ピンクの布の上に並べられた、揚げたザンデット(蛾の幼虫)
レユニオン / フランス海外県

ザンデット

Zendette

逃げた人たちが山で食べていたもの

RÉUNION23
幹に、直径1センチの穴があいている。

この島の食べもののなかで、旅行者がいちばん驚くのがザンデット(zendette/zandette)だ。カミキリムシの仲間の幼虫。白くてぶよぶよした、蛇腹のような節のある体で、脚はごく小さいか、ほとんどない。それを揚げて食べる。

住んでいるのは朽ちかけた木の幹の中だ。高地のタマラン(タマリンド)やグラン・ナットの倒木に多い。採る人は幹を見て、直径1センチほどの穴があいているかを確かめる。穴があれば中にいる。

採り方は力技で、木の上のほうを切り落とし、幹を縦に割っていって、虫が出てくるまで進む。生きたまま採るのが決まりで、それが鮮度の保証になる。ただし木の種類には注意が要る。ボワ・ランパールのように毒のある木もあるからだ。

これは古くからの伝統で、山に逃げた人たち──奴隷制の時代に山へ入った「マロン」と呼ばれる人たち──の食べものだったと伝えられている。マファット圏谷という名前自体、そうした人物の名に由来するという説明がされている。

食べ方は、生のまま、あるいは油で揚げる。市場や祭りで揚げたものが売られていることがある。旅行者が偶然出会う確率は低いが、島の食の歴史を語るときに必ず名前が出てくるものだ。

カミキリムシの幼虫少量パック 5〜12€(約900〜2,100円)朽ちた幹の中にいる
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揚げたところを見る

ピンクの布の上に並べられた、揚げたザンデット(カミキリムシの幼虫)
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ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑高地の渓谷。倒木はこうした森にある

ピンクの布の上に並べられた、揚げたザンデット(2011年撮影)

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蛇腹の節les anneaux体に輪のような節が並ぶ。カミキリムシの仲間の幼虫の特徴
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揚げた色frites dans l'huile油で揚げると色がつき、表面が締まる。生のまま食べる人もいる
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大きさla taille数センチ。木の太さや育ち具合で幅がある
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並べて売るl'étal市場や祭りで、揚げたものが少量ずつ売られていることがある
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一口目

味

木の実に近いと言われる

食べた人の説明では、脂を含んだ木の実や、揚げた白身に近いという言い方がされる。虫らしい強い癖はないとされるが、見た目の印象が味の受け取り方を大きく左右するのは確かだ。

食感

外はかりっと、中はとろり

揚げると表面が締まり、中は脂が溶けてとろりとする。生のまま食べる場合はまったく別の食感になる。

出会う確率

低い

店の常設メニューではない。市場や祭りで見かけることがある程度で、探して見つかるものではない。島の人でも食べたことがない人はいる。

高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場
高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場(2016年撮影)
山あいの集落マルラの木造スナック
山あいの集落マルラの木造スナック(2019年撮影)
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採り方と食べ方

1穴のあいた幹を探す

高地のタマラン(タマリンド)やグラン・ナットの朽ちかけた木を見て、直径1センチほどの穴があいているかを確かめる。穴があれば中にいる。

穴が採集の目印になる
薬草の名前を書いた札を添えて乾燥ハーブを並べたティザヌールの露店2
木の種類を確かめる

木によっては毒のあるものがある。ボワ・ランパールのように、その木自体が有毒な種類は避ける。植物の知識が要る作業。

この判断ができないと採ってはいけない
3幹を割る

木の上のほうを切り落とし、幹を縦に割っていって、虫が出てくるまで進む。生きたまま採る。

生きて採ることが鮮度の保証とされる
4揚げる

油で揚げる。生のまま食べる方法も伝えられている。市場や祭りでは揚げたものが少量ずつ売られる。

揚げたものが一般的
5少量で出す

皿にどっさり盛るものではなく、つまむ量で出される。珍味という扱いに近い。

店の常設メニューではない
ザンデット(カミキリムシの幼虫)揚げ油塩(好みで)唐辛子
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この食べものの来歴

奴隷制の時代

山に逃げた人たちの食べもの

山へ逃げた人たち(マロン)にとって、森の中で得られるたんぱく源だったと伝えられている。

長い年月

高地の暮らしのなかで

タマランやグラン・ナットのある高地の森で、採り方と見分け方が受け継がれてきた。

現在

珍味として

常設の料理ではなく、市場や祭りで揚げたものが少量売られる程度。島の人でも食べたことのない人はいる。

注意

木の毒

ボワ・ランパールのように有毒な木もあり、採る前に木の種類を確かめる必要がある。

近年

食用昆虫として

世界的に食用昆虫が注目されるなかで、島の伝統としてあらためて話題になることがある。

食べものの記事として、これは書きにくい部類に入る。写真を見ただけで無理だという人が多いだろうし、実際に旅行者が食べる機会もほとんどない。それでも書く理由は、この島の食の歴史を語るときにザンデットが避けて通れない位置にあるからだ。

奴隷制の時代、この島の山には逃げた人たちがいた。フランス語でマロン(marron)と呼ばれる人たちで、圏谷や森の奥で暮らしていた。マファットという圏谷の名前は、そうした人物の名に由来するという説明がされている。市場も店もない場所で、彼らが食べられるものを森から得ていた。ザンデットはそのひとつだったと伝えられている。

採り方には知識が要る。まず、朽ちかけた木の幹に直径1センチほどの穴があいているかを見る。穴があれば中にいる。木の上のほうを切り落とし、幹を縦に割っていく。そして重要なのが、その木が有毒でないかを確かめることだ。ボワ・ランパールのように、木自体に毒のある種類がある。

「生きたまま採る」というのも決まりごとになっている。それが鮮度の保証だからだ。採ったあとは、揚げるか、そのまま食べる。市場や祭りでは揚げたものが少量ずつ売られていることがある。

旅行者としては、まず出会わないと思っていい。店の常設メニューにはないし、探して見つかるものでもない。だが「この島の人は昔、森でこういうものを食べていた」という話を知っていると、高地の森や圏谷の景色の見え方が変わる。マファットを歩くなら、なおさらだ。

シラオへ登る国道5号沿いの段々畑
シラオへ登る国道5号沿いの段々畑。圏谷へは山道を登っていく(2019年撮影)
シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)
シラオの山あいに作られた段々畑(2019年撮影)

「マロン(山に逃げた人たち)の食べものだった」という位置づけは伝えられている説明で、文献で確定した記述ではない。マファットの地名の由来についても複数の説明がある。採集には木の毒の判断が必要なので、旅行者が自分で採ることは想定していない。

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この食べものの余話

言い伝え

山へ逃げた人たちの食べものだった

奴隷制の時代、この島の山には逃げた人たち──マロン(marron)と呼ばれる人たち──がいた。圏谷や森の奥で、市場にも店にも頼らずに暮らしていた。ザンデットは、その人たちが森から得ていたたんぱく源のひとつだったと伝えられている。マファット圏谷という地名自体、そうした人物の名に由来するという説明がされている。いま観光で歩く山道が、かつては別の意味を持っていた。

技術の話

直径1センチの穴が、目印になる

ザンデットは朽ちかけた木の幹の中にいる。高地のタマラン(タマリンド)やグラン・ナットに多い。採る人は幹を見て、直径1センチほどの穴があいているかを確かめる。穴があれば中にいる。そこから木の上のほうを切り落とし、幹を縦に割っていって、虫が出てくるまで進む。そして生きたまま採る。それが鮮度の保証になる。木を見て中身を読む、というのは狩りに近い技術だ。

危険の話

木そのものに毒があることがある

どの木の幼虫でもいいわけではない。ボワ・ランパールのように、木自体に毒のある種類がある。そういう木で育った幼虫は避けなければならない。だから採集には、虫の知識より先に植物の知識が要る。市場のティザヌールが薬草を見分けるのと、同じ種類の知識だ。旅行者が真似して自分で採るような食べものではない。

短い話

  • 1
    カミキリムシの幼虫蛾ではない。体に蛇腹のような節があり、脚はごく小さいかほとんどない。
  • 2
    住むのは朽ちた幹高地のタマランやグラン・ナットの倒木に多い。
  • 3
    揚げるか、生油で揚げるのが一般的。生のまま食べる方法も伝えられている。
  • 4
    常設メニューではない市場や祭りで少量売られる程度。探して見つかるものではない。
  • 5
    島の人でも未経験の人がいる全員が食べているわけではない。珍味という扱いに近い。
  • 6
    自分で採らない木の毒の判断が要る。旅行者が真似する食べものではない。
市場の一角で竹かごに入れて売られている生きた鶏
市場の一角で竹かごに入れて売られている生きた鶏。島の市場には生きたまま売られるものもある(2016年撮影)
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食べに行く前に

注文のことば

Vous avez des zendettes ?ヴ・ザヴェ・デ・ザンデット?/ザンデットはありますか?
C'est quelle saison ?セ・ケル・セゾン?/どの季節のものですか?
C'est frit ?セ・フリ?/揚げてありますか?
Je peux goûter un peu ?ジュ・プ・グテ・アン・プ?/少しだけ試せますか?
Non merci, une autre fois.ノン・メルシ、ユヌ・オートル・フォワ/いえ、またの機会に

店の常設メニューにはない。高地の市場や祭りで、揚げたものが少量売られていることがある程度。狙って食べに行く種類のものではないので、見かけたら運がいい、くらいに考えておくとよい。

値段と覚え書き

少量パック(市場・祭り)5〜12€約900〜2,100円
  • カミキリムシの仲間の幼虫。蛾ではない
  • 朽ちかけたタマランやグラン・ナットの幹の中にいる
  • 揚げるのが一般的。生で食べる方法も伝えられている
  • 常設メニューではない。市場や祭りで偶然見かける程度
  • 木に毒のある種類があるため、自分で採るものではない
  • 無理に食べる必要はない。話として知っておくだけでも十分

値段は2026年9月時点の目安。1€=約175円で換算。流通量が非常に少ないため、価格・入手可否は変動が大きい。

参照資料

  • Wikipédia(fr)「Zendette」 カミキリムシ科の幼虫、白く蛇腹状で脚がごく小さいこと、高地のタマランやグラン・ナットの朽木、直径約1cmの穴が目印、幹を縦に割って採ること、生きたまま採る、ボワ・ランパールなど有毒な木への注意、山に逃げた人たちの食べものという伝承、生または油で揚げる
  • Journal.re「Friture de zendettes」 揚げたザンデットが島の食べものとして扱われていること

写真の出典(11枚)

写真は原典のライセンス(CC BY/CC BY-SA/CC0)に従って掲載しています。作者名・ライセンス・原典リンクを1枚ずつ表示しています。明るさ・彩度・コントラストを調整した写真には、その旨を併記しています。

  • マファット圏谷の集落マルラの農地と家|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ピンクの布の上に並べられた、揚げたザンデット(カミキリムシの幼虫)|AnnemarieM1FLE/CC BY-SA 3.0/2009年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • ブラ・ド・ラ・プレーヌ渓谷の斜面を埋めるバナナ畑|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 高地ボワ・クールの屋根だけの市場と赤土の広場|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 山あいの集落マルラの木造スナック|Rémih/CC BY-SA 4.0/2026年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 薬草の名前を書いた札を添えて乾燥ハーブを並べたティザヌールの露店|Nanie 974/CC BY-SA 3.0/2011年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • サン・ドニの小市場(プティ・マルシェ)の入口|Olaf2/CC BY-SA 4.0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • パラソルが並び買い物客であふれるサン・ピエールの露天市|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオへ登る国道5号沿いの段々畑|MOSSOT/CC BY-SA 3.0/2007年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • シラオの山あいに作られた段々畑(レンズ豆の畑)|Miwok from France/CC0 1.0/2014年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)
  • 市場の一角で竹かごに入れて売られている生きた鶏|Guallendra/CC0/2024年撮影/明るさ・彩度・コントラストを調整(原典)