棚に並んだ「VIN DE CILAOS」のボトル
レユニオン / フランス海外県

ヴァン・ド・シラオ

Vin de Cilaos

かつて「飲むと気が狂う」と言われたワイン

RÉUNION13
標高1000メートルに、ぶどう畑がある。

南緯21度、インド洋のまんなかにある熱帯の島に、ぶどう畑がある。シラオ圏谷。標高800〜1200メートルの斜面に、段々に仕立てられた畑が並んでいる。緯度だけ見ればワインができるはずのない場所だが、標高が気温を下げてくれる。

島にぶどうが入ってきたのは1665年、最初の入植者と一緒だった。ただし高地でのぶどう栽培が始まるのは19世紀の半ばごろ。1860年前後に導入されたイザベル種で作られていたのが、かつての「シラオのワイン」だ。

そしてこの昔のワインには、あまり名誉でない評判がついていた。「飲むと気が狂う」と言われていたのだ。実際のところは、粗い造りの度数の高い酒だったということだろうが、その評判ごと語り草になっている。

いまのワインは別物だ。1992年にシラオの醸造協同組合(シェ・ド・シラオ)ができ、同じ年から圏谷に本格的な品種が植えられた。1996年に最初のシュナン(白)、1998年から赤の生産が始まる。いまはピノ・ノワールとマルベックで赤、シュナンで白を造っている。

生産量は小さい。2001年には年3万5千本、その後は年2万5千本ほどが売られているとされる。島の外にはほとんど出ないので、飲むならここで飲むしかない。

標高800〜1200mのぶどう畑1本 10〜20€(約1,800〜3,500円)1992年に協同組合ができて生まれ変わった
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棚に並んだ「VIN DE CILAOS」のボトル
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「Cilaos」のラベルが貼られた白ワインのボトル「Cilaos」のラベルが貼られた白

棚に並んだ「VIN DE CILAOS」のボトル(2019年撮影)

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「VIN DE CILAOS」の表示l'étiquette圏谷の名前がそのまま銘柄になっている。島の外ではほとんど見かけない
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白(シュナン)chenin1996年が最初の収穫。すっきりした辛口が中心
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赤(ピノ・ノワール/マルベック)pinot noir / malbec1998年から生産。標高が高いぶん、熱帯とは思えない酸が残る
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本数は少ないpetite production年2万5千本ほど。島の外にはほとんど出回らない
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一口目

白(シュナン)

すっきりして、酸が立つ

熱帯の島のワインというと甘いものを想像するが、シュナンは辛口で酸がはっきりしている。標高800〜1200メートルという条件が、そのまま味に出ている。魚料理やヴァンダイユと合わせやすい。

赤(ピノ/マルベック)

軽やかで、タンニンは穏やか

重厚な赤ではなく、軽やかな飲み口。マルベックが入るぶん色は濃いが、口当たりは思ったよりやさしい。カリやマサレのような香辛料の料理に合わせると面白い。

甘口もある

食後の一杯に

甘口タイプも造られている。デザートワインとしてガトー・パタトなどの菓子と合わせる飲み方をする人もいる。

ぶどう畑を背にシラオワインのボトル2本を持つ手
ぶどう畑を背に、シラオワインのボトル2本を持つ手(2019年撮影)
グラン・バサンの斜面に作られた小さなぶどう畑
グラン・バサンの斜面に作られた小さなぶどう畑(2019年撮影)
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畑から瓶まで

シラオへ登る国道5号沿いの段々畑1
シラオへ登る

島の南西、標高1200メートルの圏谷。国道5号は急な斜面をつづら折りで登っていく。道沿いには段々に仕立てられた畑が続く。

曲がりくねった山道。車酔いする人は前の席に
シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)2
斜面に棚を作る

平らな土地がないので、斜面を段々に切って畑にする。ぶどうも棚仕立てが多い。標高が高く、昼夜の気温差があるのがこの土地の強み。

標高800〜1200mの範囲
3品種を選ぶ

かつては1860年ごろに入ったイザベル種だった。1992年に協同組合ができてから、シュナン、ピノ・ノワール、マルベックが植えられた。

1996年に最初のシュナン、1998年から赤
マファット圏谷の集落マルラの農地と家4
収穫して、仕込む

収穫した実を協同組合の醸造所に集めて仕込む。生産量は年2万5千本ほど。小さな規模で、ほとんどが島の中で消費される。

島の外ではほとんど手に入らない
5シラオで飲む

シラオの町の店や、島じゅうのレストランのワインリストに載っている。土産物店でも瓶で買える。

割れ物なので梱包を頼むとよい
シュナン(白)ピノ・ノワール(赤)マルベック(赤)標高800〜1200mの斜面昼夜の気温差
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このワインの来歴

1665年

ぶどうが島に入る

最初の入植者とともに、ぶどうがこの島にもたらされる。ただしすぐに高地で栽培されたわけではない。

19世紀半ば

高地での栽培が始まる

シラオなどの圏谷でぶどう栽培が始まる。1860年前後にイザベル種が導入される。

19〜20世紀

「飲むと気が狂う」

イザベル種で造られた昔のシラオのワインには、そう言われる評判がついていた。粗い造りの強い酒だった。

1992年

協同組合ができる

シェ・ド・シラオが設立され、同じ年から圏谷に本格的な品種が植えられる。1996年に最初のシュナン、1998年から赤。

2000年代以降

小さく、続く

2001年に年3万5千本、その後は年2万5千本ほど。2004〜2009年は「ヴァン・ド・ペイ」の表示が使われていた。

南緯21度でワインを造る、という時点で無理がある。ぶどうは冬の寒さで休眠する植物で、一年じゅう暖かい場所では本来うまく育たない。それを可能にしているのが標高だ。シラオは800〜1200メートルにあり、夜はかなり冷える。緯度で足りないぶんを高さで補っている。

この土地のワインの歴史でいちばん面白いのは、悪評のほうだ。1860年ごろに入ったイザベル種で造られた昔のシラオワインには、「飲むと気が狂う」という言われ方がついてまわった。造りが粗く、度数が高かったことの反映だろうが、その評判ごと島の記憶になっている。いまのワインを飲んで「これのどこが」と思うのが正しい反応だ。

生まれ変わったのは1992年。協同組合ができ、同じ年から本格的な品種が植えられた。1996年に最初のシュナンが穫れ、1998年から赤の生産が始まる。つまりいまのシラオワインは、30年ほどの歴史しかない。古い伝統ではなく、意識的に作り直された産地だ。

生産量は年2万5千本ほど。ワインの世界では極小の規模で、島の外にはほとんど出ない。だからこそ、島にいるあいだに飲む価値がある。レストランのワインリストに載っていたら、フランス本土のワインではなくこちらを頼んでみるといい。

シラオという町自体も面白い場所だ。圏谷の底にあって、まわりを1000メートル級の絶壁に囲まれている。ぶどうのほかにレンズ豆の産地としても知られていて、温泉も湧いている。ワインだけを目的に行くには遠いが、島を一周するなら通り道になる。

高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場
高地ボワ・クールの市場。山の産物はこうした場所に集まる(2016年撮影)
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑
ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面。高地の農業は急斜面の上にある(2019年撮影)

1665年のぶどう導入、1860年ごろのイザベル種、1992年の協同組合設立、1996年の初シュナン、1998年からの赤、2001年3万5千本/その後2万5千本という数字はフランス語版の解説による。表示区分(ヴァン・ド・ペイ/IGP)の現状は変わっている可能性があるため、断定を避けている。

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このワインの余話

評判の話

昔のシラオワインは「飲むと気が狂う」と言われた

1860年前後にイザベル種が導入されてから造られていた昔のシラオのワインには、「rendre fou(気が狂わせる)」という評判がついていた。おそらくは造りが粗く、度数が高かったということなのだが、その言われ方ごと島の記憶に残っている。1992年に協同組合ができ、本格的な品種に植えかえられてからのワインはまったく別物だ。いまのシュナンを飲んで、この話を思い出すと落差が面白い。

地理の話

緯度で足りないぶんを、高さで補っている

シラオは南緯21度、熱帯のまんなかにある。ぶどうは本来、冬の寒さで休眠する植物なので、一年じゅう暖かい場所では育ちにくい。それを可能にしているのが標高800〜1200メートルという高さだ。夜はかなり冷える。緯度で足りない条件を高さで埋めるという発想で、インド洋でも指折りの高地の畑になっている。ワインの酸がしっかり残っているのは、この昼夜の気温差のおかげだ。

若さの話

「伝統の産地」ではなく、作り直された産地

いまのシラオワインの歴史は30年ほどしかない。1992年に協同組合シェ・ド・シラオができ、同じ年に本格的な品種が植えられ、1996年に最初のシュナンが穫れ、1998年から赤の生産が始まった。年間2万5千本ほどという極小の規模で、島の外にはほとんど出ない。古くから続く伝統というより、いちど評判を落とした産地が意識的にやり直した結果として、いまの味がある。

短い話

  • 1
    品種は3つ白はシュナン、赤はピノ・ノワールとマルベック。甘口タイプもある。
  • 2
    標高800〜1200mインド洋でも指折りの高さにある畑。夜の冷え込みが酸を残す。
  • 3
    年2万5千本ほどワインとしては極小の生産量。島の外ではほとんど手に入らない。
  • 4
    シラオはレンズ豆でも有名ぶどうのほか、豆の産地としても知られている。段々畑にはどちらもある。
  • 5
    山道は曲がりくねっている国道5号のつづら折り。車酔いしやすい人は前の席に座る。
  • 6
    土産にするなら梱包を瓶なので割れ物。航空機に持ち込むなら液体の規定も確認する。
市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)
市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札。島の飲みものはラムだけではない(2011年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Vous avez du vin de Cilaos ?ヴ・ザヴェ・デュ・ヴァン・ドゥ・シラオ?/シラオのワインはありますか?
Un verre de blanc, s'il vous plaît.アン・ヴェール・ドゥ・ブラン、シル・ヴ・プレ/白をグラスで1杯ください
C'est sec ou moelleux ?セ・セック・ウ・モワルー?/辛口ですか、甘口ですか?
On peut visiter le chai ?オン・プ・ヴィジテ・ル・シェ?/醸造所は見学できますか?
Vous pouvez l'emballer ?ヴ・プヴェ・ランバレ?/梱包してもらえますか?

シラオの町の店、島じゅうのレストランのワインリスト、土産物店。生産量が小さいので、置いていない店もある。シラオへは南西から国道5号のつづら折りを登る。

値段と覚え書き

ボトル1本(土産物店)10〜20€約1,800〜3,500円
グラス1杯(レストラン)4〜7€約700〜1,200円
レストランのボトル18〜30€約3,100〜5,300円
  • 白はシュナン、赤はピノ・ノワールとマルベック
  • 熱帯の島だが標高が高いので、味は思ったより締まっている
  • 年2万5千本ほど。島の外ではほとんど手に入らない
  • レストランのリストにあれば、本土のワインより試す価値がある
  • 瓶は割れ物。持ち帰りは梱包と液体の規定を確認
  • シラオへの道はつづら折り。時間に余裕を

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

  • Wikipédia(fr)「Cilaos (vin)」 1665年のぶどう導入、1860年ごろのイザベル種と「rendre fou」の評判、1992年の協同組合設立、1996年の初シュナン・1998年からの赤、標高800〜1200m、2001年3万5千本/その後2万5千本、2004〜2009年のヴァン・ド・ペイ表示

写真の出典(11枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 棚に並んだ「VIN DE CILAOS」のボトル|Bbb/CC BY-SA 3.0/2010年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 棚に並んだ「VIN DE CILAOS」のボトル|Bbb/CC BY-SA 3.0/2010年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「Cilaos」のラベルが貼られた白ワインのボトル|Ekrem Canli/CC BY-SA 3.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ぶどう畑を背にシラオワインのボトル2本を持つ手|Chai de cilaos/CC0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • グラン・バサンの斜面に作られた小さなぶどう畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオへ登る国道5号沿いの段々畑|MOSSOT/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)|Miwok from France/CC0 1.0/2014年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • マファット圏谷の集落マルラの農地と家|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)|Sarah Duprat1/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)