
ボーラーロット
Bò lá lốt
葉ごと炭で焼くと、肉より葉のほうが香る
牛のひき肉を、ロロット(lá lốt)という葉で巻いて、炭火で焼いたもの。指ほどの太さの俵が、串に何本か刺さって出てくる。夕方になると、この匂いが通りに流れてくる。肉の匂いではなく、焦げた葉の匂いだ。
ロロットはコショウ科の植物の葉で、生のままだと青くさく、少しぴりっとする。ところが炭火にあてると、その青くささが香ばしさに変わる。噛んだときに最初に来るのは肉ではなく、この葉の香りのほうだ。
中身は牛のひき肉に、刻んだレモングラス、にんにく、エシャロット、五香粉。豚の脂を少し混ぜる店もある。脂が落ちて炭に当たると、また煙が上がって、それが葉にかかる。焼き台のまわりが一番いい匂いがする理由がそれだ。
食べ方は巻きものの流儀にならう。ライスペーパーかレタスに、串から外した一本、細い米麺、きゅうり、なます、香草を重ねて巻く。たれは魚醤ベースのものか、発酵させた小魚のマムネムか。店によってどちらかが出てくる。
南部では「ボー・バイモン(牛の七品)」という宴会料理があって、その中の一品としても出てくる。屋台の串焼きでもあり、店のコース料理でもあるという、めずらしい立ち位置の食べもの。
皿の解剖

コショウ科の葉添えものは店ごとに変わる。細い米麺、なます、きゅうり、香草、ライスペーパー。たれは魚醤だれか、マムネム(発酵させた小魚のたれ)。
一口目
味
肉より先に、葉が香る
噛んだ最初に来るのは、焦げた葉の香りだ。ロロットはコショウの仲間で、生のときの青くささが火にあたると香ばしさに変わる。そのあとから、レモングラスとにんにくの入った牛肉の味がついてくる。順番が逆なのが面白い。
食感
外は少し固く、中は柔らかい
葉の表面は炭であぶられて、かさかさと乾いている。噛むとその薄い層がぱりっと割れて、中の柔らかいひき肉が出てくる。上にかかった砕きピーナッツが、そこにもうひと粒ぶんの歯ざわりを足す。
一口目
まず串から一本、そのまま
最初の一本は巻かずに、串から外してそのまま食べてみる。葉の香りと肉の味の順番が、これでいちばんよく分かる。二本目から、ライスペーパーで巻いてたれにひたす。


一皿ができるまで
牛のひき肉に、刻んだレモングラス、にんにく、エシャロット、五香粉、砂糖、魚醤を混ぜる。豚の脂を少し足すと、焼いたときに乾かない。
レモングラスの量が、店ごとの香りを決める
2ロロットの葉を裏返して置き、あんを細長くのせて、端から巻く。巻き終わりは葉の軸を刺して留める。
裏返して巻くのは、焼いたときに色よく出るため巻いたものを何本か、竹串にまとめて刺す。こうすると裏返すのが一度で済む。
屋台では、串のまま数えて売る
4金網にのせて炭火で焼く。脂が落ちて煙が上がり、その煙が葉にかかる。表面が乾いて葉が黒っぽくなったら焼き上がり。
焼きすぎると葉が炭になってしまう葉の名前を、英語が取り違えている
ロロットはコショウ科
lá lốt(Piper sarmentosum)はコショウ科の植物。東南アジア全域に生えていて、ベトナムでは料理を包む葉として使われる。
英語ではbetel leaf
英語圏ではbetel leafと訳されることが多いが、噛みたばこに使う本物のベテル(Piper betle)は別の植物。よくある取り違え。
牛の七品の一品として
サイゴンの宴会料理「ボー・バイモン(bò 7 món)」は、牛を七つの調理法で出すコース。ボーラーロットはその一品として知られている。
串で数えて売る
店のコース料理であると同時に、夕方の屋台で串のまま数えて売られる食べものでもある。一本いくら、で買える。
ネムルイ・ネムヌン
レモングラスの茎に巻いて焼くネムルイ、豚のつみれを焼くネムヌン。どれも「焼いて、葉で巻いて、たれにひたす」という同じ形をとる。
ボーラーロットを初めて食べたとき、たぶん多くの人が同じ順番でおどろく。まず葉の香りが来て、そのあとに肉が来るのだ。普通、肉料理は肉が主役で、包んでいるものは器のはずなのに、この料理では立場が逆転している。ロロットの葉は、包むためではなく、香らせるために巻かれている。
この葉は日本ではあまり見かけない。コショウ科のPiper sarmentosumという植物で、ハート形の濃い緑の葉をつける。生で噛むと青くさく、舌の奥にわずかなしびれが残る。ところが炭火にあてると、その青くささが一転して香ばしくなる。焼くという行為が、この葉の性格をまるごと入れ替えてしまう。
ややこしいのは英語の名前だ。英語圏ではlá lốtをbetel leafと訳すことが多く、レストランのメニューにも「beef in betel leaf」と書いてある。けれど噛みたばこに使う本物のベテル(Piper betle)は別の植物で、味も用途も違う。近い仲間ではあるが、同じではない。この取り違えは長く続いていて、いまも直る気配がない。
サイゴンには「ボー・バイモン」——牛の七品、という宴会料理がある。牛肉を七つの調理法で順に出していくコースで、ボーラーロットはその一品として定番になっている。つまりこの料理は、屋台の一本でもあり、白いテーブルクロスの上の一皿でもある。両方の顔を持っている食べものは、そう多くない。
夕方、ホーチミンの路地を歩いていると、この匂いに出会うことがある。肉の焼ける匂いとは違う、少し薬草じみた、焦げた葉の匂い。匂いをたどっていくと、たいてい小さな焼き台があって、串が並んでいて、煙が上がっている。何本ですかと聞かれたら、五本くらいから始めるのがいい。


写真p3は撮影者が「ベテルの葉」と記載しているもので、ロロット(Piper sarmentosum)であるとは確認できていない。英語圏でこの二つが混同されやすいことの例として載せている。
食べに行く前に
注文のことば
夕方から夜が本番。焼き台が見える席に座ると、焼きたてが来るのを待つ時間も楽しい。串の本数で数えて注文する。
値段と覚え書き
| 屋台の1本 | 6,000〜12,000 VND約36〜72円 |
| 店の1皿(10本前後) | 70,000〜120,000 VND約420〜720円 |
| ライスペーパー・香草の一式 | 15,000〜30,000 VND約90〜180円 |
- 串の本数で注文する。最初は5本くらいがちょうどいい
- マムネム(mắm nêm)は発酵させた小魚のたれ。匂いが強いので、苦手なら魚醤だれを頼む
- 焼きたてが本領。焼き置きは葉の香りがだいぶ落ちる
- 近い料理:ネムルイ(nem lụi)はレモングラスの茎に巻いて焼いたもの
- 「bò 7 món(牛の七品)」の看板を出す店では、コースの一品として出てくる
- 葉ごと食べるもの。取り外す必要はない
値段は2026年9月時点の目安。1,000ドン=約6円で換算。営業時間・価格・閉店は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- Wikipedia tiếng Việt「Bò nướng lá lốt」 材料・作り方・ボー七品との関係
- Wikipedia「Piper sarmentosum」 ロロットの植物としての分類、ベテルとの違い
写真の出典(7枚)
写真は個別ページのライセンスに従います。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。
- 青い縁の皿に、緑の葉で巻いた肉が並び、砕いたピーナッツときゅうりが添えられている|FOX/Pexels License(商用可・加工可)/2025年公開・明るさ調整あり(原典)
- 白い角皿に葉巻きの肉、砕いたピーナッツ。奥に細い米麺と香草、手前にたれの椀が二つ|Baoothersks/CC BY 4.0/撮影年不明・明るさ調整あり(原典)
- 水滴のついた濃い緑の葉が重なっている。撮影者は「ベテルの葉」と記載|Zumaidi Zainuddin/Pexels License(商用可・加工可)/2026年公開・明るさ調整あり(原典)
- 白い角皿に葉巻きの肉、レタス、香草、なます、細い麺、たれの椀。イギリス・マンチェスターの店で撮影|Minh28397/CC BY-SA 4.0/撮影年不明・明るさ調整あり(原典)
- 歩道に座った女性が、緑の葉に具をのせて巻いているところ|Pew Nguyen/Pexels License(商用可・加工可)/2020年公開・明るさ調整あり(原典)
- タイルの上に置いた炭の焼き台。金網の上で葉巻きの串が焼かれている|Thông Nguyễn/Pexels License(商用可・加工可)/2026年公開・明るさ調整あり(原典)
- バナナの葉の上に葉巻きの肉、編んだ細い米麺(バインホイ)、きゅうり、香草|SauceSupreme/CC BY 2.0/撮影年不明・明るさ調整あり(原典)
装飾
紙・テープ・手描きの下線・提灯ガーランドなどの装飾は、ユーザー提供の素材パック htnv-decor-user-pack-01〜04 から切り出して使用。
写真はPexelsライセンス4枚、CCライセンス3枚。7枚すべて明るさ・彩度・コントラストを調整している。トリミング・合成はしていない。撮影地には国外のベトナム料理店を含む。


