
チャーゾー
Chả giò
揚げてから、もう一度葉っぱで巻く
揚げた春巻きが出てきたら、そのまま口に運びたくなる。でもベトナムでは、たいてい皿の横にレタスと香草の山が置いてある。揚がったものを、もう一度その葉で巻いて、たれにつけて食べる。
揚げものを野菜で巻く、というのが不思議なようで、食べてみると理屈が分かる。油の重さを葉が受け止めて、香草の香りが後ろに回る。一本目より二本目のほうが速くなり、気づくと皿が空いている。
皮はライスペーパー。小麦の皮より薄くて、揚げると表面に細かい気泡が立ち、噛むとざくっと割れる。中身は豚ひき肉、きくらげ、春雨、にんじん、玉ねぎ。春雨が余分な水分を吸うので、揚げてもべちゃつかない。
南部では chả giò(チャーゾー)、北部では nem rán(ネムザン)。同じ料理なのに名前が違い、皮も南は薄いライスペーパー、北は少し厚めのものを使うことが多い。ややこしいことに、南部で nem とだけ言うと、発酵させた豚肉(nem chua)を指すことがある。
単品でも食べるし、米麺の器にのせて「bún chả giò」にもする。旧正月や法事など、人が集まる日の食卓にはたいてい山盛りで出てきて、揚げたてを取り合うことになる。
器の解剖

揚げ上がりチャーゾーは単品でも食べるが、こうして米麺(bún)の器にのせることも多い。写真は焼豚と一緒にのせた「bún thịt nướng chả giò」。
一口目
味
油の香ばしさに、たれの酸味が乗る
中の具は豚のうまみときくらげの土のような香り。皮の香ばしさが強いので、たれの酸味とライムでちょうど釣り合う。葉で巻くと油の重さが消えて、何本でも入ってしまう。冷めると皮が湿って、この釣り合いが崩れる。
食感
ざくっ、そのあとにぷりっ
ライスペーパーの皮は、小麦の皮より薄く割れる。ざくっという最初の音のあと、噛み進むと春雨ときくらげのぷりぷりが来る。二つの食感の落差が大きいほど、揚げたてに当たったということになる。
一口目
葉で巻いてから
揚げたてを一本、レタスとミントで巻いて、たれに半分だけ浸す。この一口で、なぜ野菜が付いてくるのかが分かる。皿の横の葉は飾りではなく、料理の一部だ。


一本ができるまで
豚ひき肉、戻したきくらげと春雨、にんじん、玉ねぎ、卵。魚醤とこしょうで下味をつけて、しっかり混ぜる。春雨が余分な水分を吸ってくれるので、揚げたときに中がべちゃつかない。
春雨が水分を吸うので、べちゃつかない湿らせたライスペーパーに具をのせ、両端を折ってきつく巻く。太さは指くらい。きつく巻かないと、揚げているあいだに開いて中身が出てしまう。巻き終わりは水で軽く留める。
きつく巻かないと揚げるときに開く
3最初はぬるめの油でゆっくり。中まで火が通ったら温度を上げて、表面を一気に色づける。二度揚げすると、冷めてもざくっとしたままでいてくれる。屋台では、この二度目を注文が入ってからやる店もある。
二度揚げすると、冷めてもざくっとしている
4レタス、シソ、ミント、きゅうりを山にして皿の横へ。甘酸っぱい魚醤だれを添えて出す。巻いて食べるので、野菜は多めに用意しておく。米麺の器にのせるときは、切らずに丸ごと置く。
巻いて食べるので、野菜は多めに南と北で、名前が入れ替わる
chả giò(チャーゾー)
ホーチミンをはじめ南部では chả giò。皮は薄いライスペーパーで、揚げると細かい気泡が立つ。
nem rán(ネムザン)
ハノイでは nem rán、または nem。同じ料理だが、皮がやや厚く、具にカニを入れることもある。
南の「nem」は別物
南部で nem と言うと、発酵させた豚肉(nem chua)を指すことがある。名前だけで頼むと違うものが出てくる。
巻き直して食べる
揚げたものをレタスや香草でもう一度巻く。米麺の器にのせて「bún chả giò」にもする。
祝いの日の一皿
旧正月や法事など、人が集まる日の食卓にはたいてい山盛りで出てくる。揚げたてを取り合う。
チャーゾーは、ベトナムの祝いの席にほぼ必ず出てくる料理だ。旧正月、法事、誕生日。人が集まる日の食卓には、揚げたてが山盛りで置かれる。手間がかかるので、ふだんは屋台で買って済ませ、家で作るのは特別な日、という位置づけになっている。
南北で名前が入れ替わるのが、この料理のややこしいところだ。南部では chả giò、北部では nem rán。さらに南部で nem とだけ言うと、発酵させた豚肉の nem chua を指すことがあるので、ハノイのつもりで注文すると別のものが出てくる。
皮も違う。南はライスペーパー(bánh tráng)を使い、揚げると表面に細かい気泡が立って軽く割れる。北はもう少し厚めの皮を使い、具にカニを入れることもある。同じ料理として扱われているが、食べ比べると別の食べものだ。
食べ方の作法は南北で共通している。揚げたものを、レタスや香草でもう一度巻いて、甘酸っぱい魚醤だれにつける。油の重さを葉と酸で受け止めるという考え方は、バインセオでもバインコットでも同じで、ベトナム料理の背骨みたいなものになっている。
屋台では一本8,000ドンから。揚げ置きの店も多いので、揚げたてが出る昼と夕方を狙うと当たりが多い。皿に置いたときの音でだいたい分かる。かつんと硬い音がしたら、それは当たりだ。

南北で名前が入れ替わるうえ、地域によって皮も具も違う。ここではホーチミンでよく見る形を書いている。
食べに行く前に
注文のことば
揚げ置きの店も多いので、揚げたてが出る時間帯(昼と夕方)を狙うと当たりが多い。
値段と覚え書き
| 屋台・1本 | 8,000〜15,000 VND約50〜90円 |
| 食堂の一皿(4〜6本) | 40,000〜80,000 VND約240〜480円 |
| レストラン | 90,000〜150,000 VND約540〜900円 |
- 生春巻きは gỏi cuốn。揚げたほうが chả giò で、まったく別の料理として扱われる
- ハノイで頼むときは nem rán。南で nem だけ言うと発酵肉が出ることがある
- 米麺にのせた「bún chả giò」なら、一皿で食事になる
- 揚げ置きは皮が湿る。皿に置いたときの音で揚げたてかどうか分かる
- 精進版の chả giò chay は、肉の代わりにきのこと豆腐が入る
- テト(旧正月)の時期は、どの食堂でも山盛りで出てくる
値段は2026年9月時点の目安。1,000ドン=約6円で換算。営業時間・価格・閉店は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- Wikipedia tiếng Việt「Chả giò」 南北の呼び名の違いと材料
- Wikipedia tiếng Việt「Nem chua」 南部で「nem」が指すもの
写真の出典(7枚)
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- 白い皿に並んだ揚げ春巻きと、レタス、香草、赤唐辛子|Phạm Thành Đạt/Pexels License(商用可・加工可)/2020年公開・明るさ調整あり(原典)
- 真上から見た器。揚げ春巻き、焼豚、砕いたピーナッツ、なます、赤いたれの小鉢|Starzzz Studios/Pexels License(商用可・加工可)/2022年公開・明るさ調整あり(原典)
- こんがりと揚がった春巻きの寄り|FOX ^.ᆽ.^= ∫/Pexels License(商用可・加工可)/2026年公開・明るさ調整あり(原典)
- 器に盛られた揚げ春巻きと目玉焼き、香草|Jer Chung/Pexels License(商用可・加工可)/2019年公開・明るさ調整あり(原典)
- 穴のあいた金属のざるに、揚がった春巻きが山になっている。赤い唐辛子が混じる|Theodore Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2025年公開・明るさ調整あり(原典)
- 白い皿に揚げた春巻き、きゅうりの薄切り、青い香草|Bich Tran/Pexels License(商用可・加工可)/2018年公開・明るさ調整あり(原典)
- 箸で揚げた春巻きを一本つまみ上げているところ。手前にたれの小鉢|Anna Tarazevich/Pexels License(商用可・加工可)/2020年公開・明るさ調整あり(原典)
装飾
紙・テープ・手描きの下線・提灯ガーランドなどの装飾は、ユーザー提供の素材パック htnv-decor-user-pack-01〜04 から切り出して使用。
写真は7枚すべてPexelsライセンス(商用利用可・改変可)。明るさ・彩度・コントラストを調整している。トリミング・合成はしていない。撮影地はベトナム国内とは限らない。


