
カフェ・ブルボン・ポワントゥ
Café Bourbon pointu
一度消えたコーヒーを、日本人が探しあてた
ブルボン・ポワントゥ(Bourbon pointu)は、この島で生まれたコーヒーだ。アラビカ種の突然変異で、豆の先がとがっているからこの名がついた。学名は Coffea arabica var. laurina。1711年、ブルボン島(いまのレユニオン)でルイ・ボワヴァン・ダルダンクールによって記録されたのが最初とされる。
18世紀には「カフェ・デュ・ロワ(王のコーヒー)」と呼ばれ、ルイ15世が好んだと伝えられる。19世紀にはバルザックがこれを非常に好んだという話も残っている。1800年の生産量はおよそ4000トン。この島はコーヒーの島だった。
ところが1880年の病害でほぼ壊滅する。そこへサイクロンが重なり、畑はサトウキビとゼラニウムに置きかわっていった。1942年に本土へ送られた200キロが最後の輸出で、そのあとブルボン・ポワントゥは記録から消えた。
話が戻ってくるのは1999年8月だ。UCC上島珈琲の研究者だった川島良彰が、この品種を探しに島へ来る。1970年代から80年代にかけて中米で内戦を経験した時期にこの名前を知り、以来ずっと追いかけていた。来島から2年後、野生に生き残っていた木が30本ほど見つかる。そこから8年をかけて復活させた。
カフェインは0.4〜0.75%ほどで、ふつうのアラビカ(1.2〜1.6%)の半分ほどしかない。オレンジ、みかん、ライチのような果実の香りがあるとされ、世界でもっとも高価なコーヒーのひとつになっている。
木を見る

1800年ごろのブルボン島のコーヒー農園を描いた絵サン・ポールのスリティ農園に育つブルボン・ポワントゥのコーヒーの木(2019年撮影)
一口目
香り
オレンジ、みかん、ライチ
コーヒーの香りとしては珍しく、柑橘と果実にはっきり寄っている。焙煎の香ばしさより、カップから立つ果実の香りが先に来る。「とても独特な果実の香り(オレンジ、みかん、ライチ)」と説明されている。
苦み
軽い
カフェインが0.4〜0.75%ほどと、ふつうのアラビカの半分ほどしかない。そのぶん刺激が少なく、飲み口が軽い。夜に飲んでも眠れなくなりにくいという言われ方をする。
値段
世界でも指折り
2007年に日本で最初に売られたときは、100gの袋2200個が7,350円だった。ジャマイカのブルーマウンテンの3倍とされた値段で、いまも世界で最も高価なコーヒーのひとつに数えられている。


消えて、戻るまで
1コーヒーが病害とサイクロンで倒れたあと、島の斜面はサトウキビとゼラニウムに置きかわった。いまも島の農業の中心はサトウキビだ。
1800年の生産4000トンから、1942年の最後の輸出200キロまで1942年に本土へ送られた200キロを最後に、ブルボン・ポワントゥは商業的な記録から姿を消す。品種として絶えたと思われていた。
およそ半世紀のあいだ、行方がわからなくなったUCC上島珈琲の研究者だった川島良彰が島を訪れる。1970年代から80年代の中米での経験を通じてこの品種の名を知り、以来追い続けていた。
島の市場や農園を回って手がかりを探した来島から2年後、野生に生き残っていた木がおよそ30本見つかる。そこから8年をかけて、栽培と品質の回復に取り組んだ。
品種が絶えていなかったことが確認された瞬間最初の商業収穫は2005年。86人の生産者が107の畑で栽培していたとされる。2007年に日本で販売が始まった。
生産規模はいまも小さいこのコーヒーの来歴
島で記録される
ルイ・ボワヴァン・ダルダンクールがブルボン島でこの変異を記録する。最初は「カフェ・デュ・ロワ(王のコーヒー)」と呼ばれた。
名声の時代
ルイ15世が好んだと伝えられ、19世紀にはバルザックが非常に好んだという話が残る。1800年の生産量は約4000トン。
病害で壊滅
病気が広がり、品種はほぼ絶える。サイクロンが重なり、畑はサトウキビとゼラニウムに置きかわった。
最後の輸出
本土へ送られた200キロを最後に、記録から消える。
探索と復活
1999年8月に川島良彰が来島。2年後に野生の30本を確認し、8年をかけて復活させる。2005年に最初の商業収穫。
ひとつの品種が消えて、半世紀後に見つかって、また商品として戻ってくる。そんなことが実際に起きた例は多くない。ブルボン・ポワントゥの話が特別なのは、それが偶然ではなく、一人の人間が何十年も追いかけた結果だという点だ。
川島良彰がこの品種の名を知ったのは1970年代から80年代、中米での経験を通じてだったという。以来ずっと気にかけていて、1999年8月に島へ来た。そして2年後、野生に生き残った木がおよそ30本見つかる。そこから8年。畑を作り、品質を整え、2005年に最初の商業収穫にこぎつけた。
日本の会社の研究者が、フランスの海外県で、18世紀に消えかけた品種を掘り起こした。地理も時代もばらばらな要素が一本の線になっているのが、この話の面白さだ。2007年に日本で最初に売られたとき、100gが7,350円。ジャマイカのブルーマウンテンの3倍という値がついた。
味の特徴もはっきりしている。カフェインが0.4〜0.75%と、ふつうのアラビカの半分ほど。オレンジ、みかん、ライチのような果実の香りがあるとされる。木が小ぶりで収量が少ないので、そもそも大量には作れない。高いのは希少性のためでもあるが、そもそも作りにくい品種でもある。
島で飲むなら、サン・ポール周辺の農園やカフェを当たることになる。生産量が小さいので、どこにでもあるものではない。ガトー・パタトと合わせるのが、島の観光情報でもすすめられている食べ方だ。素朴な芋の菓子と、世界で最も高価なコーヒーのひとつ。この島らしい組み合わせだと思う。


年代・数量・価格はフランス語版の解説による。生産規模や販売状況は変わっている可能性があるため、現在の入手可否は現地で確認すること。ルイ15世やバルザックの逸話は伝えられている話。
このコーヒーの余話
1999年8月、日本人がこの島に探しに来た
ブルボン・ポワントゥは1942年を最後に記録から消え、絶えたと思われていた。1999年8月、UCC上島珈琲の研究者だった川島良彰が、この品種を探して島に来る。1970年代から80年代にかけての中米での経験を通じてこの名を知り、以来ずっと追いかけていたという。来島から2年後、野生に生き残っていた木がおよそ30本見つかった。そこから8年をかけて栽培を立て直し、2005年に最初の商業収穫にこぎつけている。品種が消えてから復活まで、60年以上が経っていた。
ルイ15世とバルザックが好んだと伝えられる
18世紀、この品種は「カフェ・デュ・ロワ(王のコーヒー)」と呼ばれていた。フランス革命のあとには、1770年に亡くなった栽培者にちなんで「カフェ・ルロワ」と呼ばれるようになる。ルイ15世が好んだと伝えられ、19世紀にはバルザックがこれを非常に好んだという話も残っている。1800年の生産量は約4000トン。いまのレユニオンからは想像しにくいが、この島はかつてコーヒーの島だった。
カフェインは半分、値段はブルーマウンテンの3倍
ブルボン・ポワントゥのカフェインは0.4〜0.75%ほどで、ふつうのアラビカの1.2〜1.6%に対して半分ほどしかない。香りはオレンジ、みかん、ライチのような果実系。2007年に日本で最初に売られたとき、100gの袋2200個が7,350円で、ジャマイカのブルーマウンテンの3倍という値がついた。木が小ぶりで収量が少ないので、そもそも大量には作れない品種でもある。
短い話
- 1「ポワントゥ」は「とがった」豆の先がとがっているのでこの名。学名の laurina は月桂樹に似た細い葉から。
- 2島の旧名がブルボンバニラの「ブルボン」と同じ由来。どちらも島の旧名ブルボン島から来ている。
- 3産地は西側サン・ポール周辺の斜面。日陰を作って育てる。
- 4どこにでもあるものではない生産量が小さいので、置いているカフェや店は限られる。
- 5ガトー・パタトと合わせる島の観光情報でもすすめられている組み合わせ。
- 6ふつうの「カフェ・ブルボン」とは別島で売られているコーヒー全部がポワントゥではない。ラベルの品種名を確認する。

食べに行く前に
注文のことば
サン・ポール周辺の農園やカフェ、専門店。生産量が小さいので、扱っている店は限られる。島で売られているコーヒーがすべてポワントゥというわけではないので、品種名を確認するとよい。
値段と覚え書き
| 100g(専門店・島内) | 40〜80€約7,000〜14,000円 |
| 1杯(カフェ) | 6〜12€約1,000〜2,100円 |
| ふつうのカフェ・ブルボン(100g) | 8〜15€約1,400〜2,600円 |
- カフェインはふつうのアラビカの半分ほど
- 香りはオレンジ・みかん・ライチに例えられる
- 世界でも指折りの高値。少量から買うのが現実的
- 「カフェ・ブルボン」全部がポワントゥではない。品種名を見る
- 産地は島の西側、サン・ポール周辺
- ガトー・パタトと合わせるのが島のすすめ
値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。流通量が少ないため価格の変動が大きい。入手可否は現地で確認を。
参照資料
- Wikipédia(fr)「Bourbon pointu」 1711年の記録、カフェ・デュ・ロワ/カフェ・ルロワ、ルイ15世・バルザックの逸話、1800年の4000トン、1880年の病害、1942年の最後の200キロ、1999年8月の川島良彰の来島と2年後の野生30本、8年の復活、2005年の初収穫(86生産者・107畑)、2007年の日本での販売(100g×2200袋・7,350円、ブルーマウンテンの3倍)、カフェイン0.4〜0.75%(通常1.2〜1.6%)、オレンジ・みかん・ライチの香り
- Office de Tourisme de l'Ouest「Domaine des Caféiers(サン・ポール)」 サン・ポールにおけるブルボン・ポワントゥ栽培
写真の出典(11枚)
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- レユニオン島スリティ農園のブルボン・ポワントゥの生豆を手に取った写真|AdrienChatenay/CC BY-SA 4.0/2017年撮影/表示用1280px版(原典)
- サン・ポールのスリティ農園に育つブルボン・ポワントゥのコーヒーの木|AdrienChatenay/CC BY-SA 4.0/2017年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- ブルボン島のコーヒー農園を描いた1800年ごろの絵画|Jean-Joseph Patu de Rosemont/Public domain/1800年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- クレオール料理店の手書きメニュー表|Nop112233/CC BY-SA 4.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)|Sarah Duprat1/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 赤いテントの下に花や野菜が並ぶサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- シラオへ登る国道5号沿いの段々畑|MOSSOT/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 「oranges pays 1€ kg」の札を立てたオレンジの山|Sarah Duprat1/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)


