ブションにフライドポテトとサラダを添えた皿と、COTの瓶が置かれたテーブル
レユニオン / フランス海外県

ブション

Bouchon

中国から来て、島のおやつになった蒸し餃子

RÉUNION03
3個でも売ってくれる。

レユニオンの町なかを歩いていると、路上のスナックの窓に「BOUCHONS」と大書きしてある。中をのぞくと、蒸籠か保温ケースの中に、親指の先くらいの白い包みがびっしり並んでいる。頼むと発泡トレーに数個入れて、上から醤油だれをかけて渡してくれる。これがブションだ。

見た目はシュウマイに近い。豚の挽き肉を、米粉や小麦粉の薄い皮で包んで蒸したもので、19世紀に渡ってきた中国系の人たちが持ち込んだ点心が、この島の食べものとして定着したものだ。名前のブション(bouchon)はフランス語で「栓」。形が瓶の栓に似ているから、という説明がよくされる。

島に入ってから、中身は島の味になった。豚肉に生姜とにんにく、そしてコンバヴァ(combava/こぶみかんの一種)の皮を削って混ぜる。この柑橘の香りが、シュウマイともシュウマイの親戚とも違う、レユニオンのブションの匂いになっている。

食べ方は決まっていない。アペリティフ(食前の一杯)の皿に、サモサやボンボン・ピマンと一緒に出てくる。昼にはフライドポテトとサラダを添えた一皿になる。パンにはさんだ「パン・ブション」は完全に軽食で、チーズをのせて焼いたグラタン仕立てもある。

値段が安いので、まとめて買って歩きながら食べる人が多い。1個あたり数十セント。数を言えばその数だけ入れてくれる。

豚肉+コンバヴァ+蒸す1個 0.4〜0.8€(約70〜140円)中国系移民が持ち込んだ点心
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1個の中身

発泡トレーに入った、たれのかかったブション(蒸し餃子)
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紙に包まれた、ブションとソースをはさんだパン・ブションパンにはさんだ形

発泡トレーに入った、たれのかかったブション(2007年撮影)

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皮のひだpâte米粉または小麦粉の薄い皮。上を開けたまま包むので、ひだが寄って栓のような形になる
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醤油だれsauce de soja渡すときに上からかける。唐辛子を入れた辛いたれを別に置いている店も多い
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中身farce de porc豚の挽き肉に、青ねぎ・にんにく・生姜・コンバヴァの皮。脂の少ない肉だとぱさつくので、脂身を混ぜる
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発泡トレーbarquette持ち帰りの標準の器。個数を言うと、その数だけこれに入れてくれる
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一口目

味

生姜と柑橘が最初に来る

口に入れてすぐ来るのは生姜と、コンバヴァの青い柑橘の香り。豚の甘みはそのうしろ。醤油だれの塩気がまとめる。辛くはない。辛味は唐辛子だれかボンボン・ピマンで各自が足す。

食感

皮はやわらかく、中身はみっしり

蒸してあるので皮はしっとりして、噛むと切れる。中身は詰まっていて、肉団子に近い密度がある。冷めると皮が締まるので、蒸し立てのほうが断然おいしい。

大きさ

ひと口で入る

親指の先くらい。1人前は4〜5個が目安で、アペリティフなら他のつまみと合わせて2〜3個。歩きながら食べられるサイズになっている。

グリヤード・ブロシェット・ブション・フリットと書かれた店の看板
「GRILLADES BROCHETTES BOUCHONS FRITES」と並べた店の看板(2009年撮影)
「SNACK-BAR LE SAINT PAULOIS 974」の看板を出した路上のスナック
路上のスナック。ブションはこうした店の定番商品(2009年撮影)
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作り方

1中身を作る

豚の挽き肉に、青ねぎ、にんにく、生姜、コンバヴァの皮のすりおろしを混ぜる。脂の割合が少ないとぱさつくので、肩肉とバラを合わせて脂を3割ほど入れるのが目安とされる。

コンバヴァを入れるかどうかで、島のブションかどうかが分かれる
2皮で包む

米粉に水と塩を合わせた皮、または小麦粉に片栗粉を混ぜた皮で包む。上は閉じずに開けたまま、指で寄せて栓の形にする。ワンタンの皮を使う家庭もある。

上が開いているのは、シュウマイと同じ包み方
籠やみやげ物がぎっしり並ぶサン・ドニ大市場の通路3
市場で材料をそろえる

生姜、青ねぎ、コンバヴァはどの市場にも並んでいる。サン・ドニの大市場では香辛料と野菜の売り場が続いていて、ここで一通りそろう。

コンバヴァは皮を使う。実は搾らない
4蒸す

蒸籠に並べて15分ほど。皮の厚さと中身の量で前後する。竹の蒸籠を重ねて使う店も、電気の蒸し器を使う店もある。

蒸し過ぎると皮が破れる
5たれをかけて出す

醤油だれをかけて、発泡トレーか皿に入れて渡す。フライドポテトとサラダを添えれば昼の一皿になり、パンにはさめばパン・ブションになる。

チーズをのせて焼いたグラタン仕立てもある
豚の挽き肉豚の脂身青ねぎにんにく生姜コンバヴァの皮米粉(または小麦粉+片栗粉)塩こしょう醤油
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この一皿の来歴

19世紀後半

中国系の人が渡ってくる

契約労働者や商人として、中国南部(とくに広東系・客家系)の人たちが島に入る。点心の作り方も一緒に来た。

20世紀前半

「ブティック・シノワ」の時代

中国系の人たちが島じゅうで雑貨店(ブティック・シノワ)を開く。店先の軽食として蒸し餃子が売られるようになる。

20世紀後半

コンバヴァが入る

島の柑橘であるコンバヴァの皮を混ぜる作り方が広まり、中国の点心とは別の香りを持つ食べものになる。

現在

スナックの定番

路上のスナック、パン屋、スーパーの惣菜売り場、どこにでもある。アペリティフの皿にも、昼の一皿にも、パンの具にもなる。

近年

冷凍で島の外へ

冷凍のブションが本土のアジア系食品店などでも売られるようになり、島を離れた人が食べるものにもなっている。

レユニオンの食べものの成り立ちを一皿で説明しろと言われたら、ブションを挙げる人は多いと思う。中国から来た調理法に、島の柑橘が入って、フランス語の名前がついて、クレオール語の会話の中で売られている。どこか一か所の料理ではない、という点で、この島らしい。

「ブション」という名前の由来については、瓶の栓に形が似ているから、という説明が広く行われている。フランス語のbouchonは栓の意味で、上を閉じずに包むあの形を指しているという理屈だ。ただ、これは島でよく語られている説明で、文献で確定した語源というわけではない。

中身は豚肉が基本だが、鶏肉のもの、海老のもの、魚のものも売られている。ハラールの店では豚を使わない。どれも「ブション」として並んでいて、注文するときに中身を聞く。

食べる場面がとにかく広い。夕方のアペリティフでは、サモサ、ボンボン・ピマン(豆の揚げ団子)と並んで小皿に出てくる。昼はフライドポテトとサラダを添えた定食になる。パンにはさんだパン・ブションは、島の軽食の名前として定着している。

安くて、少量から買えて、歩きながら食べられる。この3つがそろっているので、観光で島に着いた日の最初の一口にもしやすい。市場でも、海沿いのスナックでも、まず見かける。

サン・ドニの大市場(グラン・マルシェ)の正面玄関
サン・ドニの大市場(グラン・マルシェ)の正面(2011年撮影)
夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観
サン・ピエールの夜の飲食店。アペリティフにブションが出る時間帯(2007年撮影)

名前の由来や中国系移民との関わりは、島でよく語られている整理をもとに書いている。皮の材料や中身の配合は店・家庭によって幅がある。

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この一皿の余話

諸説あり

「ブション」という名前の由来は、はっきりしていない

bouchon はフランス語で「栓」。上を閉じずに包むあの形が瓶の栓に似ているから、という説明がよく行われている。一方で、3〜4センチ角の小さな四角い塊、あるいは一口大の球という「かたち」そのものが名前になった、という説明もある。どちらも広く語られていて、文献で決着がついているわけではない。島の人に聞いても、答えは人によって違う。

移民の話

元は広東の焼売(シューマイ)だった

19世紀に広東地方から渡ってきた中国系の人たちが持ち込んだ点心が元で、中国の焼売(shaomai)に対応するものだとされている。島に入ってから、豚肉に生姜・にんにく・青ねぎ、そしてコンバヴァ(こぶみかんの一種)の皮を混ぜるようになった。この柑橘の香りが、焼売ともシュウマイとも違う「レユニオンのブション」を作っている。

食べ方の話

パンにはさむ形が、3つもある

パン・ブション(そのままはさむ)、パン・ブション・グラチネ(チーズをのせて焼く)、そしてアメリカン・ブション(フライドポテトも一緒にはさむ)。中国系の店や移動販売のカミオン・バーで、この3つが並んでいる。マカティア(甘いパン)にはさむ「マカティア・ブション」もある。点心が、島のサンドイッチになった。

短い話

  • 1
    爪楊枝で食べる木の爪楊枝を刺して、醤油と赤唐辛子のペーストにつけて食べるのが標準的な作法。
  • 2
    中身は豚だけではない鶏、海老、魚のものも売られている。ハラールの店では豚を使わない。頼むときに中身を聞くとよい。
  • 3
    揚げることもある蒸すのが基本だが、揚げたブションを出す店もある。看板に frit と書いてあればそれ。
  • 4
    個数で買える3個でも5個でも売ってくれる。1人でも買いやすく、歩きながら食べられる。
  • 5
    蒸し立てが段違い冷めると皮が締まる。回転の速い店を選ぶと、皮のやわらかさがまったく違う。
  • 6
    冷凍で島の外へ冷凍のブションが本土のアジア系食品店などでも売られていて、島を離れた人が食べるものにもなっている。
「SNACK SUR LE COCOTIER」と書かれた屋台と、グリル・ブション・ブロシェットを並べた手書きの品書き
「SNACK SUR LE COCOTIER」。グリル・ブション・ブロシェットを並べた手(2009年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Cinq bouchons, s'il vous plaît.サンク・ブション、シル・ヴ・プレ/ブションを5個ください
C'est du porc ?セ・デュ・ポール?/豚肉ですか?
Avec du piment, s'il vous plaît.アヴェック・デュ・ピマン、シル・ヴ・プレ/唐辛子だれをかけてください
Un pain bouchon, s'il vous plaît.アン・パン・ブション、シル・ヴ・プレ/パン・ブションを1つください
Ils sont chauds ?イル・ソン・ショー?/これは温かいですか?

路上のスナック、パン屋、スーパーの惣菜売り場のどこでも見かける。個数を言えばその数だけ売ってくれるので、1人でも買いやすい。蒸し立てかどうかで味がだいぶ変わる。

値段と覚え書き

1個(スナック・パン屋)0.4〜0.8€約70〜140円
ブション+フリット+サラダ8〜13€約1,400〜2,300円
パン・ブション3〜5€約500〜900円
  • 個数で注文する。3個でも5個でも売ってくれる
  • 中身は豚が基本だが、鶏・海老・魚もある。豚を避けたい場合は中身を聞く
  • たれは醤油が標準。辛味は別添えのことが多い
  • 冷めたものより蒸し立てのほうが皮がやわらかい。回転の速い店を選ぶ
  • アペリティフの皿ではサモサ、ボンボン・ピマンと一緒に出てくることが多い
  • パンにはさんだパン・ブション、チーズをのせて焼いたグラタン仕立ても定番

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(9枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。

  • ブションにフライドポテトとサラダを添えた皿と、COTの瓶が置かれたテーブル|Matthieu Sontag (Mirgolth)/CC BY-SA 3.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 発泡トレーに入った、たれのかかったブション(蒸し餃子)|Thierry Caro/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 紙に包まれた、ブションとソースをはさんだパン・ブション|Gamebouille/CC BY-SA 3.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • グリヤード・ブロシェット・ブション・フリットと書かれた店の看板|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「SNACK-BAR LE SAINT PAULOIS 974」の看板を出した路上のスナック|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 籠やみやげ物がぎっしり並ぶサン・ドニ大市場の通路|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ドニの大市場(グラン・マルシェ)の正面玄関|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観|Dunog/Public domain/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「SNACK SUR LE COCOTIER」と書かれた屋台と、グリル・ブション・ブロシェットを並べた手書きの品書き|mwanasimba/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)