
シラオの山あいに作られた段々畑。高地の暮らしは斜面の上にある(2019年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

C'est la saison des goyaviers ?セ・ラ・セゾン・デ・ゴヤヴィエ?/ゴヤヴィエの季節ですか?
Où est-ce qu'on peut en cueillir ?ウ・エスコン・プ・アン・クイィール?/どこで摘めますか?
Un pot de confiture de goyaviers, s'il vous plaît.アン・ポ・ドゥ・コンフィチュール・ドゥ・ゴヤヴィエ、シル・ヴ・プレ/ゴヤヴィエのジャムを1瓶ください
C'est fait ici ?セ・フェ・イシ?/ここで作ったものですか?
C'est sucré ou acide ?セ・スュクレ・ウ・アシッド?/甘いですか、酸っぱいですか?

生の実は季節(おおむね4〜7月)に高地で。ジャムなら市場・土産物店・スーパーで一年中買える。6月にはラ・プレーヌ・デ・パルミストでゴヤヴィエ祭りがある。摘みに行く時期の週末は山道が混むので、早い時間に動くとよい。

値段と覚え書き

ジャム1瓶5〜9€約900〜1,600円
生の実(市場・季節限定)4〜8€/kg約700〜1,400円
ゴヤヴィエ入りロム・アランジェ20〜35€約3,500〜6,100円
  • 外来の侵略的植物。摘む量に遠慮は要らないとされている
  • 季節は年によって前後する。行く前に現地の情報を確認
  • 生は皮ごと種ごと。ジャムは種を漉してある
  • ジャムは土産にしやすい。瓶なので割れ物として梱包を
  • 6月のゴヤヴィエ祭りは3日間。日程は年ごとに変わる
  • 摘みに行くなら高地。天気が変わりやすいので上着を

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。季節・営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(8枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 枝についた赤く熟したゴヤヴィエ(ストロベリーグァバ)の実|B.navez/CC BY-SA 3.0/2006年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 金色の器に盛られたゴヤヴィエの実|Thierry Caro/Public Domain (PD-self)/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 棚に並んだレユニオン産のコンフィチュール(ジャム)の瓶|Augustus5star/CC BY-SA 4.0/2014年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオへ登る国道5号沿いの段々畑|MOSSOT/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)|Miwok from France/CC0 1.0/2014年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • マファット圏谷の集落マルラの農地と家|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 斜面いっぱいに広がるシュシュの蔓の畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)