手書きの名札をつけた小袋入りの乾燥ハーブが並ぶ市場の棚
レユニオン / フランス海外県

ティザーヌ

Tisane créole

市場の一角に、手書きの札が並ぶ薬草の店がある

RÉUNION20
何に効くか、聞いてから買う。

島の市場を歩いていると、野菜でも果物でも肉でもない一角に出る。乾かした葉や枝が小袋に詰められ、それぞれに手書きの札が添えてある。植物の名前と、何に効くか。ここがティザヌール(tisaneur)の店だ。

ティザヌールは薬草を扱う人のことで、島の言葉では「ティザネール(Tizanèr)」。何十種類もの薬草の性質を知っていて、香りを飛ばさない乾かし方を知っていて、それを組み合わせて客ごとの配合を作る。西部観光局の説明によれば、扱う調合はおよそ100種類にのぼる。

この島には250種類を超える固有の植物があり、そのうち19種類が現在フランス薬局方(Pharmacopée française)に登録されている。つまり、市場の露店に並んでいる葉のいくつかは、公式に薬用植物として認められているものだ。

知識は文字ではなく、人から人へ伝えられてきた。ティザヌールから次のティザヌールへ、世代をまたいで渡されてきたもので、島の記憶そのものと言われる。

旅行者にとっては、飲みものとして楽しむのが現実的だ。ファハム(甘い干し草のような香り)、レモングラス、生姜。湯を注げばお茶になる。ただし「効く」とされる調合を体調のために使うなら、それは薬の話になるので、自己判断で扱わないほうがいい。

乾かした薬草を煎じたお茶小袋 4〜8€(約700〜1,400円)島の固有植物19種が薬局方に登録
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店先を見る

薬草の名前を書いた札を添えて乾燥ハーブを並べたティザヌールの露店
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袋詰めした薬草と説明書きを並べたティザヌールの台袋詰めした薬草と説明書き

薬草の名前を書いた札を添えて乾燥ハーブを並べたティザヌールの露店(2011年撮影)

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手書きの札les étiquettes植物の名前と、何に用いられるかが書いてある。読めなくても指させば説明してくれる
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乾かした葉と枝les plantes séchées香りを飛ばさない乾かし方が、この仕事のいちばんの技術だとされる
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小分けの袋les sachets少量から買える。土産にするならこの形がいちばん扱いやすい
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並べ方l'étal品名ごとに並べる。組み合わせは客の話を聞いてから決める
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一口目

ファハム

甘い干し草の香り

島固有のランの葉を乾かしたもの。香りの主成分はクマリンで、甘く、干し草のような、ほのかにバニラに似た香りがする。湯を注ぐだけでよく香る。ロム・アランジェの材料としても使われる。

生姜・レモングラス

わかりやすい香り

どちらも島でよく使われる。生姜は体を温める使い方をされ、レモングラスは柑橘に近いすっきりした香り。初めてなら、この2つが飲みやすい。

調合

客に合わせて混ぜる

ティザヌールは既製の商品を売っているというより、話を聞いてその場で組み合わせる。「何のために」を聞かれるので、飲みものとして欲しいならそう伝えるとよい。

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葉から一杯まで

露天市の葉物野菜と唐辛子、レモンの売り台1
植物を採る

栽培しているものと、山で採るものがある。マファットのような高地へ登って採る人もいる。採る時期と部位が決まっているものが多い。

野生種には保護のかかっているものがある
2乾かす

香りを飛ばさずに乾かすのが、この仕事のいちばんの技術だとされる。日に当てるもの、陰で干すもの、植物ごとに扱いが違う。

乾かし方で品質が決まる
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市場に並べる

品名ごとに小分けして並べ、手書きの札を添える。西部の露天市、高地の市場、あるいは自分のティザヌリー(薬草店)で売る。

扱う調合はおよそ100種類とされる
4話を聞いて、混ぜる

客の話を聞いてから、その場で組み合わせる。既製品を渡すのではなく、一人ずつ配合を作るのがティザヌールの仕事。

飲みものとして欲しいなら、そう伝える
5湯を注ぐ

急須やポットに入れて湯を注ぎ、数分置く。ファハムなら砂糖を少し入れる人もいる。

煮出すものと、注ぐだけのものがある
ファハム(島固有のランの葉)生姜レモングラスゼラニウムその他の島の薬草湯砂糖(好みで)
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この一杯の来歴

入植の時代

三つの知識が混ざる

マダガスカル、インド、ヨーロッパから来た人たちが、それぞれの薬草の使い方を持ち込み、島の植物に当てはめていった。

長い年月

口伝えで受け継がれる

文字ではなく、ティザヌールから次のティザヌールへ、世代をまたいで知識が渡されてきた。

現在

250種を超える固有種

島には250種類以上の固有植物があり、そのうち19種類がフランス薬局方に登録されている。

現在

およそ100の調合

ティザヌールが扱う調合はおよそ100種類にのぼるとされる。客ごとに組み合わせる。

会える場所

市場・高地・ティザヌリー

西海岸沿いの露天市、マファットなど高地への道中、あるいはティザヌリー(薬草店)で会うことができる。

この島の料理を見ていくと、材料も調理法も外から来たものばかりだと気づく。米はアジアから、豆はアフリカとマダガスカルから、香辛料はインドから、蒸し餃子は中国から。ところが薬草だけは事情が違う。使われている植物の多くが、この島にしかないものだ。

250種類を超える固有植物があり、そのうち19種類がフランス薬局方に登録されている。薬局方は薬として認められた物質の公的なリストなので、これは「島の民間療法」で片づけられない話だ。市場の露店に並んでいる葉のいくつかは、正式に薬用植物として位置づけられている。

面白いのは、知識の伝わり方だ。文字にまとめられたわけではなく、ティザヌールから次のティザヌールへ、口で伝えられてきた。だから同じ植物でも、地域や家系で使い方が少しずつ違う。「島の記憶を守る人たち」と呼ばれるのは、そういう性格の仕事だからだ。

旅行者としてどう付き合うかは、少し考えたほうがいい。飲みものとして楽しむのは問題ない。ファハムの甘い香りや、生姜の温かさは、お茶として素直においしい。一方で「これは何に効く」という話を体調のために使うなら、それは薬の話になる。持病や服薬があるなら、自己判断で試すのはやめておくべきだ。

買うなら小袋がいい。軽く、かさばらず、香りが残る。ファハムはワシントン条約の対象なので島外への持ち出しに許可が要る建前になっている。買うときに栽培品かどうか、持ち帰ってよいかを店で確認するのが確実だ。

250種以上の固有種、19種の薬局方登録、およそ100の調合という数字は島の観光局の説明による。効能については本文では扱わない。体調のために用いるなら医療者に相談すること。ファハムなど野生のランはワシントン条約の対象で、持ち出しには制限がある。

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この一杯の余話

数字の話

島の固有植物19種が、フランス薬局方に載っている

レユニオンには250種類を超える固有植物があり、そのうち19種類が現在フランス薬局方(Pharmacopée française)に登録されている。薬局方は薬として認められた物質の公的なリストなので、これは「島の言い伝え」では済まされない位置づけだ。市場の露店に手書きの札を添えて並んでいる葉のいくつかは、制度の上でも薬用植物として認められている。露店と国の制度が、同じ植物でつながっている。

仕事の話

ティザヌールは、既製品を売らない

ティザヌール(島の言葉ではティザネール/Tizanèr)は、何十種類もの薬草の性質を知り、香りを飛ばさない乾かし方を知り、それを組み合わせて客ごとの配合を作る人のことだ。扱う調合はおよそ100種類にのぼるとされる。棚から商品を取って渡すのではなく、話を聞いてからその場で混ぜる。だから同じ店で同じものを頼んでも、前と同じ配合になるとは限らない。

伝わり方の話

文字ではなく、人から人へ

この知識はマニュアルになっていない。ティザヌールから次のティザヌールへ、世代をまたいで口で伝えられてきた。だから地域や家系によって、同じ植物の使い方が少しずつ違う。マダガスカル、インド、ヨーロッパから来た人たちがそれぞれの薬草の知識を持ち込み、島の植物に当てはめていった結果でもある。料理と同じで、混ざったものが島のものになっている。

短い話

  • 1
    ファハムは島固有のラン甘い干し草のような香り。ロム・アランジェの材料にもなる。
  • 2
    飲みものとして頼むなら伝える「何のために」を聞かれる。お茶として欲しいならそう言えばよい。
  • 3
    小袋が買いやすい軽くてかさばらない。土産にするならこの形。
  • 4
    効能は自己判断で試さない持病や服薬があるなら医療者に相談を。旅行中は特に慎重に。
  • 5
    ファハムは持ち出しに制限野生のランはワシントン条約の対象。栽培品かどうかを店で確認する。
  • 6
    会える場所西海岸沿いの露天市、高地の市場、ティザヌリー(薬草店)。
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食べに行く前に

注文のことば

Vous avez du faham ?ヴ・ザヴェ・デュ・ファハム?/ファハムはありますか?
C'est pour boire, pas pour soigner.セ・プール・ボワール、パ・プール・ソワニェ/飲みもの用です。治療用ではありません
Ça se prépare comment ?サ・ス・プレパール・コマン?/どうやって淹れますか?
C'est cultivé ou sauvage ?セ・キュルティヴェ・ウ・ソヴァージュ?/栽培品ですか、野生のものですか?
Je peux l'emporter en France ?ジュ・プ・ランポルテ・アン・フランス?/持ち帰れますか?

西海岸沿いの露天市、高地の市場、そしてティザヌリー(薬草店)。市場の一角にまとまっていることが多い。話しかければ、何の植物かを教えてくれる。

値段と覚え書き

小袋(乾燥葉)4〜8€約700〜1,400円
調合したもの8〜15€約1,400〜2,600円
ファハム入りロム・アランジェ20〜35€約3,500〜6,100円
  • 飲みものとして楽しむのが旅行者には現実的
  • 効能を目的に使うなら、それは薬の話。自己判断で試さない
  • 持病・服薬がある人は医療者に相談を
  • ファハムは野生のランでワシントン条約の対象。持ち出しは要確認
  • 小袋なら軽くて土産にしやすい
  • 手書きの札は植物名と用途。読めなくても指させば教えてくれる

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。効能については本記事では扱っていない。

参照資料

写真の出典(4枚・4配置)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 手書きの名札をつけた小袋入りの乾燥ハーブが並ぶ市場の棚|Annerun974/CC BY-SA 3.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 薬草の名前を書いた札を添えて乾燥ハーブを並べたティザヌールの露店|Nanie 974/CC BY-SA 3.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 袋詰めした薬草と説明書きを並べたティザヌールの台|Nanie 974/CC BY-SA 3.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 露天市の葉物野菜と唐辛子、レモンの売り台|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)