どんぐりのでんぷんを固めたムクに、葉野菜と薬味を合わせる。
韓国山の食材を使う料理どんぐりの寄せ物

トトリムク

도토리묵Acorn jelly with greens and seasoned soy, a mountain dish of Korea

どんぐりのでんぷんを煮て固めるトトリムク。森の実を、渋みを扱い、粉と水からやわらかな塊へ変える。救荒の食材としての記録から、薬味を合わせる今の皿とムクの飯料理までたどる。

どんぐりのムク
01

豆腐ではなく、
でんぷんを固めたもの。

森の実を粉と液へ加工し、煮て四角い塊へ変える。トトリムクは、自然の実の形が消えるほどの仕事を経て、やわらかな一切れになる料理だ。

トトリはどんぐり。ムクはでんぷんを使って固める料理の仲間で、トトリムクはどんぐりの材料を使う。豆腐のような四角い形でも、豆乳を凝固させる料理ではない。どんぐりからでんぷんを得て、加熱し、冷まして形にする。

褐色の塊へしょうゆの薬味を添える型や、切ったムクを葉野菜と和える型がある。やわらかな四角を何と合わせるかで、皿の形は違う。材料が同じでも、切り身の小皿と野菜の多い和え物では、一口に入るものが変わる。

切ったトトリムクにしょうゆの薬味を添える型。

切ったトトリムクにしょうゆの薬味を添える型。 写真の出典

赤い薬味を合わせたムクの切り身。

赤い薬味を合わせたムクの切り身。 写真の出典

どんぐりの粉

どんぐりの粉 写真の出典

救荒の記録
02

森の実が、
不足する穀物を補った。

韓国学中央研究院の解説には、高麗や朝鮮時代に、どんぐりを不足する食料を補う材料として扱った記録が紹介される。『山林経済』や『牧民心書』などにも、救荒の食材として登場する。森の実を食べる仕事は、現在の副菜の背景の一つである。

先史時代のどんぐりの利用と、現在の四角いトトリムクの製法が同じ時期から確認される話は別である。古い実の利用を、そのままムクの発明年にしない方がよい。食材を使う歴史と、特定の加工した料理の歴史を分けると、長い時間の話を正確に読める。

市場で売られる大きなどんぐりのムク。

市場で売られる大きなどんぐりのムク。 写真の出典

豆もやしとどんぐりのムク。

豆もやしとどんぐりのムク。 写真の出典

粉を水でこした工程

粉を水でこした工程 写真の出典

渋みを扱う
03

割って粉にし、
水の仕事を挟む。

どんぐりは、拾ってそのまま切ればムクになる材料ではない。殻を扱い、細かくし、水を使って加工する段階がある。伝統知識の料理記録は、水を替えながら材料を扱い、でんぷんの液を得る工程を紹介する。

掲載写真には、どんぐりの粉と、粉の液をこす仕事がある。粉の粒と、加熱する前の液は、完成した固まりとはまるで違う姿。材料が料理へ変わる途中を知ると、茶色い塊が自然の実の切り身ではないことが分かる。

小皿に盛ったムクの切り身。

小皿に盛ったムクの切り身。 写真の出典

汁や飯と合わせるムクパプの型。

汁や飯と合わせるムクパプの型。 写真の出典

でんぷんの液を加熱する工程

でんぷんの液を加熱する工程 写真の出典

どんぐりの実が、
やわらかな四角になる。

煮て固める
04

かき混ぜる鍋から、
冷ました一枚へ。

でんぷんの液を加熱して混ぜ、器で冷ますと、やわらかな塊になる。鍋の中で液が変化する写真と、固める器の写真を並べると、四角いムクができる工程が分かる。形を作るのは包みの皮ではなく、液を煮て冷ます仕事である。

固まったものを切ると、小皿に盛る切り身にも、野菜と和える薄い片にもできる。一本ずつ成形する料理ではなく、大きく固めてから食べる形へ切り分ける。市場に並ぶ大きなムクの塊は、その段階を伝える。

野菜と和えるムクの型。

野菜と和えるムクの型。 写真の出典

エゴマの粉を合わせるムクの型。

エゴマの粉を合わせるムクの型。 写真の出典

器で冷まして固める工程

器で冷まして固める工程 写真の出典

薬味と野菜
05

しょうゆを添えるか、
葉野菜と和えるか。

しょうゆの薬味を上へ置く小皿では、ムクの塊が主役になる。野菜を合わせたムク・ムチムでは、葉やねぎ、唐辛子などの具が加わる。豆もやしと合わせる写真もあり、ムクのやわらかさへ別の歯触りを加えられる。

同じ茶色い材料でも、切り方と薬味の量で見え方が変わる。ムクを炒めた料理や、干したムクを使う料理まで全て同じ一皿として扱わず、今回のやわらかなムクの型を知ると、皿に何が入っているかをつかみやすい。

やわらかなムクの塊の接写。

やわらかなムクの塊の接写。 写真の出典

ムクの飯料理と小皿の食卓。

ムクの飯料理と小皿の食卓。 写真の出典

ムクの飯料理
06

副菜の塊を、
汁と飯にも使う。

掲載写真には、ムクパプという汁や飯と合わせる型がある。ムクを小皿でつまむだけでなく、切って一杯の具へ使う。エゴマの粉を合わせる器もあり、やわらかな塊の周りに汁と粉が重なる。

春雨を使うチャプチェと、ムクを使う取り合わせ料理にもつながる。どんぐりのでんぷんを固める仕事から、一種類の副菜だけでなく、和え物や飯の器へ料理が分かれる。元の加工した材料を知ると、その広がりを理解しやすい。

トトリムクと葉野菜の和え物。

トトリムクと葉野菜の和え物。 写真の出典

飯と汁にムクを合わせたところ。

飯と汁にムクを合わせたところ。 写真の出典

食堂と売り場
07

南漢山城の食堂でも、
ムクが土地の皿になる。

南漢山城の伝統料理の村は、トトリムクや鶏料理などを出す食堂の集まりとして観光公社に紹介される。救荒の食材としての歴史を持つどんぐりが、現在は食堂の料理としても食べられる。昔の役割だけで料理の今を説明しない方がよい。

市場の大きなムクの塊、家庭の粉と鍋、薬味を添える完成した皿。工程と食べる場所を合わせると、森の実を人がどれほど加工しているかが見える。地味な四角の一切れには、渋みを扱い、でんぷんを得て、形を作る具体的な仕事がある。

薬味を添えたどんぐりのムク。

薬味を添えたどんぐりのムク。 写真の出典

盛り付けたトトリムク

盛り付けたトトリムク 写真の出典

粉を固める料理
08

豆腐の四角と、
ムクの四角は別の加工。

豆腐とトトリムクは、どちらも四角く切れるが、材料と形を作る仕組みが異なる。豆腐は豆の液を凝固させ、ムクはでんぷんの液を加熱して冷ます。四角い完成形だけでは、何を加工したかは分からない。

粉、こした液、混ぜる鍋、冷ます器を順に見ると、どんぐりの元の実の形は完成した一切れに残らない。手に入れた自然の材料を、長い加工によって別の状態へ変える。救荒の材料の記録は、この食べられる形にする仕事の重さともつながる。

固めてから切るため、一つの大きな塊から小皿や和え物の片を作れる。市場の大きなムクと、薬味を置く切り身は、同じ料理の材料の違う段階である。加工と売り場をつなぐ写真が、素朴な一切れの背景を伝える。

汁にも和え物にも
09

形を残すムクを、
別の食事へ使う。

ムクパプでは、切ったムクを汁や飯と合わせる。ムク・ムチムでは、葉や薬味と和える。大きく固めた材料を先に作り、その後の切り方と味付けで料理を分けられる。

乾燥したムクを使うチャプチェの型もあり、同じどんぐりの材料が違う質感で取り合わせ料理へ使われる。やわらかな四角だけでムクの料理を終わらせず、汁、野菜、米、乾燥の工程へ広げると、材料の加工の後に続く工夫を知れる。

山の料理

Dotorimukトトリムク

도토리묵

どんぐりのでんぷんを煮て固め、薬味を添えるか野菜と和える一切れ。

飯料理

Mukbapムクパプ

묵밥

切ったムクを汁や飯と合わせ、副菜の塊を一杯の具にする型。

和え物

Muk-muchimムク・ムチム

묵무침

薄く切ったムクを葉野菜やねぎ、唐辛子などと和える型。

取り合わせ

Japchaeチャプチェ

잡채

春雨を使う炒め物。乾燥したムクを使う取り合わせの型にもつながる。

記事を見る →

基本情報

国・地域
韓国。南漢山城の伝統料理の村の食堂や市場で出される
分類
どんぐりのでんぷんを煮て固め、切り分けて食べる寄せ物の副菜
主な材料
どんぐりのでんぷん、しょうゆの薬味、葉野菜、ねぎ、唐辛子、豆もやし、エゴマの粉
味の軸
しょうゆの薬味の塩気、赤い薬味の辛さ。どんぐりの渋みは水を替えて扱う
調理
殻を扱って粉にし、水でこしてでんぷんの液を得る。加熱して混ぜ、器で冷まして固める
食べる場面
山の食材を使う料理。小皿の副菜、野菜との和え物、汁や飯と合わせるムクパプ
型・地域差
しょうゆを添える小皿、ムク・ムチム、ムクパプ、エゴマの粉を合わせる型、乾燥ムクのチャプチェ
現地名
도토리묵(Dotorimuk)
記録・注記
高麗・朝鮮時代に救荒の食材とした記録。『山林経済』『牧民心書』にも登場。ムクの発明年とは別

出典

写真(19枚)

  • 1. どんぐりのでんぷんを固めたムクに、葉野菜と薬味を合わせる。 / by 가라곤 at Flickr / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 2. 切ったトトリムクにしょうゆの薬味を添える型。 / by Sung Sook / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 3. 赤い薬味を合わせたムクの切り身。 / 최광모 / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 4. どんぐりの粉 / 韓国学中央研究院 / 韓国民族文化大百科事典 / [도토리묵 제조과정] 한국민족문화대백과사전 / KOGL 第1類型 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 5. 市場で売られる大きなどんぐりのムク。 / https://www.flickr.com/photos/n-c/ / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 6. 豆もやしとどんぐりのムク。 / Korea.net / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 7. 粉を水でこした工程 / 韓国学中央研究院 / 韓国民族文化大百科事典 / [도토리묵 제조과정] 한국민족문화대백과사전 / KOGL 第1類型 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 8. 小皿に盛ったムクの切り身。 / angela n. at Flickr / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 9. 汁や飯と合わせるムクパプの型。 / 향긋한 커피매니아 / CC BY 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 10. でんぷんの液を加熱する工程 / 韓国学中央研究院 / 韓国民族文化大百科事典 / [도토리묵 제조과정] 한국민족문화대백과사전 / KOGL 第1類型 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 11. 野菜と和えるムクの型。 / by HapaK at Flickr / CC BY-SA 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 12. エゴマの粉を合わせるムクの型。 / Ryan Bodenstein / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 13. 器で冷まして固める工程 / 韓国学中央研究院 / 韓国民族文化大百科事典 / [도토리묵 제조과정] 한국민족문화대백과사전 / KOGL 第1類型 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 14. やわらかなムクの塊の接写。 / Sjschen(原写真)/Caspian blue(派生画像) / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 15. ムクの飯料理と小皿の食卓。 / 대경라이프 / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 16. トトリムクと葉野菜の和え物。 / Deborah Hong / CC BY 2.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 17. 飯と汁にムクを合わせたところ。 / 대경라이프 / CC BY-SA 4.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 18. 薬味を添えたどんぐりのムク。 / Transferred from en.wikipedia to Commons. by CommonsHelper . The original uploader was Sjschen at English Wikipedia . / CC BY-SA 3.0 / 原典。表示時に明るさを調整。
  • 19. 盛り付けたトトリムク / 宮中飲食研究院 / 韓国民族文化大百科事典 / [도토리묵 요리] 한국민족문화대백과사전 / KOGL 第1類型 / 原典。表示時に明るさを調整。

写真は各原典で作者とライセンスを確認したものです。すべてサイト内に取り込み、本文では明るさ・彩度を控えめに補正して表示します。