「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列
レユニオン / フランス海外県

ラ・ドド

Bière Bourbon « Dodo »

島にいなかった鳥が、島のビールの顔になった

RÉUNION17
ラ・ドド・レ・ラ。

島を車で走っていると、店の壁に「la Dodo lé la」と大書きしてあるのを何度も見かける。クレオール語で「ドドがここにいる」。緑の瓶に、笑った鳥の絵。島のビール、ブルボン(Bourbon)──通称ラ・ドド(la Dodo)だ。

正式な銘柄名はブルボン。島の旧名ブルボン島に由来する名前で、バニラの「ブルボン」やコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」と同じ出どころだ。だが誰もブルボンとは呼ばない。ラベルの鳥にちなんで、みんな「ドド」と言う。バーで「ブルボンを1本」と頼む人はほとんどいない。

醸造しているブラスリー・ド・ブルボンの創業は1962年。ドドはその最初の製品で、いまも圧倒的によく飲まれている。1986年にハイネケンが筆頭株主になり、現在も傘下にある。

面白いのはドードーという鳥だ。飛べない大型の鳥で、17世紀に絶滅した。ただしドードーが住んでいたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。つまり、この島のビールのラベルには、この島にいなかった鳥が描かれている。

味は軽いラガー。暑い島でよく冷やして飲むための設計で、複雑さより飲みやすさが優先されている。海沿いのレストランでも、山の食堂でも、たいていこれが出てくる。

軽い金色のラガー1本 2〜4€(約350〜700円)ラベルの鳥はモーリシャスの絶滅種
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「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列
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黄色い商店の壁に掲げられた「BOURBON LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」の看板「BOURBON LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」の看板

「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列(2019年撮影)

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ドードーの絵le dodo笑った鳥。これが通称の由来。17世紀に絶滅した飛べない鳥で、生息していたのはモーリシャス島
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「BOURBON」の文字la marque正式な銘柄名。島の旧名ブルボン島から。だが誰もこの名では呼ばない
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緑の瓶la bouteille島じゅうの店とレストランで同じ瓶が並ぶ。よく冷やして出てくる
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「LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」le slogan「レユニオンのビール」。壁の広告には「la Dodo lé la(ドドがここにいる)」というクレオール語の標語が使われる
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一口目

味

軽くて、素直

金色の軽いラガー。麦の甘みが薄く残り、苦みは控えめ。個性を主張するタイプではない。よく冷やして、暑い日に飲むためのビールとして作られている。

合わせるもの

揚げものと相性がいい

ボンボン・ピマン、ブション、サモサ。夕方のアペリティフの小皿と一緒に出てくることが多い。塩気と辛味のあるつまみを、この軽さが流してくれる。

呼び方

「ドド」で通じる

正式にはブルボンだが、店で「ブルボン」と言うと一瞬止まられることがある。「アン・ドド(une Dodo)」で通じる。壁の「la Dodo lé la」がそのまま注文の言葉になっている。

海辺の木組みのビーチレストラン
海辺の木組みのビーチレストラン。冷えたドドが出てくる場所(2019年撮影)
黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン
黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン(2011年撮影)
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島の一本になるまで

市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)1
砂糖の島に、ビールが来る

島の農業の中心はサトウキビで、酒といえばラムだった。そこに1962年、ブラスリー・ド・ブルボンが設立され、ビールの醸造が始まる。

ドドはこの醸造所の最初の製品
2ドードーをラベルに描く

銘柄名は島の旧名にちなむ「ブルボン」。ラベルには笑ったドードーが描かれた。この鳥の名で呼ばれるようになり、通称のほうが定着する。

正式名より通称のほうが通じる状態がいまも続いている
3「la Dodo lé la」

クレオール語で「ドドがここにいる」。この標語が、ビールを置く店の壁に描かれるようになった。島を走っていると何度も目に入る。

広告というより、島の風景の一部になっている
41986年、ハイネケン傘下に

ハイネケンが筆頭株主になり、現在も傘下にある。ただし島で作られ、島で飲まれるビールという位置づけは変わっていない。

島の外ではあまり見かけない
5よく冷やして出す

海辺のレストランでも、山の食堂でも、瓶をよく冷やして出す。グラスを添える店と、瓶のまま渡す店がある。

暑い日の一本として設計されている
大麦麦芽ホップ水酵母よく冷やすこと
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この一本の来歴

17世紀

ドードーが絶滅する

飛べない大型の鳥ドードーが、モーリシャス島で絶滅する。レユニオンには生息していなかった。

1962年

ブラスリー・ド・ブルボン設立

島にビール醸造所ができる。最初の製品が、のちに「ドド」と呼ばれるブルボンの金色のラガーだった。

20世紀後半

通称が定着する

ラベルの鳥にちなむ「ドド」の呼び名が広まり、正式名の「ブルボン」より通じるようになる。

1986年

ハイネケンが筆頭株主に

ハイネケンが経営に入り、現在も傘下にある。醸造は島で続いている。

現在

壁に描かれる標語

「la Dodo lé la(ドドがここにいる)」というクレオール語の標語が、島じゅうの店の壁に描かれている。

島のビールのラベルに、その島にいなかった鳥が描かれている。ドードーが生息していたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。レユニオンには別の飛べない鳥がいたとされるが、いずれにしてもドードーではない。それでもこの鳥が島のビールの顔になり、島じゅうの壁に描かれている。

こうなった理由を確かめる資料は見つからなかった。ただ、インド洋の島々にとってドードーが「この海域の失われたもの」の象徴になっていることは間違いない。国境ではなく、海のまとまりとして共有されているイメージだ。だから隣の島の鳥が、この島のラベルに乗っている。

正式名と通称のねじれも面白い。銘柄は「ブルボン」で、これは島の旧名に由来する。バニラの「ブルボン」もコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」も同じ出どころで、島の産品の名前としては一等地の言葉だ。それなのに、ビールだけは誰もその名で呼ばない。ラベルの絵のほうが勝ってしまった。

「la Dodo lé la」というクレオール語の標語も、広告としてよくできている。フランス語ではなくクレオール語で、意味は「ドドがここにいる」。店の壁に描かれると、それは看板であると同時に「ここで飲める」という合図になる。島を走っていると、この言葉を何度も見かけることになる。

ビールそのものは、味を語るタイプのものではない。軽くて冷たくて、揚げものと合う。それで十分な役割を果たしている。カリを食べたあと、ブションをつまみながら、海を見て飲む。この島でのドドの居場所はそこにある。

ドードーがモーリシャス島の固有種であったこと、1962年の醸造所設立、1986年のハイネケンによる筆頭株主化は英語版の解説による。ラベルに採用された経緯については、確かな資料が見つからなかったため断定を避けている。

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この一本の余話

鳥の話

ドードーは、この島にいなかった

ラベルに描かれた笑った鳥ドードーは、17世紀に絶滅した飛べない大型の鳥だ。ただし生息していたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。つまりこの島のビールには、この島にいなかった鳥が描かれている。おそらくドードーが「インド洋の島々の失われたもの」の象徴として共有されているからだが、採用の経緯についてはっきりした資料は見つからなかった。旅行者が地元の人にこの話を振ると、たいてい笑って「そうなんだよ」と言われる。

名前の話

正式名は「ブルボン」。でも誰もそう呼ばない

銘柄の正式名はブルボン(Bourbon)。島の旧名ブルボン島に由来する名前で、バニラの「ブルボン」やコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」と同じ出どころだ。島の産品の名前としては一等地の言葉なのに、ビールだけは通称の「ドド」が完全に勝ってしまった。店で「アン・ドド」と言えば通じる。「ブルボンを1本」と言うと、一瞬考えられることがある。

標語の話

「la Dodo lé la」はフランス語ではない

店の壁に大書きされているこの言葉はクレオール語で、「ドドがここにいる」という意味。フランス語なら「le Dodo est là」になるが、そうは書かない。クレオール語で書くことで、島の言葉として読まれる。だからこれは広告のコピーであると同時に、島の風景の一部になっている。車で走っていると何度も目に入るので、旅行が終わるころには覚えてしまう。

短い話

  • 1
    注文は「アン・ドド」une Dodo で通じる。正式名のブルボンより早い。
  • 2
    醸造所は1962年設立ドドはその最初の製品で、いまも最もよく売れている。
  • 3
    1986年からハイネケン傘下経営は入っているが、醸造は島で続いている。
  • 4
    揚げものと合うボンボン・ピマン、ブション、サモサ。アペリティフの小皿と一緒に。
  • 5
    島の外では見かけにくい主に島の中で消費されている。土産にするなら空港や大きなスーパーで。
  • 6
    運転する日は飲まないレンタカーで島を一周する行程では特に。フランスでは酒類の購入・提供は18歳以上。
夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観
夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観(2007年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Une Dodo, s'il vous plaît.ユヌ・ドド、シル・ヴ・プレ/ドドを1本ください
Bien fraîche, s'il vous plaît.ビヤン・フレッシュ、シル・ヴ・プレ/よく冷えたものをお願いします
Avec un verre ?アヴェック・アン・ヴェール?/グラスはつきますか?
Vous avez de la pression ?ヴ・ザヴェ・ドゥ・ラ・プレシオン?/生ビールはありますか?
Deux Dodo et des bouchons.ドゥ・ドド・エ・デ・ブション/ドド2本とブションを

レストラン、スナック、スーパー、どこにでもある。海沿いの店で夕方に頼むのがいちばん島らしい。壁に「la Dodo lé la」と描いてある店は、まず置いている。

値段と覚え書き

1本(レストラン)3〜5€約500〜900円
1本(スーパー)1〜2€約180〜350円
6本パック(スーパー)6〜10€約1,000〜1,800円
  • 注文は「ドド」。正式名の「ブルボン」より通じる
  • ラベルの鳥はモーリシャスの絶滅種。この島にはいなかった
  • 「la Dodo lé la」はクレオール語で「ドドがここにいる」
  • 軽いラガー。よく冷やして飲む前提の味
  • 揚げもの・アペリティフの小皿と合わせるのが定番
  • フランスでは酒類の購入・提供は18歳以上。運転する日は飲まない

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。

参照資料

写真の出典(11枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0/パブリックドメイン)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • 「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列|Ekrem Canli/CC BY-SA 3.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列|Ekrem Canli/CC BY-SA 3.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 黄色い商店の壁に掲げられた「BOURBON LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」の看板|Marie-angele.joly/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 海辺の木組みのビーチレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)|Sarah Duprat1/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 赤いテントの下に花や野菜が並ぶサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ピエールの屋根付き市場の外観|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観|Dunog/Public domain/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)