
ラ・ドド
Bière Bourbon « Dodo »
島にいなかった鳥が、島のビールの顔になった
島を車で走っていると、店の壁に「la Dodo lé la」と大書きしてあるのを何度も見かける。クレオール語で「ドドがここにいる」。緑の瓶に、笑った鳥の絵。島のビール、ブルボン(Bourbon)──通称ラ・ドド(la Dodo)だ。
正式な銘柄名はブルボン。島の旧名ブルボン島に由来する名前で、バニラの「ブルボン」やコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」と同じ出どころだ。だが誰もブルボンとは呼ばない。ラベルの鳥にちなんで、みんな「ドド」と言う。バーで「ブルボンを1本」と頼む人はほとんどいない。
醸造しているブラスリー・ド・ブルボンの創業は1962年。ドドはその最初の製品で、いまも圧倒的によく飲まれている。1986年にハイネケンが筆頭株主になり、現在も傘下にある。
面白いのはドードーという鳥だ。飛べない大型の鳥で、17世紀に絶滅した。ただしドードーが住んでいたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。つまり、この島のビールのラベルには、この島にいなかった鳥が描かれている。
味は軽いラガー。暑い島でよく冷やして飲むための設計で、複雑さより飲みやすさが優先されている。海沿いのレストランでも、山の食堂でも、たいていこれが出てくる。
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「BOURBON LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」の看板「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列(2019年撮影)
一口目
味
軽くて、素直
金色の軽いラガー。麦の甘みが薄く残り、苦みは控えめ。個性を主張するタイプではない。よく冷やして、暑い日に飲むためのビールとして作られている。
合わせるもの
揚げものと相性がいい
ボンボン・ピマン、ブション、サモサ。夕方のアペリティフの小皿と一緒に出てくることが多い。塩気と辛味のあるつまみを、この軽さが流してくれる。
呼び方
「ドド」で通じる
正式にはブルボンだが、店で「ブルボン」と言うと一瞬止まられることがある。「アン・ドド(une Dodo)」で通じる。壁の「la Dodo lé la」がそのまま注文の言葉になっている。


島の一本になるまで
1島の農業の中心はサトウキビで、酒といえばラムだった。そこに1962年、ブラスリー・ド・ブルボンが設立され、ビールの醸造が始まる。
ドドはこの醸造所の最初の製品銘柄名は島の旧名にちなむ「ブルボン」。ラベルには笑ったドードーが描かれた。この鳥の名で呼ばれるようになり、通称のほうが定着する。
正式名より通称のほうが通じる状態がいまも続いているクレオール語で「ドドがここにいる」。この標語が、ビールを置く店の壁に描かれるようになった。島を走っていると何度も目に入る。
広告というより、島の風景の一部になっているハイネケンが筆頭株主になり、現在も傘下にある。ただし島で作られ、島で飲まれるビールという位置づけは変わっていない。
島の外ではあまり見かけない海辺のレストランでも、山の食堂でも、瓶をよく冷やして出す。グラスを添える店と、瓶のまま渡す店がある。
暑い日の一本として設計されているこの一本の来歴
ドードーが絶滅する
飛べない大型の鳥ドードーが、モーリシャス島で絶滅する。レユニオンには生息していなかった。
ブラスリー・ド・ブルボン設立
島にビール醸造所ができる。最初の製品が、のちに「ドド」と呼ばれるブルボンの金色のラガーだった。
通称が定着する
ラベルの鳥にちなむ「ドド」の呼び名が広まり、正式名の「ブルボン」より通じるようになる。
ハイネケンが筆頭株主に
ハイネケンが経営に入り、現在も傘下にある。醸造は島で続いている。
壁に描かれる標語
「la Dodo lé la(ドドがここにいる)」というクレオール語の標語が、島じゅうの店の壁に描かれている。
島のビールのラベルに、その島にいなかった鳥が描かれている。ドードーが生息していたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。レユニオンには別の飛べない鳥がいたとされるが、いずれにしてもドードーではない。それでもこの鳥が島のビールの顔になり、島じゅうの壁に描かれている。
こうなった理由を確かめる資料は見つからなかった。ただ、インド洋の島々にとってドードーが「この海域の失われたもの」の象徴になっていることは間違いない。国境ではなく、海のまとまりとして共有されているイメージだ。だから隣の島の鳥が、この島のラベルに乗っている。
正式名と通称のねじれも面白い。銘柄は「ブルボン」で、これは島の旧名に由来する。バニラの「ブルボン」もコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」も同じ出どころで、島の産品の名前としては一等地の言葉だ。それなのに、ビールだけは誰もその名で呼ばない。ラベルの絵のほうが勝ってしまった。
「la Dodo lé la」というクレオール語の標語も、広告としてよくできている。フランス語ではなくクレオール語で、意味は「ドドがここにいる」。店の壁に描かれると、それは看板であると同時に「ここで飲める」という合図になる。島を走っていると、この言葉を何度も見かけることになる。
ビールそのものは、味を語るタイプのものではない。軽くて冷たくて、揚げものと合う。それで十分な役割を果たしている。カリを食べたあと、ブションをつまみながら、海を見て飲む。この島でのドドの居場所はそこにある。
ドードーがモーリシャス島の固有種であったこと、1962年の醸造所設立、1986年のハイネケンによる筆頭株主化は英語版の解説による。ラベルに採用された経緯については、確かな資料が見つからなかったため断定を避けている。
この一本の余話
ドードーは、この島にいなかった
ラベルに描かれた笑った鳥ドードーは、17世紀に絶滅した飛べない大型の鳥だ。ただし生息していたのはモーリシャス島で、レユニオンではない。つまりこの島のビールには、この島にいなかった鳥が描かれている。おそらくドードーが「インド洋の島々の失われたもの」の象徴として共有されているからだが、採用の経緯についてはっきりした資料は見つからなかった。旅行者が地元の人にこの話を振ると、たいてい笑って「そうなんだよ」と言われる。
正式名は「ブルボン」。でも誰もそう呼ばない
銘柄の正式名はブルボン(Bourbon)。島の旧名ブルボン島に由来する名前で、バニラの「ブルボン」やコーヒーの「ブルボン・ポワントゥ」と同じ出どころだ。島の産品の名前としては一等地の言葉なのに、ビールだけは通称の「ドド」が完全に勝ってしまった。店で「アン・ドド」と言えば通じる。「ブルボンを1本」と言うと、一瞬考えられることがある。
「la Dodo lé la」はフランス語ではない
店の壁に大書きされているこの言葉はクレオール語で、「ドドがここにいる」という意味。フランス語なら「le Dodo est là」になるが、そうは書かない。クレオール語で書くことで、島の言葉として読まれる。だからこれは広告のコピーであると同時に、島の風景の一部になっている。車で走っていると何度も目に入るので、旅行が終わるころには覚えてしまう。
短い話
- 1注文は「アン・ドド」une Dodo で通じる。正式名のブルボンより早い。
- 2醸造所は1962年設立ドドはその最初の製品で、いまも最もよく売れている。
- 31986年からハイネケン傘下経営は入っているが、醸造は島で続いている。
- 4揚げものと合うボンボン・ピマン、ブション、サモサ。アペリティフの小皿と一緒に。
- 5島の外では見かけにくい主に島の中で消費されている。土産にするなら空港や大きなスーパーで。
- 6運転する日は飲まないレンタカーで島を一周する行程では特に。フランスでは酒類の購入・提供は18歳以上。

食べに行く前に
注文のことば
レストラン、スナック、スーパー、どこにでもある。海沿いの店で夕方に頼むのがいちばん島らしい。壁に「la Dodo lé la」と描いてある店は、まず置いている。
値段と覚え書き
| 1本(レストラン) | 3〜5€約500〜900円 |
| 1本(スーパー) | 1〜2€約180〜350円 |
| 6本パック(スーパー) | 6〜10€約1,000〜1,800円 |
- 注文は「ドド」。正式名の「ブルボン」より通じる
- ラベルの鳥はモーリシャスの絶滅種。この島にはいなかった
- 「la Dodo lé la」はクレオール語で「ドドがここにいる」
- 軽いラガー。よく冷やして飲む前提の味
- 揚げもの・アペリティフの小皿と合わせるのが定番
- フランスでは酒類の購入・提供は18歳以上。運転する日は飲まない
値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。営業時間・価格は変わることがあるので、行く前に確認を。
参照資料
- Wikipedia(en)「Brasseries de Bourbon」 1962年設立、ドドが最初の製品で最も売れていること、ラベルの笑ったドードー、ドードーがモーリシャスの絶滅種であること、クレオール語の標語「la dodo lé la」、1986年からハイネケンが筆頭株主
- Guide Réunion「La bière à La Réunion」 島でのビールの飲まれ方
写真の出典(11枚)
写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0/パブリックドメイン)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。
- 「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列|Ekrem Canli/CC BY-SA 3.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 「BOURBON」のラベルが並ぶドド(ビール)の瓶の列|Ekrem Canli/CC BY-SA 3.0/2015年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 黄色い商店の壁に掲げられた「BOURBON LA BIÈRE RÉUNIONNAISE」の看板|Marie-angele.joly/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 海辺の木組みのビーチレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 黄色い日よけを張ったサン・ポールの海沿いレストラン|mwanasimba from La Réunion/CC BY-SA 2.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 市場のサトウキビ搾り機と「JUS 2€ le litre CANNE PÉI」の札、そばでギターを弾く人(白黒写真)|Sarah Duprat1/CC BY-SA 4.0/2019年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 赤いテントの下に花や野菜が並ぶサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0 1.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- サン・ピエールの屋根付き市場の外観|Thierry Caro/CC BY-SA 4.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
- 夜に赤くライトアップされたサン・ピエールのブラッスリー外観|Dunog/Public domain/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)


