ガラスのボウルに盛られた、トマトと混ぜたルガイユ・モリュ(干し鱈)
レユニオン / フランス海外県

ルガイユ・モリュ

Rougail morue

北の海の干し鱈が、南の島の金曜日になった

RÉUNION07
金曜日は、これが多い。

レユニオンの市場に、白くかたい板のような魚の切り身が積まれていることがある。モリュ(morue)。塩漬けにして干した鱈だ。獲れるのは大西洋やノルウェー沖で、この島から1万キロ以上離れている。それがなぜ、インド洋の島の定番料理になっているのか。

理由は保存性にある。塩と乾燥で水分を抜いた鱈は、冷蔵設備のない時代でも長く船に積んでいられた。帆船の時代、ヨーロッパから熱帯の植民地へ運べる数少ないたんぱく源のひとつがこれだった。港に着いた干し鱈は、島の台所に入り、そのまま定着した。

使う前にはまず塩を抜く。冷水に一晩、できれば24時間から36時間つけて、途中で何度も水を替える。それから軽く茹でて、皮と骨を取り、身をほぐす。ここまでが下ごしらえで、料理はそのあとから始まる。

ほぐした鱈をトマト、玉ねぎ、生姜、にんにく、唐辛子と一緒に炒め煮にする。ターメリックやタイムを入れる家もある。カリのように長く煮込まず、材料の形が残る程度で仕上げるのがルガイユのやり方だ。

この島では金曜日にルガイユ・モリュを食べる家が多い、とよく言われる。カトリックの習慣で金曜に肉を避けた名残だと説明されることが多いが、いまは習慣だけが残っていて、宗教とは関係なく「金曜はモリュ」という家がある。

塩漬けの干し鱈+トマトと唐辛子12〜18€(約2,100〜3,200円)金曜日に食べる家が多い
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皿の中身

ガラスのボウルに盛られた、トマトと混ぜたルガイユ・モリュ(干し鱈)
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露天市の葉物野菜と唐辛子、レモンの売り台材料は市場でそろう

ガラスのボウルに盛られた、トマトと合わせたルガイユ・モリュ(2011年撮影)

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ほぐした鱈の身morue effeuillée塩を抜いて茹で、皮と骨を取って手でほぐす。繊維がほどけた白い身が残る
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トマトtomateルガイユの中心。煮くずしすぎず、形を少し残すのが一般的
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玉ねぎoignon薄切りにして先に炒める。甘みが塩気を受け止める
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唐辛子piment入れる家と、卓上で足す家がある。青唐辛子を刻んで入れることが多い
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一口目

味

塩気と酸が、はっきり立っている

塩を抜いても鱈の塩気は残っていて、そこにトマトの酸が乗る。生姜とにんにくが後ろで支えて、唐辛子が輪郭をつける。カリのようなまろやかさではなく、輪郭のはっきりした味。白飯が進む設計になっている。

食感

ほぐれた身と、崩れたトマト

鱈の身は繊維に沿ってほろほろとほぐれる。トマトと玉ねぎは形が半分残る程度。汁気は少なく、白飯の上にのせて混ぜて食べる。

出し方

白飯・豆・ブレッドと一緒に

島の一皿の構成はここでも同じ。白飯、豆(グラン)、炒めた葉物(ブレッド)、そしてこのルガイユ。食堂では一皿に全部盛られて出てくる。

白飯、赤インゲン豆、鶏のカリ、ルガイユを盛りつけた一皿
白飯・豆・煮込み・ルガイユ。島の一皿の完成形(2023年撮影)
クレオール料理店の手書きメニュー表
クレオール料理店の手書きメニュー。ルガイユは煮込みと並んで書かれる(2009年撮影)
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作り方

1塩を抜く

冷水に一晩、できれば24〜36時間つける。途中で何度も水を替える。ここを省くと、どう料理しても塩辛いままになる。

下ごしらえに前日から取りかかる料理
2茹でて、ほぐす

水から5〜10分ほど茹でて、湯を捨てる。皮と骨を取り除き、手で身をほぐす。

骨は小さいので、指で確かめながら取る
緑の青唐辛子がぎっしり詰まった売り台3
青唐辛子を用意する

市場には青唐辛子がぎっしり詰まった台がある。刻んで鍋に入れる家と、すりつぶして卓上のルガイユにする家がある。

辛さの入れ方は家ごとに違う
「Combava Pays 1€ pièce」の手書き札を立てたコンバヴァのかご4
コンバヴァや生姜を足す

生姜、にんにくは必ず入る。コンバヴァ(こぶみかんの一種)の皮を少し削って入れる家もある。柑橘の香りが魚のくせを切る。

「Combava Pays」の札が立っていれば島産
5炒め合わせる

玉ねぎを炒め、生姜・にんにく・唐辛子を加え、トマトを入れて、最後にほぐした鱈を合わせる。長く煮込まず、材料の形が残るところで火を止める。

カリは煮込み、ルガイユは炒め合わせ
塩漬けの干し鱈(モリュ)トマト玉ねぎにんにく生姜青唐辛子ターメリックタイムコンバヴァの皮油
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この一皿の来歴

17〜18世紀

干し鱈が船で運ばれる

塩漬けにして干した鱈は、冷蔵設備のない時代に長距離を運べる保存食だった。ヨーロッパから熱帯の植民地へ渡る船の積荷になる。

18〜19世紀

島の台所に入る

港に着いた干し鱈が島で流通し、手に入る魚として台所に定着する。塩抜きの手順ごと受け継がれた。

19世紀

ルガイユの形になる

タミル語 ouroukaille に由来するルガイユの調理法と合わさり、トマトと唐辛子で仕立てる形が定着する。

20世紀

金曜日の料理として

カトリックの習慣で金曜に肉を避けた名残として、金曜にモリュを食べる家が多いと語られるようになる。

現在

食堂の定番

クレオール料理店のメニューにはほぼ必ず載っている。冷凍や塩漬けのモリュはスーパーでも買える。

レユニオンの料理を並べていくと、島の外から来たものばかりだということに気づく。米はアジアから、豆はアフリカとマダガスカルから、香辛料はインドから、蒸し餃子は中国から。そのなかでもいちばん遠くから来たのが、この干し鱈だ。大西洋やノルウェー沖で獲れた魚が、塩と乾燥という技術ひとつでインド洋まで届いた。

面白いのは、島のまわりの海には魚がいくらでもいるということだ。マグロもカジキもシイラも獲れる。それでも干し鱈が定番として残った。保存食として入ってきたものが、味として好まれ、料理として完成してしまったからだと考えられている。必要から始まったものが、好みになった例だ。

「金曜日はモリュ」という言い方は、島でよく聞く。もとはカトリックの習慣で金曜に肉を控えたことに由来すると説明されるが、いまは宗教とは切り離されて、単なる曜日の習慣として残っている家も多い。食堂のメニューでも金曜にモリュを出す店がある。

ルガイユという言葉は、この島では二重の意味を持っている。ひとつは卓上に置く辛い薬味そのもの。もうひとつは、この料理のように「炒め合わせて仕上げる一皿」の名前。ルガイユ・モリュ、ルガイユ・ソシス(ソーセージ)、ルガイユ・ブカネ(燻製豚)と、同じ言葉が料理名の頭につく。

下ごしらえに丸一日かかるので、家庭では前の日から水につけておく。旅行者にとっては作る料理ではなく食べる料理だが、皿の上の白い身が、丸一日水の中にいたものだと知っていると、味の感じ方が少し変わる。

金曜日にモリュを食べる習慣の由来は、島でよく語られている説明をもとに書いている。塩抜きの時間や香辛料の配合は家庭・店によって幅がある。

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この一皿の余話

距離の話

1万キロ離れた海の魚が、島の定番になった

モリュは大西洋やノルウェー沖で獲れる鱈で、レユニオンからは1万キロ以上離れている。塩漬けにして干すという技術があったから、帆船でも運べた。冷蔵庫のない時代に「腐らないたんぱく源」として島に届き、そのまま台所に居ついた。島のまわりの海にはマグロもカジキもシイラもいる。それでも干し鱈が残ったのは、必要から入ってきたものが、いつのまにか好みになったからだ。

曜日の話

「金曜日はモリュ」の理由

カトリックには金曜に肉を控える習慣があり、その代わりに魚を食べた。その名残で、島では金曜にルガイユ・モリュを出す家や店が多いと言われている。いまは宗教とは切り離されて、単に「金曜はモリュの日」として残っている家もある。旅行中に金曜を挟むなら、食堂の日替わりを見てみるといい。

ことばの話

ルガイユは、薬味であり料理名でもある

卓上に置く辛い薬味もルガイユ、この炒め合わせの一皿もルガイユ。同じ言葉が2つの意味を持っている。語源はタミル語の ouroukaille で、もとは「刻んだ青い果実を唐辛子とレモン汁で和えたもの」。青いマンゴーで作るルガイユは、いまでも語源どおりの姿をしている。メニューで「ルガイユ・◯◯」とあれば、それは料理名のほうだ。

短い話

  • 1
    下ごしらえに丸一日塩抜きに一晩から36時間。家庭では前日から水につけておく。
  • 2
    カリとの違いは煮込み時間カリは蓋をして長く煮る。ルガイユは炒め合わせて材料の形を残す。
  • 3
    ルガイユは魚だけではないルガイユ・ソシス(豚ソーセージ)、ルガイユ・ブカネ(燻製豚)も定番。同じ作りで具が変わる。
  • 4
    辛さの入れ方は二通り鍋に入れる家と、卓上のルガイユで各自が足す家がある。店では聞けば教えてくれる。
  • 5
    白飯・豆・ブレッドと一緒に皿の構成はカリのときと同じ。ルガイユだけで出てくることはまずない。
  • 6
    モリュは土産にしにくい塩漬けの魚なので匂いが強く、持ち帰りには向かない。食べるのは現地で。
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食べに行く前に

注文のことば

Un rougail morue, s'il vous plaît.アン・ルガイユ・モリュ、シル・ヴ・プレ/ルガイユ・モリュを1つください
C'est piquant ?セ・ピカン?/辛いですか?
Vous avez le plat du jour ?ヴ・ザヴェ・ル・プラ・デュ・ジュール?/日替わりはありますか?
Avec du riz et des grains.アヴェック・デュ・リ・エ・デ・グラン/ご飯と豆を添えて
Le piment à part, s'il vous plaît.ル・ピマン・ア・パール、シル・ヴ・プレ/辛味は別にしてください

クレオール料理店ならほぼどこにでもある。金曜に出す店が多いので、日替わり(plat du jour)を見てみるとよい。市場の惣菜売り場でも量り売りしている。

値段と覚え書き

食堂の一皿(白飯・豆つき)12〜18€約2,100〜3,200円
市場の惣菜(量り売り)8〜14€約1,400〜2,500円
塩漬けモリュ(1kg)12〜20€約2,100〜3,500円
  • 金曜に出す店が多い。日替わりを確認する
  • 辛さは店によって差が大きい。別添えを頼める店もある
  • 「ルガイユ・◯◯」は炒め合わせの一皿の名前。薬味のルガイユとは別
  • 白飯・豆・ブレッドが一緒についてくるのが標準
  • 干し鱈は塩抜きに丸一日かかる。家で作るなら前日から
  • 土産には向かない。匂いが強い

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(10枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 赤いテントの下に花や野菜が並ぶサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ガラスのボウルに盛られた、トマトと混ぜたルガイユ・モリュ(干し鱈)|Chaoborus/CC BY-SA 4.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 露天市の葉物野菜と唐辛子、レモンの売り台|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 白飯、赤インゲン豆、鶏のカリ、ルガイユを盛りつけた一皿|Tchaosy / Sung-Yee TCHAO/CC BY-SA 4.0/2023年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • クレオール料理店の手書きメニュー表|Nop112233/CC BY-SA 4.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 緑の青唐辛子がぎっしり詰まった売り台|David Monniaux/CC BY-SA 3.0/2005年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「Combava Pays 1€ pièce」の手書き札を立てたコンバヴァのかご|Marie-angele.joly/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ピエールの屋根付き市場の外観|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)